淡路島ニジゲンノモリ「ナイトウォーク火の鳥」と文句言いおばさん
先週の月曜日は、最後の夏休みだった。
午前中はいつもの訪問リハビリ。
だけど、まる1日の夏季休暇である。
さて、午後は何をしよう?
と思っていたら、友達から淡路島に新しくできた「ニジゲンノモリ」というアミューズメント施設へのお誘いをもらった。
最近、人材派遣会社のパソナが淡路島の開発に力を入れているという話はきいていたけれど、このニジゲンノモリもどうやらパソナ関係らしい。
友達はパソナの派遣社員に登録していて、ニジゲンノモリでやっている「ナイトウォーク 火の鳥」の招待券がもらえるのだという。
「手塚治虫の『火の鳥』が好きだって言ってたから、楽しめるんじゃない?」
と友達。
確かに、手塚作品の中でも『火の鳥』は特に好きな作品だ。
あのスペクタクル巨編をどうやってアトラクションにするのか、まったく想像できない。
公式サイトでは「世界観を題材に」って書いてあるけど、何編を題材にしてるんだろう?
アニメ映画はヤマト編と鳳凰編だったから、そのあたりかなぁ?
まさか未来編とか宇宙編とかのSF世界?
息子の手塚眞が監修をやっているのが、吉と出るか凶と出るか…?
あまり期待はできないけれど、
とにかく、タダなら行きます!
というわけで、開始時間の18時30分を待っていると、平日の夜にもかかわらず、たくさんの参加者がやってきた。
友達と二人で列に並んで、冒険バッグという名のズダ袋をもらった。
中に入っていたのは、地図とミネラルウオーターと懐中電灯。
懐中電灯はブラックライトになっていて、照らすと浮かび上がるものがあるらしい。
ところで、出発前に係りお姉さんから説明があって、
「皆さんの力で、火の鳥を生き返らせてください」
と言われてズッコケそうになった。
火の鳥は不死鳥じゃねーのかよ!
この時点で、「何編かしら?」なんて考えていた自分の愚かさに気づく。
火の鳥って言ってるだけで、手塚治虫のマンガとは全く別物だ。
気持ちをすっかり切り替えて、いざ出発すると夜の山道ハイキング。
その山道が幻想的にライトアップされていたり、不思議なオブジェがあったりして、雰囲気を盛り上げる。
山とアトラクションがマッチしていて、特に音に関しては、自然の虫の声なのか人工的な効果音なのかまったくわからない。
この日は三日月のお月様が出ていたのだけれど、それがまた美しかった。
淡路島の空はお星様もよく見える。
ところどころのポイントでアマーン族の村人(そういう話。ね?手塚治虫の『火の鳥』じゃないでしょ?)に扮した役者さんが待っていて、そこでのイベントの解説をしてくれたり、ストーリーを語ってくれたりする。
参加型イベントってことになっているので、火の鳥の涙と称するビー玉を持たされたり(うっかり落として山道を転がっていったので、拾うのに難儀した)、参加者の中から代表者が石の穴に手を突っ込んだり、いろいろする。
ただ、50人くらいが一群となって山道を歩くわけで、役者さんに近寄るにも限界があり、ところどころ話が聞き取れないことも。
それに山道を歩いて周囲を見てるだけで精一杯で、話がちっとも頭に入ってこない。
次のステージへ進むためのカギを探す、とかいきなり言われても、みんなボーっとしている。
あまりにちゃんとクエストを実行しないので、
「皆さんちゃんと話を聞いてましたかっ!?」
とアマーン族にツッコまれる始末。
あ~、ごめん、全然聞いてなかったわ。
だいたい、50人の冒険パーティは多すぎるよ。
劇場のような閉鎖空間だと観客も物語世界に入り込みやすいけど、オープンな空間だからどうしても緊張感が薄い。
参加者の中には、自重しない奴も出てくる。
みんなが小休憩をとっている場所で喫煙を始めるおじさんがいたり、アマーン族が説明している後ろで仕事の電話をしているおじさんがいたり。
個人的には、夜の山道でサングラスをして歩いているおじさんがひどく気になった。
あいつらのどこが「選ばれし者」だよ!
こんなんじゃ、とてもじゃないけど「みんなで協力して火の鳥を目覚めさせましょう!」という気分にはなれなかった。
正直、取ってつけたような冒険なんてどうでもよくなっていた。
圧巻は、自然と融合した大規模なプロジェクションマッピング。
淡路島の大自然と、最新テクノロジーがうまく合わさって、かつて見たことのないエンターテイメントができていた。
確かにこれは新しい!
本物の樹木だって、しゃべりだしちゃう。
なんだかんだで、よーわからんうちに、火の鳥は眠りから覚めたらしく、ザーッと翔んでった。
めでたしめでたし。
ナイトウォーク前の文句言いおばさん
「ナイトウォーク 火の鳥」を見る前の話を少し。
ニジゲンノモリからは、新しくできた周辺のレストランやカフェまで無料のシャトルバスが出ていて、せっかくだからそこで昼夜兼用の食事を取ろう、という予定になっていた。
目指したのは、9月にオープンしたばかりの、オーシャンテラス。
めっちゃリゾート。
3階はすでに閉まっていたので、2階のテラスへ行ったけど、オープンテラスで日差しがきつい。
メニューは、パニーニとかシュリンプ&ライスとかサラダとかで、だいたいどれも1,500円前後。
セルフサービスなのに、その値段?
地産地消だったら原価は安いんじゃないの?
何代なの?オサレ代なの?
と、値付けに釈然としないものを感じていたら、友達がパソナのカードらしきものを取り出した。
その銀色のカードを見せると、葵の御紋の印籠のごとく、なんと半額になるという。
半額!!!!
というか、パニーニが740円って、普通だ…。
半額でやっと普通!!!!
パソナで半額になったっていうより、パソナじゃない人はボラレてるとしか思えない。
パソナでない者は人にあらずかよ?
ただし、特大のボウルでやってきた山盛のサラダには満足。
めっちゃインスタ映え。
インスタ映えっていうより…
インスタ蠅!!!
蠅がブンブン飛び回ってて、うっとおしいったらない。
写真には映らないうっとおしさがあった。
ちなみに、食後、斜め向かいにあるミエレというカフェに移動してスムージーを飲んだけれど、ミエレの蠅の数はオーシャンテラスどころじゃなかった。
絶景とオシャレを楽しむなら、蠅みたいな小さいことにこだわるな、ってことね。
大丈夫、インスタに蠅は映らないヨ!
ナイトウォーク後の文句言いおばさん
ナイトウォークが終わって、無料の送迎バスが淡路ハイウェイオアシスに着いたのが19時45分ごろだった。
www.awajishimahighwayoasis.com
着きましたよ、と言われても、バスを降りてから建物内まではまあまあ歩いた。
田舎のインターチェンジのだだっ広い駐車場である。
例えるなら、イオンモールの第三駐車場からレジまでくらいの距離はある。
都会で家からコンビニに行くより遠い。
ナイトウォークで散々山道を歩いたあとだから、かなりきつい。
痛む足を引きずりながら、ハイウェイオアシスにたどり着く。
オアシス~!
と癒されるつもり満々だったのに、到着後すぐに「蛍の光」が流れ始め、入口でシルバー人材らしいおじいさんに、
「8時閉館です」
と冷たく告げられた。
とはいえ、あと10分あるし、お土産を選んで、帰りの高速バス内で食べるおやつやドリンクを買おう、と思っていると、店内はもう完全にやる気なし。
どんどん片付けられ、カバーが掛けられていく。
焦るほど、何を買おうか迷って決められない。
そこへ、先ほどのジジイが私にだけ、
「8時閉館ですよ!」
と言いに来る。
わかっとるわい!
『北の国から』の五郎さんになって、
「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」
の調子で、
「私がまだ選んでる途中でしょうが!」
と怒鳴りたい!!
気が悪くなって、
「こんな、客を追い出すような場所では買わない! もう帰る!」
と大声で文句を言いながら出ていく。
…ジジイが間違ってるわけじゃない。
ジジイは仕事をしているだけ。
だけど、客商売だったらさぁ、
「間もなく閉店ですので、お客様、お買い物はお急ぎください」
くらいが適当な物言いなんじゃないか。
でも、田舎の老人だ。
そんな気の利いたことは言えないのだ。
私が気に入らなかったのは、
「田舎のジジイだからって、サービス業で横柄な態度が許されると思うなよ!」
ということだ。
老人を雇うと人件費が安いんだろうけど、教育ってものをしないのが嫌!
そういう社会の仕組みが透けて見えたのが嫌!
老人だって、働く限りは接客スキルを学んでほしい。
オアシス感ゼロのハイウェイオアシスを出て、さらにかなり歩き、高速バスのバス停にたどり着くと、次の三宮行きはなんと21時40分だった。
待ち時間が1時間半!?!?
これがみうらじゅんが言うところの、時刻表ならぬ地獄表!!
「ネットで帰りのバスを調べたときは、もっと本数あったと思ったんだけど…」
と普段冷静沈着な友達も焦る。
淡路の高速バスは、いろんな会社がいろんな路線を出しているので、時刻表がめちゃくちゃ調べにくい。
「バスなんか乗らず、自家用車でお越しください」
と言われているに等しいくらい、不親切だ。
二人で意気消沈しながらバス停でしばらく待ってみたけれど、蜘蛛の巣だらけの小屋が薄気味悪い。
仕方ないので、疲れ切った足を鼓舞しながら反対側のパーキングエリアまで歩いた。
そこで時間つぶしに食べた淡路玉葱ラーメン(醤油)680円。
疲れた身体に玉葱がしみた。
日本総合悲劇協会『業音』
9月21日はOBPにある松下IMPホールへ日本総合悲劇協会『業音』を見に行った。
日本総合悲劇協会Vol.6『業音』| 大人計画 OFFICIAL WEBSITE
日本総合悲劇協会、略してニッソーヒは松尾スズキが作・演出・プロデュースする悲劇がコンセプトの演劇プロジェクトだ。
『業音』は15年ぶりの再演で、初演は荻野目慶子主演だったらしい。
それが今回は平岩紙。
他のキャストも大人計画のメンバーばかり。
大人計画とは違うからニッソーヒなんだと思っていた私は、なんだかちょっとこんがらがっていた。
だったら大人計画としてやればいいやん、と。
でも、舞台を見てみると、演出だとか空気がまるで違う。
音楽の使い方、ダンスの入れ方、映像の使い方、物語の展開の仕方も。
ほかのニッソーヒ作品とも違っていて、なんだか新しい一面を見た気がした。
時代は15年前。
携帯は二つ折りでパカパカし、やり取りはラインじゃなくてメール。
母親の介護をネタに演歌歌手として売り出そうとしている女が主人公。
やがて、その母親はすでに死んでいて、年金を不正受給していたことが発覚する。
年金の不正受給問題って、ちょうど初演の頃に問題になってたんだったっけ?
と調べてみたら、顕在化したのは2010年らしい。
高齢者所在不明問題 - Wikipedia
『業音』の初演が2002年だから、この戯曲ってものすごい先を行ってたんだな。
今ではけっこうよくある話だけど、当時はすごい衝撃だっただろう。
で、主人公の芸能界再起をかけるのが、母親の介護をしていることをネタにした演歌CDなのだけれど、まさに今、母親を介護している私にはムズムズするところがあった。
私も介護をネタにしてブログを書いているわけだし、同じ穴のムジナなわけだ。
つまりは、不幸自慢、苦労自慢。
なんなんでしょうね、自分の不幸を語りたがる人間の業って。
苦労している人間のほうが、苦労しないで幸せにしている人より、ちょっとだけエライだろう、みたいな。
「何かをつかんだそばから、それはショボくなっていく。それで次の何かを探す。その繰り返し。」(←例によってうろ覚え。)
と、ラスト近いところで主人公が言う。
たぶん、その「何か」とは「幸福だと勘違いしていたもの」だ。
圧倒的な不幸の前には、幸福なんてあっという間にショボくなる。
ただ、登場人物たちがなんでそんなに不幸なのかというと、どうしようもない境遇や環境のせい、ではない。
ほとんどが愚かさとかバカさのせいだったりするから、余計に救いがない。
この戯曲では、「うんこ」が重要なモチーフとして登場する。
食物連鎖の終着点である、「うんこ」。
人間の体を通ってアウトプットされるそれには、あらゆる情報が記録されて詰まっている。…というわけだ。
奇妙なシンクロなのだけれど、この日私はお腹の調子が悪くて、
「もしかしたら途中でトイレに立つかも…」
と不安になっていたくらいだった。
慢性的な食道炎と胃炎と、来月のオーケンのライブのためのダイエットで、食事をできるだけ控えていたら便秘になった。
便秘薬を飲んでも、どんなに頑張っても、ここのところずっとシカのフンしか出ない。
シカか? シカになったのか、私は?
と、さらに便秘薬を飲んだら、この日突然、不調に襲われた。
主人公の平岩紙が、トイレを探して走り回るシーンに開演前の自分を重ねつつ、幸い、私のお腹の不調は治まった。
それ以降、再び私はシカである。
シカのフンにも、世界の真理は詰まっているだろうか。
画像が何もないから、実家の本棚の松尾スズキコーナーを写してみた。
昔はエッセイまで追いかけて買ってたけど、そういえば最近のは読めていないな。
大阪城ホールで『スガフェス!WEST』
9月18日月曜日、敬老の日の祝日は大阪城ホールへ「スガフェス!WEST」を見に行った。
スガフェスというのは、スガシカオが主催している屋内型の音楽フェス。
特にスガシカオのファンではない私がなぜスガフェスに行くかというと、ゲストにオーケンが出るからだ。
■■ 大阪城ホールも初めてだった ■■
実は私、初めての大阪城ホール。
これまで城ホールに出るようなアーティストと縁がなかったからなぁ。
ただ、OBPには劇場があったり公園内に野外音楽堂があったりするので、大阪城公園はたまに行くことがある。
今回は久々に大阪城公園駅を降りたけれど、風景が一変していた。
ま、祭りかっ?!
これがスガフェスなのかっ?!
一瞬、そう思ってビックリしたけれど、なんのことはない、JO-TERRACEという商業施設が出来ていたのだった。
実際、スガフェスとJO-TERRACEのコラボ企画もたくさんやっていたので、スガフェスの一部といって間違いではない。
台風一過の三連休の最終日、お出かけの人々で新しい施設はごった返していた。
開場までにちょっと何か食べようかな、とお店をいくつか考えたけれど、覗くまでもなく外にあふれる行列。
ローソンでさえめっちゃ並んでる。
少し行くと、またもや賑やかな一角が。
これがスガフェスかっ?!
とまた勘違いしそうになったけれど、YATAIフェスという食べ物のイベントだった。
当然こちらも混雑していたので、眺めてスルー。
とはいえ、前日の台風の影響で電車のダイヤが乱れ、実家から直接大阪へやってきたせいで、お昼ごはんを食べていない。
どこかで何か食べておかなきゃなぁ。
そこで、ダメもとで大阪城ホール内にある食堂「さくらダイニング」へ。
さぞ混んでいるだろう、と思ったら、逆にガラガラ!
食券制でオシャレじゃないからかしら。
そのぶんリーズナブルだったし、のんびりもできた。
ところで、なんでこんなどうでもいい、さくらダイニングの話なんかをくどくど書いたかというと、理由がある。
さくらダイニングへは外の入り口ドアから入り、ホール内のドアから出たのだけれど、そのままホール内の廊下を歩いて、チケットに表示されているエリアを探して2階にあがると、そのまま席まで着いてしまった。
あれ?!?
チケットのモギリは?!?!
結局、私のチケットは半券がもぎられずじまい。
周囲を見ると、アリーナ席は入り口でチケットの確認をしているみたい。
でも、2階席は何もない。
これ、チケットなくても2階なら誰でも入れちゃうんじゃないの?!
もしチケットがなかったら指定席がないから座れないんだけど、でも入れちゃって大丈夫?!
何しろ大阪城ホール初心者なもので、どういう仕組みなのかがさっぱりわからん。
■■ こういうのが名曲なんだな ■■
好きなアーティストの曲で泣くのはよくある。
でも、特に好きなアーティストじゃないのに、テレビやラジオや街中で耳にして泣いてしまう曲というのがある。
スガシカオの『黄金の月』がまさにそう。
この曲を聴くとつい心がギュッとなって、感情がコントロールできないほどせつなくなってしまう。
好きなアーティストで泣いてしまう、というのは自分だけの特別な曲だけれど、誰もが知っているヒット曲で泣いてしまうのは、誰の心にも響く本物の名曲だからだろう。
(ちなみに、私が泣いてしまう『黄金の月』以外のヒット曲は、太田裕美の『木綿のハンカチーフ』と、スターダスト・レビューの『木蘭の涙』。この3曲はどうもダメ。)
今回のスガフェスでも『黄金の月』を歌ってくれて、やっぱり、つい泣いてしまった。
ほかにも、スガシカオの曲はうっかり聴いてしまうと心をギュッと掴まれてしまう。
今回、一番ギュッとされてしまったのは『Progress』だった。
いわずと知れたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』のテーマ曲だ。
この曲をきっかけに結成されたバンドkokuaによる演奏で、完全オリジナルバージョン。
ホワイトファルコンという特別な白いギターで演奏されていて、あの印象的なイントロが流れると胸が震えた。
こういう曲を生み出せるから、スガシカオはトップアーティストの一人なんだな。
■■ 豪華なゲスト ■■
ゲストの一人目は、いきなり佐野元春だった。
髪が短くなっていたから一瞬誰だかわからなかったけれど、この人は佐野元春という人種を生きている特別感。
歌ってくれたのは3曲。
『YOUNG BLOODS』と『情けない週末』と『SOMEDAY』。
たった3曲?!
ヒット曲と、スガシカオのリクエスト曲と、誰もが知ってる「ザ・佐野元春」な代表曲、という構成。
佐野元春で3曲だったら、オーケンも3曲だろうと推して知る。
オーケン一番のヒット曲…というと『元祖高木ブー伝説』ってことになるけど、それはやらないだろうから、代表曲ってところで、印度とダメ人間かなぁ、と推測。
問題は、間に入れるあと1曲。
スガシカオによるリクエスト曲か、何らかの関連がある曲か。
なんにしても想像もつかない。
そう思っていたところ、オーケンが登場して1曲目はやはり『日本印度化計画』だった。
そしてラストもやはり『踊るダメ人間』で、予想的中。
そして注目のあと1曲が、思い浮かびもしなかった『とん平のヘイ・ユウ・ブルース』。
オリジナルは左とん平の曲で、オーケンがソロのときにカバーした。
曲調はブルースというよりジャズファンク。
同じように過ごしてきた仲間に対して、自分だけがどうしてこうなってしまったんだろう、俺をこんなにしてしまった奴は誰だ!と嘆く男の恨み節。
オーケンとスガシカオは同じ1966年生まれの同い歳。
「同じ年に生まれ、同じように音楽をやってきた男二人が、どうしてこんなにも違ってしまったのか」
というふりで、ヘイ・ユウ・ブルースが始まった。
歌詞の内容と二人のミュージシャン人生の違いをかけたところにトンチが効いているし、オーケンの持ち曲の中では珍しいファンクなグルーヴがスガシカオのファンクとの接点になっていて、ファンとしては「そうきたか!」と唸ってしまった。
オーケンの普段のライブに行くと、もちろんだけど客席のほとんどがオーケンファンだ。
ただ、今日みたいにゲストでお呼ばれすると会場はアウェーになる。
そんな会場でも、きっちり盛り上げて、しっかり笑いをとって、ちゃんとカッコよくて、自分が果たすべき役割をばっちりこなして、その場をさらっていく。
たった3曲だけど、心底惚れ直してしまった。
2階席からアリーナを見下ろせば、スガシカオファンのみなさんもちゃんとダメジャンプをしてくれていて、なんだか妙に誇らしい気持ちだった。
大昔、『CLUB紳助』という関西ローカルのトーク番組にオーケンがゲストに出たときに、島田紳助が「代打で出てこの打率はすごいわ~」と絶賛していたのを思い出した。
■■ 縁がある人には会う ■■
2年前に会社をやめた先輩で、スガシカオのファンの人がいた。
ことあるごとに、何かとお世話になった人だ。
きっと会場に来てるだろうなぁ、でもこれだけたくさんの人だから会えないだろうなぁ、と思っていたら、ばったり出会った。
「オーケンがゲストだから、もしかして、と思ってたけど、まさか会うとは!」
と彼女も同じことを言った。
彼女はスガシカオファンとして、
「ご来場ありがとうございます」
といい、こちらはオーケンファンとして、
「ゲストにお招きありがとうございます」
と返す。
「パンフレット買ったんですね。オーケン載ってますか? あ、いや、あの、お元気ですか?」
と、まったく話す順番が逆だろうというトンチキな会話をして、開演前だったから慌ただしく別れてしまったけれど、久しぶりに会えただけで満足だった。
最近、会うべき人には会う、という妙な自信がついてきた。
たぶん、彼女にはまた会えるはず。
彼女は言語聴覚士を目指すために会社をやめた。
今、資格取得のために勉強中だという。
ヘイ・ユウ・ブルースじゃないけれど、同じ場所にいた人が、今は違う道を歩んでいる。
「あと一歩だけ前に進もう」って踏み出した人の背中を、私はただ見ているだけ。
台風で、何にもない日曜日
金曜日の時点でケアマネさんから、
「17日日曜日は、台風の進路に重なりそうです。安全のため、通いの方には基本的にお休みいただいています。」
とメールが入った。
うちは玄関から道路に出るまでに外階段がある。
それだけでも雨の日は大変だ。
それが風があったり大雨だったら相当辛い。
今回の台風は大型らしいので、どうしようかなぁ、と思っていたところなので、二つ返事で日曜日のデイサービスをお休みすることにした。
日曜日は1日ずっと、母が家にいた。
元旦以来のことだ。
今の施設、小規模多機能に移ってからは、特別なことがない限り、日曜日も通わせてもらっている。
施設に行けばお風呂に入れてもらえるし(自宅じゃとても無理)、預けたほうが私の時間が確保できる。
小規模多機能は利用料金が定額制なので、日曜日に行っても行かなくても料金が変わらない。(ただし昼食代とおやつ代は実費別料金。)
以前通っていたデイサービス(通常のデイサービス)だと、行けば行っただけの料金が加算される。
うちの母は月曜日から土曜日まで毎日利用していたので、いつも介護保険が適用される限度額ギリギリいっぱいだった。
日曜日まで入れると枠からはみ出てしまう。
のっぴきならない用事(お葬式とかオーケンのライブとか)で日曜日も預かってもらったときは、保険がきかずに実費になっていた。
それを考えると、なんてありがたい小規模多機能の制度!!
■■ あれこれやろうと思ったのに ■■
ふだん母が家にいる間は慌ただしくしているので、せっかく時間がある今回はいつもしてあげられないことをしよう、と思っていたのだが、結局できたのは、爪にヤスリをかけることと耳掃除だけだった。
爪を削るだけじゃなくてマニキュアでも塗ってイタズラしてやろうか、とか、身体を拭いたついでに、サロンの真似事をしてリンパマッサージでもしてやろうか、なんて考えていたけれど、そんな余裕は微塵もなく、マッサージどころか清拭することすら忘れてしまっていた。
昼ごはんの準備と介助が増えるだけで、こんなにリズムが狂うとは思わなかった。
昼間預かってもらうありがたさを改めて知る。
■■ 今はしゃべらないからいいけれど ■■
疲れはしたものの、昔のことを思えば楽なもんだな、とかつての母のことを思い出していた。
まだつかまり歩きができていた頃は口が達者で、なおかつ認知症もあったので、うるさくてかなわなかった。
日曜日に家にいると、
「あーっ!! なみ松ちゃん、ちょっと来て!!」
と突然騒ぎだす。
私を呼び出す理由は4つ。
(1)デイサービスに行かなきゃ!
(2)同窓会に行かなきゃ!
(3)法事でお坊さんが来るから準備しなきゃ!
(4)トイレに連れて行って。
3つまでは妄想だけれど、4番目があるから無視はできない。
1時間おき、30分おきに、
「あーっ!行かなきゃ!」
が始まるので、おちおち家事もしていられない。
なまじ動けるうちは、わけのわからないものを持ち出したり、自分で立ち上がろうとして転倒したり、目が離せなかった。
今はオムツをしているので、慌ててトイレに連れていく必要もないし、身体も動かないのでケガをする心配もない。
しゃべれないから、うるさく騒ぐこともない。大人しいものだ。
それについては、ちょっとだけ寂しいし、
「あーっ!なみ松ちゃん!起こして!用意して!」
と呼ぶ声が懐かしくもある。
■■ で、歌をつくった。■■
何度も何度も、
「今日はデイサービスはないんだよ」
「同窓会は今日じゃないよ」
「お坊さんなんか来ないってば!」
と言っていると、当たり前だけれどウンザリする。
相手は、何度も何度も同じ事を繰り返すけれど、こちらは飽き飽きしてしまう。
同じ事を、飽きずに繰り返すにはどうすればいいか?
考えた末にたどり着いたのが、歌にすることだった。
だって、歌は同じ事を何度もリフレインするけど、メロディがあれば飽きないじゃない?
我ながらこれは名案だと自負している。
今日は日曜日
作詞・作曲:波野なみ松
今日は日曜日 何にもない日
茶話本舗もない 社協もない
デイサービスは休みさ
同窓会は 延期になって
日は追って連絡
何にもない 法事もない
お坊さんも来ない
何にもないから おうちで
のんびりしましょう
母が騒ぎだすたび、私はこの歌を歌った。
母もこの曲を覚えて、部分的に一緒に口ずさんでくれるようになった。
「何にもないからおうちで、のんびりしましょう」のところは、テンポをだんだんゆっくりと落とす。
特に、この部分は覚えやすいフレーズだったようで、一緒に歌えるようになった。
だからといって、「あーっ!!」の回数が減るわけではなかったけれど、私の歌唱力がちょっとだけ上がった。
少しだけ、楽しくなった。
暴風雨の日曜日を覚悟していたのに、いざ当日になってみると、なかなか台風は来なかった。
デイサービスが全員お休みになったのがウソのような晴天だった。
(日が暮れて、夜になってからがすごい暴風雨だったけど。)
台風も来ない、今日は日曜日、何にもない日。
帯状疱疹ブーム到来!
■■ 彼氏の場合 ■■
彼氏の肩こりがひどくなり始めたのは春先からだった。
ひどすぎて指先がしびれて、日常生活に支障が出るというので、ペインクリニックを受診すると、頚椎ヘルニアだといわれたそうだ。
それ以降、彼氏は定期的にペインクリニックで注射を打っていたのだけれど、先月の末から2週間くらい、ヨーロッパへ出張に出ることになった。
北欧・東欧の国を転々としながらのハードスケジュール。
念のため、出発前日にもペインクリニックを受診して注射を打ってもらい、帰国までなんとか持つはずだった。
最初の頃はよかったのだが、途中から旅先から入るラインが怪しくなってきた。
「首肩が最悪。あまりに痛くて眠れない」
「バンテリン塗りすぎて、肌がかぶれてきた」
「あまりの痛みに耐えられずに薬局にアスピリンを買いに出た。箱の文字がフィンランド語でさっぱり理解できん」
「熱が出てきて、楽しみにしてた空き時間もホテルで寝てる」
離れていると、どうにもしてあげられない。
ゆっくり休んで、とか、帰ってきたら真っ先に病院へ行って、とか、言えるのはその程度。
やっと帰国してきて、彼氏はすぐにペインクリニックを受診したのだけれど、先生の診断は意外なものだった。
「肌のかぶれではありません。帯状疱疹です。痛いのも頚椎ヘルニアのせいとちゃいますよ」
帯状疱疹の引き金はストレスや疲労による免疫力低下だという。
上記のサイトは「50歳過ぎたら」とか書いてるけど、彼氏はまだ40半ばでかかっちゃった。
無理な出張が悪かったんだなぁ。
発症後3日以内だったら抗ウイルス薬が使えるらしいけれど、残念ながら帰国までの間に3日が過ぎてしまっていた。
なんて気の毒な…。
彼氏いわく、皮膚じゃなくてずっと奥を針で刺されているような痛みなんだそう。
鎮痛剤を飲みながらも、それ以上悪化はせず、会社も休まずに行けているので、幸い、それほどのひどい状態ではないのかもしれない。
■■ 母の場合 ■■
そんなこんなで、水曜日。
母を預かってもらっている施設からメールが入った。
「背中と胸に発疹を発見しました。また、昨日から微熱があります。看護師に診てもらいましたが帯状疱疹の可能性がありますので、念のため病院受診をおすすめします。」
えーっ!? こっちも帯状疱疹かよ!?!?
母の場合、免疫力なんて落ちまくっているから、いつ帯状疱疹が発症したっておかしくない。
「わかりました。発疹がおさまらないようでしたら、明日会社を休んで病院に連れて行きます。引き続き様子をみてやってください。」
そう返信して、会社を休んだり、病院に連れて行く段取りを考えていた。
木曜日の朝、
「午後にお休みをいただきたいんですが。母を病院に連れて行きたいので」
と上司に申し出た。
みんな母のことを重病人だと思っているので、病院というたびに危篤じゃないかと思われてしまう。
「いえ、たいしたことないんです。発疹が出てて帯状疱疹かも、って」
と軽くつけ加えたら、
「それはあかん!!うちの親爺は帯状疱疹がきっかけで死んだんやで!!」
と部長がすごい勢いで心配してくれた。
ええっ、帯状疱疹って命にかかわるような病気なの!?
高齢者の場合、本当に何がきっかけで弱るかはわからない。
部長のお父様のように、後遺症で神経痛が残り、寝たきりになってしまう可能性だってある。
こりゃまた、帯状疱疹なんてやっかいな病気になってしまったなぁ、と落ち込んでいると、
「背中の発疹は消えました」
という連絡が入った。
おや?
帯状疱疹だったらすぐに消えるわけがない。
熱も、微熱があったのはそのときだけで、それ以降はずっと平熱だという。
おやおや??
「胸の発疹というのはどういうものですか?」
と返信すると、
「ポツポツと3つほどです」
という。
ますます「おやおやおや???」と疑念がわく。
写メで画像を送ってもらうと、なおさら眉をひそめてしまった。
■■ 経験者の父 ■■
そういえば、昔うちの父も帯状疱疹にかかったことがあった。
経験者が見れば、受診の必要があるかどうかわかるかもしれない。
「ちょっとお父さん、お母さんの様子を見に行ってくれへん?」
と電話で頼むと、
「わかった。お母さんを見てきたらええんやな」
と、父としては珍しく状況を理解してくれて、すぐに母に会いに行ってきてくれた。
そして送ってくれたメールが、
「さんこの赤い斑点があた。げいんはだにか?」
というもの。
しばらく頭の中で漢字変換。
原因はダニか、だって!?
そういわれてみれば…。
左が彼氏の画像、右が母の画像。
違うよね、母のは。
こりゃ帯状疱疹じゃないよ。(※注)
よかった。
違って何より。
ただ、「帯状疱疹の可能性あり」と判断した看護師さんへの信頼度がかなり落ちた。
表皮剥離のときラップ保護を皮膚科の先生に怒られたときも、「私じゃなくて看護師さんの処置なのになぁ」と納得いかなかったけど、今回もちょっとなぁ…。
※注:コメントでご指摘をいただきましたが、母の発疹のような帯状疱疹もあるらしいです。素人判断はやめましょう!人( ̄ω ̄;)
■■ 免疫力を高めるには ■■
彼氏の免疫力が下がっていることには違いない。
免疫力アップを考えたときに、思いついたのはマヌカハニーくらいだった。
友達に教えてもらって以来、母にはヨーグルトに混ぜて食べさせている。
母の帯状疱疹が未遂で済んだのも、実はマヌカハニーで免疫力低下を防止しているおかげかも、とちょっと思ったほどだ。
気休めかもしれないけど。
さっそく、トアウエストにある蜂蜜専門店ドラートに行った。
ちょうど母のマヌカハニーがなくなったところだったので、彼氏用のマヌカハニーもついでに購入。
それにしても、マヌカハニーって殺人的に高ぇ…。
(ちなみに奥様、このUMF10+ので税抜4,500円もするのですわよ!)
でも、健康には代えられない。
クラブ月世界でフラカンの『フォークの爆発』
9月12日は、神戸クラブ月世界へフラワーカンパニーズの『フォークの爆発2017 〜座って演奏するスタイルです〜』を見に行った。
一度は行ってみたかった月世界
まずは何しろクラブ月世界である。
高いビルから三宮を見下ろせば、ちょっと目立つ昭和なネオン看板が目に入る。
だからずいぶん昔から月世界という場所は知っていた。
それが大人の遊び場であることも。
月世界は、東門街という歓楽街の中にある。
東門街がどんなかんじのエリアかというと、北野武監督映画『アウトレイジ』で、新宿歌舞伎町を思わせるガラの悪い街のロケ場所が、実は三宮東門街なのである。
でも、歌舞伎町と比べたらもちろん規模は小さいし、派手さもないんじゃないかと思う。
(ある意味、神戸のほうがあの業界の本場ではあるけれども。先日も長田で射殺事件とかあったし。)
「震災前、東門街にウジャウジャいたギラギラした目の男たちは、一体どこに消えたんやろうなぁ…」
と、あるバーのマスターが嘆いていた。
私は今も昔も東門街をよく知らないけれど、栄枯盛衰は感じる。
東門街の真ん中で、クラブ月世界はキャバレーだったりディスコだったりしたらしい。
今はパーティースペースだったりライブハウスだったり。
大阪千日前の味園にあるユニバースがキャバレーからサブカル系ライブスペースになっているのと似た道をたどっている。
そんな月世界で、フラカンのライヴが見られるというのも感無量。
初めてのフォークの爆発
『フォークの爆発』、通称「フォー爆」はフラカンが行っているアコースティックスタイルでのライブツアーシリーズだ。
フラカンのライブはできるだけ行っているけれど、「フォー爆」は今回が初体験。
フラカンの楽曲とフォークに親和性が高いのは十分わかっているけど、ふだん見慣れているロックでパンクなライブがどうなるんだろう?と楽しみにしていた。
で、何が素晴らしかったかというと、アコースティックのほうが歌詞が聞き取りやすい!(笑)
フラカンの素晴らしさの第一は、鈴木圭介の書く歌詞なのだけど、ふだんのライブだと聞き取りにくいこともしばしば。
それは決して悪いわけではなくて、ライブの勢いと音の洪水の中では、若干聞き取りにくくなるのは仕方ないこと。
こっちだって飛んだり跳ねたりしてるしね。
それがアコースティックだと、じっくりゆっくり聴ける。
言葉のそれぞれが、胸の奥にしっかり届く。
今回はニューアルバム『ROOL ON 48』の発売ツアーでもあって、新曲からもいくつか演奏してくれた。
先週リリースされたばかりでそれほど聴きこめてないから、『キャンバス』なんかはむしろアコースティックアレンジのほうが正調なんじゃないかと思ってしまった。
カバー曲も3曲あった。
チャーリー・コーセイ『ルパン三世のテーマ』、RCサクセション『Oh! BABY』、井上陽水『氷の世界』。
ルパン三世は神戸だから選曲してくれたのかしら。
びっくりしたのは、『Good Morning This New World』という曲でみんながリコーダーを吹いていたこと。
メンバーが、ではなく、お客さんが。
去年のフォー爆で、「リコーダーを持ってきてこの曲のフレーズを吹いてね」という呼びかけがされていたのは知っていたけれど、去年参加していなかった私は、みんなが当然のようにカバンからリコーダーを出してくる様子を見て不意打ちをくらってしまった。
しまったぁ、用意してくるんだった!
来年は実家で探して持ってこよう。
それより、持ってくる以前に練習しなくちゃ。
リコーダーの運指、まだ覚えているかな。
いつだってグレートマエカワに敬服
ニューアルバムは、それまで所属していたソニーのメジャーレーベルを離れ、自主レーベル「チキンスキンレコード」を立ち上げてのリリースだった。
メジャー→インディーズ→メジャー→インディーズと、4度目の変身。
契約が切られたわけじゃないのにわざわざ再びインディーズへ、というストイックさが、いかにもフラカンだなぁ、と思う。
バンド・ヒストリー本である『消えぞこない』にも書かれているけれど、フラカンは自分達のバンドを続けていくために、自分たちで会社を作った。
自分たちというか、社長のグレートマエカワが。
消えぞこない 〜メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンライブにたどりつく話〜
- 作者: フラワーカンパニーズ
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2015/09/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ベーシストでアーティストの顔と、皆に方向性を示すバンドリーダーとしての顔と、会社として経営を成り立たせていく社長の顔と、その3つをこなしていくグレートマエカワに、いつも敬服の念しかない。
この日もグレートマエカワはライブ終了後、物販ブースに立ち、ファンのサインに応えていた。
その姿をみると、ほんと敬礼したくなる。
やりたいことをやりながら、なおかつ生活を安定させるなんて、両立できっこない。
誰もがそう思っている。
だから、やりたくなくても生活のための仕事をする。
生活のための仕事のせいで時間も体力も消耗してしまって、結局やりたいことなんて何一つできなくなっている。
それ、私やん。
本当に、やりたいことをやってたら生活できなくなるのかな?
甘くないけど、経営やビジネスやお金の管理を誠実にやれば両立できるんじゃないか?
そんな目からウロコの道を、グレートマエカワが示してくれている。
ほんとにグレート。
フラカンの曲はいつも私を励ましてくれるけれど、バンドの姿勢そのものが新しい可能性の塊だ。
父の食事に困る。
去年の年末から、セブンイレブンの宅配サービス、セブンミールを利用している。
面倒臭がって食事を摂らない父のために、1日1回、お弁当を届けてもらっているのだ。
注文は1か月分くらいまとめて、私がネットで手続きしている。
メニューは私の独断だ。
もちろん、おかずの中身(野菜が摂れるかどうか)や、飽きないようなバランスを考えてやっている。
何が届くか献立表みたいなものがあったほうがいいかと父に尋ねてみたが、届いたときに「今日は何かな?」と開ける楽しみがあるから、そんなものはいらない、ということだった。
それなりに満足していたセブンミールだったが、先月中旬ごろ、電話がかかってきた。
配達店舗が改装するため、9月いっぱいは閉店するという。
「その間、注文をお受けできなくなるか、他店舗で代わりの配達ができるか、わかり次第ご連絡させていただきます」
という。
連絡先として私の携帯番号を伝えていたが、一向に電話はかかってこなかった。
やはりな。
セブンイレブンの連絡不行き届きは経験済みだ。
期待していなかったので、どうせ連絡なんてないだろうと覚悟はしていた。
父もセブンイレブンのお弁当に少し飽きていたようだったので、9月いっぱいは宅配をやめることにした。
先週が、お弁当がなくなって1週目。
「お弁当が来なくなるから、自分で買うなり、食べに行くなりするんだよ。冷凍庫の冷凍食品も、好きに食べたらいいんだから。いいね?」
と父に言い聞かせていたけれど、言うことが聞ける79歳児ではない。
結局、先週何を食べていたか聞くと、毎日がインスタントの袋麺だったようだ。
それも、地元播州のチャンポンめん。
同じインスタントラーメンでも、私が買ったマルちゃん正麺やラ王には目もくれない。
老人にはなじみの味が一番なんだな。
たまにインスタントラーメンもいいけれど、これから9月中ずっと、毎日がチャンポンめんでは困る。
冷蔵庫や冷凍庫には、それなりにおかずを買い置きしているのに、それも目に入らないらしい。
そこで、私が考えた回避策がこれ。
書いた紙をテーブルに置いておけば、食べないといけないことくらいわかるだろう。
プライドのある自立した人なら、
「子供じゃあるまいし、こんなこと書かれなくてもわかるわい!」
と言いそうなものだが、うちの父は素直なので、
「ありがとう、このとおり食べる!」
と調子が良かった。
たぶん返事だけだろうな。
半分程度、このとおり食べられたら上出来だろう。