3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

なかよしクラブが救っているもの

1歳6カ月健診を受けたとき、まだ言葉が出ていないことで「なかよしクラブ」への参加を促された、ということをこのブログでも書いた。

案内チラシによると、

この教室は、運動面や言葉の発達がゆっくりなお子さん、子育てがやりにくいと思っている保護者を対象に、遊びを通じてお子さんの成長を一緒に見守り、お子さんに合った関わり方を知ってもらうことを目的として個別に案内しています。

というものだ。

健診後、夫にこのことを話したら、

「なかよしクラブって、小学校のなかよし学級のなかよし?!?障がい児学級ってこと!?」

と驚かれ、

「いや、そうじゃないと思うけど…、でも問題児が集まってくるのかもね…」

と私までひるんでしまった。

 

先月26日、その「なかよしクラブ」に初めて参加してきた。

受付で名札を作ってもらったり、水筒置き場の説明をしてもらったりしていたら、児童館でいつも一緒になるアっくんがやってきた。

「あれっ!?アっくんも!?」

そうかと思えば、別の子育て広場で一緒になるイっくんもやって来たではないか。

なんと、参加者9人中、2人が知り合い。

知っている顔がいるだけで一気に警戒感がなくなって、児童館や子育て広場のノリで「なかよしクラブ」を楽しめた。

 

内容自体は、リズム遊びや小道具を使った遊びで、知育を促してくれるようなプログラム。これまでも児童館やこべっこランドなどで参加してきたようなものと大差なかった。

ただ、参加者に対して指導員の先生たちの人数が多いのと、プログラムがしっかり練られている印象。さすが、他よりも何か身に付きそうなかんじがする。

サトイモも初めての参加にもかかわらず、ニコニコととても楽しそうだった。

 

終了後、アっくんのママと一緒になり、話を聞くと、アっくんは私たちよりも1カ月先輩で、今回が2回目とのこと。

アっくんママも私や夫同様、なかよしクラブは問題児クラスだと思って心配していたらしい。

「でも実際はそんなことはなかったし、1時間みっちり遊んでくれて、夜よく寝てくれるから助かる~」

と言っていた。

「言葉が遅いのは心配だけど、おかげでこのプログラムに参加できてお得な気がするよね~」

2人でそんな感想を言いながら、なんだか安心した。

  

アっくんのママはいつもきちんとしている人で、少し大人しめなアっくんをとても大事に育てている。

イっくんのママはやわらかで優しい雰囲気で、自由闊達なイっくんをいつも温かく見守っているかんじ。

いずれも「子育てがやりにくいと思っている保護者」にとうてい当てはまる母親ではなく、単に子どもの「言葉の発達がゆっくり」というだけなんだな、と思う。

アっくんもイっくんも、言われてみれば何かしゃべっているのを聞いたことがない。

ただそれだけ。

教室を見回しても、問題児に思われるような子は皆無で、どの親子も「子育てのやりにくさ」をにじませているような雰囲気は見られなかった。

 

うちのサトイモはというと、言葉は遅いし、もしかしたらADHDの可能性があるのかもと心配なくらい落ち着きがなく動き回るけれど、私自身は特別子育てが困難だとは感じていない。

「1歳後半が大変なのはみんな同じでしょ」

くらいにかまえている。

最近サトイモはイスや踏み台を持ってきて高いところのものを触ることを覚え、イタズラにどんどん磨きがかかっている。

けれど、それも成長の証。

「うちの子は悪くて大変!」

と愚痴るのも、実は楽しかったりする。

先日香港にいる中国人の古い友人とチャットでやりとりをしたときに、子育てに毎日疲れているという近況を書いたら、

「甜蜜的疲労

という言葉が返ってきて、とても気に入った。

そう。甘い疲労

すごく疲れるけど、そこがまた可愛いのが1歳後半なんだ。

 

一昨日、久しぶりに児童館に来ていたウっちゃんのママと、帰り道におしゃべりしながら歩いた。

言葉が出る、出ないという話になって、

「うちの子も遅いよ」

「いえいえうちの子も」

なんて言っていたら、なんとウっちゃんも来月からなかよしクラブに参加するという。

ウっちゃんママもやはりなかよしクラブが問題児クラスだと勘違いしていたようだった。

なかよしクラブには「赤組」と「黄色組」があるのだが、案内のときに「赤組」だと言われたウっちゃんママは、

「あかん、うちはイエローカードじゃなくてレッドカードや…」

と落ち込んだのだそう。区役所も保護者を不安にさせるような組名にするなよな~。

「赤組だったらうちと一緒だよ~」

ウっちゃんママには、来ている子たちはみんな普通だし、良いプログラムだよと伝えた。

参加できる私たちはラッキーかも、と。

サトイモくんやイっくんも一緒だって聞いたら、すごく心強くなった」

とウっちゃんママはホッとしていた。

「じゃあ来月は、ウっちゃんとも一緒に遊べるね~」

と言ってお別れした。

 

ウっちゃんママは私みたいなおばさんママと違って、若いきれいなお母さんだ。

若いのにしっかりした人で、いつも感心するくらいいろんな情報を仕入れていて、こべっこランドでこんなイベントがあるとか、中央区子育て支援にこういうのがあるとか、よく教えてもらっていた。

子育てに熱心なお母さん、と言っていいと思う。

 

区役所は趣旨を忘れてないか?

自分のことを棚上げして書くのだけれど、なんかモヤモヤする。

なかよしクラブの趣旨と参加対象者のことだ。

「子育てがやりにくいと思っている保護者」がいない。

来ているのは、「言葉が遅い子どもを心配する子育てに積極的で熱心な母親」ばかりだ。

それでいいんだろうか。

「言葉の発達がゆっくりなお子さん」が対象なんだから、それでいい。

いいかもしれないけど、なんか、なんか、違う気がする。

 

そういえば、過去に島根出身のママについて書いたことがあったけれど、彼女とはあの数日後に小児科で一度会ったきりだ。

naminonamimatsu.hatenablog.com

私はかなり頻繁に、周辺の児童館や子育て広場や親子イベントに顔を出しているので、どこかで会ってもおかしくないのだけど、まるで顔を見ない。

どうしているのかなぁ、と気になるけれど、連絡先も知らないからどうしようもない。

楽しくやってるかなぁ、あのまま孤立してなきゃいいけど…、とちょっと気になる。

 

近所の中国人の親子もそうだ。

naminonamimatsu.hatenablog.com

以前保育所のことを尋ねてきたことがあったので、この前区役所が発行している子育て情報誌を渡したけれど、彼女は華僑幼稚園が近くにあることも知らなかった。

 

本当に支援が必要なのは彼女たちだろうになぁ、と思う。

 

子どもの発達がゆっくりというのと親が情報弱者だというのとでは、全然ベクトルが違うけれど、同様に、

「子どもの発達がゆっくりだけど参加しない」

「子育てがやりにくいけれど参加しない」

という親子が、どこかに埋もれている気がする。

本当に自分のことを棚に上げて申し訳ないけれど、例えるなら、浅瀬で靴が濡れた程度の私たちがボートに乗せてもらえて、深みで溺れかけている人たちが存在すら気付いてもらえてない、そんな状況ではないのか。

 

そんなモヤモヤを夫に相談したら、

「熱心な親やからこそ、そういう教室に連れて行くんやろ。案内されても、面倒くさいから行きません、っていう親もおるんちゃうか。そもそも、言葉が出てるかどうかは問診のアンケートだけなんやから、しゃべってなくてもしゃべってるってウソ書いてる親もおるかもしれんし」

と言う。

「極端な話、ネグレクトしてる親がそんな教室連れて行くか?行かんやろ」

 

私は毎日いろんな場所に出かけていって、たくさんの親子を見るけれど、児童館や子育て広場では「余裕がなさそうな親子」を見たことがない。

それぞれスタイルはあるけれど、みんな子どもを大事にしていて、愛情が感じられる親子ばかりだ。

だから、ニュースで虐待やネグレクトについて耳にすると、まるで遠い国の出来事のような気がして、同じ国のこととは信じられない。

 

でも、この世には私が知っている世界とは別の世界が存在するのだ。

 

児童館や子育て広場に来ている親子は、子どもを大事にしているからそういう場所に来ているのであって、子どもを大事にしていない親はそもそも児童館や子育て広場で目にすることがない。

温かい場所を知らないで育っている子どもたちが、暗い家の中で泣いている。

やっぱり浅瀬の人が救ってもらって、深みで溺れている人は見つけてもらえない。

勝手な想像でしかないけれど、自分が温かな場所にいるのを棚にあげて、なんかそんなモヤモヤが募る。

1歳からのエンタメ

11月23日土曜日は、神戸文化ホールにしまじろうコンサートを見に行った。

『サンタのくにのクリスマスレストラン』というクリスマスコンサートだった。

正直、私はしまじろうのファンではないのだけれど、こどもちゃれんじを取っているせいでしつこく送られてくるDMに惑わされて、つい行く気になってしまった。

私はファンでなくても、こどもちゃれんじをやっているとサトイモはしまじろうのことがだんだん好きになってきているようだったし、いつも聴いているテーマ曲『さかいはパラダイス』や『トモダチのわお!』を目の前で歌って踊ってくれるなら私も見てみたかった。

3歳未満はひざ上鑑賞無料なので、チケットは私一枚分。

ちなみに、夫はしまじろうのことを「とらじろう」と呼ぶほど興味関心が薄いので、最初から誘わなかった。寅次郎は『男はつらいよ』なんですけど。

 

シングルだったときはしょっちゅうライブや演劇を見に行っていた私。

子どもができてからというもの、エンターテイメントからはすっかり遠ざかってしまった。

唯一鑑賞できるのは、子どもと一緒に楽しめるものだけ。

エンタメに飢えてるから、しまじろうでも十分うれしい。

もちろん、しまじろうコンサートはさすがに子どもが夢中になれるように工夫して作られていて、落ち着きのないうちの坊主でさえじっと楽しんでいた。

通路側の席だったので、しまじろうとガオガオさんがすぐそばに来てくれて、私までテンションが上がってしまった。

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上記画像は、撮影OKタイムに撮ったもの。そういうサービスがあるのも配慮だよね。 

 

ワンワンももう一度見たかったけど…

実をいうと、神戸文化ホールにコンサートを見に来たのは3回目である。

1回目はズーラシアンブラス、そして2回目は9月7日の『ワンワンまつり』だった。

『ワンワンまつり』というのは、Eテレの幼児番組『いないいないばあっ!』のコンサート。

人気のコンサートで、チケット発売日にローソンのLoppiで30分以上格闘してなんとかチケットを獲得したのだった。

このときも運よく通路側の席。

しまじろうも近くで見れてうれしかったけれど、ワンワンも手が届きそうなほど近くまで来てくれて、サトイモよりも私のほうが興奮してしまった。

ワンワンは声優のチョーさんが、声だけではなくスーツアクターも務めている。

それを知っているだけに、中の人を知らないしまじろうより、チョーさんが入っているワンワンがそばに来たときのほうがテンションが上がっていた。

子どもはそんなこと気にももしないだろうけどさ。

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(上記画像はコンサート会場でもらったうちわとスムージー、スポロン。グリコがスポンサーなのよね。)

 

説明が難しいのだけれど、『ワンワンまつり』はEテレ幼児番組のコンサートの中ではメジャーなものではない。

いないいないばあっ!』のコンサートは、『ワンワンわんだーらんど』というのがメインとして開催されていて、それは毎月月末の土曜日にテレビ放送もされている。

いないいないばあっ!のファンとしてはぜひとも『ワンワンわんだーらんど』に参加したい!と思うものだ。

『ワンワンまつり』に続いて、来年の1月には『ワンワンわんだーらんど』も神戸文化ホールで開催される。

サトイモは『いないいないばあっ!』の雑誌が大好きで、毎日毎日読まされるのだけど、巻末に『ワンワンわんだーらんど』のお知らせページがあり、そこを見るたびに、

「ワンワンがまた神戸に来てくれるからね。会いに行こうね」

と声をかけていた。

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そしてとうとう11月にそのWeb受付と抽選が行われた!…のだけれど…

…抽選には外れてしまった。

ガックシ……。

ネットで検索したら、チケット倍率は30倍というウワサ…。

夫や親や友達など総動員して申し込みをすればよかった…、と後悔したけれどあとのまつり…。

雑誌のお知らせページをジーっと見ているサトイモには、

「ごめん、チケット取れなかったわ…」

と謝るしか言葉がない。

1歳8か月の子どもには、何のこっちゃ理解できないのはわかっているけど、なんだか無力感…。

 

情操教育って最近あまり聞かないけど

にしても、私の趣味とはいえ、サトイモは1歳にしてステージ芸術に親しんでいる。

私が子どもの頃だったら考えられないことだ。

神戸という立地のおかげもあるし、エンターテイメントが充実している昨今の風潮もあると思うけど、なんかすごいなと思う。

生の芸術に比較的気軽に触れられるだけじゃなく、音楽はサブスクリプションのアプリを使ってAIスピーカーががいくらでもかけてくれるし、映像だってYouTubeやプライムビデオでいくらでも見ることができる。

こんな環境で育つ今の子どもたちは、それまでの私たちと何か変わるんだろうか。

人格形成に影響があるんだろうか?

 

昔はよく情操教育だなんて言って、芸術や文化に触れて心を育てるとか言ってたものだ。

芸術や文化がこんなにも日常になって、心はもっともっと豊かになる?

「心の豊かさ」なんて抽象的すぎてつかみどころがないけれど、豊かになってくれるならそれに越したことはないけどなぁ。

 

少なくとも私は、音楽やアートやエンターテイメントがあれば毎日が楽しい。

私の持論は、「放送中のアニメの続きが気になるオタクは自殺できない」。

もしもサトイモが人生の困難にぶちあたってつらい毎日を送っていたとしても、

「来週のライブまでは生きていこう」

とか、

「この本の続きを読むのを楽しみにしよう」

とか、エンターテイメントを気持ちの支えにして、人生の楽しみを見出してほしい。

 

そのためにはまず、音楽や物語やアートが好きで、楽しいと感じる子に育ってくれるかどうかが重要だ。

私が唯一知っている人生を楽しむコツ。

勉強は教えてあげられないかもしれないけど、それだけは教えてあげたいんだ。

筋肉少女帯展

筋肉少女帯のファンになって、はや20数年。

関西でライブがあるときは欠かさず参加してきた。(昔は神戸チキンジョージでもライブがあったんだよなぁ。)

母の介護をしていたときも、ショートステイにお泊まりをお願いしてなんとかやりくりしたものだ。

それが、去年妊娠&出産したことで、とうとう皆勤記録はストップ。

2018年の『ザ・シサ』ツアーも、今年11月16日に心斎橋BIGCATで行われた『Love』ツアーもとうとう見られなかった。どうせライブDVDが出るから全く見られないわけじゃないけど、その場に立ち会うか立ち会わないかでは重みが違う。

ほかの多くのファンの皆さんは、世代的にお子さんがもう大きくなっていて、オーケンいわく「鮭が生まれた川に戻ってくるように」筋少のライブに帰ってきているんだけど、人生のサイクルがみんなより2周ほど遅れている私は、筋少川に戻るまでまだまだ時間がかかりそうだ。

 

今回は、筋少30周年アニバーサリーとして東京中野で行われた筋肉少女帯展が、なんとライブ前後の期間に大阪で開催されるという。

ライブは夜に行われるから行くのが難しいけど、平日の昼間ならサトイモを預けて見に行くことができる!

ということで、ずいぶん前から保育園に一時保育の申し込みをし、段取りをしていたのだった。

 

まさか直前に私が体調を崩すとは思いもよらず。

正直、

「せっかく子どもを預けるなら、筋少展なんか行ってないで医者へ行け!」

と思うほど、まだ体調が回復していない状態だった。

でも、そこは初志貫徹しなければ、と予定どおりサトイモを保育園に預けて心斎橋へ向かった。

 

ママと離れると泣く

保育園に到着しても、サトイモは警戒してなかなか園に入らなかった。

子どもながらに、わかっているのだ。

なんとかなだめて中に入ると、保育士さんが園児たちが遊んでいる部屋に誘導してくれて、ピアノから流れる『どんぐりころころ』にサトイモ気をとられていると、保育士さんが「今です!」と私に目配せしてくれた。

一瞬の隙に、私はサッと身を隠して出て行った。

こっそり窓から覗くと、サトイモは保育士さんに抱っこされながら、顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。

…あんな泣き顔を見ると心が折れる

 

最初に一時保育に預けたとき、サトイモは泣かなかった。

最近は私と少し離れても泣くし、抱っこから下ろそうとするだけで嫌がってしがみつく。

だんだん自我が強くなってきた。

好きなこと、嫌なこと、やりたいこと、やりたくないことがはっきりしてきた。

ちょっと前までは、

「うちの子は児童館でもお友達とオモチャの取り合いをしないのよ~」

なんて自慢していたくらいなのに、最近では、

「うちの子がまたオモチャ取っちゃってごめんなさい」

と謝りまくらないといけないようになった。

困ったもんだけれど、どれもこれも成長。

サトイモよ、一時保育で母と別れるのも人生の修行さ。喝っ!!

 

墓場の画廊

筋肉少女帯展の会場は心斎橋BIGCATがある同じビルにある墓場の画廊WEST。

入り口にはキン肉マンアシュラマン等身大フィギュアがある。


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ここのはずなんだけどあってるのかなぁ…、と不安になりながら中へ。

店の奥にスペースがあり、そこで筋肉少女帯のグッズが並べられていた。

その壁にいくつかのパネル展示があるのと、メンバー4人の衣装、オーケンの衣装はさらに2点。


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…ええっ、まさかこれだけ?!

 

はい。これだけ。

サトイモをあれだけ泣かせて駆けつけたのに、これだけだったのか…、と虚しくなる展示の少なさだった。

しかたないので、せっかくやって来た証を残すために寄せ書きにメッセージを書き、筋少へのお布施の意味で物販を買って帰る。

5,000円以上買うとシークレットコースターがおまけでもらえることになっていて、コースターの中身は運次第。

最近の筋少のCDにはメンバーカードがランダムに同梱されているけれど、一度もオーケンカードを引いたことがない私。

コースターもきっとオーケンは当たらないんだろうな…、と思っていたら、なんと大当たり!


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神様ありがとう!

これで私は報われました。

 

これでいいのだ

お迎えに行くと、サトイモは私の顔を見たとたんに泣き出した。

「ママと離れてさみしかったね、よく頑張ったね」

と抱き締めたけれど、なかなか泣き止んでくれない。

ほかの園児たちはお昼寝タイムだったので、響く泣き声に恐縮する。

お世話をしてくださった保育士さんによると、私が消えて泣いたのはほんのちょっとの時間で、すぐに泣き止んで楽しげに遊んでいたらしい。

お昼ご飯もすべて完食したそうだ。

メニューを見せてもらうと、豚肉の生姜炒め、小松菜のポン酢和え、昆布入り納豆、と、とても自宅では食べないような内容だった。

そもそも生姜やポン酢はまだ早いかなと思って私があえて使ってこなかったし、納豆は食わず嫌いでひとさじも口に入れなかったくせに。

ほかの子が食べていたら「つられ食べ」をする、という話があるけど、そのパターンで食べられたのか、外面がよくて園ではエエカッコして完食したのか、単純に園の給食が美味しかったのか。

どういう理由であれ、慣れない場所の見知らぬ人たちの中で、いつも以上にちゃんと食事がとれたことが誇らしく思えた。

離れてみてこそ、成長が客観的にわかる。

いや、今回のことで、サトイモがさらに成長できたんじゃないか。

結果的に、一時保育で保育園に預けてみる価値があったなぁ、と感じた一日になった。

 

たまにはこうやって親元を離れて、保育園で過ごさせるのも子供の成長にはいいなと思うものの、一時保育で預けるにも保育園は予約でいっぱいである。

たった一日、いや半日預けるにも、ずいぶん前から予約しておく必要があるのだ。

一時保育ですら枠を取り合いしている状況では、職場復帰するときに本当に入園できるのか不安でしかない。

幼児教育が無償化になったけれど、当事者な私たちの周りで、「やった~、よかった!」なんて声はちっとも聞かれない。

そんなことより、

「本当に預け先が見つかるだろうか。待機児童にならないかな…」

とそもそも入園できるのかどうか不安に思う声ばかりだ。

私ももちろんそうで、

「タダになんてしなくていい、お金を払ってもいいから確実に保育園に行けるようにしてほしいんだけど…」

と嘆くばかりである。

疲れていることにも気付かなかった。

一昨日、突然39℃の熱が出た。

その前からのどが痛くなっていて風邪薬は飲んでいたものの、あんまり突然の高熱だったので、インフルエンザかもしれないと心配したけれど、その夜お風呂にも入らずにサトイモが寝るのと同時に寝たら、翌朝は37℃台にまで熱が下がったのでホッとする。

インフルだったならば、サトイモにうつさないか気が気じゃなかっただろう。

お姑さんに助けてもらってサトイモをみてもらい(いつもお世話になってばかりで感謝で頭が上がらない)、近くの耳鼻科を受診したら、

「これはかなりのどが腫れてますね」

と言われる。

のどの奥のところに膿がたまっているらしく、鼻から器具を突っ込まれて吸い出された。

まるで拷問!!

と言いたいけれど、母の経鼻栄養の管の挿入もこんな痛みかしら、と思えば、これくらい我慢しなきゃと耐える。

「相当疲れていませんか?」

と先生に言われ、

「はあ…」

としか返事ができなかったというのも、自分では熱が出るまで私は元気だと思っていたからだ。

「薬より何より、まずは休んでください」

はあ…。

疲れているつもりもなければ、休んでいないつもりもなかった。

言われてはじめて、

「そうか、私、疲れてたのか…」

と気が付いた。

言われてみれば、いつも気付けば就寝時間は日付が変わってからだし、昔は体調に気を付けて飲んでいたサプリメントや健康食品のたぐいも飲んでいなかった。

サトイモのごはんのことばっかり考えて、自分の食事の質も量も考えていなかった。

自分の体にいいことって、最近何かしたっけ?

月曜日、サトイモを一時保育に預けて、大阪で開催中の筋肉少女帯展に行くつもりなのだけれど、それまでにはなんとか体力を回復させなければ。

1歳6か月健診 ~その②意味のある言葉~

1歳6か月健診では、積み木を3つ積む、絵を見せられて聞かれたものを指差す、という二つのミッションを与えられる。

サトイモの診断結果から言うと、まず積み木はクリア。

サトイモにしてみたら、順番待ちで退屈していたところに唯一出現したオモチャである積み木。待ってました!と喜んで積んでみたという案配。

 

絵の指差しはできたりできなかったりで、疑問符付きのOK判定だった。

絵の内容は、靴、犬、ジュース、電車、魚、車(だったはず。こっちの記憶力がうろ覚えで怖いわ^^;)。

「ワンワンはどれ?」

と聞かれても、ジュースばかり差す。

「ジュースが飲みたいのねぇ…」

とこちらは苦笑いするしかない。

「ワンワン」というと、Eテレいないいないばあっ!』のキャラクターだと思い込んでいる可能性もあるので、

「ワンちゃんは?犬さんはどれ?」

と言葉を変えてみたけれど、やはりダメ。

そのほかのアイテムについては、半分くらいの確率で指を差し、わかっているのか偶然当たったのかは不明だけれど、まあ良しという恰好になった。

 

わが子かわいさに難癖をつけるわけじゃないが、犬というのがダメだ。

松尾スズキ「犬は大雑把だから嫌いだ」と何かで書いていたが、犬は形状がさまざますぎる。

うちにある犬のぬいぐるみは垂れ耳だし、『いないいないばあっ!』のワンワンも垂れ耳だ。

ご近所でよく散歩している犬はテリアかプードルで、毛がふわふわなのが多い。

しかし!健診で出てくるのは柴犬っぽい日本犬。

耳は立っているし、毛もふわふわしていない。

これらが全部同じ「ワンワン」だとどうやって教えたらよいものか。

「みんなワンワンって鳴くんだよ」って言ったって、今どき散歩中の犬は鳴かないし。

指差しテストは猫にしといてほしかった。

 

一言もしゃべらない

 問診票の中に、「意味のある言葉をしゃべりますか」という項目があって、サトイモはこの項目だけ「いいえ」だった。

まだしゃべらない。

「いないない…」といえば「ばあ!」と言うけれど、「ママ」とか「パパ」のような言葉は出てこない。

「一言も、ですか?」

ヒアリングの保健師さんが尋ねる。

「ええ、一言もです」

嘘いつわりなく正直に答える。

「言葉の発達というのは社会性の発達に関連してきますからねぇ。今日、臨床心理士のカウンセリングを受けることもできますが、どうされますか?」

男の子は言葉が遅いから、とよく言われ、私はたいして気にしていなかったのだが、1歳6か月で意味のある言葉が一言も出ない、というのは、

「何らかの手だてを打ったほうがいいですよ」

という事態らしい。

「もちろん焦る必要はなくて、今は様子見でもかまいませんよ」

とは言われたものの、

「せっかく来たんだし、タダでアドバイスをもらえるなら」

と持ち前の貧乏性で、カウンセリングを受けることにした。

そういえば、ある先輩ママが、

「落ち着きがなくて心配、と問診票に書いたら別室に連れていかれて、最初の指差しテストより難しい絵の指差しテストを受けさせられた」

と言っていたっけ。

まさにその別室で、カウンセリングを受けることになった。

 

先輩ママが言っていたとおり、難しい絵で再度指差しテストを受けた。

「難しい」というのは、出てくるアイテムになじみがないということ。

「お茶碗」なんて、教えたことがあるどころか、普段の会話で言ったこともないよ。

それは臨床心理士の先生もわかっているらしく、動物が出てくる絵本を出してきて、

「ゾウさんはどれかな? キリンさんはどれかな?」

とテストしてくれたけれど、サトイモはパンダやゴリラを差すというポンコツっぷり。

 

「じゃあこれはどうかな? できるかな?」

と次に出されたのが、〇△□の型はめパズル。

家や児童館にある型はめパズルよりよっぽど大きくて単純なので、サトイモでも楽勝でできた。

すると、今度は先生がパズルをさかさまにして、

「これはどうかな? いじわるね」

サトイモに渡す。

ちょっと迷ったけれど、これもクリア。

「上手上手! おうちでもされてるんですか?」

「形は違いますけど、似たようなものは…」

大人の会話をよそに、これがテストだとは知らないサトイモは、もっと遊びたがってもう一度型はめをやる。

もちろんクリア。

「上手だねぇ」

とほめてもらって、またやろうとしたところ、先生は色鉛筆と画用紙を出して、

「お絵描きはできる?」

と落書きをさせた。

「あら、お絵描きも上手」

これもテストの一環かと思いきや、

「こうやってね、気をそらしているうちに片づけましょう」

と型はめパズルを引っ込める。

なんだ、お絵描きはテストじゃなくて、パズルを引っ込めるための誘導だったのか。

 

歯が言葉まで影響するなんて

「ものの名前を覚えているかどうかはさておき、お母さんはちゃんと声掛けをされて上手にかかわってらっしゃいますし、サトイモくんもちゃんと反応していますから心配はないと思いますが」

総括的に先生からそう言われて、元から心配はしていなかった私はお墨付きをもらった気持ちになった。

ところが、そのあと意外な質問が出た。

「よだれはよく出るんですか?」

出ますがそれが何か??とつい身構える。

「よだれが出るということは、唾液を飲み込むための口まわりの筋肉がまだ未発達だということです。口やあごの発達が遅いと、当然言葉をしゃべる口まわりの筋肉の発達も遅くなります。よだれが出る子で言葉が遅いというのはよくあるんですよ」

なるほど!

目からウロコの話であった。

「食事で固いものは食べさせていますか?」

「うちの子は歯が生えるのが遅くて、まだ上下それぞれ4本ずつしか生えてないんです。なので、歯茎で噛める軟らかさのものじゃないと食べてくれないんで、あまり固いものは…」

「噛むことによってあごの筋肉が発達しますから、できるだけ固くて噛む回数が多い食べ物を与えてください」

確かに、よく噛むことであごが発達するんだろう。

しかし、サトイモは嫌なものはすぐ吐き出すし、反対に好きなものはよく噛みもしないで飲み込む早食いの癖がある。

これじゃ発語に必要な口まわりの筋肉も発達しないわけだよ。

もしも奥歯が生えていたら、もう少し「噛む」ことができるようになっていたかもしれない。

ひいては…。

 

歯磨きが面倒くさいから、歯が生えるのはゆっくりでいい。

これまで私はずっとそう思っていた。

そんな母の身勝手な願いが、

「歯がゆっくり→噛む力が育たない→あごの筋肉が発達しない→言葉を話す口の筋肉が発達しない→しゃべらない」という結果をもたらしていたなんて。

 

そして先生は迷いながら一枚の案内チラシを出してきた。

「言葉がゆっくりな子や発達が遅れている子の教室なんですけど、参加されますか?」

月に1回開催しているという。

そこでは、親子での遊びを通して声のかけ方や発達のアドバイスなどをしてもらえるそうだ。

またもや、

「タダで指導してもらえるなら」

と私は参加を申し込んだ。

最近の私のモットーは「犬も歩けば棒に当たる」。

高い税金を払ってるんだ、行政がやってくれるサービスなら何でも参加だ!

 

私が実家から持ってきた「まんが日本昔ばなし」の絵本の第1巻の最初の話は「ももたろう」なのだけれど、一般的な「ももたろう」とはちょっと違うところがあって不思議に感じていた。

そのうちのひとつが、ももたろうは成長してもひとこともしゃべらず、初めてしゃべった言葉が、

「おらあ、おにたいじにいく!」

だというくだり。

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サトイモも、突然鬼退治に行くなんて言わないだろうな。

1歳6か月健診 ~その①問診票~

区役所で1歳6か月児健康診査を受けてきた。

すでに健診を受けた先輩ママたちから、

「びっくりするくらい小さい積み木積まされるで」

とか、

「いきなり知らんおばちゃんに『ワンワンどれ?』とか聞かれても、指差しなんてできるわけないわ」

とか、健診について予備知識はコツコツ仕入れ、積み木を積ませたり絵本で指差しの練習をさせたりしていたが、家の中でさえ成功した試しがなかった。

「こんなんで健診本番がきても、うちの子絶対何もようせんで」

と夫と話していた頃、案内封筒が届いた。

 

案内の封筒の中には、4か月健診のときと同様の問診票が入っていた。

ただ、4か月健診のときと比べて、「母親の産後」というニュアンスが皆無になり、歯科検診メインという印象だ。

すると、ラストにこれまで何回か見た顔のマークで回答する設問が。

「子育てについて、あなたの気持ちをあらわしているのはどれですか。」


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4か月健診だけでなく、1か月健診、9か月健診といった病院で行った健診でも、やはりこの顔マークの設問があったのを覚えている。

というのも、いつも答えに悩んで悩んで、その挙句真ん中の「無表情」にチェックをつけていたからだ。

つらくもないけど、笑顔でいられるほど気持ちの余裕がない、というかんじだったんだと思う。

産後の体力が回復していないというのもあったし。

それに比べて、今は迷わず笑顔マークをチェックできた。

今は毎日、サトイモが可愛くて可愛くて仕方がない。

 

サトイモは毎日イタズラし放題。自我も出てきて、困らせることもたくさんやる。足が速くて走り回るので、追いかけるのにもスピードが必要になってきた。

家にいたら体力が有り余ってしまうので、毎日どこかしら出かけ、めいっぱい遊ぶ。

そんなサトイモに付き合っていたら、私のほうも体力がついた気がする。

10キロ強の子どもを抱えるのも、ちょっと負荷がかかる筋トレのようなものだ。

今は軽々と抱えているけれど、去年は2~3キロの重さでさえキツかった。

問診票を回答しながらこれまでのことを振り返り、たった1年半のことなのに膨大な時間を過ごしてきたように感じた。

 

体力といえば、先日家族で外出した際、サトイモを抱っこしていた夫が足を痛めたと言っていた。

「たった1日、それも数時間で足を痛めたなんて。毎日やってる私の身になってみてよ」

と私が言うと、

「毎日やってるから平気なんやんか。たまにやるから足いわすんや」

と言い返された。

確かにそうかもしれない。

 

そのくせ夫は、1歳6か月健診の問診票の「配偶者も子育てしていますか。」「お父さんは、こどもと遊んでいますか。」という設問に、私が、

「どっちも『ときどき』に丸しといたよ」

と伝えると、

「なんで!?『いつも』やろ⁉」

と不満をもらした。

 

「だって、週に1~2日だけやったら『ときどき』でしょ」

「しゃーないやんか、休みの日しか時間がないんやから」

「別にそれを責めてるわけじゃないよ。事実を回答してるだけ」

「平日だって毎日サトイモのことを考えとんやで。それやったら『いつも』ちゃう?」

「考えとうだけで子育てになるんやったら、私だってお母さんの介護毎日してることになるわ。そんなんおかしいでしょ!」

夫はおそらく冗談のつもりで、「毎日考えてるから毎日子育てに参加している」と発言したのだと思うが、私はつい真面目に受け取ってムキになってしまった。

 

あとになって、「休みの日に子育てに参加しているから、自分は十分子育てできている」と思っている夫の意見を反芻した。

うちの夫が珍しいわけではなく、なんとなくだけれど世の中の多くの父親はそんなかんじなんじゃないかという気がする。

逆に、仕事を持っている母親たちはどうだろうか。

1年半後に復帰した私だったらどう感じるか?

「休みの日しか子どもをかまってあげられない」

と「できない」ほうに力点を置いて考えるに違いない。

仕事中も子どものことを心配しつつ、でも「一緒に過ごせる時間が少ない」と子どもに対して申し訳なさを感じるんじゃないか。

脳の構造の違いなのか、母親と父親ではそもそも子育てに対する感じ方が違っているような気がする。

子育ては母親だけの仕事じゃない、父親も参加するように、という世間の風潮は少しずつ広まっているものの、まだまだ理想と現実は乖離している。

問診票の結果はきっと統計かなんかに役立てられるんだろうけれど、「配偶者もよく子育てをする」の割合が知りたいものだ。

働くくるまと発砲事件

とりあえず春から始めた「こどもちゃれんじ」だが、毎月教材が届くごとに、うまくできているなぁ、とつくづく感心するようになった。

絵本もおもちゃもDVDも、子どもの心をつかむようにできているのだ。

幼い子どもが興味を持つ内容を的確に突いてくる。

5月号の「のりものパズルずかん」が特にそうだ。


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大人の私から見ると、

「4月号は最初だし入会させないといけないから豪華だったけど、5月号はしょぼすぎる! 釣った魚に餌をやらない方式か!」

と感じていた。

それに対し、子どもの感覚は親とは正反対で、毎日必ず「のりものパズルずかん」を出してきて遊んでいる。

毎日遊ぶし、なめたりかじったりしてたから、もうボロボロ。

 

大好き、働くくるま

うちの子は男の子だから、働くくるまが大好きだ。

好きならば、本物を見せてやりたいのが親心である。

工事現場で重機を見かけると立ち止まって、

「ほら、ショベルカーだよ。あっちにはコンクリートミキサー車もいるね」

と話しかける。

「あっ、あっ!」

と指をさすサトイモ

いつも買い物にいくスーパーの横には消防署があって、消防車と救急車を見ることができる。

出動しているわけじゃないので、「ピーポーピーポー」や「ウーウー、カンカンカンカン」の音はわからないけれど、本物の大きさは感じてくれていると思う。

 

夏の終わりごろから、スーパーの行き帰りでパトカーも見ることができるようになった。

スーパーの近くにある、山口組暴力団山健組の事務所の前に、パトカーがずっと停まっているようになったからである。

音は鳴らないけど、パトランプもピカピカ赤く光っている。

「パトカーだね~。おまわりさんが乗ってるね~」

と言いながら、前を通り過ぎる。

パトカーを指さしたり、おまわりさんにバイバイするサトイモ

警察官もさすがに手を振り返してはくれないけれど、会釈くらいは返してくれていた。

日によっては、パトカーと覆面パトカー(乗用車にパトランプだけついてるやつ)の2台に加え、少し行った公園の横にもう1台覆面が停まっている日もあった。

車には警官が2人ずつ乗っている。

なんでこんなに厳重に警備しているのか、私たちは知る由もないので、

「なんぼ交代勤務でもあれは退屈やと思うわ~。じっと乗ってるだけで人件費かさむんやし、税金ドロボー言われてもしゃーないね~」

なんて、軽口を叩いたりしていた。

とにかく、パトカーを毎日間近で見られるのはちょっとうれしかった。

児童館にあるパトカーのおもちゃで遊ぶのも、ぐっと楽しくなった気がする。

 

反社会的勢力の人たち

サトイモの特技は「パチパチ」と「バイバイ」。(ていうか、それしかできない。)

その特技は道行く人誰にでも発揮される。

ある日なんか、信号待ちをしているタクシーのおじいさんがわざわざ窓を開けて何か言っているので、わざわざ近寄って何を言っているのか耳を傾けたら、サトイモがバイバイするので、

「バイバイ~!バイバイね~!」

と返事をしていただけだった。

おじいさん、孫かなんかを投影してたのだろうか。

 

つい先週のこと。

スーパーでレジを済ませて買い物袋に品物を詰めていたら、隣で袋詰めをしていたのが組事務所の人だった。

作業着を着ていて、見た目もすごく普通

私はご近所だから組事務所に出入りしているのを知っているけれど、知らなかったら絶対にそのスジの人だなんて思えない優しそうなお兄さんだ。

もちろん、スーパーで買い出しをしているくらいだから、立場もえらくないんだと思う。

サトイモはお兄さんにもバイバイした。

「めっちゃかわいいっすね!」

と、お兄さんは言ってくれた。

「家ではゴンタで、さっきもめっちゃグズッてたんですよ~」

「それは大変すねぇ」

そんなふうに会話をして、サトイモはまたお兄さんにバイバイした。

 

昨日の午後、子育て広場の帰りに保育士の先生から、

「さっき発砲事件があったそうですよ。犯人はまだ捕まってないそうですから、お気をつけて」

と教えてもらった。

「でも、発砲ってことは組関係ですよね? 無差別通り魔とかと違って、ターゲットがはっきりしてるでしょうから、一般人は大丈夫ですよ~」

と私は呑気なことを言った。

空にはうるさいくらいヘリコプターがいっぱい飛んでいた。

ベビーくもんの教材にヘリコプターが出てくるんだけれど、なかなか本物を見せてあげられなかったので、

「あれがヘリコプターだよ~。羽がくるくるまわるんだよ~」

ここぞとばかりにサトイモに教えた。

ヘリコプターが見られてラッキー!

そんな気分で帰りにスーパーへ寄ろうとしたら、いたるところが黄色い立ち入り禁止テープで塞がれ、警察官が立っていた。

「これじゃスーパーへ行けないじゃないの!」

なんて文句をいいながらテンションが上がってお祭り気分になり、ご近所のママ友に、

「発砲事件、大変なことになってる~」

なんてLINEを送り、ニュースを検索しまくった。

 

2人、亡くなったという。

30代と40代の男性。

昨日のニュースでは、それが組の人なのか一般人かすら報道されてなかったけれど、思ったほど大きく報道されないってことは一般人じゃないんだろうと推察された。

今日ようやくニュースで亡くなった方の実名が出ていて、やはり組の人だったようだ。

 

人間の命はすべて尊い、はず。

だけど、世間的には「組同士の抗争でヤクザが2人死んだ」ことは、サラリと流れていく。

普通の人が殺されるのとは扱いが違うんだな、と思った。

名前なんて知らないからわからないけど、「めっちゃかわいいっすね」と言ってくれたお兄さんの可能性がないとは言えない。

もしあのお兄さんだったら…?、と思ったら悲しくなった。

若そうに見えたから、年齢的に違うか。

違うと思いたい。