3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

福祉用具の業者さんに来てもらった用事、その2

うちの実家は、山を切り崩してできた新興住宅地にある。

斜面にあるので、玄関までに階段がある構造になっている。

 

身体が不自由になると、これがなかなかキツイ。

 

一昨年までは、手摺を持って誰かに身体を支えられれば昇り降りできていた母も、だんだん難しくなってきて、去年の6月、外階段にリフトをつけた。

リフトはこんなかんじ。

モデルはうちの父、波野ひろ松。

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それまで、父と私の二人で苦労して引っ張り上げたり、男性の介護スタッフさんがお姫様だっこしたりして、母を運んでいた階段。

だから、リフトができてすごく楽になったのは事実だけれど、正直言って全然満足していない。

 

またお金のことを持ち出すけれど、読んでくださる方も金額を知りたいだろうから書くと、工事費と本体等合わせて全部で約130万円ほどかかった。

決して安い金額ではないので、やはりあれこれ不満も出る。

クマリフトさんには悪いけど、

「使う人の気持ちを考えて作られてないんだね」

と感想がもれるほど、不便な部分が多い。

 

中でも最も困ったのが、リフトが残り2段を残して終わってしまうことだった。

というのも、レールが敷けるのはうちの敷地内だけ。

最後の段まで降ろすには、レールの終点を道路まで伸ばさなければならないという。

道路まで出すのは違法になるので、残り2段で終わらせるのが限界なのだそうだ。

 

とはいえ、リフトをつけないままでは、いつか介護者ともども階段から落ちてしまう危険があるので、渋々了承して、リフト設置を決断したのだった。

 

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終点まで行かなくても、2、3段あればなんとかできる。

二人の介護者が、母の両脇を抱えるようにして階段を上がる。

母も、踏ん張れなくても、足を前に出すことはできた。

 

去年の設置以降、なんとかそれでやってきたが、ここのところ、それさえ難しくなってきた。

支えていたらとりあえず立てていたのが、足が萎えて折れ曲がってしまうため、立ち姿勢が取れなくなってきたからだ。

足を動かすことも、できなくなってきた。

 

朝、階段を降りるときはいいのだけれど、夕方、デイサービスからの帰りがキツイ。

左に介護スタッフさん、右に私。

二人で力いっぱい抱えて上がるので、3段目のリフトに座らせたら、二人とも少し息が上がっている。

 

ある夜。

そうやって階段を上げている途中にバランスを崩し、三人とも後ろに転落する…、という夢を見た。

夜中にガバッと起き、心臓がドキドキしてなかなか収まらなかった。

 

なんとかしないと。

とは思っていたけれど、どうすればいいのか、わからなかった。

 

先週、ケアマネさんから、

「一度、長いスロープを持ってきてもらいましょうか?」

というメールを唐突にもらい、最初何のことだかよくわからなかった。

 

よくよく聞けば、3段目から道路まで伸ばす車イス用のスロープをレンタルしたらどうかという話だった。

私同様、ケアマネさんや介護スタッフさんたちも、このままでは階段から落ちる危険を感じていたのだろう。

 

福祉用具の業者さんに来てもらった用件の二つ目が、このスロープだ。

 

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画像ではわかりにくけれど、道路の3割くらいを占めてしまうので、スロープを出している間は道を通行止めにしてしまう。

だから、車イスの昇り降りの最小限の時間だけ、サッとスロープを出して、上ったらサッと片づけるつもりだ。

 

土曜日、福祉用具の業者さんにスロープを持ってきてもらったあと、実際に使ってみた。

リフトの座面の横に車イスをつけて移乗させ、スロープで降ろす。

まあなんと楽チンなことか!

 

一緒に検討に加わってもらった介護スタッフさんたちとも、

「これなら大丈夫そうですね!」

と話し合った。

 

何事にも対処方法があるもんだなぁ!

 

ただ、ひとつ悩ましいのが、スロープを掛けるのに台が必要なこと。

階段の幅の問題で、足らずを何かの台で補わないといけないのだ。

 この日、福祉用具の業者さんが、ちょうどいい高さの台を持ってきてくれていた。

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この台、本来の用途は、お風呂に沈めて使う浴槽用の椅子なんだそうだ。

入浴関連の福祉用具はレンタルできないから、購入になる。

しかも、母の場合、自宅でお風呂に入らないので、介護保険が使えない。

 

「実費で購入するなら、いくらくらいのものなんですか?」

と私が尋ねると、業者さんが申し訳なさそうに、小さな声で言った。

「これ、2万円くらいするんです…」

「に、にまんえん!? これが?」

「耐久性もあって、滑らんようにできてますからね、これが一番安全やとは思うんですけど…」

 

とはいえ、これが2万円もするとは。

 

「そうだ、お母さんが車イスで移動するときだけ台に使って、普段はお父さんがお風呂で使うっていうのはどうです? そしたら、お父さんの介護保険で購入できるんですよね?」

何を隠そう、父も脳梗塞後、介護1が取れている。

なんとか安くならないものかと私がそう思いつくと、

「そうですね」

業者さんもうなづいてくれる。

 

「お父さん、バスタブの中に椅子があったほうが便利なんちゃう?」

父に話を振る。

「しょっちゅうお風呂で寝てしまうんやし、どうかな?」

「いや、別にいらんで」

「でも、使ったらええやん」

「使わんな」

介護保険を適用させたい私と、空気を理解しない父。

「使いなさいよ!」

「いや、いらん」

「風呂で溺れて死ぬで!」

「溺れたら起きるから大丈夫や」

「起きたときには死んどうわ!」

「死んだら起られへんやろ」

 

突然始まった親子喧嘩の横で、福祉用具の業者さんがオロオロ。

 

しばらくはこの台を貸してもらえるのだけど、はてさて、これからどうしたものか。