3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

ピエール瀧から母の笑わせ方を学ぶ。

今年のサマーソニックのヘッドライナーは、レディオヘッドアンダーワールドらしい。

去年のケミカルブラザーズに続き、今年はアンダーワールドかぁ。
去年もめちゃくちゃ行きたかったし、今年も同じ気持ち。

だけど、行けないなぁ…。
さすがに、オーケン以外ではお母さんを置いて遊びに行けない。

夏フェスの出演アーティスト発表を見るたびに、毎年歯がゆい思いになる。
でも、土日は自由がきかないんだから仕方ない。

もう3年くらい前になるけれど、通っていた英会話教室で、‘みんなでサマソニに行こうツアー’みたいなのがあった。
もちろんすごく行きたかったけれど、断った。

後日、講師のアメリカ人の女の子に、サマソニの感想を聞いた。
日本人アーティストの中では、誰が一番良かった?と尋ねると、彼女は即答した。
「DENKI GROOVE! 」

へええ、電気グルーヴ

とこが良かったのかさらに尋ねると、お腹だと言う。

お腹???

卓球のDJでも歌でもなく、お腹を出して踊る瀧が良かったのだそうだ。
よほど面白かったのか、
「He ... , he was, ... he ... 」
と、瀧についてしゃべろうとすると吹き出してしまって、思い出しては笑い転げていた。

夏フェスの
思い出
ピエール瀧の腹

と、思わず一句ひねってしまったけれど、アメリカ人に俳句がわかろうはずもない。

先日、『とと姉ちゃん』を見ていたら、宴会の場面でピエール瀧がまたお腹を出して踊っていた。
アメリカ人女子に大ウケの腹が、朝ドラ進出か!

そんなことを考えつつ、今朝、やはり朝ドラを見ながら、母に朝食を食べさせていた。

最近は、母の口数がめっきり減った。

「おはようございます」
「おこして」
「ありがとう」
「はい」
「それちょーだい」
「いたい」
「しんどい」
「拭いて」
「おやすみなさい」

以上がボキャブラリーのほぼすべてといってよい。
挨拶とお返事。
その程度だ。
それでさえ、調子が悪いと出てこない。

ただ、唯一の救いだと思われるのは、笑顔が出ること。

パーキンソン系の病気は、表情が奪われるそうだ。
顔の筋肉もこわばってくるので、そうなるのは仕方ない。

母もときどき、声も出ず、笑顔もなく、無表情でしんどそうにしているだけのこともある。

だから、目が合うと笑ってくれると、本当にうれしいし、介護している側にとって救いだと思う。

食事介助では、相変わらずモグモグしている時間が長く、時間がかかってしまう。
待っているとき退屈している私が、無意識にお腹をさすっていると、母が私のお腹を注視した。

「人のお腹見てんと、早よゴクンしてよ~」
と声をかけるも、なおもぼんやりと、じっと私のお腹を見ている。

ふと、
「最近お腹が出てきてしもた。ほら見て~」
とTシャツをめくり、瀧のごとくお腹を出して見せてみた。

「ジーンズの上に乗ってんねん」
「はは、ははは」

無表情だった母が笑った。

「ああ、口からこぼれるこぼれる!」
慌ててティッシュで母の口を拭きながら、私も笑った。

ピエール瀧に、いいことを教えてもらった。