3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

歯の女王さんの歯科治療

母が今の大きな福祉施設に移ったのは、去年の8月。
それまでお世話になっていた、民家を改造した小さなデイサービスと比べると、設備やサービスがさすがにしっかりしていると感じることばかり。

その中でも、すばらしいサービスのひとつが、歯科の訪問診療を呼んでくれることだ。
歯科の先生が施設に治療に来てくれる。
これが本当にありがたい。

姫路市 姫路 兵庫 歯科 つだ歯科: 歯周病,予防歯科,矯正歯科,審美歯科,小児歯科


去年までは、母に歯の治療が必要になると、私が歯科へ連れていっていた。
これがなかなか大変だった。

かかりつけの歯科は、玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えるようになっている。
昔ながらの町医者はどこもそうだと思う。

初めて母を歯科に連れて行ったとき、玄関で靴を履き替えることに考えが及ばなかった。
母を支えながら連れていき、玄関を入った瞬間、スリッパに履き替えることに気付いて呆然となった。
靴を脱ぐためには手を離さないといけないし、私が手を離すと母が倒れてしまうし、たとえ靴が脱げたとしても、玄関の段差まで母の足は上がらないし。

「すみません!誰か!」
と叫び続け、それに歯科助手が気付いて出てきてくれるまで、二人して呆然と立ち往生。
あれほどハラハラしたことはない。

2回目以降は、行く前に連絡し、待合室のイスを借りてきて玄関で座れるようにさせてもらった。
母が車イスに乗るようになってからは、なお楽チンに。

中に入ったら入ったで、まだまだ困難は続く。
診察台に登らせるのがひと苦労なのだ。
診察イスの座面は、普通のイスより少し高い。
立てても大変、車イスから移乗させるのも大変。
担ぐようにして持ち上げた。

ようやく診察台に乗せても、リクライニングするときも困った。
母の背中は丸くなっているので、うまく仰向けにならないのだ。
しかも本人がすぐ頭を持ち上げようとする。
タオルやクッションを頭に敷いて、私が頭を押さえつける。

治療が始まったら、今度は母が口を開けてくれない。
逆に先生に「噛んでみて」と言われても噛まない。
挿入された器具は噛んでしまう。
とにかく言うことを聞いてくれない。

うがいができない。
うがい台に頭が届かない。
歯科助手にタライを探して持ってきてもらう。
ところが、いざうがいをさせると、吐き出さず飲んでしまう。
せっかく持ってきてもらったタライは使わずじまい。

もう、最初から最後まで、困難の連続だった。
歯科に連れて行くのがこんなに大変だなんて、経験してみないとわからなかったことだ。

それが、今は施設で治療が済む。
しかも、付添なしに!
平日、私が会社に行っている間に!

こんなありがたいことはない。


しかし、高齢者の介護をしている人がみんな歯科治療の付き添いで苦労しているかというと、おそらくそうではないだろう。

なぜなら、高齢者の多くは、歯が残っていないからだ。
ケアマネさんの話では、訪問歯科治療の多くは、入れ歯の調整だという。

「虫歯の治療って、久しぶりに聞いた気がします」

母の歯は昔から丈夫で、去年虫歯で2本失った以外、ほとんど残っている。
いまなお、あめ玉を噛み砕くことができる丈夫な歯だ。

どれだけ良い歯だったかというと、かつての母曰く、
「子供の頃、歯の女王さんになりかけたんや。同じクラスのマサ子さんと同列1位でな、ジャンケンして負けてもうた。ほんまやったら、お母さんが歯の女王さんやったのになぁ」
ということだ。

歯の女王さん。
女王を‘さん’付けするのが、なんだか新鮮。


歯が残っているのは素晴らしいことだ。
食事が楽しめるのも、歯のおかげ。

だけど、介護者にとっては結構面倒だったりする。
入れ歯は取り出して洗えるし、歯がなければ口腔ケアをしなくて済むからだ。

口の中のバイ菌から肺炎になることもあるそうだから、歯がある人はしっかりと口腔ケアをしなければならない。
うがいができない人用の、歯みがきウェットティッシュ
泡が出ないタイプの歯みがき粉でブラッシング。
やわらか歯間ブラシで歯間ケア。

まったく、「歯の女王さん」の口腔ケアには、時間がかかる。
介護スタッフさんにもお手数をかけていることだろう。

それだけケアしてても、歯肉炎と虫歯はしょっちゅうだ。

今回、奥歯の詰め物が取れたので、今週金曜日、また歯科に来てもらうことになった。
ついでに、去年虫歯で削って失った歯も、部分入れ歯にしてもらえるという。

訪問診療は本当にありがたい。