3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

世界は落ちているか。

イギリスの国民投票でEU離脱派が勝利してから、どうも世界全体が坂を転がり落ちているような気がしてしょうがない。

落ち始めたのは前からなんだろうけど、特に加速している気がする。

 

昔のSF小説には、暗い未来が描かれたものが多いけれど、私も未来を考えたときに、最近は暗いものばかり想像してしまう。

例えばこんな、最悪な未来。

 

USAでトランプ大統領が誕生。

日米安保はやめる、守ってやらない。守ってほしかったらもっと金を出せ」

と言い出す。

安倍政権は、

「これでは、憲法を変えなければ国を守ることができない」

と国民を煽る。

国民投票憲法改正が通る。

自民党草案どおりの憲法ができる。

国民の自由や権利が限定され、自衛隊国防軍になる。

ちょっとでも政府に批判的な表現が入ると、音楽や小説が発売禁止になる。

演劇公演やライブも事前に検閲され、反政府的なものは中止にさせられる。

一方、イスラム国の拠点がアジアに移る。

日本政府は「テロの脅威が増した」と国民を煽り、軍備を拡大。

マスコミは賛成意見しか報道しなくなる。

日本が核兵器保有国になる。

北朝鮮国内で、日本脅威論が高まる。

「殺られる前に殺れ!」

という論理で、日本に核弾頭を発射。

 

…と、勝手にこんな暗い未来を想像し、

「ああ、私に子供がいなくてよかった」

と思ってしまう。

勝手に悲観して、勝手に安堵する、勝手な愚か者。

 

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昨日の土曜日は母を内科に連れて行った。

母は相変わらず、水分も食事も少量しか摂れない日が続いていた。

 

先生に、先週から急に食事が食べられなくなったこと、水分もほとんど取れないこと、だからオシッコが出ないこと、などを訴えた。

やはり、

「胃瘻についても、考えておいてください」

と言われてしまった。

けれど、いつもいつも、「考えておいて」「検討しておいて」止まりだ。

「お勧めします」「するべきです」ではないので、まだ考えるだけでよいと理解しているのだけれど、本当はどうなのだろう…。

タイミングがわからない。

 

診察後、処置室で採血と点滴をすることになった。

母は右腕の拘縮もかなり強くなってきたので、針を射すのがどんどん難しくなってきている。

前回は手首から採血し、ひどい内出血を起こした。

だいたい、この病院は大きな注射器で無理矢理、針を射すのだ。

 

なので、先月、「患者様の声」の箱に、

「採血の注射器をチューブ式の細いものに変えてください」

と投書をしてみた。

でも、あの投書箱が機能しているとも思えない。

名前も電話番号も書いたけど、連絡はなかったし。

 

採血と言われたとき、念のため先生に、腕からの採血がとても難しいので配慮してほしいと伝えた。

処置室へ入り、母をベッドに横にする。

看護師さんが持ってきた銀色のトレイの中には注射器やチューブが入っている。

こから看護師さんが取り出した針は、私が希望していた細いチューブ式のものに新しくなっていた。

 

ああ、ちゃんと患者のニーズを聞き入れてくれたのだ。

期待していなかっただけに、明るい気分になった。

 

いざ、採血、と看護師さんが腕を見るものの、母の血管の出なさ加減は著しく、腕どころか、手首ですら血管が出てこない。

せっかくの新しい採血用具でも、血管がないのでは血の取りようがない。

仕方なく、血管を足で探す。

 

足から採血?!

 

「どうしても腕で無理な患者さんは、足から取るんですよ」

と看護師さん。

ようやく左足の甲に血管が見つかり、採血。

しかし、容器に流れ込むのはほんの少し。

「脱水状態やから血管も出てこないし、血液の流れも少ないんやね」

 

場所を変えて、右足の甲で再チャレンジ。

「2回も痛い思いさしてごめんねぇ」

と看護師さんがいいながら、血管をペチペチと叩く。

今度はなんとか規定の量が採れた。

 

針を差した状態で、看護師さんが手慣れたふうに、チューブのみ取り替える。

繋いでいたチューブを抜き、点滴の管に換える。

血液が出ていっていたところから、今度は点滴が入って行く。

効率的!

看護師さんには「2回も射してごめんね」と謝られたけれど、こちらはハナから採血と点滴で2回針を射されると思っていたので、結果的に2回で済むならチャラだ。

 

点滴は500ミリの水分補給。

するすると入って行く。

 

点滴が終わったあと、見違えるほど母の顔色がよくなった。

「ほら、今になって血管が出てきたよ。ね?」

と看護師さんが笑って言った。

 

 

大きな世界は下へ下へと落ちている感覚がある。

方、半径数キロの小さな世界では、一人の老人をちょっとでも元気にするために、みんなで一生懸命坂を上っている。

大きな世界は、今のところニュースの中だけ。

遠いところの出来事みたい。

 

だけど、いつか大きな世界は小さな世界を簡単に壊すだろう。

小さな世界と大きな世界はつながっているのに、誰もそれを実感できないから。