サブカル女と非ヲタ男のトゥルー・ロマンス
私の彼氏は非ヲタである。
漫画アニメ文化だけでなく、サブカルチャーの知識も皆無に等しい。
彼氏の趣味は、海釣り、バイク、射撃、カヌー、キャンプ、などなど。好きな音楽はブルース・スプリングスティーン、好きな作家は開高健。
私とはまるで異世界の人間だ。
そんな彼だからこそ、私がどれだけヲタクでアングラかわからないため、気持ち悪がらずに付き合っていられるのだと思う。
一昨日はウイークデイの祝日があったので、彼氏とのんびり過ごした。
前日の水曜日の夜は二人で、元町映画館へ『トゥルー・ロマンス』を見に行った。
トニー・スコット監督、脚本クエンティン・タランティーノの名作だ。
なぜ今頃『トゥルー・ロマンス』なんかをやっていたかというと、「二十歳までに観とかなあかん映画選」という特集企画らしい。
初めて『トゥルー・ロマンス』を見たのは、私はギリギリ二十歳になったくらいの頃にビデオで、彼氏はすでに社会人何年目かの頃にロードショーで。
彼氏はベスト映画というほど好きな映画、と言い、私は最初観たときどこが面白いのか全然わからなかった、と振り返った。
昔のことを語れるのは加齢の特権。歳を取ったカップルも悪くない。
私が二十歳くらいの頃、タランティーノブームが起こった。
周りの映画ファンたちが、こぞってこの作品を絶賛するので、ビデオを借りてきて観たのだった。
魅力がさっぱりわからなかった。
まだ少女だった私は、これを恋愛映画だと思って観た。
そして、二人が恋に落ちるのが納得できなかったんだと思う 。
今でも、納得はできない。
あの恋の始まり方は映画マニアの男が描く妄想であって、「あんなふうに出会って恋に落ちるなんて、まあ、あり得ないよね」と鼻で笑いたくなる。
男性はともかく、女性はこの映画を恋愛映画だと思ってはいけない。
純粋にバイオレンス映画として観るべきだろう。
アラバマがマフィアの男と戦うシーンなんかは、自分の身に引き換えて考えられる壮絶な名場面だ。
だって普通の女性がマフィアと戦って勝っちゃうんだから!
ヲタク・サブカル系の私と、アウトドア系の彼氏の共通の趣味は映画くらいのもの。
特に、タランティーノ映画は二人とも好きな唯一のものだ。
趣味が異なるから、歩み寄れるギリギリのラインを探りながら過ごしてきた。
なるべく彼氏には、私の趣味を語らないようにしてきたつもりだ。
彼氏に釣りの話をされたって私がサッパリわからないのと同じ。
それでも、つい「こんなことがあってね」としゃべりたくなるときもあるし、日常の中でふと話題に出ることもある。
けれど、普通の人以上に知識ゼロの彼氏に、サブカルチャーやヲタク文化等私の分野の説明をするのは大変難しい。
彼氏がどれくらいアニメ文化に疎いか。
テレビで野沢雅子さんが出るイベントの告知CMが流れたときのこと。
「野沢雅子?なんか聞いたことあるなぁ」
と彼氏。
「ヒント。オッス!おら悟空!」
「ああ、キン肉マンか」
いやマジなんだから、これ。
笑かそうとしたわけじゃなく、本当にこれくらい知らない。
しかも、彼氏が聞いたことがあると思ったのは野沢直子のことで、大声優・野沢雅子さんのことは全く知らなかった。
本当に同時代の日本国を生きてきたのだろうか?と疑問に思うくらい知らない。
興味がないとそんなものなんだろうか。
共通の素地がない、前提条件がゼロの人とは、そもそもの共通言語がない。
「なんとなくわかるでしょ?ね?」
が通用しないので、自ずと深く考えてしまう。
アニメとともに育ち、各ジャンルのサブカルチャーとともに歳を取ってきた私にとって、私が好むヲタク文化だったりサブカル文化だったりするものは一体何だろう?
ヲタクとは何ぞや?
サブカルとは何ぞや?
どんなふうに言葉を尽くせば伝わるだろうか?
祝日は二人で街を買い物して歩いた。
三ノ宮センター街のジュンク堂で、私は本を購入。
ロマン優光『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』。
吉田豪さんのツイッターで知って、ずっと発売を楽しみにしていた本だ。
私も間違ったサブカルかもしれない。
ていうか、そもそもサブカルとは何なのか?
本の感想については、詳細をまた。