3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

『劇研のど自慢』でサイリウムを振る。

友人の天羽千夜子さんから、イベント出演のお知らせメールが来たのは、11月末のことだった。

彼女は関西の小劇場だとか、ストロベリーソングオーケストラというバンドだとかで活躍していたのだけど、ここしばらくは活動を休止していた。

それが、年末に謎のイベントに出演するという。
アトリエ劇研という京都の劇場が来年の夏に閉館するらしく、劇場への想いも込めたイベントらしいのだが、その内容がよくわからない。

何しろ、
「のど自慢」
をするらしいのだ。

千夜子さんは私の友人の中でも1、2を争う歌ウマさんである。
思う存分、のどを自慢すればいい。
さぞかし自慢ののどだろう。

だけど、
「のど自慢やります!」
とメールが来ても、どうすればよいのか。
思わず、
「じゃあ、応援に行きます」
と返してしまった。

そして昨日の12月29日。
共通の友達と誘い合わせ、京都へ。
関西小劇場の役者対抗の、『アトリエ劇研のど自慢』。

gekken-nodojiman.info

入り口で、オリジナルの一筆箋をもらい、入場証がわりの缶バッチをつけ、ヒラヒラがいっぱいついた応援ウチワと、ピンクに光るサイリウムを渡された。
年末のせわしく寒いこの時期に、会場の雰囲気が冷え冷えしてたらどうしよう、と心配していたのだが、意外にも雰囲気がとても暖かく、大変盛り上がった。
ウチワをふりふり、サイリウムをふりふり。

弾き語りあり、コントあり、フリースタイルのラップあり(個人的には京都俳優ラップの会の‘Like a 三題噺’なフリースタイルが新鮮で良かった)。
元々皆さん役者さんなのだから、芸達者は当たり前。

ちなみに天羽千夜子さんはヘイルストームの『LOVE BITES(SO DO I )』を歌って盛り上げた。
私も応援のヘッドバンキング

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ラストは出町柳歌劇団トップスターお二人のエリザベートで幕を閉じた。

出町柳歌劇団山椒魚紅子さんこそ、天羽千夜子さんの二役。
男役のヌートリアさんは大熊ねこさん。
二人ともさすがトップさんの貫禄!(笑)

千夜子さんはもともとキレイな声で歌い上げるのが似合う声質なので、ヘイルストームのハードロックなシャウトより、エリザベートのほうがしっくりと馴染んでいて素晴らしかった。
年末を締めくくるフィナーレにふさわしい大団円。

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本家ののど自慢同様、鐘が鳴った合格者の中から審査員による優勝者が選ばれ、観客の投票によってオーディエンス賞が決められた。
優勝者、オーディエンス賞ともに、落語家の風体でプリプリの『M』を歌った岡嶋秀昭さんが受賞。
なんで着物なんだろう?と思ったら、お正月早々行われる『劇研寄席2017』に出演されるかららしい。

全体を通してずっと愉しく暖かい雰囲気だったのは、内輪の宴会・忘年会ノリだったから、だけではない。
単なるおふざけではなくて、根底には、来年夏に閉館してしまうアトリエ劇研への感謝の想いがあるからこそ、こんなに盛り上がったんだろう。

natalie.mu

実は私がアトリエ劇研に来たのはこれが初めてだった。
初来場が、閉館前のイベントという皮肉。

劇場、映画館、ライブハウス、美術館…。
何を見たかが記憶に残るのはもちろんだけど、どこで見たかは重要なファクターだ。
なくなってしまった場所を思い出すたび、
「かつて〇〇という〇〇があって、〇〇を観に行ったなぁ」
と記憶が繋がってくる。

もしかしたら、何十年か後、とある老人施設でこんな昔語りをする老女がいるかもしれない。

「かつて京都にアトリエ劇研ていう劇場があってね…」
「で、おばあちゃん何のお芝居を見たの?」
「芝居じゃなかったんだよ…、何かよくわからない、そう…のど自慢…。一生懸命サイリウムを振ったもんさ…」
「…おばあちゃん大丈夫?」