3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

報連相とセブンミール

土曜日の朝9時にインターホンが鳴った。
母のデイサービスのお迎えは9時半だ。
こんな時間に誰が?
訝りながら玄関を開けたら、いつもの福祉用具業者さんと作業服の男性二人が立っていた。

「手すりの取り付け工事にうかがったんですけど」
「えっ?!」
「もしかして聞いてなかったですか?」
私は首を横にブンブン振った。
聞いてない…。

確かに父が、手すりを付けようと思っている、と言っていたのは知っている。
母のためではなく、父がソファから立ち上がるのを楽にするための手すりと、父が庭先に出るのを楽にするための手すりだ。

けれど、工事の日にちまでは全然聞いていなかった。
よりにもよって、この時間だなんて。

あと30分したら母のデイサービスのお迎えが来る。
庭先で工事をしていたら車イスが通れない。

業者さんは、
「通ってもらっても大丈夫ですよ」
と軽く言うけど、
「でも、そこで作業されてたら通れないのに…」
と、戸惑いを隠せなかった。
仕方ないので、母のお迎えを一時間遅らせてほしいと施設に電話をかけた。

「お父さんはお出かけなんですか?」
姿を見せない父について、業者さんに尋ねられた。
「いえいえ、まだ寝てるんです」

私は2階にかけ上がり、物音にピクリともしない父を叩き起こした。
「手すりの取り付けに来とんやけど!!」
「ほへ~? あ、そうや、忘れとった~」
寝惚け声で父が返事をする。

起き上がってからベッドに腰かけ、寝起きでボーっとしている父に向って、
「手摺の取り付けに来るのはいいけど、なんで私に言うてくれへんかったん」
と小言を言う。
言っても無駄なのはわかっていても、言わずにはいられない。

「ごめんごめん、忘れとった」
「平日でもよかったやんか。土曜日の朝はあかんわ。 お母さんが出かけるタイミングはマズイやんか」
「そうか。気がつかんかったな」

父は一応謝ってくれるけれども、決して改善はしない。
父は相談をしない。連絡もしない。
私や母、つまり自分以外のすべての人の事情を配慮できない。
父はそういう人だと諦めているつもりでも、やはりイラッときてしまう。

父はかつて会社員だった。
組織にとっては、報告、連絡、相談の報連相はカナメである。
本人も、会社勤め時代はよく上司に怒られたらしいので、さぞや困った社員だっただろう。

家族は小さな組織だ。
うちの家で私は父の上司になっている。
どうやったら父を管理できるか、コントロールできるか、常に考えているけれど、太刀打ちできない。
手強いのなんの。
まずは報連相がなっていないところで、すべてがつまずく。

*********

報連相がなっていない、というつながりで、セブンミールの話をしよう。

セブンミールとは、セブンイレブンがやっている宅配サービスのことである。
ネットで受けたオーダーを、近くのコンビニ店舗が配達してくれるという仕組み。

食事をちゃんと食べない父に、ケアマネさんからお弁当の宅配をすすめられたのだ。
これまでも何度か高齢者向け宅配弁当を利用したけれど、薄味なのが気に入らない父に対し、ケアマネさんがセブンミールを提案してくれた。

主に週単位での注文や曜日ごとの設定になる高齢者向けの宅配弁当とは異なり、セブンミールなら配達日は1日ごとに指定できるのがメリットのひとつ。
すごくフレキシブル。
バリエーションも豊富だし、セブンイレブンで取り扱っている商品も併せて頼めるので、宅配スーパーのようにも使える。
しかも500円以上で宅配料が無料!
なんて便利なんだ!

昨年末から、私が1週間の父の食事を考え、週末にネットで注文する、というサイクルが始まった。

初めて配達があった日、どうだったかを電話で父に問い合わせると、
クロネコヤマトが持ってきたで」
と言うのでビックリした。

ヤマト運輸が?
セブンイレブンの店舗からの配達じゃなく?
500円のお弁当ひとつを?

疑問に思っていたら、次の日は父から連絡があった。
「またクロネコヤマトが来てな、配達店舗の設定を変えてくれとかなんとか言うとったで」

注文のときには最初にネットで会員登録をする。
そのときに配達店舗を選ぶようになっていた。
どこから配達してくれても、こちらは別にかまわないんだけどなぁ、と思いながらも、父がよく行く店舗を選んだ。

それがまずかったんだろうか。
選択した店舗は交通量が少ない道沿いにあって、駐車場も停めやすいからよく行く。
だけど、最も近いのは別の店舗だ。
設定の説明を読み飛ばしたせいで、ルールと違うことをしたのかしら。

とにかく、ネットで配達店舗を変更しようとしたけれど、変更のフォームがない。
配達店舗の変更はお問い合わせください、となっている。

もし私がルール間違いをしたとしても、そもそも配達店舗が選べないなら選ばせるなよなぁ、システムミスじゃないの?
と思いつつも、仕方ないのでネット上の問合せフォームを使い、配達店舗の変更依頼を送った。

すると、問合せ担当者からの返信メール。
「担当部署にて確認の上、あらためてお電話にてご案内させていただきたく存じます。」

それなら、と、電話番号や電話に出られるタイミングなどを返信した。

ところが、何日過ぎても電話はかかってこない。

再度問合せメールを送ると、
「現在、担当部署にて事実確認などを行っている途上で、まだご連絡ができておらず申し訳ございません。確認ができ次第、ご連絡をいただきましたお電話番号へ、ご連絡いたします。」
という返信。
じゃ、待つしかないか…。

そうこうしていたら、父がこんなことを言った。
クロネコヤマトの所長さんが謝りに来たで」

「なんで?」
「配達店舗を変えてくれとか変なこと言うてすみません、とかなんとか」
「それでどうしたらええの?」
「さあ知らん」

そもそも父は状況を理解する力が乏しいうえに、説明もド下手である。
一体何だったのか、よくわからない。

どうすればいいのかわからないまま、年末年始になった。
セブンからの電話はかかってこない。
メールもない。
正月休みだろうから仕方ないか、と思い、年明けを待った。

しかし、年が明けても、連絡はなかった。
休みが終わって私の仕事が始まれば、父のごはんのために再び宅配弁当を頼まないといけない。
連絡がないのが悪いんだからね、どこから配達されようが知ったこっちゃないわ、と再び発注した。

週末帰ったときに、今週のセブンミールはどうだったか父に尋ねると、セブンイレブンのスタッフが持ってくるようになった、という。
ネット上の設定を見てみると、配達店舗が勝手に変わっていた。
一番近い店舗とも異なる店舗だった。

説明がないから、いったい何だったのかわからない。
あほらしくて、再度問い合わせる気もなくなった。

その後も配達のたび、セブンミールからメールが届く。
うざいくらい届く。
ひとつひとつの商品に対して、「感想をお聞かせください」というメールがいちいちやってくる。
メールが届くたび、
「商品はいいんだよ! 問題はあんたたちの報連相だよ!」
とツッコミながら削除している。

わからなくもないんだ。
ネット注文とコンビニの実店舗をつなぎ合わせた物流の新しい試みをしよう、という企業の理想はすばらしい。
けれど、ご本社様の理想と、実店舗の実態が噛み合ってないんだろう。

だいたい、バイトでギリギリまわしているフランチャイズの田舎のコンビニで、配達までやれって無茶じゃない?
押し付けられた現場のほうに同情してしまう。

うまくいってないのは、本社と現場と顧客の報連相
ネットで検索したら、セブンミールについてのネガティブな口コミをいくつか見かけた。
商品内容じゃなく、やはり対応についてだ。

大丈夫ですか?
セブン&アイホールディングスさん。

これは単なる想像だけど、こんなことを考えてしまう。
東京の本社正社員エリートは高給取りで、ネット事業の拡大でさらにがっぽり。
目まぐるしい忙しさでレジから配達までこなす地方店舗のバイトさんは時給千円にも満たない。
バイト搾取によって低価格で便利さを享受できている私たち。

…やるせねーなー。
世界中で起きている格差社会の末端を肌で感じる…。
想像に過ぎないけど。

ところで、セブンの宅配について、「これすごくいい!」と思えることをひとつ見つけた。
セブンだけじゃなく、いろんなオンラインショッピングで使える、ウェブベルマーク。
購入金額に応じて、被災地の学校支援ができるらしい。

www.webbellmark.jp

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