3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

セクハラ問題には惑星間の隔たりがある。

先週、うちの職場でセクハラ問題が起きた。

身体的なセクハラではなく、性的発言に対して誰かが総務に訴えたらしい。

 

それ自体に対して私は「そんなこともあるだろうなぁ」と全然ビックリしなかったが、驚いたのは、「わが社でセクハラ問題が出たなんて!」と男性社員が皆、意外そうにしていたことだった。

 

誰が誰に対して何を言ったのかはわからない。

だが、言った男性はきっと軽い気持ちで、悪気なく、それがセクハラに当たることさえ気づかなかったんだろうと想像できる。

でも、言われたほうにとっては、ひどく不快だったんだろう。

 

そこが、問題の根の深いところだ。

 

正直言って、日常生活の中のそこらじゅうにセクハラは転がっている。

いちいち目くじら立ててたら体力が持たないから見過ごしているだけだ。

あるいは、人間関係の中で、それを取り沙汰すことによるデメリットを考えて無視しているだけ。

多くの人は我慢して黙っている。

もうどうにも耐えられない、と思う人だけが勇気を出して声を上げる。

 

そういうもんなのに、「まさか」と思う男性諸氏はどれだけ鈍いのかと思ってしまう。

 

「文句があるなら言えばいい。黙っているほうが悪い」

という人がいる。

でも、女性は往々にして我慢する。

文句を言うと、

「その程度のことで怒るなんて人間が小さい」

とか、

「空気を乱す、和を乱す」

とか言われるのがオチだとわかっているからだ。

声を上げると馬鹿を見るからだ。

だから、少々のことだったら水に流す。

それが職場で求められる大人の対応だ。

 

でも、文句を言わない、声を上げないからといって、決して万事OKというわけじゃない。

気に入らないことがあっても、我慢していることがあっても、みんな黙って日々をやりすごす。

セクハラ問題にかかわらず、すべてのことについてそうだろう。

我慢と忍耐が美徳な国だから。

 

でも、我慢していても、職場環境は決して改善しない。 

勇気を持って発言してくれた人に、私たちは感謝しないといけない。

誰かが声を上げないと、気づかない人たちが多すぎる。

 

かつて私の上司だった人は、セクハラ発言の多い人だった。

なのに、「悪気はないし、そういキャラだから」とまるで治外法権のように許されていた。

 

例えば、会議室で、

「課長の席はこちらです」

と案内しようものなら、

「えー? 僕の席は波野さんのひざの上がいい」

と返してくるような人だ。

普段からそんなことばっかり言っているので、

「はいはい」

と聞き流すしかない。

いちいちリアクションするのもうっとおしい。

 

ただ、それでもときどき「許せない!」と思うときがあった。

最もひどいと思った発言3つをここで紹介しよう。

 

****************

 

1.

今日は来年の新入社員の採用面接が行われている、という話になったとき。

「女の子はぴょんぴょんジャンプしてもらって、おっぱいが一番揺れた人を採用しよう!」

 

2.

職場の歓迎会で幹事だった私が、会場予約について課長に尋ねたとき。

「飲み放題の種類が増えると500円高くなるんです。ビールと焼酎だけでもいいですかね? 課長はふだん何を飲まれてます?」

「僕はね~、母乳。そうだ、○○さんの母乳が飲みた~い」

○○さんというのは、育児休業あけで復帰したばかりの女性社員の名前。

 

3.

保険会社が個人年金を売り込みに来て、老後を含めた将来のライフプランについてレクチャーがあったとき。

「(となりの人のライフプランを覗き込んで)あー、係長の老後は赤字じゃないか~。奥さんを風俗に働きに出さないといけないな~」

 

****************

 

これらが問題だと思ったのは私ひとり。

たくさんいた他の男性社員は、笑っていただけだった。

母乳までは私もつい笑ったけど、個人の名前を出すのは完全にアウト。

また、お金が足りないと家族を売りに出す、という発想が完全に人権侵害。

女性蔑視もはなはだしい。

風俗発言については私もあまりに腹が立ったので、

「それはあまりに係長と係長の奥さんに対して失礼でしょう!」

と声を上げた。

私が突然怒り出したので、周りはびっくり仰天、目をパチクリしていた。

当の係長が、まあまあ、と場の空気を取り成した。

 

実はこのワースト3発言について、セクハラ問題が発覚した先週、男性社員に披露した。

私としては、

「ね、今まで問題にされなかっただけですよ、これまでもセクハラはじゅうぶんあったんですよ」

というつもりだったのだけど、聞いていた男性社員の反応は、

「そんなに怒るほどのことかな~」

というもので、開いた口が塞がらなかった。

 

かつて野坂昭如は「男と女の間には深くて暗い川がある」と歌ったけれど、セクハラ問題については川どころじゃない。

惑星間の隔たりくらい見解が違うなぁと感じてしまった。

 

そういえば、英会話に通っていたとき、やはり男女間の考え方の差が話題になった。

アメリカ人男性講師は英語でこんなふうに言った。

「男性は火星人、女性は金星人。それぞれ別の惑星に住んでるんだよ」

つまり、それくらい相互理解は難しいという話だ。

 

黙っていたって、わかりっこない。

だからこそ、女性は男性に、

「私は今の発言は嫌だ、今の発言は不快だった」

とはっきり言ってやるべきだ。

そして男性はそれを真摯に受け止めるように。