3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

3年、10年、150年。

3年間使っていたAQUOSスマホを、XPERIAに機種変更した。
動作は遅いし、アプリはよく落ちるし、電池が1日持たなくなってきたからだ。

ガラケーAQUOSだったので、初めてのスマホAQUOSにした。
2年間使って、次はどうしようか悩んだけど、IGZOだとめちゃくちゃ電池の持ちがよくなりますよと言われてまたAQUOSにした。
そのときの切り替えは何の問題もなかったから、3台目になる今回もたいして構えずに気軽に機種変更したのが間違いだった。

AQUOSXPERIAでこんなにも操作性が違うなんて、思ってもいなかったのだ。
場所が違う、名前が違う。
例えば、AQUOSにあったマナーモードがXPERIAにはない。
AQUOSで「電話帳」だったアドレス機能がXPERIAでは「連絡先」だったりする。
慣れればなんてことないんだろうけど、ちょっとしたことで戸惑って、イライラする。
やはり3年間毎日使い続けてきただけあって、指と頭がなかなか切り替わらない。
サクサク行きたいから機種変更したのに、このモタモタさ。本末転倒になってしまった。

「ボーナス入ったし、お金のことは目をつぶって快適さを買おう!」という主旨だったのだが、想定以上に本体代金がかかってしまったのも、イライラを加速させた。
ガラスフィルムだの充電コードだの(TypeCとやらに変わったので以前のは使えないらしい)を買わされ、そのうえ「基本パック」だのなんだのを付けさされてなんやかんやの月額をムシリ取られる始末。

おまけに、ガラスフィルムの貼り付けを頼んだら、ずいぶん右にズレていた。
家に帰ってから気がついたので文句も言えない。
それに「貼ってください」と頼んだのは私で、店員のサービスでやってくれたことである。
自分でやってもズレたかもしれない。

それに一度貼ったガラスフィルムを貼り直すなんて可能なんだろうか。はがして2度とくっつかなくなったらどうしよう。
少々ズレてたって、スマホケースに入れてしまえば、さほど気にならなくなるに違いない。
そう思って、目をつぶることにした。

操作性のイライラと、想定以上の出費の痛手と、ガラスフィルムの貼り付け失敗で、機種変更なんかしなかったらよかった、と凹んでばかりいた。
機種変更の2日後、出張から帰ってきた彼氏と会った。
数日間のお互いの出来事を話して、私は機種変更した話をすると、彼氏は私のXPERIAを見て言った。

「ガラスフィルムめっちゃズレてるやん」

一番気にしているところをえぐられた。
横からナナメからズレをチェックし、
「こんなん、端からはがれるんちゃうか。ほら、ほら、めくれるやん」
とはがそうとする。
「やめて!はがさんといて!」
「一回全部めっくって、貼り直したげよか?」
「そんなんできるの?」
「知らんけど、できるんちゃう?」
「やり方知らんのやったらやめて!」

当然私だって、ズレに気が付いた後すぐネットでガラスフィルムの貼り直しを検索していた。
でも、ホコリや気泡が入った場合の話ばかりで、ズレた場合のケーススタディはなく、店のサービスで貼ってもらった場合はどうなるかという事例も見当たらなかった。
ガラスフィルムには貼り直しがきくタイプときかないタイプがあるという文も読んだ。

「貼った奴に文句言いに行ったら?」
と、彼氏はしつこく言う。
「わざわざ文句言いに行ったところで、謝られるだけやったら時間のムダやわ」
「ショップに貼り直しさせたらええやん」
「このガラスフィルムが、いったん貼ったら直されへん種類やったら? 」
「新しいの出してこさして、貼らせたら?」
「サービスで貼ってもらっといて、新しいので貼りなおせなんて、よう言わんわ」
「俺が言いに行ったげよか。ガツンと言うたるで」
「そんな時間ないでしょ!」
「じゃあどないしたいんや!」
「だから最初から、ズレてるのはあきらめてるって言うてるやんか!」

私としては、直しようもないから気持ちにフタをしていたものを彼氏にほじくりだされ、嫌なことを突きまわされたように感じ、彼氏としては、親切心からなんとかしてあげようと思って言ったことなのに不機嫌になられて、まったくわけがわからない、となり、お互いにどんどん気持ちがすれ違ってしまった。
気持ちの断層はどんどん深くなり、最終的に、
「私のスマホなんやからほっといて! 機種変更した私がアホなんやからほっといて! 一生、ガラスフィルムずれたまま生きていくんやからほっていて!」
となり、気まずい空気のままその日を終えた。

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17日の海の日は、二人で「海フェスタ神戸」へ行こうと約束をしていた。
神戸港開港150周年のお祭りである。
www.kobeport150.jp

先日の「私のスマホはほっといて」の件があったので、出かける前は少々気分が乗らなかったが、お祭り気分の会場を一緒に歩くにつれて、そんなしょーもないわだかまりはすっかり忘れていった。
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午後から行ったので、「帆船パレード」のうち、見学できたのは香住高校の但州丸と、練習帆船の海王丸だけだったけれど、どちらも若い船員さんたちがさわやかに応対してくれて、質問をするとどんなことでも丁寧に答えてくれた。
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すごいね、立派だね、開港150周年だから今年は特別だね、と二人で話しながら歩く。
彼氏に誘われなかったら、私はたぶん海フェスタには来なかっただろう。
海や船が好きな彼氏のおかげで、これまでたくさん船を見たり乗ったりした。
これまでまったく触れてこなかったジャンルである。
彼氏のおかげで、自分の知らない世界があることを知る。
ちょっとだけ、私も自分というものが広がった気になる。

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実は、この日で彼氏と出会ってちょうど10年になるのだった。
私はすっかり忘れていたのだけれど、彼氏はちゃんと覚えてくれていた。

「最近TiffanyのキャンペーンにLadyGagaが使われてるの知っとう?」
元町駅に看板出てるのを見たよ」
「HardWearっていうシリーズがな、女性の強さとクリエイティブな精神がコンセプトらしくって、それでLadyGagaらしいわ」
「へぇぇ」
「プレゼントするならぴったりかなと思って」
渡された青緑色の箱を開けると、HardWearの新作のネックレスが入っていた。
「ほんまはピアスのほうがええかなと思ったけど、人気で売り切れらしいわ」

www.youtube.com

俺はなんでもわかっている、といつも彼は言う。
あなたは何もわかっていない、といつも私は言う。

波のように寄せては返し、近づいたり遠ざかったりしながら、私たちは海を漂う。

本当は私が何もわかっていないだけで、彼はなんでもわかっているのかもしれない、と私は思う。

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翌日、ダメもとでソフトバンクショップへ行った。
先日とは違う店員さんにガラスフィルムのズレを訴えたら、
「ちょっと見てみますね」
と笑顔で答えて数分後、ズレを直したスマホを私に返してくれた。