3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住むアラフォーOL、波野なみ松の、仕事と趣味と母の介護を両立させる日々の記録。

家族は余計なことをする。

忙しくしていると、ついつい後回しにしてしまう家事があるものだ。
先週や先々週の週末は午前中に病院へ行かなければならなかったので、出発を優先し、ほとんどの家事は後回しになった。

朝食の後片付けをせずに食器を置きっぱなしにして身支度をしていると、キッチンからカチャカチャと音がする。
慌てて飛んでいくと、父が汚れた食器を食洗機に入れている最中だった。
「ちょっと待ったぁ〜ッッ!!! お父さん、食洗機に入っていた食器は出した?」
「いいや?」

つまり、昨晩洗い終わった食器を出さずに、父は汚れた食器を食洗機に入れていたのだ。
最初はきれいな食器だけ選び出そうと思ったけれど、混じってしまって分けられなくなっていた。

「普段何もしないくせに、なんで勝手なことするのよ!! 」
結局、全部食洗機にかけた。
「余計なことするから、ムダになったでしょ!」
忙しくしてるときに限って、イライラさせられる。

朝は余裕がなかったので、病院から帰って来たあと午後に洗濯した。
いつもなら夕方に取り込むけれど、2、3時間じゃ乾かないかもしれないので、明日の朝まで干しているつもりでいた。
ところが、夜にたまたまベランダに出ると、洗濯物が消えている。
父が取り込んでいたのだった。

普段、「夕方になったら洗濯物を取り込んでね」とお願いしても、取り入れるのを忘れる人である。
依頼されたときには忘れるくせに、なぜに頼まれもしないときに取り込むんだよう!!

「干してあるから、取り込まなあかん思たんや」
「ちゃんと乾いてた?」
「知らん。お父さんはそんなん気にせぇへんもん」

カゴに入っている洗濯物をひとつづつ触って確かめると、薄手のものはだいたい乾いていたが、ジーンズやバスタオルの端の固いところがまだ湿っていた。
干し直しである。
「なんで確認せえへんのよもう!!」
怒り心頭。

父は報連相ができない。
若いときからそうだったが、歳をとって余計ひどくなっている気がする。
日頃のストレスのほとんどが、父とのコミュニケーション不全が原因だ。
それでも許せるおおらかな人になりたいが、どうしても無理みたいだ。
「勝手なことをされる」のが大嫌いな性分らしい。

父母の不仲も、結局は父の報連相不全か原因だったのだろうと思う。


私が中学校1年生のころの話。
母がすごい剣幕で怒りまくっていた。
というのも、母が大切に育てていた庭のプランターの土がひっくり返されていたというのだ。
種をまき、毎日水やりをして、ようやく小さな芽が出てきたところだったという。

ひっくり返した犯人はもちろん父である。
父は何も植わってない空いているプランターだと思い、そこに新しい苗を植えるつもりだったという。

「庭は私が世話しとうの知っとうくせに、一言確認したらええやろ!」
わめき散らす母に対し、
「種を植えたんやったら、わかるように札でも書いとけ!」
と父は一蹴した。
お互いにああ言えばこう言って譲らず、負けじと怒鳴り合う。

私はいたたまれなくなって、懐中電灯を持って庭に駆け下りた。
夜だった。
私はすでにパジャマを着ていたのを覚えている。

私は父がひっくり返した土から、母の花の種を見つけようとした。
いや、正直に言うと、そんな暗闇で小さな種が見つかるなんて本気で思ってはいなかった。
単なるポーズだ。
健気な子供を演じることで、両親がハッと気づき、
「私たちがケンカしていてはいけないわね…」
「なみ松やめなさい、お父さんが悪かったよ」
な~んていうハウス名作劇場的な展開になるのではないかと、甘い考えでいたのだ。

しかし、うちの母は小公子セディの母でもなければ、うちの父は愛少女ポリアンナの父でもない。
母が鬼のような形相で、
「やめなさい!!アホが!!」
と窓から私を大声で怒鳴りつけた。

その瞬間、父が、
「何を怒鳴っとんじゃ!!子供に当たるな!!」
と母を殴った。

「よくも私を殴ったな!!」
母はキッチンに駆け込み、包丁をつかんだ。
完全に修羅場だった。

母は泣きながら、
「お父さんにも殴られたことないのに!」
と言ったように記憶しているが、そんなガンダムアムロと同じセリフだったっけ、とここは私も記憶があいまいである。

庭に降りたときは、こんなことになるとは思ってもみなかった。
おかしい…、なんでこうなったんだろう…。
ハウス名作劇場ではこんなことにならないのに…。
13歳の私はうろたえるしかなかった。

そこから波野家の暗黒時代が始まるのだが、今でも私はときどき考えてしまう。
あのとき、私が庭に出てしょーもない猿芝居をしなかったら、両親の人生はこじれずに済んだんじゃないか、と。
私がまぜ返したのはあのときの土ではなく、両親の夫婦仲だった。
夫婦喧嘩は犬も食わないというが、子供でも触ったらいけないのだ。

とにかく家族というものは、いつだって余計なことをする。
しかも、よかれと思って余計なことをするのだ。

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父はバスタブを洗いもせずに、お湯を入れ替えるだけでお風呂を入れようとした。
それをすると、浴槽の壁についた垢が新しいお湯を汚してしまうので頭にくる。
「やるならちゃんとやる! ちゃんとできないなら私にまかせる! 中途半端にやらないで。わかった?」
この話はこれで何度目だろうか。
あまりのストレスで、
「お父さんが早くこの世から消えてくれたらいいのに!」
と思ってしまう。

そんな先週の日曜日、夕方にテレビで『きかんしゃトーマス』を見ている父を見た。
その無邪気なシーンに、
「お父さんに悪気はないんだよなぁ」
と、悲しくなってしまった。

振り返って考えると、いつだって父は悪いことだと自覚して行動することはない。
結果的に、余計なことや迷惑なことになっているだけのかわいそうな人なのだ。
たった一言、確認すればいいのに、その一言が言えない愚かな人。

家族は愛し合いながら苦しめ合う。
だから私は、これ以上家族を増やしたくないのだ。