父の秋の発作
秋のこの時期になると、毎年父にイライラさせられる。
まるで発作のように、
と言い出すからだ。
今年はこの三連休らしい。
自分のブログを振り返ってみると、去年も全く同じことを書いていた。
naminonamimatsu.hatenablog.com
今年もやっぱり叔父と友人のOさんを誘ったらしいけど、やっぱり断られ、「一人でも行く」と言ってきかない。
「JR三ノ宮駅で降りて、にしむら珈琲でコーヒーを飲んで、高架下をぼちぼち歩きながら元町まで行って、南京町の広場で獅子舞を見て、劉家荘で焼鶏を食べて、お土産に老祥記の豚まんを買うて帰るんや」
という、お決まりのフレーズを、壊れたテープのようにループする。
父はリハビリを頑張っているけれど、どんどん足の引きずりはひどくなるばかりである。
そんな足で三ノ宮から元町まで歩くなんて!と思うけれど、本人は、以前元気に歩いていた自分を捨てられない。
変わらずに歩けると思っているのだ。
「ハイハイ」と言って聞き流すしかしょうがないからそうしているけれど、聞いているだけでもイライラする。
一方、母は母で、最近喉の奥で痰か唾がからむらしく、食事のときにやたらむせる。
咳こむのは本当に苦しそうで可哀想なのだけれど、背中をさするか、口腔スポンジで痰を絡め取るくらいしかできない。
そうしたところで、ちっとも治まらない。
それもまたイライラさせられる。
ムセが「ときどき」なら必死に対処していたけれど、こう頻繁になってくると「またか」という思いしかない。
父の話と同じく、「ハイハイ」と言いながら母の背中をやる気なくなでる。
少し回復してきたものの、やっぱり「元気」な状態じゃないから、ちょっとしたことで疲れてしまう。
だめだな、HPもMPもまだ満タンじゃない。
ランチのついでに南京町で父にお土産を買い、金曜日、実家に帰るときに持って帰った。
「月餅買ってきてあげたんやから、中秋節に行くのはなし! わかった?」
とりあえず、父は「わかった」と返事をした。
何等分かに切って、私もちょっと食べたが、美味しい月餅だった。
土曜日。
車に乗って買い物に行くとき、一緒に乗り込んだ父が、
「ちょっと、これ教えて」
と言う。
「これって?」
「カーナビの設定のやりかた」
「なんで?」
「浜坂まで行くから、目的地を設定したいんや」
「浜坂って、誰と行くの?」
「ひとりで。」
「あほか!」
浜坂というのは、兵庫県の北の端。
私の体力が落ちている今、父にそんな遠くまで徘徊されたらたまったもんじゃない。
疲れてきたらますます足が動かなくなることを、何度言い聞かせても理解できないらしい。
なんでこう父は、私を逆なですることばかり言うのだろう。
しかも、その土曜日、午前中雨が降っていたので、夕方になっても洗濯物がまだ乾いていなかった。
だからわざと干しっぱなしにしていたものを、普段やらない父が勝手に取り入れてしまった。
「まだ乾いてなかったでしょうが!」
「ちょっと湿っとっただけや」
怒り心頭で、再び干し直す私。
もう私の心の安らぎは『おそ松さん』の第3期にしかない。