3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

漢方薬と動物の尊厳

漢方薬局について値段が高いだの糸練功が怪しいだのとディスりつつも、くだんの漢方薬局を再訪した。
漢方茶はそれなりに効いたし、再び胃腸の調子が非常に悪くなってきたからだ。

2回目だからか、問診も気功診断も簡単ですぐに終った。
今回の私の主訴は、
「食欲もあってすごく食べたいのに、膨満感がひどくて食べられない」
ということに尽きた。

何が辛かったって、トアウエストに新しくできた居酒屋さんに行って、カレー肉つけ蕎麦なるものを美味しく食べていたにもかかわらず、半分も食べられなかったことだった。

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食いしん坊な私が、食べられなくて食事を残すなんてありえない!
しかも、「蕎麦なら大丈夫だろう」「カレーなら食べられるはず」と選んだのに!

食べたら食べた分、いつまでもお腹に残っている。
身体の中が大渋滞を起こしているかんじ。
胃腸薬も便秘薬も効かない。

そう訴えた私に対して薬剤師さんは、
「これは、胆汁ですね。胃腸じゃないです」
と言う。

http://www.tanseki-guide.com/tannou/tanjyu.html

タンジュー?!

聞き慣れない言葉が出てきた。

「前とは状況が変化していますね。今は胆汁の循環が悪くなっていることが原因でしょう。胆汁の流れが悪いので、食べ物が流れて来ているのに腸が気がついてないような状態です」

はぁ〜。

なんだかよくわからないけど、なんとなく納得。

それまで自分で「膨満感」で検索し、対処法をいろいろ読んだけど、野菜やヨーグルトを食べろ、水分を摂れ、適度な運動をしろ、腸のマッサージをしろ、など、「そんなこたぁわかっとるわい!」みたいな当たり障りない常識的なことばかりしか書かれておらず、なんの参考にもならなかった。

「今までに経験したことのない消化不良」
を、
「今まで聞いたことのない胆汁の循環が原因」
と言われたことで、妙に説得力を感じてしまった。

そして出た薬が、前回と同じ漢方茶と「熊参丸(ゆうじんがん)」という丸薬だった。
熊参丸は小さい粒2つを夕食前に飲むだけなので、全く負担にならない。

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でもって、飲んで数日、消化不良は改善されて、普通に食事が食べられるようになってきた。

よかった、よかった、と言いたいところだけど、ふと冷静に熊参丸のパッケージを見て、「熊」の字がひっかかった。
これって、も、もしかして…。

動物と人間と、すべてに誠実

これまで出会った人の中で私が最も尊敬するのが、元・王子動物園園長の権藤眞禎先生だ。

仕事上で月に1回お話する頻度だったけれど、世界中のいろんな話を教えてくださって、私にとってはとても貴重な時間だった。
もちろん、話題の多くは動物にまつわる話である。

例えば、こんな話。

山の中に風力発電の風車を作ると鷹や鷲のような猛禽類にとってすごく危険だということ。
ボノボという類人猿がチンパンジーやヒトよりも平和な社会システムを築いていること。
犬に対する動物愛護の精神がイギリスなどのヨーロッパの国々と日本ではまるで違っていて、日本はまだまだということ(ペットショップなんてどれほど動物虐待なことか)。

挙げればきりがないのでこのへんで。

目からウロコが落ちる思いだったのは、動物を守るためには人間の社会が平和で豊かでないといけないということだった。

密猟の背景には、もちろん悪徳業者の存在もあるけれど、貧困や格差の問題もある。
ベンガルトラ1頭を売ったお金で村人が1ヶ月生活できるとなると、どんなに禁止したって、現金収入の乏しい地域では密猟をやめない。
そんなこともあってか、権藤先生は動物保護だけでなく、ミャンマーに学校を建てたりだとか、NGOを通じた新興国の支援活動もされていた。

私利私欲じゃなく活動している人に私は初めて出会った。
「こんな立派な人もいるのか…」
と驚いたのだった。


そんな権藤先生から聴いた話の中で、一番むごい話がこれだ。

漢方薬の材料にするために、中国人が動物を乱獲することは多々ある。
けれど熊については、殺すのではなく捕まえて、檻の中でずっと飼育し、身体に管を挿して生きたまま胆汁を採取し続けるのだそうだ。
捕まった熊は、生かさず殺さず、何年も拷問のような痛みに苦しみ続けるのだという。


想像するだけでもゾッとする。
私が生まれ変わって熊になったらどうしよう。

その話を聞いたのはもう10数年前だけど、その恐怖は忘れられない。

改めて、熊参丸を確認してみる。

成分の一番最初に熊胆(ユウタン)とある。
製薬会社のサイトを見るとやはりユウタンとは、

クマ科ヒグマ, ツキノワグマまたは近縁動物の胆汁を乾燥したもの

と書いてあった。

http://www.kegg.jp/dbget-bin/www_bget?dr_ja:D06797


今度漢方薬局に行ったら、 熊参丸は飲みたくないと言おう。

絶対に拒否する、というわけじゃない。
熊に苦痛がないように取られたものだったり、死んだ熊から採取されたものならいいと思う。
けれど、私が今飲んでいる薬がどういうふうに採取された胆汁かわからないのがつらい。

需要があれば製薬会社はたくさん製造するだろう。
これ以上熊の犠牲を増やしたくない。

いくつかのサイトを見ると、ユウタンの有効成分、ウルソデオキシコール酸は化学的に合成できるという。
だったら合成でいいし。
なんでもかんでも自然由来が良いというわけじゃない、というのを知ったのも勉強になった。