3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、趣味と母の介護と育児に追われる日々の記録。

父の栄養失調

あんなに孫を見たがっていた父だったけれど、私たちが病院にいる間に面会には来なかった。

今日で息子が生まれて29日目になるけれど、まだ父は孫の顔を見れていない。

 

思いがけず出産することになったので、父には生まれてしまってからメールを送った。

それに対する返信がこれ。

「おめでとう。元気ですか。部屋掃除する」

…どういう脈略で部屋を掃除するのかよくわからなかった。

孫が来たときのために掃除する、ということかなと思うけれど、帰省できるのはまだまだ先だ。

 

その後、電話で連絡をすると、

「また駅員に迷惑をかけたらあかんから、神戸に行くには誰かについてきてもらおうと思とんや」

と殊勝な心がけを口にした。

父の妹の夫(私にとっては叔父)についてきてもらう約束をしているらしい。

けれど、自営業だった叔父は引退した今でも何かと忙しくて、なかなか時間が取れないという。

「しばらく病院にいるから、急がなくても大丈夫だよ」

と言っているうちに、2週間の入院は終わり、退院が決まっても父は来る気配がなかった。

 

「来るなら日を決めて、連絡してから来てよ。いきなり来んとってよ」

と、これまでの父の悪しき行動パターンから私は非難がましく電話したら、

「ちょっと足の調子が悪いんや」

と、父にしては珍しく素直に不調を訴えた。

 

その間も、父はちゃんと母の病院には通ってくれており、お見舞いに行った日には、

「今病院。お母さん元気。ミライくんの写真見せたらウンウン言った」

「お母さん寝ていた。オイと言っても起きない。洗濯物持って帰る」

などなど、メールで様子を送ってくれていた。

心配していた洗濯物も、小さい失敗(よごれ物と洗濯済みの区別がつかなくなるなど)はあるものの、なんとかこなせているようだ。

推奨したコインランドリーは、

「トイレがない使えない。ションベンしたくなったら困る」

との理由で拒否のメールが届いた。

その場で待たなくても喫茶店でも行けばいいって教えたのに…、とは思うけれど、言うだけムダだと思ったので、黙認した。

家でちゃんと洗濯できているなら、それでいいんだし。

 

ケアマネさんからの間違い電話

なんとか父は父でうまくやってくれている、と思っていたところ、父のケアマネさんから電話がかかってきた。

「ごめんなさい、お父さんの携帯と間違ってかけてしまいました。こちらは娘さんの番号でしたね」

と言う。

父のケアマネさんは今年2月に替わったばかりで、まだあまり慣れていない。

前のケアマネさんの引き継ぎのときに、1度だけ会っただけだ。

「何かありましたか?」

「実は最近、お父さんリハビリを休みがちで。今日も先ほどお休みの電話連絡があったそうなんで、様子をうかがおうと思いまして」

初耳である。

理由は足の調子が悪いから、ということらしい。

足が悪いから通ってるリハビリなのに、本末転倒だ。

 

時間をおいてから、様子を尋ねようと父に電話をしてみた。

「リハビリを休みがちらしいやないの。どないなん?」

と尋ねると、

「お父さんな、大失敗してもうた」

と言う。

また転倒してケガをしたり、車をぶつけたりしたんじゃ?!と心配になり、

「一体何を失敗したん?!」

と肝を潰した。

 

「テレビでな、コレステロールを下げる、いう薬をやっとったから買うたんや。4日飲んでな、どうもあれを飲んでから足の調子が悪なったみたいや。高かったのに損した」

 

なんだそんなことか!

「だいたい、なんでコレステロールを下げる薬なんか買うたん?」

「電話で注文するとき訊いたら、コレステロール下げたら脳梗塞にも効く言うたんやけどな」

コレステロールの値が高い人にはそうかもしれんけど、お父さんコレステロールの値は高くないでしょう? 関係ないやん?」

「そうか…」

 

父は、足の調子が悪くなったのはそのコレステロールを下げる薬(父は薬と言っているけれど、おそらくは健康食品)のせいだと言いはった。

またテレビの宣伝にだまされた、と。

 

おそらくは低栄養

私が思うに、コレステロールの薬は原因じゃない。

おそらく、食事をちゃんと摂っていないせいで、父は低栄養状態になっているんだと思う。

母が入院してから、父はセブンイレブンの宅配弁当をやめてしまった。

宅配に来る時間に、病院に行っていて不在の日が続き、配達担当者から小言を言われたのだ。

時間の管理ができない父が悪いのだけど、すねてしまって、

「味も飽きたし、もういらん」

と言い出してしまった。

病院の帰りにスーパーで買ったり外食したりするから大丈夫、と言うので、それを信じて私も注文をストップしてしまった。

結局、何も大丈夫ではなかったのだ。

 

私が毎週帰っていたときには、一応私が食事を作っていた。

だから、曲がりなりにも週末はちゃんとした食事を食べていたのだけど、それも私が帰れなくなって途絶えてしまった。

 

きっと、1日1食、それもインスタントラーメンばかり食べているに違いない。

そんな低栄養状態で、コレステロールを下げたら、調子も悪くなるに決まっている。

 

本人に言うと、

「栄養失調かなぁ」

と自覚たっぷりに呟いた。

昔の人間は「栄養不足」でも「低栄養」でもなく、「栄養失調」という言葉のチョイス。

 

そこで、宅配弁当の再開をすすめたら、しぶしぶ了承してくれた。

リハビリがある日、週に3回だけならさほど飽きないだろうし、病院に行っていて不在ということもないはずだ。

お弁当の種類は、工夫していろんなものを選ぶようにする。

 

「リハビリも休まずに行くように」

としつこく言い聞かせた。

「わかっとんやけどな。どうもあかん」

栄養が足りてないせいで、父の言葉は覇気がなかった。

 

母の病院に行ってもらってるだけありがたいけれど、父にはもう少し自分の体調管理もできるようになってもらいたい。

こっちは赤ん坊を抱えて手一杯なのに。

お爺さんの面倒までみきれない。