3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

木綿のハンカチーフと2回目の帰省

木綿のハンカチーフ』を聴くと、思わず泣いてしまう。

上京した彼と故郷に残された彼女の心の距離が次第に離れていく、歌詞のせつなさがたまらない。

私自身に東京に行った彼氏に捨てられた、な〜んて体験があるわけじゃないのに、彼女になった気分で胸が締め付けられる。

松本隆マジック!

 

 

ところが最近、彼氏の立場で涙してしまうようになった。

 

君を忘れて 変わってく 僕を許して

毎日愉快に過ごす街角

ぼくは ぼくは 帰れない

 

サトイモと大変ながらも楽しく過ごしているうちに、気付くと病気の母のことを忘れている自分がいる。

なんなら、両親の面倒をみないといけないことが、正直邪魔くさいと思ってしまうことさえある。

 

先日気が付いたのだけど、ここ何年か患っていた慢性胃炎が、出産後うそみたいに消えてなくなっていた。

育児休業だし実家にも帰っていないから、仕事と介護という二重のストレスから解放されたおかげだろう。

 

一旦下ろしてしまった荷物を再び担ぐのには、なかなか気力がいる。

妊娠中は、出産後はすぐに介護を始めようと思っていた。

それなのに今は、とてもじゃないけど介護は無理だと思う。

 

サトイモのことで手一杯で…」

というのは、半分合っているけど半分嘘だ。

自分に嘘をついて、介護から逃げようとしているのをわかっているから、『木綿のハンカチーフ』で泣いてしまう。

泣いたところで、自分で自分を甘やかしているだけなんだけど。

 

2回目の帰省

この前の日曜日、再び実家に帰った。

前回と同じく、夫に車で送ってもらい、サトイモも連れて行った。

 

5月に母のお見舞いに行ったとき、母の左手の甲に内出血があり、左膝には包帯が巻かれていた。

後日、電話で看護師長に尋ねたところ、左膝は表皮剥離のため手当てをしたのだということだった。

自分で身体を動かせない母。

身体を移動させるのは入浴のときくらいだ。

 

しかし、原因を尋ねても看護師長は「わからない」としか言わない。そして、

高齢になるとちょっとしたことでなりやすいんです」

とか、

「心配されなくてもすぐ治りますよ」

とか、

「故意ではないです」

などと言う。

 

そんなことは、こっちもわかってる。

なんでなったか、今後ならないようにどう対策するかが知りたいんだ!

 

そう言いたかったけど、しょっちゅうお見舞いに行ける家族ならまだしも、月に1回顔を出すだけの遠く離れた娘が口やかましく言うのは厚かましいのではないか、と遠慮してしまった。

 

いや、違う。

それも言い訳で、本当は、言っても通じなさそうな人に食い下がっても、こちらが消耗するだけなのが面倒くさかったのだ。

 

以前だったら、改善を求めて私は食い下がっていただろう。

それだけ、母のことに対して使う熱量が下がってしまっていた。

 

今回お見舞いに行ってみると、手の甲も膝も治っていた。

新たな傷はない。

ひと安心である。

 

父には週に2、3回はお見舞いに行ってもらっているけれど、父は本当に何にも気が付かない。

母の顔を見ることと、入浴で使ったタオルを交換することしかしない。

それだけでも助かる、よしとしないといけない、とここでも妥協だ。

 

「ところでお父さん、入院費は払ってくれてるよね?」

 

ふと思い出して、父に尋ねた。

すると、

「払ってへんで」

と言う。

ビックリして、

「払ってへんってどゆこと?!?!」

と声が裏返ってしまった。

 

「口座引きができなくて現金払いやから、毎月20日以降に受付に行って払ってよってお願いしてたよね?」

「それがまだ請求が来うへんのや」

「請求なんか来うへんよ! だから20日以降に忘れんと行ってねって言うてたでしょ!?!?」

「そうか。知らかったなぁ」

 

母の入院は3月からである。

その間、一度も支払ってないというのだ。

 

父に言いっぱなしで忘れていた私も悪いのだけれど、お願いしたことをすっかり忘れてしまう父に腹が立つ。

 

母に水虫の薬を塗ったり、リップクリームを塗ったりするのも、お願いしていても忘れている。

でもそれはまだ許容範囲だけれど、お金のことはシャレにならない。

週明けに絶対支払いに行くように、しつこいくらいに言い付けた。

 (火曜日に無事、3ヶ月分の支払いが完了したという。)

 

書類仕事も介護のうち

実家で父から、

「これ、来とうから見て」

と手渡されたのは、特定疾患医療受給者証の更新手続き書類だった。

マイナンバーが導入されて制度が新しくなって、去年までよりも時期が早くなっている。

 

書類の記入はするけれど、書類を保健所に持っていくのは父にやってもらわないといけない。

「行ける?」

と聞くと、

「行ける。大丈夫や」

と答える。

 

本当に大丈夫なのか。

 

帰りの車の中で、

「ほんまに大丈夫かなぁ…」

と愚痴ると、夫には、

「大丈夫やないやろう」

と言われてしまった。

 

だからといって、じゃあサトイモを連れて電車で実家に帰って、私が手続きできるかと言えば、往復の時間も含めてメチャクチャ大変だし、サトイモにも負担がかかってしまう。

 

父ができると言ってくれた以上、とりあえず信じて任せるしかない。

 

身体介護は病院に任せられても、手続き関係で家族がやるべきことが残っている。

父にできるだけ協力してもらいながら、なんとかこなさなければ。