3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

保活!② ドキドキの一時預かり

保育園へ一時預かりの登録に行ったときに、さっそく次回利用の予約をした。

その日は6月5日。

4月から私が通っている着付け教室の最終日だ。

それまでは着付け教室に毎回サトイモを連れて行き、邪魔をしたりぐずったりするのを、先生にもあやしてもらいながらだましだましやってきた。
集中して学ぶことなんて全然できなかったから、最終回はくらいビシッとやりたかった。

それに、最後だけは自分の着物を持ってきて着てみましょう、ということになっていた。
先生に借りている練習用の着物なら着られるけど、自分のじゃ勝手が違って上手く着られない、っていうんじゃ目も当てられないからだ。

初めての一時預かりに、着付け教室の総仕上げ。その日は私の一大イベントだった。

 

一時預かり前夜 

夫はサトイモを時預かりに出すことをやたらとかわいそうがった。
これまでお姑さんや友達に家の中でみてもらうことはあっても、よそに預けて他人にサトイモをみてもらうことがなかったせいもある。

「たかが半日、たった3時間預けられるだけで何がそんなにかわいそうなんよ」
「これまでの経験からするとな、なみ松が迎えに来て、ママの顔を見た瞬間、あいつ泣きだすんやで。あいつの泣き顔を想像したら、なんかかわいそうでな…」

確かに、どこかへ出かけた際に私がトイレに行く間誰かに見ていてもらったりすると、サトイモは平然としているように見えて、私が戻った瞬間にホッとして泣きだす、ということが何度かあった。
夫はその瞬間を見ていない。私から話を聞いただけだ。
なのに、まるで目に浮かぶようだという。

まあ、泣きだすかもしれない。
泣いているサトイモを見て、私も泣いちゃうかもしれない。

だけど、そんな経験だって必要だ。もう1歳を超えているんだから。

 

保育園に登録に行ったとき、案内された1歳児クラスに知っている男の子がいた。

去年まで 児童館でときどき会っていたヨースケくんだ。
まだ2人ともおすわりだったころ、ボールプールの中でお互いに顔の触りあいをして、ヨースケくんがいきなりサトイモのほっぺにチューしたんこともあったっけ。
そういえば、ママが4月から育休復帰するので皆さんとはサヨナラ、という挨拶をしていた。
そうか、ここの保育園だったのか。

顔見知りの子が一人いるだけで、私はなんとなくほっこりした気持ちになっていて、もしかしたらサトイモも同じように感じていたかもしれなかった。

ヨースケくんが毎日通ってるんだもの、たった3時間の何がかわいそうなものか。
世の中には0歳児から預けられてる子だってたくさんいるんだから。

そんなことを思いながら、前日の夜、サトイモの持ち物にマジックで名前を書いていった。

手拭きタオル、食事用エプロン、昼寝用バスタオル、オムツ、お尻拭き、お着換えセット…。
忘れ物がないように、スマホのチェックリストアプリで何度も確認した。

保育園の持参物はあっという間に用意できたのだけれど、時間がかかったのは私の着付けの持参物だった。

母が買ったそのままの着物にも長襦袢にもしつけ糸がまだついていて、それを外す作業に時間がかかった。
そのうえ、長襦袢には半襟という襟の部分を縫い付けないといけない。

着物は頻繁に洗えるものではないので、汚れやすい襟の部分に半襟をつけ、取り外して洗えるようにするパーツだ。

どうやってつけるのか先生にきいてみたけど、

「どんな縫い方でもいいんですよ。外しやすいように、ザクザクっとつければ」

と言う。

ザクザクって言われたって…。

お裁縫も苦手な私は、その作業をするのにさらに1時間以上かかってしまった。

め、面倒くせえ…。

着物、現代人のライフスタイルには合わないはずだわ…。

 

案ずるより産むがやすし

気が張っているせいか、寝不足でも不思議と眠くなく当日を迎えた。

保育園グッズに着付け一式という大荷物。カバンにリュックにウエストポーチという家ででもしそうな格好で家を出た。

サトイモは普段、昼食前後に昼寝をするのだけれど、この日は昼食を食べてからすぐに出発をすると、ベビーカーの中で寝てしまった。

眠ったまま保育園に到着、そのまま預けてしまった。

起きてビックリ、知らない場所でママもいなかったら、泣くだろうなぁ…。

でも、それも試練だ、ガンバレ息子よ!

そう思いながら、着付け教室の時間までまだ30分ほどあったので、去年くらいに元町商店街にできた焙煎コーヒー豆屋さんCOFFEE ROAST ONE'Sに寄った。

coffeeroast.net

できた当初は授乳中だったからコーヒーも飲めなかったし、卒乳してからも焙煎の煙がすごいのでベビーカーでは遠慮して、これまで入らなかった店だ。

コーヒーを待っている間に試飲させてもらいながら、一人で好きに行動できる幸せをかみしめた。

シングルだった頃は当然のことだった自由が、今はこんなに貴重。

そんなウキウキした気分で着付け教室へ。

時間がかかったわりに不細工きわまりない半襟を先生にみてもらう。

「そうそう、これで大丈夫ですよ」

と言いつつ、

「端は合ってるけど、襟の真ん中が浮いてるでしょう。肝心なのは外から見える首回りなので、真ん中から縫い始めたほうがよかったかもね。マチ針は使いました? でも、これも勉強ですよ」

と指摘されてしまった。
最初から教えてくれよ~、と思いつつ、確かにやってみて初めて気づくことばかりだったので、やらないままだとわからなかったかも。何事も勉強。

そんな半襟にばかり気を取られていたので、着付け一式全部持ってきたつもりが、伊達締めを入れるのを忘れていた。

必ず何かはチョンボする性格。

「伊達締めさえ持ってきていたら、着物のまま帰れたのになぁ」

と言うと、

「お草履がないからそれは無理よ」

と先生に笑われた。そうだそうだ、履物のこともすっかり忘れていた。

それでも、最は後ちゃんと自分で着物を着られるようになった。

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せっかく覚えた着方を忘れてしまわないか心配ではあるけれど、一通りの知識は得たつもりなので、万が一のときに喪服を着るのももう怖くない。

着物を片付けると、もうお迎えに行く時間。

バタバタと先生に挨拶を済ませて出ていった。

 

保育園に着くと、サトイモは園長先生と事務室で待っていた。

泣きだすかと思ったら、おう、という感じで振り向いただけであった。

「起きたときに少し泣いただけで、そのあとはハイハイで園の中をいっぱい探検して、機嫌もよく、元気いっぱい遊んでいました。おやつのニラチヂミも完食で、食べっぷりが気持ちよかったです」

一時預かり担当の先生が今日の様子を教えてくれた。

先生たちを困らせることなく過ごせたことが頼もしくて、帰りの道すがら、

「えらかったねぇ、本当におりこうさんだったねぇ」

とベビーカーの後ろから声をかけた。

家に帰ってから、サトイモが気に入っている「ロケット発射」(と呼んでいる「たかいたかい」)をして、抱きしめてあげた。

何がそんなにえらかったのか理解していないサトイモは、目をクリクリさせて笑っているばかりであった。

夫が帰ってきてから報告をすると、

「そうか、あいつ泣かんかったか」

と満足気だったけれど、それよりも、

「おやつがニラチヂミって…?」

とそればかりに突っ込んでいた。