2番目のタフガキは誰に似たのか。
人の性格は生育環境とか人生経験とかに大きく影響されるものだと思っていたけれど、子育てをするようになって、見る目が少し変わった。
というのも、生まれて間もない赤ん坊でも、それぞれ性質が全然違っているからだ。
泣いて泣いて親を困らせる子もいれば、眠ってばかりののんびり屋もいる。
ましてや少し成長すると発達の個人差も出てくるので、さらに違いが大きくなる。
うちのサトイモみたいに何にでも興味を示して率先して手を出す子もいれば、水遊びすら怖がって泣く子もいる。
児童館や子育て広場で0~3歳までの子どもたちを見ていても、発達も個性も一人として同じ子はいない。
そうなると子育てしている母親同士で話していたって、
「へぇ~、チャイルドロックが必要ないの⁉ いいねぇ!」
とか、
「果物を食べてくれるならいいじゃないの、ビタミンが摂れて。うちはお菓子しか食べてくれないのよ」
とか、「へぇ~」のオンパレードだったりする。
人と比べるのはナンセンスだとわかっていても、「それだったらうちの子のほうがマシかな」とか「わ、うちの子は遅れてるぞ!」などと思ったりもする。
児童館でも子育て広場でもよく会う子どもたちのうち、一人ズバ抜けてヤンチャな、ジャイアンみたいな子がいるけれど(その子の話はまたいずれ)、うちのサトイモはその子に次いでゴンタな性格である。
アンダーワールドのアルバムのタイトルに『Second Toughest In The Infants(邦題:2番目のタフガキ)』というのがあったけれど、まさにガキの中で2番目に強い奴なのだ。
他人と比べて違いがあるのは当然なんだけれど、
「まるでクローンのように瓜二つ」
と言われている夫の子ども時代と比べても、サトイモの性格はまるで違うらしい。
お姑さんから、
「はるくんは大人しかったから育てやすかったけど、この子はほんまにゴンタやわ」
と毎回言われる。
正直、子育ての大変さはいろいろあるだろうけど、大人しい子とゴンタ坊主では当然後者の母親のほうがキツイ。
「女の子はもっと大人しいで。下の子がそうやった。お人形さん抱いてじっと遊んどったもん」
えっ、じっとしてくれる子どもなんているの?!
私としては目からウロコである。
「この子はちょっともじっとしてへんから大変やな」
とお姑さんが同情してくれるように、最近の私は毎日ヘトヘトである。
「この性格は一体誰に似たんやろう?」
お姑さんも夫も私も、それがみんなの疑問なのだった。
このお盆休みには、夫にお願いして王子動物園とうちの実家に連れていってもらった。
王子動物園には「ふれあい広場」というコーナーがあって、ガチョウやヤギなどが放し飼いになっている。
普通の子どもなら怖がってもよさそうなものだけれど、うちのサトイモは平気でアヒルの群れに入っていくし、ホロホロ鳥も追いかけて行く。
すぐそばをカピバラが走り抜けていっても驚きもしない。私のほうがビックリしてビビッてしまった。
うちの母のお見舞いに行っても、病院の雰囲気に委縮することもなく、母に近づけるとすぐに鼻のチューブを引っ張ろうとする。
夫は、
「そんなん抜いたら死ぬぞ!」
と慌てるけれど、経鼻栄養のチューブだから抜いても死んだりしないのだが。
毎回、お見舞いに行くと母の爪が伸びているので切って帰るのだけど、その間、サトイモと母が向かい合わせになるようにベビーカーを置く。
お互い、「あ~」しか言えない。
「サトイモ、おばあちゃんだよ。お母さん、待望の孫さんだよ」
と声をかけるけれど、どちらもわかってるのかわかっていないのか。
私のことはまだわかっているように思うけれど、今回、「この子、誰?」とでも言いたげな母のまなざしで、サトイモを孫だと理解できていないんだろうなと感じた。
幸い、母は本当に子どもが大好きな人だったので、小さい子どもを見ているだけで喜んでいるだろうと思うけれど。
反応がだんたん鈍くなる母とは逆に、サトイモは私たちが言っていることをグングン理解するようになってきた。
きっとうちの両親についても、お祖父ちゃんお祖母ちゃんだということをわかってくれているんじゃないかと思う。
しわくちゃでタバコ臭いうちの父にも笑顔で接してくれて、帰り間際には車の中から手を振ってくれるサトイモ。
人見知りせず、泣いたりしないのがありがたいなぁ、と、小さなタフガキに毎回感謝である。
翌日、父とメールのやりとりをしていると、こんな一文が。
「遊びに行っても目を離すな。小さいときのなみ松に似ている」
えっ、私!?
落ち着きないのは、私に似たってこと?!
…ちょっとショック。
でも、しゃーないな、私の子やもんな、と開き直るしかない。
今日も一日、追いかけ回して疲れた。