3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

なかよしクラブが救っているもの

1歳6カ月健診を受けたとき、まだ言葉が出ていないことで「なかよしクラブ」への参加を促された、ということをこのブログでも書いた。

案内チラシによると、

この教室は、運動面や言葉の発達がゆっくりなお子さん、子育てがやりにくいと思っている保護者を対象に、遊びを通じてお子さんの成長を一緒に見守り、お子さんに合った関わり方を知ってもらうことを目的として個別に案内しています。

というものだ。

健診後、夫にこのことを話したら、

「なかよしクラブって、小学校のなかよし学級のなかよし?!?障がい児学級ってこと!?」

と驚かれ、

「いや、そうじゃないと思うけど…、でも問題児が集まってくるのかもね…」

と私までひるんでしまった。

 

先月26日、その「なかよしクラブ」に初めて参加してきた。

受付で名札を作ってもらったり、水筒置き場の説明をしてもらったりしていたら、児童館でいつも一緒になるアっくんがやってきた。

「あれっ!?アっくんも!?」

そうかと思えば、別の子育て広場で一緒になるイっくんもやって来たではないか。

なんと、参加者9人中、2人が知り合い。

知っている顔がいるだけで一気に警戒感がなくなって、児童館や子育て広場のノリで「なかよしクラブ」を楽しめた。

 

内容自体は、リズム遊びや小道具を使った遊びで、知育を促してくれるようなプログラム。これまでも児童館やこべっこランドなどで参加してきたようなものと大差なかった。

ただ、参加者に対して指導員の先生たちの人数が多いのと、プログラムがしっかり練られている印象。さすが、他よりも何か身に付きそうなかんじがする。

サトイモも初めての参加にもかかわらず、ニコニコととても楽しそうだった。

 

終了後、アっくんのママと一緒になり、話を聞くと、アっくんは私たちよりも1カ月先輩で、今回が2回目とのこと。

アっくんママも私や夫同様、なかよしクラブは問題児クラスだと思って心配していたらしい。

「でも実際はそんなことはなかったし、1時間みっちり遊んでくれて、夜よく寝てくれるから助かる~」

と言っていた。

「言葉が遅いのは心配だけど、おかげでこのプログラムに参加できてお得な気がするよね~」

2人でそんな感想を言いながら、なんだか安心した。

  

アっくんのママはいつもきちんとしている人で、少し大人しめなアっくんをとても大事に育てている。

イっくんのママはやわらかで優しい雰囲気で、自由闊達なイっくんをいつも温かく見守っているかんじ。

いずれも「子育てがやりにくいと思っている保護者」にとうてい当てはまる母親ではなく、単に子どもの「言葉の発達がゆっくり」というだけなんだな、と思う。

アっくんもイっくんも、言われてみれば何かしゃべっているのを聞いたことがない。

ただそれだけ。

教室を見回しても、問題児に思われるような子は皆無で、どの親子も「子育てのやりにくさ」をにじませているような雰囲気は見られなかった。

 

うちのサトイモはというと、言葉は遅いし、もしかしたらADHDの可能性があるのかもと心配なくらい落ち着きがなく動き回るけれど、私自身は特別子育てが困難だとは感じていない。

「1歳後半が大変なのはみんな同じでしょ」

くらいにかまえている。

最近サトイモはイスや踏み台を持ってきて高いところのものを触ることを覚え、イタズラにどんどん磨きがかかっている。

けれど、それも成長の証。

「うちの子は悪くて大変!」

と愚痴るのも、実は楽しかったりする。

先日香港にいる中国人の古い友人とチャットでやりとりをしたときに、子育てに毎日疲れているという近況を書いたら、

「甜蜜的疲労

という言葉が返ってきて、とても気に入った。

そう。甘い疲労

すごく疲れるけど、そこがまた可愛いのが1歳後半なんだ。

 

一昨日、久しぶりに児童館に来ていたウっちゃんのママと、帰り道におしゃべりしながら歩いた。

言葉が出る、出ないという話になって、

「うちの子も遅いよ」

「いえいえうちの子も」

なんて言っていたら、なんとウっちゃんも来月からなかよしクラブに参加するという。

ウっちゃんママもやはりなかよしクラブが問題児クラスだと勘違いしていたようだった。

なかよしクラブには「赤組」と「黄色組」があるのだが、案内のときに「赤組」だと言われたウっちゃんママは、

「あかん、うちはイエローカードじゃなくてレッドカードや…」

と落ち込んだのだそう。区役所も保護者を不安にさせるような組名にするなよな~。

「赤組だったらうちと一緒だよ~」

ウっちゃんママには、来ている子たちはみんな普通だし、良いプログラムだよと伝えた。

参加できる私たちはラッキーかも、と。

サトイモくんやイっくんも一緒だって聞いたら、すごく心強くなった」

とウっちゃんママはホッとしていた。

「じゃあ来月は、ウっちゃんとも一緒に遊べるね~」

と言ってお別れした。

 

ウっちゃんママは私みたいなおばさんママと違って、若いきれいなお母さんだ。

若いのにしっかりした人で、いつも感心するくらいいろんな情報を仕入れていて、こべっこランドでこんなイベントがあるとか、中央区子育て支援にこういうのがあるとか、よく教えてもらっていた。

子育てに熱心なお母さん、と言っていいと思う。

 

区役所は趣旨を忘れてないか?

自分のことを棚上げして書くのだけれど、なんかモヤモヤする。

なかよしクラブの趣旨と参加対象者のことだ。

「子育てがやりにくいと思っている保護者」がいない。

来ているのは、「言葉が遅い子どもを心配する子育てに積極的で熱心な母親」ばかりだ。

それでいいんだろうか。

「言葉の発達がゆっくりなお子さん」が対象なんだから、それでいい。

いいかもしれないけど、なんか、なんか、違う気がする。

 

そういえば、過去に島根出身のママについて書いたことがあったけれど、彼女とはあの数日後に小児科で一度会ったきりだ。

naminonamimatsu.hatenablog.com

私はかなり頻繁に、周辺の児童館や子育て広場や親子イベントに顔を出しているので、どこかで会ってもおかしくないのだけど、まるで顔を見ない。

どうしているのかなぁ、と気になるけれど、連絡先も知らないからどうしようもない。

楽しくやってるかなぁ、あのまま孤立してなきゃいいけど…、とちょっと気になる。

 

近所の中国人の親子もそうだ。

naminonamimatsu.hatenablog.com

以前保育所のことを尋ねてきたことがあったので、この前区役所が発行している子育て情報誌を渡したけれど、彼女は華僑幼稚園が近くにあることも知らなかった。

 

本当に支援が必要なのは彼女たちだろうになぁ、と思う。

 

子どもの発達がゆっくりというのと親が情報弱者だというのとでは、全然ベクトルが違うけれど、同様に、

「子どもの発達がゆっくりだけど参加しない」

「子育てがやりにくいけれど参加しない」

という親子が、どこかに埋もれている気がする。

本当に自分のことを棚に上げて申し訳ないけれど、例えるなら、浅瀬で靴が濡れた程度の私たちがボートに乗せてもらえて、深みで溺れかけている人たちが存在すら気付いてもらえてない、そんな状況ではないのか。

 

そんなモヤモヤを夫に相談したら、

「熱心な親やからこそ、そういう教室に連れて行くんやろ。案内されても、面倒くさいから行きません、っていう親もおるんちゃうか。そもそも、言葉が出てるかどうかは問診のアンケートだけなんやから、しゃべってなくてもしゃべってるってウソ書いてる親もおるかもしれんし」

と言う。

「極端な話、ネグレクトしてる親がそんな教室連れて行くか?行かんやろ」

 

私は毎日いろんな場所に出かけていって、たくさんの親子を見るけれど、児童館や子育て広場では「余裕がなさそうな親子」を見たことがない。

それぞれスタイルはあるけれど、みんな子どもを大事にしていて、愛情が感じられる親子ばかりだ。

だから、ニュースで虐待やネグレクトについて耳にすると、まるで遠い国の出来事のような気がして、同じ国のこととは信じられない。

 

でも、この世には私が知っている世界とは別の世界が存在するのだ。

 

児童館や子育て広場に来ている親子は、子どもを大事にしているからそういう場所に来ているのであって、子どもを大事にしていない親はそもそも児童館や子育て広場で目にすることがない。

温かい場所を知らないで育っている子どもたちが、暗い家の中で泣いている。

やっぱり浅瀬の人が救ってもらって、深みで溺れている人は見つけてもらえない。

勝手な想像でしかないけれど、自分が温かな場所にいるのを棚にあげて、なんかそんなモヤモヤが募る。