パパっ子は不憫
もう10年以上前の話だけれど、職場で幼なじみのマーちゃんと偶然に出会ったことがあった。
彼は東京の大きな監査法人の会計士になっていて、うちの会社の監査に来たのだった。
マーちゃんは年齢以上の貫録を身にまとい、やはり会計士をしていた彼のお父さんそっくりになっていた。
業務終了後に少し時間が取れたので、お互いの近況などを少し話した。
マーちゃんは結婚して子どももいた。
仕事が多忙なので、家庭とのバランスが目下の悩みらしかった。
その多忙さは、業務上やり取りをしていたからこそよくわかった。
メールの送信日時は、平気で22時23時を超え、ひどいときは真夜中だったからだ。
あんまり父親が家にいないので、幼い息子が寝ぼけて、
「パパ~、パパ~」
と夜中にパパを探して歩いた、と奥さんが泣いて訴えたことがあったそうだ。
さすがにこんな働き方でいいのだろうか、とマーちゃんはつらくなった、と悲しそうに語っていた。
再会の少しあと、メキシコに海外赴任することになって、家族と一緒に移住するとメールがあった。
メキシコでなら家族との時間も取れるようになるのかなぁ、と思ったものだ。
それきり、マーちゃんとは連絡を取っていないけれど、今、マーちゃんはどんな働き方をしているだろうか。
日本に戻っているかもしれないし、また別の国に赴任しているかもしれないけれど、働き方改革によって夜中まで働くことはなくなっているかもしれない。
コロナの昨今では、在宅で仕事しているかもしれない。
でも、いずれにしても息子さんはずいぶん大きくなっているから、残念ながら父親と過ごすのをうっとうしがっていることだろう。
なぜそんなことを思い出すかというと、とにかく今、サトイモがひどくパパっ子だからだ。
朝起きれば、
「パパ?パパ?」
と夫を探す。
サトイモが起きるのは、たいてい夫がお仕事に行ったあとだ。
日中も、ふとした瞬間に、
「パパ?」
と夫を気にかけ、夫が帰ってくると飛んでいく。
もちろん、夫が家にいる間は、座っていればひざに乗り、立っていれば足にまとわりつき、寝ていれば懐に潜り込む。
コロナでステイホームとなって、サトイモが私以外に出会うのは夫くらいのものになってしまったうえ、外出できないゴールデンウイークのおかげで、サトイモと夫が一緒にいる時間がぐんと増えた。
結果、親子の絆がどんどん深められ、サトイモのパパっ子度がどんどん加速してしまった。
「こいつはホンマに俺のことが好きなんやな~」
と夫はデレデレだ。
サトイモが夫のことが好きになるのはしごく当然のことだと理解はできる。
車、バイク、ボート、とサトイモが憧れる乗り物に乗せてくれるし運転できるし、腕時計やiPadなどのアイテムも男子心をくすぐるのだろう。
大好きな「高い高い」や肩車も、私とは高さが違うから喜びも違う。
サトイモが「ザ・男の子」なので、「ザ・男性」な夫の趣味とぴったりなのだ。
それがつまり、父と息子ということなのかもしれない。
こんなはずではなかったのになぁ。
できればサトイモにはパパっ子になってほしくなかった。
夫は通常でも1日おきにしか帰ってこないうえに、仕事が普通に戻れば出張もまた以前どおりあるだろう。
『北斗の拳』の皇帝サウザーが「愛ゆえに…」と師匠の死が耐えられなかったように、パパが好きだとパパの不在が寂しくなるだけだ。
思い返せば、私も幼い頃はパパっ子だった。
いつ頃からあんなに父が嫌いになったんだろう。
実は今日は私の父の誕生日だった。
以前はちゃんとした服装をしてほしくて服をプレゼントしていたけれど、私が買った服は着ないことがわかって、最近はウイスキーを送ることに決めている。
アルコール類は必ず飲む。
今年は、Amazonのウイスキーと、「みてね」という写真アルバムアプリでサトイモのDVDを送った。
電話で「置き配」について説明したけれど、理解できたのかできなかったのか、年寄りは人の話を聞かずに自分の話しかしないので要領を得なかった。
今頃はウイスキーを飲みながら、サトイモのDVDを見ているだろうか。
…いや、あんなに言ったのに、荷物を取りに出るのをすっかり忘れているかもしれない。
そう、こんなふうに「子心、親知らず」を何度も経験してきたから、私は父に嫌気がさしてしまったのだ。
やはり、パパっ子は不憫なり。
サトイモ語辞典
サトイモの言葉が遅いと言うと多くの人が、
「そういう子は、しゃべりだすと一気にしゃべりだすよ~」
と言う。
『東京ポッド許可局』で言うところの、「うまいラーメンはうまい」「知っている人は知っている」と同様、「しゃべりだしたらしゃべりだす」のだろう。
…と信じて、ずっと待っているのだけれど、まだ「その時」は来ない。
しゃべり始めた暁には、故・橋本信也のごとく、
「時は来た!」
と宣言してくれるんじゃないか。するわけないか。
逆に、一気にではなく、ポツリポツリと話せる言葉は増えている。
成長記録のために、どんなことを発語しているか記しておこうと思う。
- わんわん … 犬、キツネやクマなど四足歩行の動物全般。ただし、「にゃーにゃ」(猫)と「めぇーめぇー」(ヒツジ)、「ぶー」(ブタ)だけは認識。
- ぴーぴー … 鳥全般。ただし、「こっこ」(鶏)と「ぽっぽ」(鳩)、「ちゅんちゅん」(スズメ)は私が指摘すると言いなおす。なぜか「かあかあ」(カラス)は指摘しても言わない。
- まんま … 食事、食べ物
- ぱん … パン
- ちー … チーズ
- ぼー … 葡萄
- じぇー … ゼリー
- たー … お茶
- じー … ジュース
- ぺん … ペン、えんぴつ、筆記用具全般。
- たった … 靴下
- くっく … 靴
- ぶ … 安心毛布となっているお気に入りのバスタオル。なぜ「ぶ」と呼ぶのか不明。
- ほん … 本、絵本
- しー … シール
- ぶーぶー … 車
- まる/まんま~る … 円、丸いもの全般(三角と四角も理解できているのに言わない)
- ねんね … ねんね
- ないない … 完食、お片づけ、消失
- ばーばーい … バイバイ、あっちへいけ
- ぱんぱん … オムツ(私が「オムツがパンパンだから替えようね」と声をかけることから)
- だいじ … 眼鏡、ハサミ、危険物全般(触ってはいけないもの=大事なもの、と認識しているらしい)
- ぱぱ … 父親、成人男性、パパの持ち物、パパが買ってきたもの、パパっぽいもの全般
- まま … 母親、成人女性、ママの持ち物、ママが買ってきたもの、ママっぽいもの全般
- ばぁば … 祖母、祖母が買ってきたもの・くれたもの
面白いなぁと思うのは、ほとんどの物事が「ぱぱ」「まま」「ばぁば」で表現されることだ。
例えば、車は「ぶーぶー」だけれど、バスについては「まま」と呼ぶ。
私と一緒に乗ったからだ。
同様に、小舟から大型客船まで、船舶全般を「ぱぱ」と呼ぶのは、夫のボートに乗った経験からだろう。
大好物のゼリーは、懐かしの『あまちゃん』かというくらい「じぇー!じぇー!じぇー!」と言っているくせに、プリンは「ばぁば」と呼ぶ。お姑さんが初めて食べさせてくれたからだ。
オーブントースターは「ぱぱ」、掃除機は「まま」、トミカは「ばぁば」、腕時計は「ぱぱ」、ビールは「ぱぱ」…。
この子の小さな世界は、「ぱぱ」と「まま」と「ばぁば」でできているんだなぁ、と愛しく思えてくる。
そんなことを考えていたら、ベビーくもんでもらう小冊子「やりとりレシピ」の11号で面白い一節に出会った。
生まれて間もない赤ちゃんにとって、世界は切れ目なくひとつに繋がっています。(中略)それが、言葉とともに、区別されていく。ものの名前を知ることは、「違うとみなす」ことと「同じとみなす」ことを経験していくことでもあるのです。走るものや動くものをみんな「わんわん」と呼びかけるのも、実は「世界をわんわんであるものとそうでないものに分かつ」力が働いているという事。そこにはもうすでに、まるごとの世界からの別れが始まっているのです。(「子育て研究室」村中季衣先生)
そういえば、私の子どもの頃の記憶で、こんな疑問があった。
「アメリカは外国、外国はアメリカ。あれ?でも中国ってじゃあ一体何!?」
幼稚園くらいの頃、それがずっと疑問だったことをいまだに覚えている。
幼い私には外国という概念が理解できなかったんだろうけれど、日本とアメリカと中国しかない世界ってどうよ。狭すぎるぞ。
(夫がよく見ている『正義のミカタ』というニュース情報番組も、中国、韓国、北朝鮮、ときどきトランプ、という世界だ。大人の見るニュース、狭っ。そしてなぜか国内政治の話は少なめ。)
いやいや、ずっとステイホームしている今の私の世界のほうがもっと狭い。
かと思えば、もっと狭い世界に閉じこもる小怪獣が一匹。
こないだから、やたらと棚におさまりたがる。
【追記】
先日、スーパーに買い物に行ったら、お惣菜売り場で突然、
「ぱぱ!ぱぱぁ〜!」
と叫び出した。
いったい何?!
と思ったら、唐揚げの横に置かれたレモンチューハイのことを指しているのだった。
「ぱぱ!」を翻訳するならば、
「ぼくこれ知ってる!パパが飲んでたやつ!ぼく知ってるよ!」
ということを私に知らせたかったのだろう。
わかったわかった。
でも、突然大声で叫ぶのはやめてくれ。
垂直落下など、4月の近況いろいろ
相変わらずradikoでラジオ番組をよく聴いている。
どんな番組でもよく話されているのは「おうち時間の過ごし方」だ。
この機会にお勧めの本や映画、ゲームなどが紹介されるけれど、2歳の小怪獣が地縛霊のようにくっついている私には、映画どころかテレビ番組でさえまともに見せてもらえない。
「今の間にちょっと休憩」とソファに腰を下ろしたなら、リモコンですぐにチャンネルを変えたり、画面周辺に上って邪魔をしたり、消防車やパトカーのサイレンを鳴らしたりし始める。
そうなると、別に見る気もないワイドショーやバラエティー番組なら見られても、真剣に見たい番組は録画して後回しになるというパラドックス。結局録画がたまっていくばかり。
本、スマホ、パソコンもすべて同様だ。
家にいるのに自由な時間は過ごせない。
サトイモと一緒に遊んで、食べて、寝る毎日。
可愛いから楽しいけれど、自分の時間はサトイモが寝ているときだけ。
最近は、寝かしつけのときに一緒に寝落ちしてしまって、朝まで寝ているパターンが増えた。
10時間くらい平気で寝る。
40過ぎてこんなに眠れるなんて、どっかおかしいんじゃないだろうか。
睡眠時間が長いと眠りが浅いときもあって、たくさん夢を見る。
先日見た夢は、「美女の頭蓋骨でできた聖杯」というのがあって、それについて書かれた文献を古本屋さんで探すというもの。
「これこれ!」と見つけたのは本ではなく手のひらサイズの頭蓋骨で、それを口にくわえ、「オエェェッ!」とえずく夢だった。
なんのこっちゃ。
今日はたまたま夜中に目覚めたので、ようやくブログが更新できた。
サトイモに話を戻すと、とにかく目を離すといたずらをされる。
これまで開けられなかったクローゼットの扉を簡単に開けてしまうようになって、余計に家の中の安全地帯はなくなった。
イスを移動させて悪さをするのも相変わらず。
ときどき、買い出しや散歩に出かけると、帰り道では地面にべったり。
好きなだけ寝とけ寝とけ。
地面がどれくらい汚いのか、よくわからなくなってきた。
夫はテレワークであっても、会社に出勤しているのと同じようにリズム正しく生活している。
平日は同じ時間に起きて、ネクタイは締めないけどそこそこキチンとした服を着て、まるで出社するかのように実家に通っている。
私だったら、「どうせわからないんだし」とパジャマで仕事してしまいそうだ。
そういうところは、我が夫ながら、ちゃんとしてるなぁ、と感心してしまう。
ただ、実家の「テレワーク中にオカン入ってくる問題」は相変わらずのようで、ときどき親子ゲンカが起きているらしい。
といっても、夫が一方的にクレームをつけているだけで、お姑さんは何とも思っていないだろうけど。
先日は、部屋に入るなと言われているからと、ドアの向こうで、
「岡江久美子死んだで~!」
と大声で叫んできたらしい。
部屋の中どころかテレビ会議の向こうまで聞こえ、
「えっ、岡江久美子死んだんですか!?」
とみんながびっくりしたという。
休みの日には、親子3人で「密ではない場所」を探して少し出かける。
週末には夫のボートへ出かけた。
車での移動だし、ボートパークでは誰とも接することがないので、これくらいのお出かけなら大丈夫だろうと思う。
海ではボラの大群が泳いでいた。
こんなとんでもないことになっている人間界とは無縁の海。
昨日も3人で公園へ散歩に行った。
いつもの公園はけっこう混むので、少し離れたところまで足を伸ばし、初めて行く公園へ。
アスレチック風の遊具にサトイモは夢中。
2歳には少し危ないかも、と最初は心配だったけれど、抜群の運動神経でぐんぐん登っていく。
螺旋階段風のステップも、ボルダリング風の坂も、吊り橋風のロープの渡り道も、鉄のはしごも、危なっかしいけれど、本人はいたって楽しそう。
夫も気にかけてくれているから大丈夫かな、と干渉しすぎずに見守る程度を心掛ける。
しばらく遊んでから、すべり台がだんだん熱くなっているのが気になってきたので、
「そろそろ帰ろうか」
と声をかけると、案の定、サトイモは言うことをきかない。
何度目かの、「もう帰るよ」のあと、
「じゃあ、次すべり台したら最後ね」
と声をかけると、サトイモは慌てて、踊り場からすべり台とは逆方向の吊り橋へ下りて行った。
そのとき、踊り場と吊り橋の間から、サトイモが垂直落下!!
ストーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
立ったままの姿勢で足から落ちた。
もちろん大声で泣くサトイモ。
駆け寄ってオロオロする私。
自分もその場にいたくせに、
「みてなかったん!?」
と私に言う夫。
夫が抱っこしてベンチへ。
どうしようどうしよう、骨折?捻挫? どうすればいいの!?
とりあえずどこが痛いのかサトイモに尋ねながら足を見てみるけれど、よくわからず。
しばらくすると泣き止み、立たせてみたら立って歩く。
しかも、また遊具に駆け寄って階段を上ろうとする!
「もうやめてやめて!」
止められてまた泣くサトイモ。
「なんだ、大丈夫だわ」
と私は苦笑い。
しかし夫は、
「いや、今は興奮しとうから痛みがわからんだけかもしれん」
と言う。
「家に帰ってからだんだん腫れて痛んでくるパターンちゃうか」
と脅すので、まだ遊びたがるのを無理やり抱き上げて帰路へ。
家に帰って靴を脱いだら、サトイモがやたらと私につま先をアピールしてくる。
「ここが痛いの!?痛むの!?」
と心配して靴下を脱がせて見てみたら、親指の爪の端が欠けて引っかかるのが気になっているだけだった。
それ3日前からずっとケアしてるやつ!!
身長の2倍以上ある高さから落下したにもかかわらず、結局、サトイモはスリ傷ひとつなく、今日もケロリとして家中走り回っていた。
にしても、今年1番肝を潰した。
うちの厄災はあまりコロナ関係なし。
緊急事態宣言その後
私が消化器内科を受診した一週間後に、7都道府県に緊急事態宣言が出た。
残念なことに兵庫県が対象になってしまっているから、いよいよ外出を自粛せざるをえない。
消化器内科での検査結果を聞くため受診予約をしていたのだけど、必要な外出に当たるのか不要不急なのかわからなくって、クリニックに電話で問い合わせたら、検査結果を電話で教えてくれた。
どうせ受付スタッフが、来てくださいとか予約延期しますとか言うだけだろうと思っていたのに、まさか先生が電話口に出てくれるとは思わなかった。
さすが緊急事態。
そして教えてもらった検査結果は、サルモネラ菌が検出されたということだった。
ええっ!?サルモネラ菌…。
このコロナで消毒、手洗いが励行されているご時世に、サルモネラ菌に当たるなんて、まったく恥ずかしいやら情けないやらだ。
そういえばうちの母は、菌が怖いからと肉や魚を切るためのまな板を用意していた。
私もそれを見習おうと、IKEAで小さなプラスチックのカッティングボードを買ったのだけど、
「そっちのまな板のほうが新しいなら、きれいなものを切る専用にしたほうがよくない?」
という夫のひと言で、肉魚専用ではなく、果物など生で食べるもの専用のまな板として使っている。
同じことのように見えて、これはやっぱりちょっと違う。
肉を野菜や豆腐などと一緒のまな板で切るだけで、肉を切ったり扱ったりするときの意識が希薄になっていたような気がする。
必ず菜箸を使って肉をつまんでいたのが、手づかみでフライパンに入れたりしていたかも。
日常生活でなんとなくゆるゆるになっていた意識を締めなおさなきゃ。
昔はサルモネラ菌といえば卵だったよね
コロナ巣ごもり生活の中、サトイモは家の中で遊ぶにも限界がきている。
オモチャで遊ぶよりも、私と一緒に家事を手伝うほうが楽しいようで、まとわりついてくるときは渋々、お手伝いをしてもらう。
もちろん2歳になったばかりの子どもにまともな手伝いなんてできないため、必死でそれっぽく見えるものを探し、洗濯かごを一緒に運んでもらったり、皿を一枚ずつ渡して食器棚に片づけさせてみたり、白米を研ぐときに手を入れてかき混ぜさせたりしている。
「お手伝いしてくれたからママすごく助かった~、ありがとう~」
というと、サトイモもすごく得意げで満足している。
あるとき、同学年のマリちゃんのお母さんが、
「こどもちゃれんじの卵を割るオモチャでずっと遊んでいるから、試しに本物の卵を割らせてみたらちゃんと割ることができてビックリしたよ」
と言っていたのを思い出し、サトイモにも生卵を割らせてみることにした。
結果、握りつぶす!
殻は丁寧に取り除いてオムレツにしたけれど、
「サトイモがお手伝いしてくれた卵で作ったんだよ!」
と言ってもサトイモは食べなくて、結局私一人で食べたのだった。
オムレツだったらよく食べるのに、最近は食べたり食べなかったり「食べむら」が激しい。
最近は卵の殻も洗浄・殺菌されているから、サルモネラ菌はかなり減っていると聞くけれどどうなんだろう。
もしあの卵がサルモネラ菌に当たった原因だったのならば、サトイモの「食べむら」も野生のカンみたいなものかもしれない。
夫のテレワーク諸問題
夫は緊急事態宣言以降、完全にテレワークとなった。
サトイモは夫にも「パパ~!パパ~!」とまとわりつくので、うちでは仕事にならない。
落ち着いて仕事ができる場所、特にテレビ電話会議のための部屋が必要だというので、大急ぎで実家に部屋を用意したらしい。
実家の一部屋、私との結婚に怒って家を出て行ってしまった娘さんの部屋を改造したそうだ。(娘さんは今は結婚もされて、子どももできて、実は夫はおじいちゃんになってしまったのだけど、その波乱を書くと怒られそうなのでここまで。)
夫はうちと実家と二つ住まいがあるからいいけれど、仕事部屋が確保できなくて困っている人もたくさんいるだろう。
テレワークで子育てもできて一石二鳥、なんてニュースも耳にしたことがあるけれど、子どもをみながら仕事なんてできるのかなぁ、と私は疑問に思う。
特にサトイモなんか、仕事しながらなんてとても無理。PC壊されちゃう。
夫はそんな恵まれた環境にいるのに、
「効率が悪くて仕事が進まない!」
とストレスフルで頭を抱えている。
Wifiの問題ではなく、社内のネットワークにログインするプロバイダ的な何かが混んでいて、ものすごく動作が遅いのだそうだ。
システム部に掛け合っているけれど、改善するにはまた別のシステムをインストールしなければならなくて、そのためには会社にいかないといけないらしい。
あまりメディアなどで取り上げられていないけれど、IT関連の業種の人たちは今てんやわんやでは?
セッティングだけでも手一杯なうえ、これまで想定していたテレワークの人数を超えてネットワークを使っているだろうからトラブルも多々発生しているんじゃないだろうか。
夫は文句言ってるけど、私はシステム部が気の毒でしょうがない。
そのうえ、夫のストレスはお姑さん、つまり「おかん」だ。
お姑さんが突然ドアを開けてジュースやおやつを運んできたり、
「はるくんごはんできたで~!」
と呼びかけてきたりするのにも悩んでいるそうだ。
「おかん勝手に入ってくんな!」
と毎回イライラするらしい。
部長の威厳もガタ落ち。
お姑さんが遊びに来てくれたときに聞いてみたら、
「あの子、おやついらんって言うけどな、出した分全部食べてるで。ほんまは欲しいん、うちわかってんねん」
とのこと。
いくら「勝手に入るな」と言ったところで、おかんには暖簾に腕押し。
(ちなみにお姑さんは緊急事態宣言後も買い出しのついでも遊びに来てくれる。よくないけど、ありがたい。)
ちなみに、夫が言うテレビ会議のもう一つのデメリットは、
「あ、あれどうなってたかな、ちょっとすぐ調べて」
なんて隣の席の部下に耳打ちできないことらしい。
人が集まってするリアル会議のほうが効率がいいそうだ。
特に英語を使った会議では、対面ではなんとなく理解できても画面越しでは聞き取りができなくて苦労するらしく、夫はNHKの語学アプリで英語の勉強を始めた。
「早く会社行きたい…」
帰ってくるたび夫が愚痴をこぼしている。
父は運転免許更新できず!
緊急事態宣言も出てしまい、いよいよ実家には帰れなくなった。
母の病院からはもちろん一切の面会をお断りするとの封書も届いた。
今は神戸から高齢者へ会いにいくなんて、もってのほかだと思うので、父には一人で頑張ってもらうしかない。
そんな父が運転免許証の更新時期を迎えた。
本当は免許返納してほしかったけれど、更新するという。
昨日更新に行って、結果は更新不可とのこと。
不便になるけれど、これで良かった。
ところが、コロナの影響で免許有効期間は3カ月延長らしい。
父にしたラッキーだけれど、更新できないような能力の人間が運転して、この3カ月で事故を起こさなければいいんだけど…。
ひと安心
前回3日間発熱が続いたと投稿した翌朝、やっと熱が下がった。
ビバ平熱!
熱も下がったし、血便も出たし、よかったこれはコロナじゃない!
…ん?血便?!?!
えらいこっちゃ!
人生初の血便にビビってしまった。
そういえば、下痢が始まったときに黒い便も出てビックリしたっけ。
ネットで検索すると、大腸がんとか怖い病気が並んでいる。
これは内科ではなく、ちゃんと内視鏡検査できる病院に行った方がいいかもしれん。
そう思い、一番初めに電話したのが、神戸低侵襲がん医療センターというところ。
もし私ががんになったら、ここで治療したいと前々から思っていた最新型の医療機関だ。
私的にはもう大腸がんの気分。
消化器内科のホームページでは、下痢でも「気軽に受診してください」と書いてあるし、気軽に予約してみた。
電話で発熱について尋ねられ、経緯を追って病状を丁寧に説明すると、確認して折り返しますと言われる。
しばらくしてかかってきた電話で、
「当院はがんの患者の様専門の病院でして、今熱が下がっているということですが、感染症の可能性が否定できませんので」
と断られてしまった。
発熱してたらがんじゃないのかよ〜?
でもまあ、断る理由は理不尽ではない。
次に内視鏡のある病院に予約電話をかける。
病状を尋ねられたので、腹痛・下痢・血便を強調。
やはり熱のことを聞かれるが、
「土曜日から37度台の熱が出ましたけど、今朝はもう下がってます!」
とふわっと流す。
予約がいっぱいとのことだったが、予約外で待つのを前提で受診OKとのこと。
よかったぁ。
午前中夫に会社を休んでもらっていたので、車で送ってもらい、サトイモはその間面倒をみてもらって、私はクリニックへ。
初めての病院。
待合室ではついたてで他の患者から隔離される。
「こんなとこでごめんなさいね」
と、かんじよく応対してもらって、別に悪い気はしない。
予約患者の合間にねじ込んでもらって診てもらう。
初めて肛門見られた。
おばさんだからもう平気だけど、そこそこいい男風の先生(帽子にメガネにマスクでは何も定かじゃない)にお尻を出すのは、20年前だったらすごく抵抗があったかも。
先生の見立てによると、細菌性の腸炎ではないかということだった。
「焼き肉で生焼けのまま肉を食べたとか、食べ物に心当たりありませんか?」
と言われるが、さっぱり記憶がない。
黒っぽい便については話したけれど、
「コールタールのような黒ではなかったです」
というところで重要視されなかったのかも。
血便は、腸の奥からの出血ではなさそうだということだった。
もらった薬を飲むと、ずいぶん症状が和らぐ。
いろんな病気を疑ったけど、細菌性腸炎って、つまり食中毒…。
だいたい同じもの食べてる夫やサトイモにはそんな症状は出てない。
心当たりなんてないのになぁ…。
でも、生焼けといえば、料理の途中で味見するとき、
「やべ、まだ完全に火、通ってなかったわ」
ということがないかというと、…あるかもしれない。
残り物のおかず、時間が経ったものは私が食べて処分してる。
賞味期限切れのものも、母から受け継いだ「まだ大丈夫精神」で私が食べてる。
サトイモが床に落としたパンも、
「遊ばないで食べなさい!」
と叱りながら拾って食べてる。
こうなると、心当たりありすぎ。
これからは改め…、られないかなぁ。もうライフスタイルだもんなぁ。
でも生焼けだけもっと注意しよう。
実は診断は確定ではなくて、採血と採便の検査結果が出て確実となる。
また来週。
「新型コロナウイルスはまだ不明なことが多くて、絶対にコロナではないとは言い切れません」
と先生は言った。
新型がやっかいなのはそういう点なんだろう。
今回、相談センターへの電話などで感じたことは、「国や行政の方針は、感染拡大防止ではなく医療崩壊防止のほうに重きをおいている」のではないかということだ。
それがいいのか悪いのかはわからない。
電話応対のお姉さんは親身で感じよかったことは書いておく。
発熱3日目!どうしよう?!
土曜日は、サトイモの2歳のお誕生日だった。
お姑さんがバースデーケーキを買ってきてくれて、家族でささやかなお祝いをした。
お姑さんのプレゼントのはしご消防車に、私たちからの「アンパンマンことばずかん」、一度に2つも魅力的なオモチャがやってきて、サトイモもご満悦。
楽しい会になった。
…けれども。
私は朝からお腹の調子が悪くて、腹痛と軟便を繰り返していた。
原因不明の腹痛。
でも、出せばそれなりに治まるので普通に過ごしていた。
サトイモが新しいオモチャに夢中なのをいいことに、ダイニングで1人スマホに釘付けになっていた。
気付けば手足が冷えきって、ひどい悪寒。
「暖房もつけずにそんなん見とうからや」
と夫に嫌みを言われつつ体温を計ったら、37.6度。
胃腸炎?
胃腸風邪?
まさか、ねぇ…。
咳は全然出てないし。
腹痛から症状が始まるって例は聞いてないし。
けれども。
そして月曜日の今になってもまだ熱が下がらない。
明日で4日、37.5度以上の熱が続いたことになる。
いろいろ知りたくて、兵庫県の「帰国者・接触者相談センター」に電話してみた。
気になるのは、もし私がコロナに感染していたら今後どうなるのか、どうすればいいのか、ということだったのだけど、
「まずはかかりつけ医を受診してください」
という以上のことは教えてもらえず。
ちなみに、夫に今月ヨーロッパ渡航歴があることを告げ、
「もし私が検査を受けることになったら、夫も検査を受けることはできますか?」
と聞くと、症状がない以上は検査を受けられないとのこと。
「無症状の陽性者からも感染するって聞きました。夫にその可能性があってもですか?」
ちょっと納得がいかなかった。
夫は毎日電車通勤してるんですけど。
これじゃ、行政は何の対策もできてないに等しいわ…。
検査を受けることになったら、検査機関はどこなの?
そこまでの移動手段はどうすればいいの?
サトイモは何時間預ければいいの?
陽性だったら、私は入院しないといけないの?
気になることは何一つ教えてもらえなかった。
明日受診するにしても、何の用意もできやしない。
38度前後の熱があるだけで、いたって元気なのが救い。
でも、そんなの普通の風邪や腸炎じゃない気がする…。
でも、ほんとに私が入院するってなったら、どうしよう?!
入院拒否して自宅療養、できるかなぁ。
子育て本を買うくらいの閉塞感
前回のブログで「母の病院の面会時間が5分に制限されている」と書いたけれど、その直後に病院から封書が届いて、一切の面会ができなくなった。
姫路の病院でコロナウィルス感染者が出たためだ。(うちの母の病院ではないけど。)
父によると、病院に行っても母には会えず、入り口でタオルの交換だけをしているという。
私は母が入っている病院をあまり信頼していないので、家族の目がなくなった病室が不安だ。
母は自分の手が重なっただけで、爪が皮膚に食い込んでケガをしたりする。ちょっと当たっただけでアザができたり表皮剝離したりするのだが、そういうのもちゃんと見ていてくれているだろうか。
ぞんざいに扱われてないかな。ちゃんとケアしてもらっているかな。
お母さんかわいそうに、という私に対して父は、
「お父さんは奥まで歩いていかんで済むから助かる」
となんともひどい言い草。
病院の入り口から病室までがしんどい。それほど父には歩行が負担になってきているようだ。
ただ、病院の往復が父の唯一の運動だろうから、それをしなくなってしまったら余計に歩けなくなるんじゃないか。
いくら言っても父には「歩かないと歩けなくなる」という自覚が乏しいのが悩ましい。
そうこうしていると、再び病院から封書が来た。
今度はなんだろうと思ったら、マスクのことだった。
これまでも冬期はインフルエンザ予防のために病院内では必ずマスクをすることになっていて、マスクを忘れた人はナースステーションでマスクを購入していた。
1枚10円。
それが妥当な値段かどうかはわからない。
私もうっかり忘れて、2回買ったことがある。
面会謝絶になる前、マスクが入手困難なのを受けてうちの夫は、
「家の在庫なくなったら、お義母さんの病院に行って10円で売ってもうたらええやん」
なんて言っていた。
夫は冗談だったけれど、けっこう本気でそうしていた人がいたかもしれない。
そんなわけで、病院からの封書の内容は、
「高額転売禁止を受けてマスクの販売を中止したので、必ずマスクを着用してきてください」
という旨の通達だった。
病室に入ることもできないのに、なんだかなぁ。
そして、いちいち何かあるたびに入院患者の家族全員に通達を送らないといけない病院事務の皆様、どうもご苦労様。
もうすぐ2歳の誕生日だというのに…
そんな私の日常は、ほとんど日がな一日サトイモと二人で過ごしていて、可愛いのか可愛くないのか、だんだんわからなくなってきた。
何かを必死で訴えてくるけれど、何が言いたいのかさっぱりわからない。
思い通りにならないと私の足にすがりついて、がーがー泣く。
泣かれても私は平気なので、いくらでも無視する。
それがよくないのか、余計にまとわりつく。
昨日は私が大をしている最中にトイレに入ってきた。
ちょっと待っててという私の言葉は全く耳に入らず、ストローマグと絵本を持参で、私のひざによじ登ってくる。
やめて、といっても、便座に座ったままの私は抵抗ができない。
私はお尻も拭けないまま、仕方なくサトイモを抱っこした。
絵本をひととおり読み聞かせ、
「はい終わり、もう下りて」
と言ってもまだ下りない。
「叱らない育児」では、理由を添えて何をすべきか丁寧に説明をする、何度も言い聞かせる、というのがいいらしい。
「お願いだから下りて。ママはお尻を拭かないといけないの。サトイモが乗ったままだとママお尻拭けないから困るでしょう。下りてくれないかなぁ」
懇願するように何度も何度も説明したけれど、サトイモはガン無視。
やがて、太ももの上にストローマグのお茶をこぼされて、私はブチ切れた。
「ええ加減にせぇよ!!!!!下りろ言うのがわからんのか!!!!」
私はお尻を拭かないままサトイモを廊下に降ろし、絵本を床に叩きつけ、トイレのドアを閉めてカギをかけた。
サトイモは大泣きでドアをバンバン叩いていた。
叱らない育児、全然成功しない…。
確かに、怒って泣かせたところで言うことを聞くかというと、聞くことはない。
でも、静かに説明しても決して言うことは聞いてくれない。
いつまで経ってもまともなコミュニケーションが取れない…。
子どもの後追い、というのは成長過程で必ずあることだけれど、執着がひどい気がする。
いまだに指を口に入れる。
私の愛情が足りないせいなのかな、とときどき思う。
一時期、いくらやっても寝かしつけがうまくいかないとき、ベビーベッドに放り込んで放置していた。
がーがー泣くけれど、30分から1時間くらいで泣き疲れて寝てくれる。
欧米ではそんなやり方で「セルフねんね」させているらしい、というのをネットで読んで、これは楽な方法だと実践していたのだ。
夫は大泣きするサトイモをかわいそうがったけれど、私はいくら泣かれたって、
「抱っこしてトントンしてやってた間に寝なかった自分が悪いんでしょ」
と、なんとも思わなかった。
今、もしかしたらあのときの放置ねんねの寂しさがストーキング行為と指しゃぶりになっているんじゃないかという気がしている。
育て方、間違ったかなぁ…。
これまでなら、児童館や子育て広場で先生たちに相談したりできたけれど、コロナで閉室しているから、一人で悶々とするばかり。
何かヒントが欲しくて、こんな本を買ってみた。
まだ半分しか読んでいないけど、読みやすい文章ですんなり頭に入ってくるし、論理的ですごく納得できる。
Q&A形式なので、家事の合間にちょっとずつ読める。
これから読み進めるのが楽しみだ。
ちなみに、この本では欧米式の幼児の独り寝を推奨していない。
その理由は、親との接触が多かった子どもほど良好な発達をすることがDNAの分析でわかっているかららしい。
サトイモの発達が遅いのは、独りで寝かせたうえ、重いからって私があんまり抱っこしてなかったせいかもなぁ…。
反省しつつ、それでも、ゴミ箱からゴミを放り出されるとついつい泣くまで怒鳴りたくなる。
私が平常心を得られるまで、何冊の子育て本を読むことになるだろうか。