3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

顔の筋肉をほぐそう。

4月の上旬は女子力アップ作戦を実行していた。

9日に神戸でオーケンライブがあったので、「いつなんどき街中でオーケンと遭遇しても大丈夫なように」と気合いが入っていたのだ。

めったに行かないエステにも行った。

エステといっても、リンパマッサージ専門店のフェイシャルコースなのだけど、小顔効果はあったと思っている。

 

そのリンパマッサージ専門店には、これまで何回か行ったことがあった。

側弯症で骨格が歪んでいる私には、整体やマッサージによる身体のメンテナンスが欠かせない。

鍼灸整骨院などの医療に近いところから、アロマを使ったリラクゼーションなどのエステっぽいサロンまで、いろんなところに行っている。

そのお店は後者のほうだけれど、美容というよりは体質改善が中心のメニューだ。

 

どこのお店でも「どこがお疲れですか?」と尋ねられるが、私の場合、どこと言えないほど全身がガタガタだ。

パソコン仕事による眼精疲労と首・肩のこり、介護による腰痛、オールスタンディングのライブによる足腰の疲れと張り、などなど。

ただ、仕事と介護は言えるけど、最後のは好きでやっているので他人様に言いづらい。

それに、コンサートホールのライブしか知らない人には、ラウドロックのオールスタンディングのつらさは伝わらない。

ライブハウスに行って、前方の押し合いへし合いを経験した女性じゃないと、あのしんどさはわからないと思う。(それに、ある程度の身長と体力がある男性だとそんなにつらくないかも。)

だからよっぽど親しくなった施術者の人にしか話さないのだけど、そこのスタッフさんは、

「わかりますよ、私、ブラフマンのファンなんで」

と言ってくれて、すごく心が開けたのだった。

 

フェイシャルコースといっても、顔だけじゃなくて、首とデコルテまでを含む。

特にに私の首こりは、「ほぐすのに施術者の息が上がるほどの固さ」とスタッフ間の申し送り事項になっているほどひどいらしい。

それは自覚している点だけれど、無自覚だったのは顔の筋肉の張りだった。

 

「歯ぎしりをするとか、歯をくいしばる癖はありませんか?」

全く心当たりがなかったので驚いた。

「この部分がものすごく固くなってますよ。ここが固くなっている方は、噛みしめ癖がある方が多いです」

と指摘されたのは、いわゆるエラの部分。

 

昔、私には気に入らないことがあると眉をひそめる癖があって、気づくと眉間に深いシワができていた。

それに気づいて以降、ストレスがかかっても眉を動かさないようにすごく気を付けていたのだけど、それをしない分、今度は無意識に歯をくいしばっていたらしい。

確かに、イライラしたときは「イーッ!!」と唸りつつ、怒りを噛み殺しているかもしれない。

どうりで、エラが張って顔が大きくなるはずだ。

その部分をほぐしてもらうと(かなり痛かった!)、顔のラインも少し小さくなったし、首回りも少しスッキリした。

そこが改善されると、首の前の部分の張りも取れるらしい。

耳の下から喉の窪みに向けて斜めに走るスジ(というかリンパ腺?)がいつも張っていて首を太く見せているのだけど、緊張がほぐれて首も細くなった気がする。

 

目の周りをほぐしてもらうときも「イテテテ」と声が出るほど痛く、顔全体の筋肉があちこち固くなっていることに驚いた。

顔こりから首こりへ移行していたり、顔こりから頭痛を起こしたりもしてたんだろうなぁ。

 

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私はいくらでも外でマッサージを受けることができるけど、母はそんなわけにはいかない。

だから、朝晩、母の顔を拭いたあと保湿ジェルを塗ってあげるときに、自分がしてもらうようなフェイシャルマッサージをしてあげる。もちろん、時間があるときだけだし、見様見真似の簡単なことだけだけど。

外出しない母の肌はツルツルだけど、筋肉が固いので母の顔はカチカチだ。

 

大脳皮質基底核変性症は全身の筋肉をこわばらせてしまう病気だけれど、手足だけじゃなく顔の筋肉まで固くしてしまう。

口と舌をうまく動かせないのでおしゃべりができなくなってきたし、表情筋を動かせないので笑顔が出なくなってきた。

 

そして、介護する側にとっては、何が困るって、歯磨きのときに口を大きく開けてくれないことだ。

「はい、お口開けて~」

と声をかけるとちゃんと開けてくれる日もあれば、ちっとも動かないこともある。

最初はよくてもだんだん閉じてきて、歯ブラシを引っ張り出すのに苦労することもある。

「開けてくれ~」

「開けろ~!」

「開けんかい、こら!」

と、だんだんと掛ける言葉もガラが悪くなっていく。

 

昔親戚のおばさんたちが集まっておしゃべりしていたときに、介護の苦労話になって、

「歯があるんとないんとではだいぶ違う。総入れ歯やったらラクやけど、残っとったら大変」

と言っていたのを思い出す。

うちの母は、学生時代に「歯の女王」に選ばれかけたくらい丈夫な歯をしているので、毎日の歯磨きが大変だ。

うがいができない人間のオーラルケアは本当に面倒で、歯磨き用のウェットティッシュを使って口腔内を拭き、泡の出ない歯磨き剤を使ってブラッシングし、時には歯間ブラシや口腔ケアスポンジを使うなど、いろんな道具をフル活用している。

 

しかも、手抜きをすると歯肉炎が悪化するので、ズボラをしたことがすぐばれてしまう。

先日、うまく口を開けてくれないので歯磨き用ウエットティッシュで口の中を拭いただけで寝かせていたら、翌朝右頬が赤くなって熱を持っていた。

右頬だけなので風邪などではないことは明らかで、虫歯かと思い、施設に巡回に来ている訪問歯科さんに診てもらったら、奥歯の歯肉炎が悪化していたせいだとのことだった。

 

ケアマネさんも、母が上手に口を開けないせいで施設でも口腔ケアがうまくいっていないことを心配してくれて、訪問歯科の先生にアドバイスをもらってきてくれた。

そこで勧められたのが、オーラルバイトという口を開けさせるスポンジの棒。

口を開けさせてオーラルバイトを噛ませ、その間に歯磨きをする、というシロモノだ。

マンガでよくある、ワニの口のつっかえ棒みたいな発想だ。

oral-bite.com

 

とりあえず施設内で使ってもらって、使い勝手が良かったら家でも使います、という話になっていたのだが、しばらく経っても「良かったですよ」という声がない。

「どうでしたか?」

と尋ねると、

「歯磨きはしやすくなったんですが…」

と言葉が濁る。

「家でも使ったほうがいいですか?」

「どうでしょうか…。せっかく購入していただいたんで、継続して使用していますが…。一度噛まれると、今度は噛んだまま離されなくて、取るのに苦労するんです…」

 

考えてみたら当然のことだ。

ワニの口だって、より大きく開けたら棒が倒れて自由になるのに、閉めようとするからつっかえるんだもの。

閉めようとするものを無理やりこじ開けたら、つっかえるに決まっている。

便利にするつもりが、介護スタッフさんにより負担をかけてしまったことに申し訳なく思った。

 

結局、母の口周りの筋肉が動きやすくようにマッサージしてあげるくらいしか、今のところできることがない。

特に、噛みしめ癖で張るエラのところね。