何かとちょっと惜しい『楊貴妃 Lady of The Dynasty』
中国の歴史ドラマというか、時代劇をよく見ている。
なかでも『武則天-The Empress-』が大好きだ。(6月から再放送が始まったって!)
なんといっても、ファン・ビンビン(範冰冰)が美しすぎてうっとりする。
中国ナンバーワン美女の称号は伊達じゃない。今、アジア一、いや世界一の美女は彼女だ(←私見です)。
これまでも、『墨攻』や『孫文の義士団』、『新少林寺』といった映画で彼女の美しさは知っていたけれど、主人公の妻役・相手役として英雄に花を添えるスタンスだったし、取り立てて注目はしていなかった。
しかし、主役となると存在感が違う。
百花繚乱の後宮を描くドラマだから衣装やメイクの派手さが違うというのもあるけれど、彼女の顔立ちやスタイルがそれにドはまりしている。
ほかの女優さんたちもみんな美しいのだけど、群を抜いて輝いているのだ。
あー、もう、この顔大好き!
そう思っていたところ、彼女が主演の映画『楊貴妃 Lady of The Dynasty』のチラシをゲットした。
世界三大美女の楊貴妃をファン・ビンビンが演じるなんて、なんてぴったりなの!?
しかも、楊貴妃を愛した玄宗皇帝にはレオン・ライ(黎明)!(何を隠そう私は香港四天王の中でレオン・ライが一番好き!)
楊貴妃の元々の夫である寿王には元・飛輪海のウー・ズン(呉尊)。
豪華キャストじゃないか。
監督はチャン・イーモウ(張芸謀)、ティエン・チュアンチュアン(田荘荘)、シー・チン(十慶)となっていて、チラシを読むとジャン・ウェン(姜文)の名前まである。
こんなに巨匠が並ぶなんて、なんて豪華な…、んんん??
オムニバス形式じゃあるまいし、監督名が連名って何??
それにしても、こんなに豪華キャスト・巨匠監督作品なのに、レイトショー上映??
そのうえ曜日限定??
ネットで検索しても、公式サイトすらない。
よくよく見たら2015年の作品である。2年も前の作品??
YouTubeで全編アップされているし。(日本語じゃないけど。)
公式情報の代わりに出てくるのが、キャストが降板したとか、セクシーシーンが問題になってカットされたとか、製作上のゴタゴタやゴシップ。
日本のサイトではらちがあかないので百度で中国のサイトを見てみると、日本の映画情報サイトと監督情報が異なっている。
(↓いきなり音が出るので気を付けてね。)
チームとしてチャン・イーモウやティエン・チュアンチュアンが協力しているけれど、主となる監督はこれが初監督作品となるシー・チンみたい。
チャン・イーモウ監督作でひっそり上映なんておかしいと思った。
これらの状況から見えてくるのは、大きな劇場で大々的にやらないにはそれなりの訳があるってこと。
とはいえ、作品を見ないことには始まらないので、今週の水曜日に新開地のCinema KOBEへ見に行ってきた。
とにかく、おとぎ話のように繰り広げられる映像美の連続。
期待どおりファン・ビンビンはとても美しく、それだけでよしとするしかない。
ただ、恋愛対象であるレオン・ライはというと、正直、最初誰だかわからなかった。
あれ?? 顔の幅がずいぶん広くなった??
そういう役づくりなのか、それとも、男性は歳をとると顔の面積が増えてしまうのか…。
皇帝らしい風貌だけどオヤジくさいなぁ、と残念に思いながら見ていたけれども、二人の恋のかけひきが始まって以降、玄宗皇帝が魅力的に見えてきた。
寿王と別れて出家した楊玉環(まだ貴妃じゃないから)を自分の妻に迎えたい玄宗皇帝は、わざわざ彼女に会いに寺まで行く。
国の最高権力者がそこまで熱心に求愛しているにもかかわらず、楊玉環は、
「権力を使う以外、皇帝に何ができるのですか」
と嫌味を言い、拒み続ける。
それに対して、
「わかった!では最高権力を使うのみだ!」
と意地になって彼女を自分のものにしようとする皇帝の姿は、単なる駄々っ子みたいで愛らしい。
楊玉環が本気で彼を嫌っているなら傲慢で嫌な奴でしかないけれど、内心はまんざらでもないのがわかるだけに歯がゆいのだ。
金も力もある大人の男性が、恋愛に対しては不器用にしか扱えない姿にキュンとくる。
一言でこの映画を紹介するならば、「美しい映像で綴る、絶世の美女とオヤジ皇帝の恋愛の始まりから終わりまで」といったところ。
(補足:映画の製作については、下記のブログが大変参考に なりました。)
『王朝的女・楊貴妃』監督インタビュー①「愛と死が鮮烈に描かれている」:姜文(ジアン・ウェン) - 華流ドラマ・映画まとめ速報
ただ、『武則天-The Empress-』ほど夢中になれなかったのはなぜか。
なんか物足りない。
武媚娘と楊玉環の性格の違い?
時代設定の違い?(『楊貴妃』は歴史ものといった性質ではないようで、礼儀作法や言葉遣いなど時代考証がゆるいみたい。)
それとも、映画館でイビキをかいていたジジイがいて集中できなかったから?(しかも最初から最後まで!!ひどすぎる!!)
いろいろ考えたけれど、やっぱり後宮ドラマの面白さは女たちの戦いにあるのだと気が付いた。
愛情、嫉妬、友情、裏切り、陰謀、復讐!
『武則天』はそんな女たちの情念がメインだけれど、『楊貴妃』にはそれがない。
後宮ものは、タイプの違う美しい女性がたくさん出てきて、それぞれがいろんな恋愛の形を描くから面白い。
それを描くには2時間では足りないだろうなぁ。
後宮は映画に不向きな題材と言えるかもしれない。
我が国においても、源氏物語や大奥の映画がそれほど面白くないのも、2時間では足りないことを物語っている。