3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

『ベルギー奇想の系譜』展を見ながら、いつか会社をやめる日を夢見る。

7月6日の夜はオーケンのバンド「特撮」のライブだった。

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ふだんから平日でもライブや演劇などいろいろ遊びに行くけれど、オーケンに会えるときは特別!
気合いを入れて夏休みを1日取った。(わが社では5日間の夏期休暇を好きなときに取れるのだ。)

せっかくの休暇は有効に使いたい。
それで、昼間は兵庫県立美術館の『ベルギー奇想の系譜』展へ行くことにした。

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一緒に特撮のライブに行くオーケンファンの友達に打診すると彼女も休暇を取っているというので、美術館へ誘った。

休みの日なんだから思いっきり朝寝坊、というのも魅力だったけど、午後から出掛けて夜のライブに差し支えてはモトもコもない。
朝イチで行くことにした。

特撮に『シーサイド美術館』という曲があるが、兵庫県立美術館HAT神戸の港を臨む場所にあり、まさにシーサイド美術館である。
けれど、「やってんだかわからない美術館」という歌詞とは真逆で、平日午前中の美術館は意外に賑わっていた。
私たちがふだん会社で退屈な時間を過ごしている頃、別の場所では全く異なる時間が流れているらしい。まるで旅人になった気分だった。

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私はブリューゲルのヘンテコで寓話に満ちた絵が大好きだ。
これまでブリューゲル単品でしか見ていなかったけれど、彼が描いていた不思議な生き物たちはもともとはヒエロニムス・ボスがルーツだということがよくわかる展示になっていた。
ブリューゲル後、マグリットやアンソール、はたまた現代のアーティストたちまでに不思議で幻想的なアートが引き継がれていく構成も面白かった。

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展示されていたブリューゲルは別の展覧会で見たものがほとんどだった。(好きだから、そりゃ見てるさ。)
そんな好きでもないマグリットデルヴォーの作品も、なんか見たことあるのが多いなぁ、と思っていたら、かなりの割合で姫路市立美術館の所蔵品だった。なじみがあるはずだ。
そんなこんなで、ブリューゲルマグリットに新鮮味はなかったけれど、今回の大収穫はフェリシアン・ロップスという画家だった。

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悪魔や死神、骸骨や退廃を描いたクールな画風でめちゃくちゃカッコいい!
さすが、ボードレールと友達なだけある!

見終わったあと、一緒に行った友達と何が一番良かったか話していたら、彼女もロップスだと言っていた。
これ、ロップスブーム来るんじゃないの?!?!?
物販でロップスTシャツとかあったら売れそうな気がするけどなぁ。(実際にはひとつもなかったけど。)

展示作品もとても素晴らしかったけれど、ところどころで来場者を楽しませるための仕掛けが感じられて、平日でも来場者が絶えないのは工夫のたまものだと思わされた。
そのひとつはSNSによる拡散を狙った宣伝効果で、1階フロアに置かれたパネルである。
記念撮影用のパネルは今どきどこでも置いてあるけれど、面白いなと思ったのは、それに吹き出しをつけて大喜利のように遊ぶというもの。

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最初は躊躇してたのに、一度作ると興に乗ってきて、いくつも作って撮ってしまった。
あとで見返すとしょーもないものばかり。ギャグを作るのって難しいね。(他の来館者の方、占領してすみませんでした。)

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ふと、休んだ会社のことを思い出す。
今、わが社は中期経営計画の策定の真っ最中で、私もその末席にいる。
最初の案の段階では、「SNSの導入」なんてのも計画の中に入っていたのだけど、いつの間にか消えてしまった。
一生懸命タイムラインについて説明したけれど、オジサマ方にはついぞ理解してもらえずじまい。
「ITリテラシーの向上」ってのも案に入れていたけど、そもそもリテラシーがない土壌では、それも霧散してしまった。

美術館に限らず、いろんな場所で集客や売り上げアップの工夫を見かけると、「それに比べてウチは…」と思ってしまう昨今。
決して「SNSを取り入れろ」と言っているのではない。ただ、新しいことへチャレンジする体質のなさが、やる気を減退させるのだ。
それに比べ、アートの世界はいつだってひらめきに満ちていて、私はいつまで会社勤めをするのだろう、と思ってしまった。

特撮に『5年後の世界』という曲がある。
想像できたかい、5年後の世界。
5年後の私は、今とは違うどこかにいたいと夢想する。