大阪城ホールで『スガフェス!WEST』
9月18日月曜日、敬老の日の祝日は大阪城ホールへ「スガフェス!WEST」を見に行った。
スガフェスというのは、スガシカオが主催している屋内型の音楽フェス。
特にスガシカオのファンではない私がなぜスガフェスに行くかというと、ゲストにオーケンが出るからだ。
■■ 大阪城ホールも初めてだった ■■
実は私、初めての大阪城ホール。
これまで城ホールに出るようなアーティストと縁がなかったからなぁ。
ただ、OBPには劇場があったり公園内に野外音楽堂があったりするので、大阪城公園はたまに行くことがある。
今回は久々に大阪城公園駅を降りたけれど、風景が一変していた。
ま、祭りかっ?!
これがスガフェスなのかっ?!
一瞬、そう思ってビックリしたけれど、なんのことはない、JO-TERRACEという商業施設が出来ていたのだった。
実際、スガフェスとJO-TERRACEのコラボ企画もたくさんやっていたので、スガフェスの一部といって間違いではない。
台風一過の三連休の最終日、お出かけの人々で新しい施設はごった返していた。
開場までにちょっと何か食べようかな、とお店をいくつか考えたけれど、覗くまでもなく外にあふれる行列。
ローソンでさえめっちゃ並んでる。
少し行くと、またもや賑やかな一角が。
これがスガフェスかっ?!
とまた勘違いしそうになったけれど、YATAIフェスという食べ物のイベントだった。
当然こちらも混雑していたので、眺めてスルー。
とはいえ、前日の台風の影響で電車のダイヤが乱れ、実家から直接大阪へやってきたせいで、お昼ごはんを食べていない。
どこかで何か食べておかなきゃなぁ。
そこで、ダメもとで大阪城ホール内にある食堂「さくらダイニング」へ。
さぞ混んでいるだろう、と思ったら、逆にガラガラ!
食券制でオシャレじゃないからかしら。
そのぶんリーズナブルだったし、のんびりもできた。
ところで、なんでこんなどうでもいい、さくらダイニングの話なんかをくどくど書いたかというと、理由がある。
さくらダイニングへは外の入り口ドアから入り、ホール内のドアから出たのだけれど、そのままホール内の廊下を歩いて、チケットに表示されているエリアを探して2階にあがると、そのまま席まで着いてしまった。
あれ?!?
チケットのモギリは?!?!
結局、私のチケットは半券がもぎられずじまい。
周囲を見ると、アリーナ席は入り口でチケットの確認をしているみたい。
でも、2階席は何もない。
これ、チケットなくても2階なら誰でも入れちゃうんじゃないの?!
もしチケットがなかったら指定席がないから座れないんだけど、でも入れちゃって大丈夫?!
何しろ大阪城ホール初心者なもので、どういう仕組みなのかがさっぱりわからん。
■■ こういうのが名曲なんだな ■■
好きなアーティストの曲で泣くのはよくある。
でも、特に好きなアーティストじゃないのに、テレビやラジオや街中で耳にして泣いてしまう曲というのがある。
スガシカオの『黄金の月』がまさにそう。
この曲を聴くとつい心がギュッとなって、感情がコントロールできないほどせつなくなってしまう。
好きなアーティストで泣いてしまう、というのは自分だけの特別な曲だけれど、誰もが知っているヒット曲で泣いてしまうのは、誰の心にも響く本物の名曲だからだろう。
(ちなみに、私が泣いてしまう『黄金の月』以外のヒット曲は、太田裕美の『木綿のハンカチーフ』と、スターダスト・レビューの『木蘭の涙』。この3曲はどうもダメ。)
今回のスガフェスでも『黄金の月』を歌ってくれて、やっぱり、つい泣いてしまった。
ほかにも、スガシカオの曲はうっかり聴いてしまうと心をギュッと掴まれてしまう。
今回、一番ギュッとされてしまったのは『Progress』だった。
いわずと知れたNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』のテーマ曲だ。
この曲をきっかけに結成されたバンドkokuaによる演奏で、完全オリジナルバージョン。
ホワイトファルコンという特別な白いギターで演奏されていて、あの印象的なイントロが流れると胸が震えた。
こういう曲を生み出せるから、スガシカオはトップアーティストの一人なんだな。
■■ 豪華なゲスト ■■
ゲストの一人目は、いきなり佐野元春だった。
髪が短くなっていたから一瞬誰だかわからなかったけれど、この人は佐野元春という人種を生きている特別感。
歌ってくれたのは3曲。
『YOUNG BLOODS』と『情けない週末』と『SOMEDAY』。
たった3曲?!
ヒット曲と、スガシカオのリクエスト曲と、誰もが知ってる「ザ・佐野元春」な代表曲、という構成。
佐野元春で3曲だったら、オーケンも3曲だろうと推して知る。
オーケン一番のヒット曲…というと『元祖高木ブー伝説』ってことになるけど、それはやらないだろうから、代表曲ってところで、印度とダメ人間かなぁ、と推測。
問題は、間に入れるあと1曲。
スガシカオによるリクエスト曲か、何らかの関連がある曲か。
なんにしても想像もつかない。
そう思っていたところ、オーケンが登場して1曲目はやはり『日本印度化計画』だった。
そしてラストもやはり『踊るダメ人間』で、予想的中。
そして注目のあと1曲が、思い浮かびもしなかった『とん平のヘイ・ユウ・ブルース』。
オリジナルは左とん平の曲で、オーケンがソロのときにカバーした。
曲調はブルースというよりジャズファンク。
同じように過ごしてきた仲間に対して、自分だけがどうしてこうなってしまったんだろう、俺をこんなにしてしまった奴は誰だ!と嘆く男の恨み節。
オーケンとスガシカオは同じ1966年生まれの同い歳。
「同じ年に生まれ、同じように音楽をやってきた男二人が、どうしてこんなにも違ってしまったのか」
というふりで、ヘイ・ユウ・ブルースが始まった。
歌詞の内容と二人のミュージシャン人生の違いをかけたところにトンチが効いているし、オーケンの持ち曲の中では珍しいファンクなグルーヴがスガシカオのファンクとの接点になっていて、ファンとしては「そうきたか!」と唸ってしまった。
オーケンの普段のライブに行くと、もちろんだけど客席のほとんどがオーケンファンだ。
ただ、今日みたいにゲストでお呼ばれすると会場はアウェーになる。
そんな会場でも、きっちり盛り上げて、しっかり笑いをとって、ちゃんとカッコよくて、自分が果たすべき役割をばっちりこなして、その場をさらっていく。
たった3曲だけど、心底惚れ直してしまった。
2階席からアリーナを見下ろせば、スガシカオファンのみなさんもちゃんとダメジャンプをしてくれていて、なんだか妙に誇らしい気持ちだった。
大昔、『CLUB紳助』という関西ローカルのトーク番組にオーケンがゲストに出たときに、島田紳助が「代打で出てこの打率はすごいわ~」と絶賛していたのを思い出した。
■■ 縁がある人には会う ■■
2年前に会社をやめた先輩で、スガシカオのファンの人がいた。
ことあるごとに、何かとお世話になった人だ。
きっと会場に来てるだろうなぁ、でもこれだけたくさんの人だから会えないだろうなぁ、と思っていたら、ばったり出会った。
「オーケンがゲストだから、もしかして、と思ってたけど、まさか会うとは!」
と彼女も同じことを言った。
彼女はスガシカオファンとして、
「ご来場ありがとうございます」
といい、こちらはオーケンファンとして、
「ゲストにお招きありがとうございます」
と返す。
「パンフレット買ったんですね。オーケン載ってますか? あ、いや、あの、お元気ですか?」
と、まったく話す順番が逆だろうというトンチキな会話をして、開演前だったから慌ただしく別れてしまったけれど、久しぶりに会えただけで満足だった。
最近、会うべき人には会う、という妙な自信がついてきた。
たぶん、彼女にはまた会えるはず。
彼女は言語聴覚士を目指すために会社をやめた。
今、資格取得のために勉強中だという。
ヘイ・ユウ・ブルースじゃないけれど、同じ場所にいた人が、今は違う道を歩んでいる。
「あと一歩だけ前に進もう」って踏み出した人の背中を、私はただ見ているだけ。