3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

窒息未遂から吸引器を考えてみたものの…

先々週の土曜日の朝のこと。

秋になって母の調子も良くなり、調子よく朝ご飯を食べていた。

 

最近の母の食事は主にミキサー食で、とろりと滑らかなものばかりを食べている。

噛む力はあるけれど、飲み込む力が弱っているので、油断するとすぐむせてしまうからだ。

最近の朝ご飯は、カップケーキやロールケーキ、マドレーヌや蒸しパンなどを牛乳に浸したものを主食にしている。

 

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この日、ロールケーキがスムーズに食べられたので、スイートポテトを追加で出した。

普通のサツマイモと違って、スイートポテトなら一度つぶして裏ごししているから、大丈夫だろうと踏んだのだ。

少し噛まないといけないが、小さいかけらにしてお箸で奥歯の噛みやすい位置に置けば、なんとか食べられる。

 

「ちゃんとモグモグするんやで」

と声をかけながら食べさせていたけれど、お口に入れたらあっという間になくなる。

入れる、なくなる。入れる、なくなる。

「大丈夫? ちゃんと噛みよう?」

と訝しく思っていると、母が突然苦しみ出した。

 

「ぐ~ぅ~~」

と歯を食いしばって目をむくので、

「どうしたん!? どうしたん!?」

と慌ててしまう。

背中をバンバン叩いて吐かせようとするけれど一向に治まらず、ずっと苦しみ続けている。

 

もしかしてスイートポテトがのどに詰まって窒息してしまうんじゃ…。

 

こういう場合、「口の中に指を突っ込んで吐かせる」というのを何かで見た気がするけど、母は歯を閉じてしまって、開けてといっても言うことは聞いてくれない。

開けてくれたとしても、指を噛まれてしまうだろう。

 

「どうしよう、お父さん! お母さんが死んでしまうかもしれん!」

珍しく早起きしていた父を、大きな声で呼んだ。

「どないしたんや」

のそのそと父が顔をのぞかせる。

「のどに詰まってしまったかもしれへん。どうしよう、救急車呼んだほうがええんやろか」

 

そう言っている間もずっと、私は母の背中を叩きながら吐かせようとするけれど、母は「う゛~、う゛~」と唸っているばかりである。

 

「ほんで、どないするんや」

「どうしよう、どうしよう」

「どないするんや」

 

父など呼んでもどうしようもなかった、と思いつつ、

「冷静に、冷静に」

と新しいクドカンのドラマの小泉今日子みたいにつぶやいて、まずは吐かせることに集中することにした。

 

父には、

「お母さんの背中を軽く叩き続けて。口から出るものはティッシュで拭きとって」

とお願いし、私は受け皿と口腔スポンジを取ってきた。

 

幸いなことに、母の右側の歯は上下で同じ個所が抜けている。

そこの隙間から、口腔スポンジを突っ込む。

スポンジでごっそり取れたのは、唾のような痰のような鼻水のような、とにかくスライム状のネバネバだった。

 

それが取れたことで少しマシになったようだけれど、それでもまだ母は苦しそうにしている。

体勢を変えたほうがよいと思い、父にも協力してもらいながら移動させることにした。

まずはソファから車イスに移し、ベッドまで運び、ベッドに横向きに寝かせた。

横向きの姿勢で、なおかつ口腔スポンジで喉にからみついたものを取る。

やはりネバネバである。

 

ある程度ネバネバが取れると、母の苦しみは治まった。

 

医者ではないのでわからないけれど、スイートポテトが詰まったのではなく、原因はこのネバネバがのどにからみついたのかと思われた。

 

一件落着。

ではあるけれど、実は、ネバネバがのどのからみついたのは初めてではない。

ときどき、のどがゴロゴロするときがあって、そういうときはたいていネバネバがのどにからみついているようだ。

 

ただ、「死んでしまうかも!?」とパニックになるほど苦しんだのは今回が初めてだった。

 

ケアマネさんに尋ねると、ふだん施設でも同様に口腔スポンジでネバネバを取り除いてくれているらしい。

あんまりひどいときは看護師さんが吸引をしたことがある、ということだった。

 

 

吸引器を考えてみようかな

 

 

訪問リハビリの療法士さんにその話をしたら、

「だったら、吸引器を使うことを考えてもいいかもしれませんね」

と言う。

 

吸引器がどういうものかさっぱりわからないまま、とりあえず内科の受診のときに先生に尋ねてみた。

 

「吸引? え?え?え?」

内科の先生は全然要領を得ない。

横に立っていた看護師さんがどこかに電話をして、

「まずはケアマネさんに相談して、吸引器の申請書を出してもらってください」

と言われた。

 

それでケアマネさんに尋ねてみたけれど、ケアマネさんもあまり詳しくないらしく、町に尋ねてみるという。

 

それでまた療法士さんに聞いてみたけれど、吸引器の導入に至る過程はよくわからないということだった。

 

おやおや、誰も詳しい人がいない。

 

そのあと結局、それぞれの回答を持ち寄ってきたのが前の月曜日のこと。

それでわかったのが以下のこと。

 

  • 吸引器自体は5万円程度するもので、町に申請することで補助があること。(世帯の収入によって異なるけれど、うちはおそらく1割負担)
  • 申請するのは主治医の診断書が必要だけれど、内科ではなくて大脳皮質基底核変性症を診てもらっている神経内科からの指示がよいのではないかということ。
  • 主治医から、訪問看護で吸引器の指導をしてもらうように指示を出してもらうこと。
  • というのも、吸引器を使うための訓練を受けないといけなくて、上手に使えるようになるまで4日くらいの指導は必要だという。私の事情を考慮して、毎週土曜日に訪問看護で吸引器の使い方指導をしてもらうのがベストだということ。

 

そんなわけで、ケアマネさんは申請書類一式を用意してくれたけれど、とりあえず来月の神経内科の受診日に先生と相談することになった。

 

にしても、吸引器というのがそんな大変なものだとは思わなかった。

 

何でもない日は母はいたってスムーズに飲み込んでいる。

先週も今週も、全然のどがゴロゴロいうことがない。

そうなると急いで急がないところがあるし、吸引器導入はちょっと腰がひけている。