3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

母子手帳をもらいにいった。

「全くの想定外だったなんてウソで、実は妊娠に気が付いていたんじゃないの?」
とのちに友達に言われるくらい、驚くほど私は平然としていた。

産婦人科を出たあとは一旦部屋に戻ってマイナンバー通知を持って、区役所へ出掛けた。
なんとか午後には出勤できる。

たんたんと、やるべきことをやる。
それだけ。

区役所の窓口へ行くと、私と同年代くらいの女性が応対してくれた。
区役所なんか来るのは何年ぶりだろう。

役所というと、黒澤明監督の映画『生きる』のように、役人たちがお役所仕事を退屈にこなしている、という固定観念があるけれど、応対してくれた窓口の女性はとてもフレンドリーだった。

記入例に沿って書類を埋めると、記載内容ごとに彼女から質問を受けた。

主に、彼女が心配してくれたのは、産後に頼る人がいるのか、ということだった。
なんてったって、冒頭の設問が「未婚」である。
誰だって、あなた大丈夫ですか、と思うだろう。

「彼氏はバツイチで、現在お母さんと成人した娘さんと暮らしてるんですが、お母さんとは何度かお会いしてよくしていただいてますし、いざとなったら頼りになる存在だと思ってます」
と言うと、
「それは心強いですね〜! 娘さんももう成人されてるなら、赤ちゃんをかわいがってくれるでしょうしね〜」
とにこやかに言う。

彼氏の家族をアテにしてるなんて、彼氏が聞いたらひっくり返るだろう。
まだ何も相談していないのに。
それどころか、彼氏にはまだ「妊娠検査薬で陽性が出た」としか伝えていないのに。

「もし籍を入れなかったら子供の戸籍はどうなるんですか?」
「お母さんの籍に入りますよ」
「もし、子供を彼氏の籍に入れるなら、婚姻届を出さないといけないってことですね。早めのほうがいいんですか?」
「出生届と同時に出される方もいらっしゃいますけど、順番は婚姻届を先に出しておいたほうが手続きはスムーズですよ」
「なるほど〜」

こんなワケアリ話は日常茶飯事なんだろう。
彼女はごく普通に手続きの説明をしてくれる。
いまどき未婚の妊婦なんて、特殊なことでも何でもないんだな。

「何かご不安なことはありますか?」
「いやぁ、実は私、週末は実家に帰って母の介護をしてまして、それをどうすればいいかな、ってことですね。出産前後は実家にいるつもりなんですけど、母と赤ちゃんと二人分のおむつがえしなきゃいけないんですよ〜」

まさか新生児を今住んでいるワンルームの部屋で育てるわけにはいかない。
そうなると、おのずと実家で育てることになる。

「お父様は? お元気なんですか?」
「元気といえば元気ですけど、何もできないんで。それより、めっちゃタバコ吸う人なんで、それが心配です」
「きっと、お孫さんができると変わってくれますよぅ」
「そうですかねぇ?」

そんな世間話をしつつ、神戸市ではこういう子育て支援制度がありますよ、という説明をざっとしてもらった。

かんじんの、診察費用が補助されるチケット、正確には「妊婦健康診査受診券」の冊子ももらった。
これをもらわなきゃ、明日血液検査に行けない。
ていうか、今日ここに来た意味がない。

渡されるときに、
「全部で12万円分の補助になります」
と言われたときは耳を疑った。

うわ〜、絶対なくせない!!

バーコード管理されているらしく、チケットにバーコードシールを貼っていく仕組みだ。
「おそらく、これ一冊全部使っても足りないくらいだと思います。最初に、全部のチケットにお名前とご住所を全部書いておかれたらいいと思いますよ」
「名前とか、ゴム印でもかまいませんかねぇ?」
「ん〜、おそらく自筆じゃないと病院が受け付けてくれないと思います。同じこと何回も書くの、面倒ですけどね〜」

もちろん、母子手帳ももらった。
「お名前などの欄はすぐ記入しておいてくださいね。記録もどんどん書きこんでいってください。でも、今後入籍されてお名前が変わるようでしたら、鉛筆書きされたらいいですよ」

今年デザインがリニューアルされたファミリアの母子手帳だ。
そういやニュースで見たっけ。
全く関係ない出来事だと思っていたのに、自分がもらうことになろうとは。

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ちなみに、この母子手帳、つい昨日のニュースでまた新らしくなったそうな。
追補版、私はいらないけどね。ファミリアに思い入れないし、子供へのメッセージとか面倒くさいし。

慌ててランチを食べて職場に着いたら、13時10分前だった。
「体調が悪くて病院に行ってから出社します」
と言って休んだ手前、
「大丈夫なんか?」
と部長や課長から尋ねられる。

「あ、大丈夫です、すみませんでした」
としか言えない私が怪しい。
普段の行動から、寝坊と思われちゃうんじゃないか?

できるなら1日休みたかったけれど、午後から自分が司会する会議があるから休めなかった。
資料だってまだこれからコピーだ。

あとから思えば休まなくて正解だった。
その会議のせいで慌ただしくて、妊娠についてウダウダ考える暇がなかったから。

できてしまったものは仕方ない。
あとはたんたんと、なすべきことをするだけ。