3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、趣味と母の介護と育児に追われる日々の記録。

3月中は出てきちゃダメ!

「産休に入ったらゆっくりして」
と言われるけれど、そうもいかない。

まずは、母の転院が目前に控えている。
それに伴って、父にやってもらうことも段取りしなければならない。

そして、次には新居の手配である。
実は、中古マンションを買うことにした。
今の賃貸のワンルームは赤ん坊を育てることができない狭さなので、引っ越しをするのである。

最初はファミリータイプの賃貸物件を探していたけれど、思いのほか良い物件が見つからない。
手頃な値段だとボロボロすぎるし、そこそこ新しくて広い物件だと借りるのがバカらしい高額な賃料なので、いっそのこと買うことにしたのだ。

誰が?
私が。

まさか、自分が不動産を所有するなんて思いもしなかった。

思わぬ掘り出し物物件が見つかったということもある。
10年も住めば、賃貸で払う金額とトントンになると計算したのだ。

内見をして、売買契約書を交わして、住宅ローンを組んで…、と2月はバタバタだった。

最終決済はこれからで、そのあとクロスの張り替えやハウスクリーニング、そしてお引っ越しという山場を抱えている。

赤ちゃん用品を揃えるのは、新居に引っ越したあとだ。
だから万が一、新居に引っ越す前に産まれるようなことがあったら、赤ん坊には着る服すらない。
お腹の赤ん坊には、宅急便の指定日配達同様、
「早すぎてもダメ、遅すぎてもダメ!」
と毎日言い聞かせている。

こんなバタバタも、思いがけず妊娠してしまったせいで、通常の、「結婚→新居→妊娠」という順番だったら、しなくて済む苦労だろう。


安静にとか言われても、泣くしかない

産休1日目は、産婦人科の受診日だった。
しかも、担当医はみんなに嫌われている爺さん先生である。
無痛分娩を希望するなら、担当医をこいつで我慢するしかない。

内診のときにやたらグリグリ触られて、それもすごく嫌だったけれど、その後所見のときに言われたことがショックだった。

「産道が短くなってます。通常の3分の2しかないです。赤ちゃんの大きさはやっと1,700グラムを超えたところです。これまでずっと赤ちゃんは小さめで来てますから、もしこのまま産まれると未熟児になります。それは絶対避けなければいけません。3月中は特に安静にしててください」

ボソボソとちいさな声で、まるで批判するように爺さんはしゃべった。

前回、近藤公園に似た若い先生から、産道が短くなっていることは指摘されていた。
けれど、
「無理をしないように」
というくらいで、そこまでキツいことは言われなかった。
「張り止めの薬を出しましょうか?」
と言われたけど、
「それほど張ることはないので…」
と断ってしまった。

ああ、どうしてあのとき断ったりしたんだろう…。

それに、これまで胎児の大きさは標準の真ん中だと言われてきた。
胎児の成長曲線というのがあるけれど、だいたいいつも2つの線の中間あたりだった。

妊娠32週で1,700グラムだったら、やっぱり真ん中じゃないか。

なんで小さめと言われるのかわからない。

「お腹は張りますか」
「よく歩いたときは張りますけど…」
「仕事はまだしてるんですか」
「今日から産休に入りました」
「だったら、これからは歩いたりせずに、自宅で安静にしててください」
「安静にというのは、どれくらいでしょう…。寝てないといけないということですか? 実はこれから引っ越しをしないといけないんですけど…」
「引っ越し?! 家族や業者とか、誰かほかの人に任せて、自分で作業しないでください」

そんなこと言われても…。

その場では、
「はぁ…、わかりました」
と返事するしかなかったけれど、その後考えれば考えるほど、崖っぷちに立っている気分がしてきた。

翌日に控える母の転院は誰にも頼めない。
自分の部屋の引っ越し作業だって、誰かに全部お任せとはいかない。
本とCDが野積されているオタクの部屋を本人以外がどうやって片付けられるというのだろう。

自分の身体だけなら、少々無理してでも頑張れる。
けれど、そんな無理によって子供が未熟児だったり低体重児で産まれてしまったら、申し訳なさすぎる。

いずれにしても、早産だけは絶対に避けないといけない。
早すぎてもダメ、遅すぎてもダメ!

正産期というのは、妊娠37週0日から41週6日までだという。
それより早いと早産になる。
今、私は32週なので、あと5週。

いい子だから、来月までは絶対に出てきちゃダメ!!
そうお腹に言い聞かせる。

赤ん坊ばかりに押し付けず、私自身も心を引き締めよう。

絶対やらないといけないことと、誰かに任せられることの仕分けをきっちりやって、できるだけ人に助けてもらう癖をつけよう。
電車の席も、図々しく座ろう。
家ではなるべく横になろう。

本当はもっと前からそうしなきゃいけなかったのに…。
みんなから、あれほど無理するなと言われていたのに…。
私は元気だから大丈夫、とたかをくくっていたせいだ。
悔しくて涙が出そうになる。