延命治療とおひるねアート
未曾有の大水害とかオウム真理教の死刑執行とか、心がざわざわするニュースがTwitterのタイムラインに流れてくる中、あるツイートが目に留まった。
大口病院の中毒死事件に関するものだった。
その事件についてはテレビのニュースで見ていたはずだけれど、詳細は聞こえてなくて、「また看護師による殺人事件か」というくらいにしか思っていなかった。
だから、そのモーメントが高齢者の延命治療について書いているのを読んで、背中が凍るような思いになった。
私も一歩間違えば大口病院で事件を起こしたナースと同じだったかもしれない。療養病棟で生かし続けられている人達に楽しい事なんて無い。綺麗事無しに生き地獄。笑顔が出たり、アイコンタクトが出来る人は別ですが、そうで無く毎日苦顔に顔を歪めながら延命されている人がたくさん居るのです。
— しがないナース (@Angelfishmanbo) 2018年7月8日
もし自分が身体も折れ曲り固まり、肌着すら袖を通せない程に変形し、思っている事も言葉に出来ず、自分の爪が食い込み褥瘡が出来、それを治そうと毎日洗浄され薬を付けられ、痰が溜まれば鼻からチューブを入れられ吸引され苦しい思いをし、栄養剤に繋がれて強制的に命を伸ばされたら死にたいよね。
— しがないナース (@Angelfishmanbo) 2018年7月8日
自分で死ぬ事なんて出来ないんです。私達が痰を引かなければ3日もあれば命を落とすでしょう。でも、それも許されないのです。そんな事をしたら殺人罪と言われてしまうから。
— しがないナース (@Angelfishmanbo) 2018年7月8日
そんな実情を知ったら高齢者を延命する人なんていないのか?療養病棟は定額制で入院費は月50万円程。その内9割は国の負担つまり税金。本人が払うのは1割で月5万円位。入院させておけば年金でおつりが来ます。病院も家族も儲かるのです。家族が、国民が、生かしているのです。怖ろしいシステムです。
— しがないナース (@Angelfishmanbo) 2018年7月8日
中には16日まではどうにか生かしてくれ〜!!なんて言う家族もいます。
— しがないナース (@Angelfishmanbo) 2018年7月8日
年金の支給日は毎月15日です。
私もそこからお給料を貰っている身です。
でも、こんなビジネス無くなれば良いと末端なりに思って公の場に書いています。
大口病院の事件をきっかけに辛く不幸な高齢者が減りますように…。
うちの母が今いるのも療養病棟である。
身体も動かせないし、しゃべれないし、ごはんも食べられずに鼻から栄養を流し込まれている。
延命治療と言われても仕方がない。
でも、救急で入った前の病院でも今の病院の転院時の説明でも医者と話したけれど、
「鼻からの栄養をやめたら数日で死にます。それでいいですか、という話です」
と言われてしまうと、とてもじゃないけどそんな決断はできなかったことを思い出す。
「目が開かなくなったら、そのとき中止を考えます…」
と答えたのが精いっぱい。
延命治療はやめましょう、と言うのは簡単だけれど、「やめます」の判断を任される家族はつらい。
かといって、延命治療をし続けて本人の苦痛が長引くのもつらい。
つらいのループ。
生きている意味をどこに見出すか
在宅と施設の半々で介護していたときは、まだ母に生きる楽しみを与えてあげられていたと思う。
口から食事が摂れていたのもあるけれど、ほかにも、音楽を聞かせてあげられたし、マッサージもしてあげられた。
介護スタッフの皆さんも優しく話しかけてくれていた。
でも今、療養病棟ではそのどれもを失ってしまった。
今だって、音楽を聞かせたり、マッサージをしたりすることはできる。
…私が帰りさえすれば。
サトイモを連れて実家に帰ろうか…。
でも、あんなニコチンまみれの家でサトイモを育てたくはないし、父の世話までしないといけなくなると私の身が持たない。
母のことをもっと父に頼めたらいいのだけど、リップクリームさえ塗ってくれない父には、母に楽しみを与えようなんて気持ちはサラサラ持っていない。
かといって、私が父に頼むのをやめてしまうと、つらい思いをするのは私でも父でもなく、母である。
母のためを考えると、根気よく父にお願いするしかない。
父のメールによれば、母はますます覚醒時間が減っているようだ。
「お母さん寝ていた頭さわっても起きない帰る」
というメッセージが定例化している。
目を覚まして苦しい思いをするなら、眠っていてくれたほうがまし。
そして楽しかった若い頃の想い出を夢に見ていてほしい。
人間は「肉体という牢獄につながれている魂」だと言ったのは誰だったか。
死によってだけ解放される。
苦痛は怖い。
でも、死も怖い。
考えていると、睡眠不足なはずなのに、夜眠れなくなった。
赤ん坊との日常は楽しくめぐる
母の療養病棟の現状と延命治療について暗い気持ちになった翌日、サトイモと「おひるねアート」の撮影会に参加してきた。
おひるねアートとは、床にシートを敷いてレイアウトをして、その上に赤ちゃんを寝かして撮影する写真アートのこと。
主催者の人に聞いたら、「お昼寝中の赤ちゃんを起こすなんてひどい!」と苦情を言ってきた老人がいて開催できなかった会場があるらしいけど、それこそまさに老害というもので、「おひるね」と名前がついているだけで赤ちゃんは寝てるわけではない。
立っているのではなくて寝ころんだ状態で撮影するという意味だ。
人気の講座で、かなりの倍率の抽選だったのを運よく当選した。
私はくじ運が良くないほうなので、サトイモのくじ運に違いない。
この調子で運の良い子に育ってくれますように。
今度実家に帰るときにはこの画像をプリントして、母の病室の壁に貼っちゃおうか。
サトイモが自分の孫だってわかるかな?