3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

お盆の庭

月に一回の帰省が定着しつつある。
8月はちょうどお盆に重なった。
本来お盆の帰省となれば、お墓参りをしたり仏壇にお供え物をしたりするところだけれど、母の病院に寄っているとお墓参りに行く時間はないし、仏壇に花や食べ物をお供えしても、次の帰省までほったらかしになるのでやめにした。
結局、お盆らしいことは何もしない、普通の帰省になった。

最近どう?と尋ねるまでもなく、父は開口一番、
「ここんとこ、さっぱりアカンのや」
と言った。
「ここんとこ、足の動きが悪いんや」

歩き方を見ていると、先月、先々月と変わりない。

「リハビリはちゃんと行ってるの?」
「行っとうで。でも、ここんとこ、朝起きるのが遅うてなぁ」

朝起きられないのも、いつもどおり。

「ここんとこ、夜遅うまでテレビ見とって、寝るのが夜中なんや」

それも、今に始まったことじゃない。

「“ここんとこ”じゃないでしょ!」
「“このところ”?」
「言葉の問題じゃなくて!」

父は、10年前でも「こないだ」と言う。
そりゃあ、数カ月間の出来事は全部「ここんとこ」かもしれない。
でも、毎月毎月同じことを聞かされると、どうしてもツッコミたくなる。


実家の庭問題

 

今回の帰省ではひとつ目的があった。
乳腺炎には薬草のユキノシタをシップするといいと教えてもらったので、ユキノシタを探したかったのだ。

そうえいば、子供の頃に祖母から、擦り傷などを作ったらユキノシタをちぎって揉んだものを貼ればいいと教わったものだ。
ユキノシタはジメジメしたところに生える。
祖母の家では庭の手水鉢の周りに生えていたし、うちの実家では裏の日当たりの悪いところに生えていた。

庭は母のテリトリーだった。
花を育てるのが好きだったし、お花を習っていたせいか、千両や万両、万年青といった伝統的な縁起物も大事にしていた。
その一方、枇杷やアボカド、キウイフルーツといったフルーツの種を取っておいて植える趣味もあった。
「タダで育って実をつけたら儲けもんやろ」
という、ドケチ精神のなせる業だった。
意外とどれも芽を出す。
キウイフルーツは今やフェンスいっぱいに蔦を這わせている。
実もなるけれど、食べて美味しいものはできたためしがない。

庭の管理については、いつも父と母のケンカの種だった。
母が手塩にかけて育てている植物を、父は勝手に荒らした。
荒らした部分に父が植えた植物はどれも植えっぱなしで、気が向いたときにしか世話や手入れをしない。
結局母が水やりをすることになる。
母が怒るのも当然だった。

大きな樹々の枝は母の手には負えなくて父に頼むのだけれど、生返事ばかりで自分の都合でしか動かない。
植木屋に頼めばいいんだろうけど、ケチな我が家はお金を出すということはしなかった。
父がようやく伐採を始めても、素人なので樹のことは何もわかっちゃいない。
すると母は、
「あの樹をあんなふうに切って! そことちゃうやろ!」
と難癖をつけるので、
「エラソーに文句言うんやったらおまえがやれ!」
と父も怒り出す。

振り返って二人のことを考えると、計画性、報連相、お互いのコミュニケーションと配慮が足りなさすぎる。
どんな庭にしたいかちゃんと話し合わないとダメだし、新しく植える前には相談しないといけないし、自分が庭をいじったらお互いに報告し合わないといけない。
担当を決めたっていい。どの樹の何はどちらの担当か、どのエリアはどちらの担当か、ちゃんと分けて分担していたら、ケンカは減ったかもしれない。

…そもそも、それを話し合う段階でケンカになったのかもしれないけど。

大人になって両親のことを客観的にみると、いつも「なんとかならなかったもんかなぁ」ともどかしくなる。
もっと頭を使って、お互い賢く付き合えば、幸せな夫婦になれただろうに。

そんなうちの庭は、母が病気になって以降、荒れ放題だった。
去年まではまだ父も手入れをしていたけれど、この春以降は全く手つかずで、植木の枝は伸び放題、葉は落ち放題、雑草も生え放題だった。
父には業者に頼むように言っても、
「お父さんがやる」
と、父はいまだに自分で手入れすると言う。

「やるやるって言って、ずっとしてないやん」
と、これまでやってないことを咎めると、
「やろうと思とんやけど、なかなかやる気が出ぇへんのや」
と中学生のような言い訳をする。

サトイモを夫に任せ、めったに行かない実家の裏口に回った。

アジサイが大きくなりすぎて、枝が通路をふさいでいた。
反対側を回ると、今度はローズマリーの枝が邪魔をする。
なんとか枝をかきわけながら、あると思っていたところを探す。
けれど、ユキノシタはどこを探しても見つからなかった。

たくさん生えていたはずのユキノシタ
湿っているところなら自生しているものだと思っていたけれど、あれは母がちゃんと管理していたんだな…。

結局、ユキノシタを得ることはできず、庭の荒み方を再確認しただけになった。

けれど、転んでもタダでは起きたくない私。
庭木には月桂樹があって、せっかくなので月桂樹の枝を何本か切って持って帰ることにした。
月桂樹の葉は乾燥させて、ローリエとして料理に使う。


f:id:naminonamimatsu:20180822162313j:image

枝は、父にガイドしてもらいながら、夫が切ってくれた。

ちょっと庭に出ただけなのに、半ズボンをはいていた夫は5か所も蚊に刺されてしまった。
蚊にしてみたら、めったにないごちそうがなってきて大喜びだっただろう。
不思議と、一緒にいたはずの父は蚊に刺されなかった。
タバコ臭いと蚊も寄ってこないのだろうか。

「今度、ほかの庭木も切ってもらえない?」
と夫に頼むと、
「剪定はようせんけど、切るくらいやったらやるで」
と言ってくれた。
夫は都会っ子で、これまでマンションにしか住んだことがない。
所ジョージの世田谷ベースに触発されて、庭や畑に興味が出てきたらしい。

今度来るときは、虫よけスプレーをちゃんと持参しよう。
秋に葉が落ちるまでに間に合うかな。