生きるとは、食べて出すことなり。
離乳食が始まって、何が変化したって、サトイモのうんちである。
ミルクだけだったときは、
「赤ちゃんのうんちなんてどこが汚いの?」
なんて豪語していた。
それが、ミルク100%でできているうんちじゃなくなったら、匂いが違う。
いっちょ前に臭い。うんちの臭さだけは大人と同等という生意気さ。
離乳食が1日2回になってからは出す回数も増えて、1日2~3回は出る。
食べた分だけ出すわけだ。
大便について、「毎日出るのが理想だと思われているけれど本当は食べた分だけ出るのがいいのだ、1日3食なら3回出すのが理想なのだ」と誰かが言っていたのを思い出す。
今のサトイモの排便は理想的なのかも。
父の排便状況
昔、うちの父はそんな人だった。
「男の人は腸が短いから、早く出るのよ」
とこれも誰かが言っていたが、本当に早く出す人だった。
ごちそうを食べた日などは、
「もううんこになって出てもうた。せっかくのごちそうを、もっと腹にためとかな損やな」
とよく冗談を言っていたものだ。
そんな快便だったのに、老人になってから父はときどき便秘をするようになった。
私のように便秘が珍しくない人なら、
「今日は出なかったね」
くらいで済むのだけれど、出るのが当たり前として何十年も過ごしてきた父は、ちょっと出ないだけで大騒ぎする。
私の出産前後でしばらく実家に帰れなかったとき、父が低栄養状態になっていたことがあった。
そのときに、ちゃんとごはんを食べないといけないよ、と注意すると、父は、
「ここんとこうんこが出ぇへんのや。出るまで食べるのやめとこかな」
とトンデモないことを言ったので、
「逆!!食べないから出ないんでしょ! 材料もないのにうんこを製造できるか!」
と怒鳴りつけてしまった。
しかしそれ以後も、父はちょくちょく 便秘になったから毒掃丸を飲んでいると言うようになった。
しかその頻度がだんだん増えてきた。
マグミットという便秘薬
そこで思い出したのが、母の便秘の薬だった。
母は病院でマグミットという便秘薬を処方されていて、毎食後飲んでいた。
マグミットは便を軟らかくして排泄しやすくする。
きばる力が落ちている高齢者には定番の薬らしかった。
私が妊婦のときにも、マグミットが処方された。
妊娠中は腸が圧迫されて便秘になりやすいけれど、出そうとしてきばるとおなかに圧がかかるので胎児のほうに良くない。
そこで、便を軟らかくして出しやすくするマグミットの出番だったのだ。
実家に帰ったとき、余っていた母と私のマグミットを父に勧めた。(薬を他人にあげるなんて絶対しちゃいけないことはわかっているけど、同じ酸化マグネシウムの便秘薬は市販もされているくらいなので大丈夫だろうと自己判断。念のため書いておくけど絶対ダメなことですよ。)
ちゃんと飲むように、ほかの血圧の薬などと一緒に仕分けしておいた。
後日、父に電話をかけて便秘の状況を尋ねた。
「どう?便秘の具合は?マグミット効果あった?」
「それがな、お風呂入っとうとき、おならや思ってプーいわしたら、ごっついのんがブリブリブリっと出てもうて、えらいことやったんや」
ええーっ…。
マグミットは便を軟らかくして出しやすくする薬である。
だから、ちょっときばるだけでも簡単に出てしまうのだ。
薬を勧めるときに、
「出やすくなるから、もらさないように気をつけてね」
と説明はしたのだけれど、父が私の話をちゃんと聞いていたわけがない。
「おかしいんや。あんな簡単に出てまうなんてなぁ」
「だ~か~らぁ~っ!!」
説明はしたのだ。でも、壁に向かってボールを投げているみたいに情報が弾き返されてしまう。
「後のほうのは軟らかかったからすぐ流れたんやけど、最初のほうのはグリコみたいな硬いのんがあってな、それが流れんで苦労したんや。ギューギュー押し込んで潰して流したわ」
「なんでお風呂場で流すのよ!?そんなん流したらあかんって!!」
話を聞きながら顔がひきつったけれど、いくら言ったところで後の祭りである。
お風呂場の排水溝が詰まっておかしくならないことを祈るばかりだ。
ここのところ『東京ポッド許可局』というラジオ番組を毎週楽しみに聴いているのだけど、その中でお風呂場でおしっこをすることが話題になっていたことがあった。まったく、うちの父に比べれば、おしっこなんてかわいいもんだ。