3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

愛情と行動とひどい母親像

元旦の話。
さておせち料理を食べようか、というそのとき、父がこんなことを言った。
サトイモくんの将来を見たぞ」
いきなり何を言い出すのだ、と思ったが、どうやら夢の話らしかった。

書写山に連れていって円教寺を見てな、雪彦山にも登ったんや。ほんで次は新舞子で潮干狩りをしようか、いうことになっとったんやけど、サトイモくんが友達を連れて来たんや。参ったな、二人連れて行くなら車で行かなあかんな、待てよ、運転免許の切り替えはあと2年やった。サトイモくんが10歳やということは、俺は90歳か? もう免許が切れとうやないか、どないしよ、いうて目が覚めたんや」

免許の更新というリアルなところが夢に出てくるのが面白い。
運転ができない以前に、父の脚では山登りどころか平地の散歩でさえ難しいのだけれど、書写山雪彦山に登っているのがさすがに夢である。

「正月早々いい夢を見ましたね」
と夫。
「あと10年、もつかなぁ」
と父。
「10年も経たなくても、あと4、5年で走り回るようになるけどね」
と私。
夢に見るほど父がサトイモの成長を楽しみにしてくれているのだと思うとうれしかった。

家に帰ってから、夫がサトイモを抱きしめながら、
「おまえはえらいやっちゃなぁ。いろんな人を幸せにしてくれとんやなぁ」
と頬ずりをした。
サトイモは小さな手で夫の頬をアイアンクロー。
私もよくやられるから知っているけれど、爪が小さいからメチャメチャ痛い。
それでも夫は、イテテテ、と言いながら喜んでいる。
本当に、サトイモはみんなを幸せにするえらいやっちゃ。


それでもタバコはやめられない

父はサトイモを可愛く思ってくれているはずなんだけれど、それでもタバコはやめない。

さすがに同じ部屋では吸わないけれど、家じゅうにタバコの煙が充満している。
隣の部屋で吸っているとき、ドアを閉めるように注意すると、
「大丈夫や、そっちに煙は行きようへん」
と言う。
「大丈夫やない! それに、大丈夫かどうかはこっちが決めることや!」
と怒鳴りつけてしまった。

ミルクを作ろうとキッチンに行くと、ダイニングテーブルで父がタバコを吸っていたこともあった。
「そこでタバコを吸われると、私がキッチンで用事できなくなるからやめてって言ったよね!?」
「わかった、もう消す」
そう言いながら、父はまだ一吸いしようと口へ持っていくので、
「まだ吸うか!」
と頭に来た。

どうして月に1回、数時間の我慢ができないのだろう。
タバコを完全にやめてくれとは言っていない。
せめて私たちが来ているときだけやめてくれ、という願いが聞き入れてもらえない。

孫は可愛いけれど、タバコは我慢できない。

つまりは自分自身のほうが可愛いのだ。

「今度そこでタバコ吸ってたら、二度とサトイモを連れて来んからね!」
そう釘を刺したら、少しは反省したように見えた。
来月になったらわからないけれど。


愛情と行動は別物

夫はサトイモのことをメロメロに可愛がっている。

「ほんまにおまえは特別可愛いなぁ。特別な赤ちゃんやから、特別賞や」
と毎回特別賞を授与している。

けれど、だからといって毎日家には帰ってこない。
これまでどおり、半分は実家だ。
そのほうが家事の負担が減るので私は助かるけれど、行ったり来たりで逆に疲れないんだろうかと思うくらいだ。

父がタバコをやめないのと同様、夫もサトイモが可愛いからといってベッタリ一緒にいたいわけではないらしい。
それはそれ、これはこれ、なのだ。

かくいう私だって、サトイモのことはメチャクチャ可愛いけれど、ときどき面倒くさくなると泣いていても知らん顔してしまうときがある。
余裕があるときは泣いたらすぐ抱き上げるのだけれど、何をやってもすぐ泣き出すときや、何かをやっていて手を放したくないときは自分でも恐ろしく冷たくなる。
「今ごはん作ってるんだから。泣いても知らないよ」
とわかるはずないのに、泣いている赤ん坊に言い聞かせる。
かわいそうなサトイモ

かつて茂木健一郎先生の講演会を聴きに行ったことがあった。
たくさん面白い話を聴けたけれど、その中にこんな話があった。
兄弟姉妹のIQを調べると、たいてい上の子のほうが下の子より高い結果が出る。
それはなぜかというと、赤ちゃんの頃に親がどれくらい子供をかまったかに比例しているのではないか、というのだ。

その話が頭にあるから、サトイモにはできるだけ丁寧に接してあげようと心がけている。
にもかかわらず。

わかっているのに、面倒くさいとついほったらかしてしまう。

…ダメだなぁ。


比較対象として思い出すもの

その反面、反省するかというとそうでもなくて、

「これまで一度だって母親になりたいなんて思ったことない人間がやってるんだもの、良い母親になんてなれなくて当然だよね」
と開き直ってしまう。

 

そしてときどき、映画『闇金ウシジマくん Part2』の木南晴夏を思い出す。

ヤンキーの妻で、ホストクラブにはまっている最低な女。
家のシーンでは後ろでずっと赤ん坊が泣いているのだ。
赤ん坊がいるのにどうしてホストクラブに通えるんだろう?と疑問に思うけれど、答えはひとつだ。

赤ん坊を一人で置き去りにして夜遊びに行くといえば、『ジョジョの不思議な冒険 黄金の風』のジョルノの母親もそうだった。
暗い夜のなか一人ぼっちにされる赤ん坊のジョルノは、どんなに不安で心細かったことだろう。

ウシジマくんもジョジョもフィクションだけれど、おそらくこういう母親が実在するんだろうと思う。
赤ん坊を持つ親としては、とても考えられないことだけれど。

そんな母親たちに比べれば、私なんて全然マシ!
夜遊びしないだけまともな母親じゃん。

日々、上を見ずに下と比べて、自分を甘やかしている。