3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

1歳6か月健診 ~その②意味のある言葉~

1歳6か月健診では、積み木を3つ積む、絵を見せられて聞かれたものを指差す、という二つのミッションを与えられる。

サトイモの診断結果から言うと、まず積み木はクリア。

サトイモにしてみたら、順番待ちで退屈していたところに唯一出現したオモチャである積み木。待ってました!と喜んで積んでみたという案配。

 

絵の指差しはできたりできなかったりで、疑問符付きのOK判定だった。

絵の内容は、靴、犬、ジュース、電車、魚、車(だったはず。こっちの記憶力がうろ覚えで怖いわ^^;)。

「ワンワンはどれ?」

と聞かれても、ジュースばかり差す。

「ジュースが飲みたいのねぇ…」

とこちらは苦笑いするしかない。

「ワンワン」というと、Eテレいないいないばあっ!』のキャラクターだと思い込んでいる可能性もあるので、

「ワンちゃんは?犬さんはどれ?」

と言葉を変えてみたけれど、やはりダメ。

そのほかのアイテムについては、半分くらいの確率で指を差し、わかっているのか偶然当たったのかは不明だけれど、まあ良しという恰好になった。

 

わが子かわいさに難癖をつけるわけじゃないが、犬というのがダメだ。

松尾スズキ「犬は大雑把だから嫌いだ」と何かで書いていたが、犬は形状がさまざますぎる。

うちにある犬のぬいぐるみは垂れ耳だし、『いないいないばあっ!』のワンワンも垂れ耳だ。

ご近所でよく散歩している犬はテリアかプードルで、毛がふわふわなのが多い。

しかし!健診で出てくるのは柴犬っぽい日本犬。

耳は立っているし、毛もふわふわしていない。

これらが全部同じ「ワンワン」だとどうやって教えたらよいものか。

「みんなワンワンって鳴くんだよ」って言ったって、今どき散歩中の犬は鳴かないし。

指差しテストは猫にしといてほしかった。

 

一言もしゃべらない

 問診票の中に、「意味のある言葉をしゃべりますか」という項目があって、サトイモはこの項目だけ「いいえ」だった。

まだしゃべらない。

「いないない…」といえば「ばあ!」と言うけれど、「ママ」とか「パパ」のような言葉は出てこない。

「一言も、ですか?」

ヒアリングの保健師さんが尋ねる。

「ええ、一言もです」

嘘いつわりなく正直に答える。

「言葉の発達というのは社会性の発達に関連してきますからねぇ。今日、臨床心理士のカウンセリングを受けることもできますが、どうされますか?」

男の子は言葉が遅いから、とよく言われ、私はたいして気にしていなかったのだが、1歳6か月で意味のある言葉が一言も出ない、というのは、

「何らかの手だてを打ったほうがいいですよ」

という事態らしい。

「もちろん焦る必要はなくて、今は様子見でもかまいませんよ」

とは言われたものの、

「せっかく来たんだし、タダでアドバイスをもらえるなら」

と持ち前の貧乏性で、カウンセリングを受けることにした。

そういえば、ある先輩ママが、

「落ち着きがなくて心配、と問診票に書いたら別室に連れていかれて、最初の指差しテストより難しい絵の指差しテストを受けさせられた」

と言っていたっけ。

まさにその別室で、カウンセリングを受けることになった。

 

先輩ママが言っていたとおり、難しい絵で再度指差しテストを受けた。

「難しい」というのは、出てくるアイテムになじみがないということ。

「お茶碗」なんて、教えたことがあるどころか、普段の会話で言ったこともないよ。

それは臨床心理士の先生もわかっているらしく、動物が出てくる絵本を出してきて、

「ゾウさんはどれかな? キリンさんはどれかな?」

とテストしてくれたけれど、サトイモはパンダやゴリラを差すというポンコツっぷり。

 

「じゃあこれはどうかな? できるかな?」

と次に出されたのが、〇△□の型はめパズル。

家や児童館にある型はめパズルよりよっぽど大きくて単純なので、サトイモでも楽勝でできた。

すると、今度は先生がパズルをさかさまにして、

「これはどうかな? いじわるね」

サトイモに渡す。

ちょっと迷ったけれど、これもクリア。

「上手上手! おうちでもされてるんですか?」

「形は違いますけど、似たようなものは…」

大人の会話をよそに、これがテストだとは知らないサトイモは、もっと遊びたがってもう一度型はめをやる。

もちろんクリア。

「上手だねぇ」

とほめてもらって、またやろうとしたところ、先生は色鉛筆と画用紙を出して、

「お絵描きはできる?」

と落書きをさせた。

「あら、お絵描きも上手」

これもテストの一環かと思いきや、

「こうやってね、気をそらしているうちに片づけましょう」

と型はめパズルを引っ込める。

なんだ、お絵描きはテストじゃなくて、パズルを引っ込めるための誘導だったのか。

 

歯が言葉まで影響するなんて

「ものの名前を覚えているかどうかはさておき、お母さんはちゃんと声掛けをされて上手にかかわってらっしゃいますし、サトイモくんもちゃんと反応していますから心配はないと思いますが」

総括的に先生からそう言われて、元から心配はしていなかった私はお墨付きをもらった気持ちになった。

ところが、そのあと意外な質問が出た。

「よだれはよく出るんですか?」

出ますがそれが何か??とつい身構える。

「よだれが出るということは、唾液を飲み込むための口まわりの筋肉がまだ未発達だということです。口やあごの発達が遅いと、当然言葉をしゃべる口まわりの筋肉の発達も遅くなります。よだれが出る子で言葉が遅いというのはよくあるんですよ」

なるほど!

目からウロコの話であった。

「食事で固いものは食べさせていますか?」

「うちの子は歯が生えるのが遅くて、まだ上下それぞれ4本ずつしか生えてないんです。なので、歯茎で噛める軟らかさのものじゃないと食べてくれないんで、あまり固いものは…」

「噛むことによってあごの筋肉が発達しますから、できるだけ固くて噛む回数が多い食べ物を与えてください」

確かに、よく噛むことであごが発達するんだろう。

しかし、サトイモは嫌なものはすぐ吐き出すし、反対に好きなものはよく噛みもしないで飲み込む早食いの癖がある。

これじゃ発語に必要な口まわりの筋肉も発達しないわけだよ。

もしも奥歯が生えていたら、もう少し「噛む」ことができるようになっていたかもしれない。

ひいては…。

 

歯磨きが面倒くさいから、歯が生えるのはゆっくりでいい。

これまで私はずっとそう思っていた。

そんな母の身勝手な願いが、

「歯がゆっくり→噛む力が育たない→あごの筋肉が発達しない→言葉を話す口の筋肉が発達しない→しゃべらない」という結果をもたらしていたなんて。

 

そして先生は迷いながら一枚の案内チラシを出してきた。

「言葉がゆっくりな子や発達が遅れている子の教室なんですけど、参加されますか?」

月に1回開催しているという。

そこでは、親子での遊びを通して声のかけ方や発達のアドバイスなどをしてもらえるそうだ。

またもや、

「タダで指導してもらえるなら」

と私は参加を申し込んだ。

最近の私のモットーは「犬も歩けば棒に当たる」。

高い税金を払ってるんだ、行政がやってくれるサービスなら何でも参加だ!

 

私が実家から持ってきた「まんが日本昔ばなし」の絵本の第1巻の最初の話は「ももたろう」なのだけれど、一般的な「ももたろう」とはちょっと違うところがあって不思議に感じていた。

そのうちのひとつが、ももたろうは成長してもひとこともしゃべらず、初めてしゃべった言葉が、

「おらあ、おにたいじにいく!」

だというくだり。

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サトイモも、突然鬼退治に行くなんて言わないだろうな。