3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

神戸でできる準備

カメラテスト

今どきの防犯カメラには驚かされることばかりだった。

握りこぶしに納まるほどの小ささの高性能カメラが、ネットで簡単に手に入る。

短時間ならバッテリーだけで動くし、Wifiがつながっている環境ならリモートで、スマホなどから映像を確認できる。

鉄腕DASH』で野生動物の映像を撮るときみたいに、動くものが来たときだけ作動する機能も普通についている。

値段はピンキリだけれど、安いものならたった数千円。

 

夫はたくさんのカメラの中から、時間をかけて性能を吟味した。

口コミを見ると、あまり安いものだと不良品に当たったときが怖い。

今回は確実性を取りたい。

夫は2万円くらいのカメラを2台購入した。

2台あれば、別アングルから2つの画像が撮れるし、万が一動作不良が起きてもどちらかは動いているだろう。

出費させてしまってごめんね、と謝ると、

「お義父さんがくれたお年玉は、犯人捕まえるために充てようと思てるから」

と言ってくれた。

 

次の日曜日にカメラを設置しても、私たちが映像を回収に行けるのはさらに翌土曜日である。

6日間、カメラの確認はできない。

動くものがきたときだけ作動する機能もあるけれど、それで万が一作動しなかったら困るので、まわしっぱなしにするのが確実だ。

長時間ちゃんと撮れるか、夫は実家で設置をする前に、家で性能テストを始めた。

 

3日間ほど、家に2台のカメラが動いていた。

最初は撮られていることを意識していたけれど、次第に忘れてしまった。

うっかりカメラのある部屋で着替えてしまったり、ヨーグルトのふたを舐めてしまったりしてから、

「あっ!今カメラに撮られてるんだった!」

と迂闊な自分にテヘペロ

水曜日のダウンタウン』などで、自宅にカメラを仕掛けられているのに普通に日常を過ごす芸人の家族たちを、

「撮られてるのになんで平気なのかなぁ~」

と思っていたけれど、自分がやってみると、これは忘れちゃうよ。

 

3日間のテストを終えて確認したら、家の中の様子がバッチリ映っていた。

動作も問題ない。

ファイルは15分ごとに一つの動画ファイルとして保存されていた。

 

逆に、これはいい機会だから、サトイモがどれだけ私の言うことを聞かずに悪さばっかりするか夫に見てもらいたいと思ったけれど、

「これは動作確認テストや。中身はいちいち見ぃひんで」

と無視されてしまった。

ちぇっ。

 

3年間の記録をまとめる

私のミッションは、3年間の記録をExcelデータにまとめることだった。

まず、父と母の通帳から、いつ、いくら現金を下したかをデータにまとめる。

次に、ヘルパーの記録票を基に、いつ誰が来たのかもデータにまとめる。

2018年から2020年まで、それらの記録を一つの表に網羅する。

Excelならフィルタをかけて抽出もできるし、ソートもかけられる。

 

通帳記録を入力したときは、毎回50万円、アホほど頻繁に現金を下ろしている父に対して沸々と怒りがわいてきた。

自分の口座だけではなく、母の口座でも湯水のごとく下ろしている。

お母さんが何もわからなくてよかった、こんなことを知ったら怒りで気が狂うぞ!と母の代わりに歯ぎしりをしながらキーボードを打った。

 

次にヘルパー記録。

これがなかなか大変だった。

私はキーボードの入力は早いほうだけれど、そこそこ膨大な量である。

サトイモが幼稚園に行っている間、寝ている間、夫に遊んでもらっている間、なんとか時間を捻出して入力した。

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名前以外にも、食料品や買い物を頼む際に現金を預けたときの記録も入力した。

記録票の内容も読ませてもらった。

これまでヘルパーさんがやっていてくれたことを改めて知って、ありがたさをしみじみと感じた。

父の足首にただれができているのを私が汚がって、

「ちゃんと薬塗らなあかんで!自分でできるやろ!」

と口で注意するばかりだったのを、ヘルパーさんたちは軟膏を塗るところまでやってくれていたのも知った。

私が手配していたセブンイレブンのお弁当の受け取りや、セブンミールの調理もやってくれて、温かい状態で父に提供してくれていた。

こんなにやってくれているのに、と思うと複雑な思いだった。

 

でも、この中に誰か泥棒がいるのだ。

 

データがだいたいまとまったあと、夫に見せた。

夫はしばらくパソコンとにらめっこしていたが、

「宅間やな」(※もちろんこのブログに出てくる名前は全部仮名です)

とヘルパーの一人の名前を挙げた。

「なんでわかるん?」

「こんだけビッグデータがあったらわかるわ。お金がなくなり始めたんが3年前、それくらい初期から来とう奴。やめんと最近まで来とう奴」

「でも、それだけの条件やったら、ほかにも2人おるよ」

「決定的なんは、ここ」

夫はExcelのある部分を指さした。

「この期間だけお父さんの出金が途絶えとうやろ。つまり引き出しからお金が減らへんかったいうことや。この期間、宅間は来てへん。ほかの2人は入っとうやろ」

「ほんまや!」

 

私が感心していると、

「ほんで、被害金額はもうまとまった?」

夫はまるで上司かのように私に聞いた。

「お父さんが生活費になんぼ使うか洗い出していって、引き出した現金から引くだけやんか」

「お父さんが何に使ったか、それを考えるのに時間がかかるわ」

私がつい及び腰な返事をすると、

「そんなんすぐできるやろ」

とさらに夫は仕事モードで人に命令する。

私は口をとがらせながら、心の中で「絶対部下に嫌われてるやろ!」と毒づいた。

 

とはいえ、これは私が主体的にやるべき仕事だし、私じゃないとできないことである。

夫に命令されている場合じゃない。

電話で父にヒアリングしながら、父が現金で払いそうな使途と金額をExcelにまとめていった。

食料や日用品以外に、母の入院費、ガソリン代、散髪代、健康食品の通販の代引き、病院代にインフルエンザの予防接種、などなど。

そういえばこれもいる、あれもいる、と思いつくたびに入力する。

それでも、現金で使うものといったら額が知れていて、月に15万程度あれば済むのだった。

父が通帳から下ろした現金から引き算をしていくと、膨大な数字が出てきた。

1,600万円!?

金額を見るたびクラクラする。