3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

オトリ捜査開始!

夫婦で捜査会議

カメラ設置に当たって、迷ったことがいくつかあった。

 

ひとつは、2つのカメラをどことどこに設置するか。

せっかく2つも買ったなら、最大限効果的に使いたい。

生活費は2階の引き出し、お年玉は1階の食器棚の引き出しから盗まれているので、私は2階と1階のそれぞれに設置したらどうかと提案。

けれど夫は、どちらかが撮れていないリスクを抑えるためにも、2つとも2階に設置したほうがいい、と言った。

何らかのトラブルが起きて途中で切れてしまったり、設置場所から動いてしまわないか心配だというのだ。

ちゃんと性能テストも行ってるのに、本当に慎重である。

カメラに関しては夫に任せたので、設置位置なども丸ごと夫に委ねることにした。

 

そして、次に揉めたのは、引き出しに入れるオトリ現金の額である。

夫は、

「今までお義父さん、お金がなくなったら50万円補充しとったんやろ? 犯人に不信に思われんためにも、50万円入れたほうがええんちゃうか」

と言う。

けれど、10万円のお年玉から4万円を抜く犯人である。

その割合でいけば、50万円入れたら20万円が盗まれてしまう。

「できるだけ少額に抑えたいなぁ…」

と私が渋ると、夫は、

「犯人を捕まえたら返って来るお金なんやから」

と、カメラの慎重さとは裏腹に鷹揚である。

「捕まえても返ってくる保証はないでしょ! 逮捕されたときには、パチンコですってしまっててなくなっとうわ!」

と私。

いつまでも平行線だった。

 

ところが、いざ現金を用意しようとしたとき、父と母の口座からATMでお金を下そうとして気付いた。

通帳を預かったのはいいけれど、暗証番号を知らんかった!!

おマヌケもいいところである。

渋々私自身の口座から現金を用意したけれど、すぐに引き出せるのは30万円しかなかった。

「30万か…。いっつも50万円やのに怪しまれへんかな」

夫はまだ言っている。

 

そこでヒシヒシと感じたのは、父と母の口座からいくら数字が消えようが実感はわかなかったが、自分の福沢諭吉がみすみす他人に盗られるのは非常に癪にさわるということだ。

30万円から1万円盗られることを考えただけで、地団駄を踏みたくなる。

こちとら、スーパーで3割引シールが貼ってあるパンを買い、ドラッグストアでコツコツとポイントをため、百均にあるものなら近くの店で買わずに週末にわざわざダイソーまで行って買ってるのだ。

10円100円を節約する生活をしているのに、万単位でポンと盗まれる。

一体何なの?!

その1万円があれば何が買えるの?!

具体的に考えると、犯人への憎しみがわく。

 

最後に夫婦で迷ったのが、父にそのことを話すかどうかだった。

夫は、

「お義父さんには内緒で設置しよう」

と言った。

1月2日に警察を呼んだときも、

「そんなことせんでええ」

と苦い顔をしていた父である。

「カメラを設置すると言うたら反対するかもしれんし、最悪の場合、勝手に外されたら困るやろ」

というわけだ。

それに、

「お義父さんがヘルパーに、カメラを設置したんや、なんて話をしたら台無しやから」

と言うのである。

「2日に警察が来たとか、お義父さんヘルパーに話してないかな」

「言わへんよ、そんなことは」

このあたり、付き合いの浅い夫と、娘である私とでは、父という人に対する理解度が異なる。

私は父がカメラを設置を反対するとも思わなかったけれど、でも、念には念を、だ。

 

実家で残金の確認

2021年1月10日、小型カメラを設置するため実家へ。

家に着いて、真っ先に私達は仏壇に向かった。

新しい現金の置き場所にした引き出しを開けてみる。

 

ない!!

まさか盗られたのでは?!

 

「お父さん!8万円どこへやったん?」

こんにちは、を言うより先に、父に現金の置き場所を尋ねた。

ドキドキしながら返事を待つ私達とは対照的に、父はのんびりと電話台から電話帳を出してきて、

「ここや〜」

と封筒を見せた。

私達はホッと胸をなで下ろす。

「今週イレブンピーエムでnanacoに1万円入れた。ちゃんと書いとうで」

と出納メモも見せてくれた。(イレブンピーエムとは父用語でセブンイレブンのこと。)

来る途中の車の中で、夫は、

「封筒に何に使ったか書いとけって言うとったけど、あのズサンなお義父さんがそんなことできるか?」

と言っていた。私は、

「お父さんは、これをこうしなさい、って具体的に指示をしたらちゃんとするよ」

と言い張っていた。

実際そのとおり、父はメモを書いていたので、私は「ほらね」と夫に目くばせ。

あれはできるのにこれはできないなんて矛盾してる、と思うけれど、統一性がとれていないのが人間なのである。

 

次は、2階の引き出しのチェックである。

封筒を開けてみた。

 

1、2…。

2枚しかない!!

 

「1枚抜かれとう!」

 

思わず夫に、

「確かに3万円入れたよね!?ね!?」

と何度も確認してしまった。

もちろん父に確認したら、先週以降引き出しには触っていないと言う。

 

変な話、私たちは安心してしまった。

犯人は3万円から1万円盗んだ。

盗みがばれているとは全く気付いていない。

これなら、50万円入れなくても十分証拠動画が撮れる!

 

いよいよカメラ設置

そして夫はカメラ設置作業に取り掛かった。

その間、1階の和室で私と父はサトイモを相手に遊んでいた。

サトイモは座布団から座布団へ飛び跳ねながら、じいじが持っている洗濯カゴにボールを放り込む遊びに夢中である。

父は大事件が起きているというのに、孫と遊べて楽しそうだ。

ときどき2階でガタゴトという音が聞こえたけれど、耳の悪い父は全く気付いていない。

 

2時間ほどかかっただろうか。

設置が終わったあとに夫が、

「俺がどこへ行ったか、お義父さん気にしてなかったか?」

と心配そうに尋ねた。

「全然!」

一度も気にしていなかったどころか、いないことすら気付いてなかったんじゃないだろうか。

他人が何をしていようが、父は全く興味がない。

ましてや義理の息子なんて。

「そんなんやから、泥棒に金盗まれとっても気がつかへんねん」

と夫は呆れ顔。

 

そしてカメラテスト。

「どこにつけたかわかる?」

夫に尋ねられても、全くどこにあるかわからない。

あることがわかっていて探しても見つからないのだ。

「棚の上と、向こうのカゴ」

場所を教えてもらってさえ、どれがカメラなのかわからなかった。

「すごいね! 絶対気付かないよ!」

夫のスマホには同期しているのでリアルタイムの映像を見せてもらったが、部屋の様子がきちんと撮れている。

「真上からと真横からと、ダブルでおさえるで」

 

カメラが設置されたら、次は私の仕事である。

オトリ現金は10万円にした。

入れる前に机に並べて写真を撮る。

お札の番号を証拠として残すためだ。


f:id:naminonamimatsu:20210204105423j:image

 

私が引き出しに10万円を入れました、というシーンも映像に残す。

引き出しの前でカメラに写っていることを意識しながら、お札を10枚数えて封筒に入れ、それを引き出しの中にしまった。

 

さて、これで犯人が盗む映像が撮れるのか。