3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

Xデーがやってきた!

1月17日日曜日、私には警察から言われているミッションがあった。

それは、月曜日のヘルパーサービスをキャンセルすること。

ただ、事情については、ケアマネジャにもヘルパー事業所にも内緒にするようにとのことだった。

小島よしお警官が、

「月曜日、キャンセルできますか?」

と神妙に言う。

事業所から以前、

「家族が来る場合は原則ヘルパーサービスは受けられませんので、事前にキャンセルしてください」

と言われていたので、私が行くからと言えばそれだけでキャンセルできる。

それだけのことなのに、よしおったら心配性で、

「これまでキャンセルしたことがあるんですか?前列もないのに大丈夫ですか?」

と慎重で、私に対して演技指導が入った。

「『これでサービスをやめるわけではないのですが、月曜日、一日だけキャンセルしたいのです。また水曜日からお世話になりますから、今後ともよろしくお願いします』というふうに、怪しまれないように断ってください」

そんなクドクド言うほうが怪しいわ!!

 

結局、日曜日にヘルパー事業所に電話して、

「明日用事があって実家へ行くんで、すみませんがキャンセルさせてくださいね〜」

と軽く伝えたら、

「了解です、担当のスタッフに連絡しときます〜」

と、簡単にミッションは終わった。

 

昭和刑事によれば、月曜日に裁判所で令状を取って、火曜日には逮捕、という予定である。

火曜日はもともとヘルパー利用がないので、この2日が勝負だ。

 

月曜日の昼下がり、昭和刑事から電話がかかってきた。

「今、本人を呼んで任意で話を聞きよんやけど

ね。認めたら逮捕、いう流れですわ」

と言う。

どうやら無事令状が取れ、本人もすでに警察の取り調べを受けているようだ。

逮捕まで秒読みである。

火曜日と言っていたが、もう月曜日に済みそうだ。

加えて、

「ヘルパー事業所の所長を呼んで、カメラの顔の確認してもらいましてね。確かに宅間です、って認めました。たぶん所長さんから波野さんに連絡あると思いますんで、まあよろしくお願いしますわ」

と言った。

 

続々とかかってくる電話

さて、事業所がどんな態度でのぞんでくるのか。

当然、まずは謝罪。

こちらは、どういう態度でいようか。

弁護士の友達よしえちゃんから、

「本人に支払い能力がなければ、事業所を相手に訴訟する可能性もあるよね」

というアドバイスをもらっていた。

訴訟相手になるかもしれない、という意識で、慎重に話さないといけない。

 

だからといって、ヘルパー利用をやめたら、父の生活がめちゃめちゃになる。

別の事業所に変えるとしても、すぐには見つからないだろう。

しばらく利用は続けることになるのだから、敵対するわけにはいかない。

あなたたちに管理責任はありますよ!という態度を示しつつ、今後もよろしく、でもしっかりね、と釘をささないと。

 

しばらくすると、ヘルパーリーダーの増子さんから電話がかかってきた。

「今日娘さんがご在宅だということですが、何時に神戸へ帰られるか、時間を聞いてほしいと所長に言われまして」

と言う。

平然と予定を聞いてくるので、

「増子さんは、どこまで知らされましたかか?」

と尋ねると、

「いえ、何も…、急用だということしか…」

と増子さんは困っていた。

なんと、増子さんは事情を何も聞かされていなかったのだ。

所長から、実家にいるはずの私にアポを取るように言われて電話してきただけだった。

なんで何も教えてない人に電話さすねん!

しかも、なんで所長自ら電話してこぇへんねん!!

私はムッとなった。

「実は、私は今日実家にはいません。そして、所長さんに直接電話してくださいと伝えてください。増子さん、まずは所長から事情を聞いてください。知ったらひっくり返りますよ」

気の毒な増子さんは戸惑いながら電話を切った。

 

しばらく待ったけれど、所長からの電話はかかってこず、次に電話がかかってきたのはメガネ刑事からだった。

 

「先ほど、逮捕しました」

 

とうとう!

逮捕おめでとう!

 

「それで、警察においては、逮捕者が出ると新聞とかの報道に情報を知らせることになってるんですが、了承してもらえますか」

と言う。

「父の名前とか住所とか、被害者情報が出ないならかまいませんよ」

と答えておいた。

かまわないどころか、こんな悪いドロボーがいたことを世間様に知らせたいくらいである。

ただ、騙しやすい高齢者の一人暮らしがバレてしまうので、父の情報は絶対知られたくない。

新聞にのせてほしい、でも詳しく書かないで、と裏腹な気持ちだった。

 

それからまもなくして、事業所長から電話がかかってきた。

「このたびは、本当に、申し訳ございません…」

所長は消え入りそうな声で侘びた。

「なんで何も知らせてない増子さんに電話さすんですか」

と私が先になじると、

「警察の方から、いきなり私から面識ない波野さんに電話するとビックリされるから、ふだん担当している増子から連絡したほうがいいと言われまして」

と、やはり消え入りそうに言い訳をした。

ビックリするか!

昭和刑事の入れ知恵だろうか。

警察の余計なおせっかいは、やっぱりどっかズレている。

とにかく、事業所は父と私に謝罪したいというので、翌日火曜日に実家で会うことになった。

 

私が電話をとるたび、サトイモがそばで、

「だあれ〜!だあれ〜!パパ?ばあば?じぃじ?だあれ〜!」

と叫んでいる。

油断をすると、背中に跳び乗ってきて、後ろから首を締めてくる。

大事な話をしてるのだからやめてほしいが、サトイモは私が電話しているのが気に入らない。

自分が無視されていると思っているのか、とにかく私の気を惹きたくてしょうがないのだ。

私は耳をふさぎながら、サトイモから逃げて隣の部屋で電話したりするのだけど、電話が終わって戻ってみると、サトイモが洗濯物を散らかしたり引き出しの中のものをひっくり返したりと、部屋の中は惨憺たる有様だった。

 

こいつはヘルパー事業所との話し合いには連れていけないな、と再びサトイモをお姑さんに預けていくことにした。