好転するきざし
毎日が時間との闘いである。
子育てのための時間短縮勤務制度を利用しているので、通常9時18時のところ、10時17時で勤務させてもらっている。
若い頃はウンザリするほど長いと思っていた勤務時間も、たった2時間短くなるだけでほんの一瞬だ。
単に私が歳を取っただけなのか。
40代でこんな速いと、高齢者になったときの時間の速度が怖い。マッハマッハ。
あまりにあっという間すぎて、会社に来てから帰るまでトイレに行ってなかったとか、お茶も飲んでなかったとかがザラにあった。
これではいかん、と最近はちょっと仕事も慣れてきたのもあって、少しずつ水分補給くらいするように心がけている。
給湯室でお茶を入れていると、たまたまT常務もお茶を汲みにやってきた。
かつて私の上司だった人で、その頃の彼女は係長になりたてだった。
ほかの人の倍速で仕事をするような人だった。
出身大学が同じだったり、高齢の親を抱えた未婚の一人娘だったりという共通項もあって、よく目をかけてもらった。
ときどき親の介護の話をしたりもした。
彼女は能力どおりに出世して、私が育休中には、とうとう女性で初めての役員になっていた。
「どう?仕事慣れた?」
と声をかけられた。
「課長や係長に迷惑かけながらやってます」
と答えると、
「まあ大丈夫や。いうても課長やし係長やからな」
と彼女はお気楽な返事をした。そして、
「波野ちゃんの必死のパッチの顔見とったら元気が出るわ。こっちもネジ巻き直さなあかんな、思て」
と、T常務はにこやかに言った。
いやいや、あなたがネジ締めすぎなんですよ、とは思ったが、あとからあとから、その言葉がじんわりきた。
私がどんな「必死のパッチの顔」をしているのかわからないが、マスク越しにでもそれを見てる人がいて、それで元気になってくれる人がいる。
それが私の勇気になった。
ダイバーシティのおおらかさ
サトイモの発達支援教室通いは続いている。
教室ではトラブルがほとんどない。
送迎をしてくれているファミリーサポートさんとも順調に日々を過ごせている。
雨具を持たせ忘れたとき、ファミサポさんを訪ねて行き、少し話をした。
「幼稚園ではまだ悪いことするんで気になって…」
「悪いことってどんなこと?」
「靴のまま教室に上がってを走り回ったり…」
「それ子どもはそんな悪いことと思ってないでしょ。クツ脱ぐのは日本だけでしょ?」
とファミサポさんは穏やかに言った。
さすが台湾人!
いちいちガミガミ怒りたてず、おおらかに接してくれているんだなぁ、と、この言葉だけでも推し量られた。
今朝、初めてサトイモは泣かずに自分で歩いて幼稚園の門をくぐれた。
園長先生が、
「今日は調子いいね!」
と褒めてくれた。
あたたかな人たちによって、ちょっとずつ、日々が落ち着いていく。