3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

やっと、会える

コロナウイルスが蔓延し始めた2020年3月以降、母が入院している病院は、入院患者の面会を一切受け付けなくなった。

そのため、2020年2月上旬を最後に、私は母に会えていない。

 

病院によっては、アクリル板越しに面会できたり、Webでリモート面会できたりという話も聞くけれど、母の病院は何もなし。

病院からはときどき、「面会謝絶期間を延長するけど我慢してください」とか、「コロナ陽性者はまだ出てないから安心してください」といった内容の一斉通知文書が届くだけだった。

 

一度だけ、母を担当している看護師さんから状況報告が送られてきたことがあった。

母の顔写真が印刷された用紙に、手書きで近況が書かれていた。

あの病院で唯一感じた心遣い。

お礼のお手紙を送ろうかどうしようかと考えているうち、日が経ってしまった。

 

Xデーがそこまで

先日、知らない電話番号からスマホに着信があった。

最近のスマホは電話番号を勝手に検索して相手先を表示してくれるのだけど、ワールドなんとかと表示されている。

仕事中だし知らない会社名だし、出ようか出まいかギリギリまで悩みつつ、怪訝そうな声で電話に出てみると、母の病院からだった。

医療事務を委託してる会社の名前なのか知らないが、スマホのおせっかいのせいであやうくスルーするとこだった。

 

電話は若い女性の声。

「お仕事中だったのではないですか? お電話大丈夫ですか? 医師からの病状説明のためにおかけしたんですが、いかがされますか?」

と言う。

「短時間なら大丈夫です。ぜひお願いします」

と答えると、横柄な男性に代わった。

院長だった。

先程の女性がすごく優しくて丁寧だったから余計にエラそうさが際立った。

 

そして院長は次のようなことを言った。

病状は安定しているので、これまでどおりの治療と療養を続けること。

1回目のコロナワクチン接種が済んだけれど、特に副作用もなく過ごしていること。

接種後は面会が可能になること。

 

「ありがとうございます!じゃあ、もう面会に行ってもいいんですか!」

ここ最近の出来事で一番うれしい電話だった。

 

そのあとはまた女性に代わり、面会のルールについて説明を受けた。

面会は平日と土曜日で、土曜日は午後のみ。

一度に入るのは2名まで。

時間は5分程度で、事前予約が必要。

さっそく一番近い日で予約をとった。

 

何かは何かを表す

その後、病院からは医師の病状確認の書面が届いた。

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…読めない。

 

相手に伝わらない文字で書いたところで文字の意味をなさない。

相手のことなんてこれっぽっちも思いやる気持ちがない。

「書けばいんだろ書きゃあ!!」

みたいな乱暴な性格が文字に宿っている。

こんな医者、診察ですらポーズでしかないんじゃないかと思ってしまう。

 

泥棒ヘルパーが記録票に書いていた文字は丁寧できちんとしていた。

まさかこんなキレイな文字を書く人が泥棒だなんてねぇ、と意外に思ったものだが、医者の文字は横柄な人格そのものである。

 

それでも、もうすぐ面会できる嬉しさから、いつものように腹立たしい気持ちにはならなかった。

 

2度ほど、母の病室に面会に行く夢を見た。

1回目は母がベッドに座ってしゃべっていた。

「長い間お見舞いに来れなくてごめんね」

と言うと、

「退屈やったわ〜」

と言っていた。

 

2回目の夢では、母は普通に寝ていた。

母は皮膚が荒れて炎症を起こしていて、看護師さんに話を聞いて、保湿クリームを渡した。

リアルな母のままで反応もなく、当たり前の世界だった。

そんな予行演習いらないし。

せっかく夢なんだから、元気に起きたりしゃべったりしてくれればいいのに。

 

夢の中ではサトイモは出てこなかった。

でも、面会には連れて行くつもり。

 

母はサトイモを覚えているだろうか。

下手したら私のことも忘れているかもしれないから、きっと孫だなんてわからないだろうな。

サトイモは病院や母を怖がらないだろうか。

泣いたり暴れたりされたらせっかくの面会が台無しだけれど、それでもやっぱり母に孫を会わせてやりたい。

7月までもうすぐ。