ライナスの毛布とチクチクレインコート
毎朝幼稚園へ行くのに苦労している。
歩いていく途中で座り込んで「抱っこして~」と泣き出す、ということは何度も書いた。
最近はこちらが学習して、もう朝はベビーカーで登園している。
最初は本人が、
「きょうはべびーかーでいく!」
とダダをこねたことだった。
保育園と違って幼稚園にはベビーカー置き場はない。
一度だけ会社にベビーカーを持って行ってロッカールームに置かせてもらったこともあるけれど、毎日は迷惑だし、空のベビーカーを持って歩くのも骨が折れる。
だから、一度家にベビーカーを置きに帰らねばならない。
当然、通勤のことを考えたら幼稚園から直接会社へ行ったほうが距離は短い。
ところが、一度やってみると、グズグズだだをこねられるよりも時間的には早く会社に着いた。
スムーズ。
幼稚園児がベビーカー通園だなんてカッコ悪い、という体裁の面を除けば、今のところそれでいいじゃないかと思っている。
大好きな「ぶ」
安心毛布、ライナスの毛布と呼ばれる現象がある。
スヌーピーで有名な漫画『ピーナッツ』に出てくるライナスがいつも毛布を持って歩いている、あれだ。
サトイモは自分が生まれた産院のバスタオルがお気に入りで、それを「ぶ」と呼んで親しんでいた。
「ぶ」がサトイモの安心毛布である。
赤ん坊の頃、サトイモが「ぶ」に執着する様子を見たお姑さんが、
「はようやめさせな困るで」
と私に言ったことがあった。
というのも、夫の娘さん(サトイモにとっては腹違いの姉)が安心毛布が離せない子だったらしい。
「あの子、中学の修学旅行にまでボッロボロの毛布持っていったんやで。そんなんなったら困るから、バスタオルはいろいろ変えときな」
その忠告を忘れたわけじゃないけれど、いつの間にか「ぶ」は、あまたある他のバスタオルとは格差を広げ、今の地位を確立してしまった。
サトイモが2歳、「ぶ」も2年を過ぎると、それなりに汚くなってきた。
引きずりまわしたり噛んだりするので、ほつれもある。
同じものを入手しようと考えたのだけど、産院の退院祝いにもらえるバスタオルなので、同じものがどこで買えるのかわからない。
産院で尋ねてみようかと思っているの、というようなことを、去年プレ幼稚園でママ友に話すと、あるママが、
「うちにも同じのがあるよ。新品じゃないけど、それほど使ってないからあげようか?」
と譲ってくれた。
これで「ぶ」は2枚。
洗い替えもバッチリ。
…と思ったら大間違いだった。
古いのは「ふーいぶ」、新しいのは「あーしーぶ」としてどちらも必要不可欠なものになった。
手放せないものが増えただけ!!
下記画像の左が「ふーいぶ」、右が「あーしーぶ」。
写真に撮ると違いがわかりにくいけど、左のほうが色が褪せているのがわかるだろうか。
ちなみに、ぬいぐるみの「くんくん」(左)と「ころしゅけ」(右)もサトイモが眠る際のお友達だ。
彼らは時々ごはんも一緒に食べる。
彼らもあまたある他のぬいぐるみと違って、特別な寵愛を受けている。
最近、私を困らせていることのひとつが、
「おーちえんに、ぶをもっていく!」
とサトイモが言い張ってきかないことだ。
今年は淡路島と大分と2回も旅行に行ったが、そのときに「ぶ」の文字は全く出なかった。
別に「なかったら生活できない」というわけじゃないのだ。
気が向いたら洗濯だってさせてくれる。
なのに、ここのところ毎日幼稚園に「ぶ」を持参している。
ひどいときは2枚ともだ。
「ふーいぶは汚れてて恥ずかしいから、持っていくならあーしーぶにしとうか?」
と交換させるつもりであーしーぶを渡したらミイラ取りがミイラになってしまった。
「1枚でいいでしょ!」
引き離そうとすると泣き叫ぶ。
大事なぶを幼稚園で汚したら困るよ、ほかの子に盗られちゃうかもよ、忘れたら夜寝られないよ、などといった説得も効かない。
幼稚園の先生には、
「どうしても離さないもので…、すみません」
と断りを入れて、預かってもらっている。
…中学の修学旅行まで持っていくパターンかもな。
雨の日は最悪
ベビーカー通園で困るのは雨の日だ。
5月ごろだったと思うけれど、雨の日だから徒歩通園をやめて、ベビーカーに雨カバーをかけて登園したことがあった。
時間がなくて走っていた。
途中、雨カバーが前車輪に巻き付き、派手に転倒。
サトイモも私も、擦り傷だけどケガをしてしまった。
(ただ、転倒原因は単に雨カバーのせいではなく、サトイモが何かしたんじゃないかと疑っている。)
そのトラウマがあるので、雨の日は怖くてベビーカーを使えない。
だから歩いて行きたいのだけど、雨の中傘をさしているときに、「だっこして!」と道にしゃがみこまれると、こっちが泣きたい気持ちになる。
それに加えて、最近はレインコートを嫌がるようになった。
嫌だと言われても、サトイモはまだ傘をまともにさせないし、
「着なかったら濡れてしまうよ?」
と説得するのだけれど、「いや」の一点張り。
なぜ嫌なのか根気よく尋ねると、
「ちくちくする!」
というアンサーをもらえた。
言われてみれば、私も子どもの頃は首元のタグがすごく嫌いだった。
それでハサミを持ってきて、目の前でタグを切ってみせ、
「もうこれで大丈夫!もうチクチクしないよ!」
とレインコートを着させた。
しばらくはそれでなんとかなった。
なのに再び、
「ちくちくするからぬぐ~!」
と言い出した。
「どこがちくちくするの? まだちくちくするのが残ってた?」
と尋ねると、
「ここがちくちくする」
と指さしたのが、下記レインコートの怪獣の歯の部分。
んなわけあるか~い!
だいたい、サトイモは幼稚園の制帽の上にレインコートのフードをかぶっている。
歯が当たるわけがない。
なるべく子どもの意思を尊重したいし、できるかぎり本人の気持ちに耳を傾けているつもりだ。
でも、大人たちが「子どものいうことだから話半分に」と言うのも、だんだん実感として理解できてきた。
まともに相手してられん!
幼稚園の先生からは、
「『ちくちくする』っていう言葉を覚えて、言いたいだけってかんじがしますね~」
と言われた。
そして単にこのレインコートが嫌なだけなんだろう。
徒歩もベビーカーもダメということで、これまで雨の日はタクシーで通園している。
子育ては、チャリンチャリンと小銭がこぼれ落ちる音がする…。
あ、サトイモはタクシーに乗りたいからレインコートを着たくないのかもしれない。
もう!子どもって!!