おもちゃ王国の迷路
今月、我が家に衝撃のニュースが走った。
それがこれ。
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おもちゃ王国 床抜けた立体迷路 「腐った木が」(1/2ページ) - 産経ニュース
というのも、9月19日にこのおもちゃ王国に遊びに行ったばかりだからだ。
ニュースなんて知らないうちの坊主は、1か月以上経ってもときどき思い出し、
「おもちゃおうこくにあそびにいこーよ!つれてってよぅ!」
と言っている。
しかも、何が一番面白かったかと言うと、
「とみかと、めいろ!」
というのだから、なんだかせつない。
言われてみればの予感
私が子どもの頃、「おもちゃ王国」はまだ前身の「東条湖ランド」という遊園地だった。
1歳下のいとこ家族と一緒に、何回か遊びに連れて行ってもらった。
アカプルコというプールがあって、ウォータースライダーがめちゃくちゃ楽しかったことをよく覚えている。
だが、当然、大人になって以降行ったことはなく、当然おもちゃ王国になってからどのような遊園地になったのか全然わからなかった。
事前にネットで調べた情報をまとめると、東条湖ランドの居抜きの乗り物プラス、各おもちゃメーカーのパビリオンがある遊園地というかんじだ。
トミカとプラレール、メルちゃん、リカちゃん、ダイヤブロック、くもんの知育玩具…。
なかなかうまく考えたな、と思う。
おもちゃメーカーからしたら、パビリオンで子どもにプレゼンテーションできるのはいい宣伝になるだろうし、遊んだおもちゃが欲しくなって帰りにお土産コーナーで買うこともあるだろう。
子どもを持つ周囲の人にもおもちゃ王国に行ったときの感想を聞いた。
大半の人が、
「小学校低学年くらいまでの子どもはすごく喜びますよ」
と言い、
「でも、全体的に古びてるんですよね〜」
と付け加える。
「ジェットコースターとか、別の意味でスリルがありますよ」
と。
まあ、東条湖ランドの居抜きだから施設が古いとして、おもちゃも古かったり壊れていたりするらしい。
それじゃ児童館や子育て広場と何ら変わりないじゃないか。
「だとしても子どもはうれしいんですよ。おもちゃがいっぱいあるってだけでね。」
で、実際行ってみてどうかというと、やはりすべてが古びていた。
最初に乗ったのが観覧車だったが、ペンキが剥げていたるところがサビだらけだった。
夫がしきりに、
「怖いわ〜。こんなんで大丈夫か? ぶら下げてるアレが壊れたら落ちるんちゃうか?」
とビビっていた。
私が心配症を笑うと、夫は、
「これは危険予知!事前に危ないとこを見抜いとかな対策できんやろ!」
とごもっともなことを言う。
「大丈夫に決まってるやん、ちゃんと安全装置くらいついてるでしょ! サトイモの初めての観覧車なのに、変なこと言わんとってよ〜!」
と私は口を曲げて文句を言ったが、今から考えたらどこにも安全だという根拠はなかった。
その後、乗り物はゴーカートやティーカップに乗り、トミカとプラレールで遊び、くもんの知育玩具で遊び、ゲームコーナーにある200円入れたらガタゴトその場で揺れるだけのクルマに乗った。
パジェロに乗ってジャングル探検をするというコンセプトで、小さい画面にジャングルがスクロールする。
スーファミレベルのドット画。いや、セガだからメガドライブというべきか。
なんちゅー古さ!
とあきれるのは親だけで、サトイモはこれでじゅうぶん楽しんでいて、降りてもまだ乗りたいとタダをこねていた。
古びてるとか壊れてるとか、子どもはそんなこと関係ないのだ。
家族の絆になった迷路
私たちのその日最後のアトラクションが立体迷路「カラクリ迷宮のお城」だった。
迷路には冒険コースとエンジョイコースの
2コースがあり、どちらかを選択しなければならない。
冒険コースのほうが長く、エンジョイコースのほうがいろんな仕掛けがしてあるというので、私たちはエンジョイコースを行くことにした。
そっちのほうがラクそうに思えたからだ。
しかし、乗り物チケットを渡してから知ったのだが、どちらのコースもゴールまで最低30分はかかるという。
30分も歩き続けるってこと?!
怯んでしまったけれど、入ってしまったものは仕方ない。
サトイモはもちろん、夫も私も、立体迷路は初めてだった。
簡単に考えていたが、俯瞰で迷路を解くのとは違い、同じところをグルグル回らされ、何度も行き止まりになった。
なんとなく、私は夫がなんとかしてくれるだろうと思っていた。
頼りにしていたのだ。
なのに夫は早々に、
「こういうの俺、苦手やから」
と言う。
それを証明するように、さっき通った道なのに、
「ここまだ通ってないやんな?」
と聞いてくる。
ダメだこりゃ。
サトイモは何もわからないくせに、先頭をきってどんどん進む。
段差に足をとられて転んでも、
「だいじょぶだいじょぶ!あってるみちだからだいじょぶだよ!」
と泣かずに起き上がる。
「待って!そっちじゃない…」と言いかけて何度もやめた。
私も何が正しい道かわからないから、そっちに行くなともこっちに来いとも言い。
サトイモが自由自在に走っていくのを、黙って親がついていく。
面白いのは、狭い門をくぐったりロープが張り巡らされた通路を通り抜けたりするカラクリ迷路では、身長95センチのサトイモが一番有利で、180センチの夫が一番大変な思いをしたという点だった。
それに、身体だけではなく、正しい道なのか間違った道なのか、知識だって役に立たない。
3歳も45歳も50歳も関係ないのだ。
道を開くのは機転と記憶力と発想力だけ。
こっちでもないあっちでもない、じゃああっちへ行ってみよう、ここをおしたらどうなるかな? さっき後ろにいた人が前からやってきたぞ、向こうから鐘の音がするよ、などなど、3人であれこれ力を合わせ、知恵をしぼった。
なんとか突破してゴールできたときは、3人ともえも言われぬ達成感があった。
30分どころか、45分もかかっていたけれど。
そしてニュース
次におもちゃ王国へ行ったら、次は冒険コースに行こうね、と私たちは立体迷路をとても気に入っていた。
なのに、事故のニュースである。
ショックだったけれど、まさか!とは思わなかったのも事実。
ただ、私の子どものころからある東条湖ランドの遊具じゃなく、2013年にできた立体迷路の床が抜けたというのが皮肉に思える。
思えば、私の子どもの頃には、宝塚ファミリーランドもあったし、ポートピアランドもあった。
遠出してエキスポランドや奈良ドリームランドまで行くという友だちもいた。
すべてなくなった遊園地。
今は昔。
今の子どもは何でもあるように思えるけれど、私たちの子どもの頃のほうが子ども天国だった気がする。
この事故でおもちゃ王国が閉園してしまうかも、と少し心配したが、22日に営業再開したらしい。
陳腐な言い方だけど、子どもたちのために頑張ってほしい。