3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

夫の帰国

夫は東欧のセルビアという国にいる。

本当は2月の半ばには帰ってくる予定だったが、3月下旬まで長引いた。

とうとうこの週末に帰ってくる。

 

最初は母子二人だけの生活に不安もあったが、今となってはすっかり慣れてしまった。

サトイモはもう週末のテレビ電話にすら興味を示さない。

気の毒に、子どもが父親を忘れるのは早い。

 

延長することになったとき、4月上旬までという話も出ていた。

それがビザのギリギリだったからだ。

けれど、不確実性の時代、何があるかわからない。

万が一、飛行機が取れないなどで帰れなくなり、ビザが切れてしまったら大変だ。

というわけで、今週末なのだけれど、帰ってくるまで何があるかわからない時代になってしまった。

出発前はオミクロン株が流行する前だったし、戦争も起きていなかった。

 

それにしても、コロナの影響でなかなか仕事がうまく回らないらしい。

直接どうだということではないらしいが、物流が滞ったり、手に入りにくい品が出たり、人手が足りなくなったり、スケジュールどおりいかなくなる理由は山ほど考えられる。

「日本人の感覚からしたら、信じられへん約束破りばっかりや。あれこれ言い訳ばっかりして、契約を全然守らへん。欧米は契約社会やとか言うけど、全然そんなことないで。契約が守られへんのはパンデミックせいやからしゃーないやろ、って開き直っとる。けど、欧州の人間からしたら、このパンデミック下で計画どおりいくと思ってる日本人のほうが頭がおかしいんちゃうか、いうかんじや。特にイタリア人な!」

 

戦争の影響はどうなのか

ロシアが侵攻を始めたばかりの頃は、

「大丈夫や。セルビアウクライナも同じ東欧やと思って心配するかもしれんけど、東欧言うても広いんやで。ウクライナはけっこう遠い。間にルーマニアがあるもん」

と言っていた。

 

ところが、その翌週には、

「ここも大丈夫とは言えへんな。原発がやられたら、余裕でここまで放射能が飛んでくるわ」

と言うではないか。

「最悪のことになっても、まあ、人道回廊通って帰れるやろうけど」

 

核兵器なんて使わなくても原発をおさえれば核攻撃ができるんだぞ、ということを今回の戦争は私達に教えてくれた。

日本の原発なんて、ミサイル攻撃どころか鉄球を落としてもアウトらしい。(ニコ生『深堀TV』の飯田哲也氏の回を見て印象に残った話。)

原発、終わってるな。

核兵器もだけど、ほんとにこの世界からなくなってほしい。

 

「それよりセルビア経済制裁のほうが影響あるかもしれん。セルビアはロシアとも仲良くしてるから、経済制裁には加わらへんらしい。セルビアがロシアの抜け道になる可能性があるから、国際社会からバッシングを受けるわ」

セルビアという国はとてもしたたかな国だと夫は評価していた。

西側諸国ともロシアとも中国とも、付かず離れずうまくやっている。

「小国の知恵やな。経済力も軍事力もないからこそ、外交をうまくやってる」

しかし、こんな緊迫した状況になると、どう立ち回ればいいのか難しいところだろう。

スイスのような永世中立国でさえ、西側について経済制裁に協力するらしい。

一つの国が戦争を始めたら、世界のいろんな場所の歯車が狂ってしまうんだな、とつくづく思う。

めっちゃ迷惑。

そして、風が吹けば桶屋が儲かる式に、どこかが儲かっている。「風」のせいでたくさんの人命が失われていても。

 

3回目のワクチン

出発前の話では、前回帰国したときと同じ手順だろうと考えていた。

空港からは公共交通機関を使わずにハイヤーで神戸まで帰ってきて、そこから数日隔離。

出発前、夫はこう言っていた。

「隔離期間は前は2週間やったけど、短くなったらしい。前は家で過ごしたけど、今回はオミクロンのこともあるから、自主的にホテルで過ごそうか? 万が一、坊主に感染ったらかわいそうやから」

 

しかし、セルビアで3回目のワクチン接種をしたときから事情が変わった。

3回目接種済みで出発前の検査で陰性だったら、帰国後すぐに公共交通機関を使ってもいいし、隔離もしなくていいらしい。

 

夫は先週、セルビアで3回目の接種をした。

セルビアでは中国製やロシア製のワクチンが多いらしく、

セルビアはどこ製ワクチンかわからんし、選べへんから嫌」

と言っていたのに、なんで打つ気になったのかなぁと思ったら、どういうコネか、ファイザー製を打てたらしい。

 

注射を打ったら、すぐに接種証明が発行されたという。

証明はスマホに即ダウンロード可能。

それは国際的に有効なものだそうだ。

「おかげで、ヨーロッパ内で移動するのもやりやすくなったわ」

と言う。

セルビアで打ってよかった。日本で打っても、ヨーロッパで通用する接種証明なんか出してもらえへんもんな」

 

夫は10年くらい前は、

「よその国に比べたら日本はちゃんとしてる」

と日本自慢の人だった。

アメリカ、中国、東南アジアに出張していた頃。

しかし、だんだん「日本すごい」は減ってきた。

セルビアを拠点にヨーロッパとの関わりが多い最近は、

「欧米ってくくるのはおかしい。米国と欧州は全然違う。ヨーロッパはちゃんとしてるわ」

と、認識を変えた。

日本がちゃんとしてるのではなく、米国中国がちゃんとしてなかったのだと。

 

そして昨今は、

「なんで日本はこんなおかしな国になってきたんやろう?」

と首をひねる。

コロナ対応とデジタル化については特に「おかしなこと」が顕著だ。

ワクチン接種証明の話はその代表格だと思う。

OECD加盟国でもないような小国セルビアにできることが、日本はできないなんて。

 

それでも、

「落ちぶれても日本がええわ。物価が安いのに品質が安定してる。日本の食べ物が食べたい」

と、毎週テレビ電話で愚痴をこぼしていた。

笑ったのは、日本から持っていったカレールーに現地のジャガイモ、にんじん、玉葱、牛肉、を使ってカレーを作っても、なぜか日本のカレーの味にならない、という話。

水と土と空気が違うと、味は異なるのだろう。

 

帰ってきても、私は料理が下手なので手料理で歓迎なんてできない。

何か美味しいものを家族で食べに行くとか、何か考えるとしよう。

週末までもう少し。