3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住むアラフォーOL、波野なみ松の、仕事と趣味と母の介護を両立させる日々の記録。

検尿、取ったどー!!

笑い話のベタなやつに、病院の待合室でのおばあさんネタがある。
「あの人最近見ないねぇ」
「体調悪くて病院に来れないらしいよ」
実際に私も病院でこういうやりとりを聞いたことがあり、「ネタやん!」と思わず突っ込みたくなった。

ただ、笑い話じゃなく、本当に調子が悪いと病院になんて行けない。
私はよく風邪を引くからわかるけど、高熱が出ているときはあまりにしんどくて、病院へ出掛けていくよりベッドで眠っていたいものだ。
熱が下がってから病院に行って、治りかけなのにどっさり無駄な薬が出たりする。

健康診断だってそうで、採血で内出血を起こしたり、検査のために食事を抜くことで気分が悪くなったりするので、何をしてるんだかわからない。
会社の健康診断で、私は毎年低血圧でひっかかるのだけど(上の血圧が80台)、それはたぶん食事を抜いているからで、普段はそれほど低くない。
貧血を訴えて受診した病院で、検査のために血液を採られてさらに貧血になった、みたいな話もある。
検査のせいで不健康になっているんじゃないかとさえ思う。
とかく病院という場所は矛盾だらけだ。

今回初めて泌尿器科に行った窓口でも、真っ先に先制パンチをくらった。
(前回の「ケアマネさんが病院についてきてくれた。」の続きです。)

「今回はどうされましたか」
「さっき母が神経内科を受診したら、先生に泌尿器科で診てもらうように言われたんです。尿の回数が少なくて、1日2回くらいしか出ないんです」
「検尿、取れますか。 このカップに…」
「え?!検尿?!」
思わず耳を疑った。
「いやあの…、尿が出ないので来てるんですけど…」

うーん、なんだろうこのモヤっと感。

そもそも、健康な人間でも排泄をコントロールするのは難しい。
「ハイ出して」と言われても、なかなかスンナリ出せるもんじゃない。
ましてや、排泄のコントロールが難しい要介護状態の高齢者である。

ムリムリ!

しかも母は身体が不自由なので、ただでさえトイレに行くのが大変。
勝手知ったる自宅ならともかく、外のトイレなんてどんなに困難なことか。

ムリムリムリムリ!
検尿とか、ありえないし!

キッパリお断りして、待合室の席に戻った。
まだ付き添ってくれているケアマネさんに、
「検尿取れますかなんて言われたんですよぅ~。あり得ないですよね~」
と話すと、
「最終でオシッコ出たのって、何時ですか?」
と質問が。

「昨日の夜中はオムツの中で出ちゃってて4時過ぎに交換したんです。だからだいたい、12時から4時の間ですかね」
「だったら、もしかしてもうそろそろじゃないですか?」

時刻は午前11時を過ぎていた。
遅く見積もって4時に排尿があったとしても、もう7時間になる。
そろそろ出てもおかしくない。
「ダメもとで、トイレ、行ってみましょうか?」
「一人だったら無理ですけど、ケアマネさん、手伝っていただけますか?」
「もちろん」

私一人だったら無理だけど、今日はケアマネさんも付いてくれている。
一人が母を立たせて支え、もう一人がズボンを脱ぎ着させることができる。
手が4本あれば、たいがいのことは乗り越えられるものだ。

「やっぱり検尿に挑戦してみます」
と窓口で尋ねると、泌尿器科には検尿専用のトイレがあって、入ってみると障害者でもラクラク使える広々仕様になっていた。

3人でトイレに入って、母を無事、便座に座らせた。
身体が不安定な母は、背もたれがないと安定して便座に座れないのだけど、さすが泌尿器科、ちゃんと背中部分に介護用のクッションもついていた。

母のお腹をマッサージしながら、がんばれがんばれ、とケアマネさんと二人で声をかける。
ほとんど雨乞いをするような気持ち。

なかなか出ないので困っていると、ケアマネさんが、
「ウォシュレットで刺激しましょうか」
と提案してくれた。
至れり尽くせりの検尿専用トイレは、ウォシュレット完備なのだ。
障がい者用トイレも含めて、ここの病院のトイレは何度も使ったことがあるけど、ここの部屋だけ特別仕様になっている。

お腹のマッサージを続けながらウォシュレットも使っていると、
「お、なんか出た!」
と、思ったら大のほうで、
「今期待してるのはそっちじゃないんだよなぁ」
などと言いながら、大が終わるのを待つ。

そうこうしてると、母が痛がるような小さなうめき声をあげた。
ふと、便座が温かいことに気がつく。
「もしかして、太ももが熱いんですかね?!」
至れり尽くせりの検尿専用トイレ。なんと便座ヒーターまで入っていた。

自宅のトイレも暖房便座なのだが、母を長時間座らせると太ももが真っ赤になってしまう。
一度低温ヤケドしそうになったことがあって、それ以来、暖房便座はなるべく切るよう心掛けている。

「スイッチ、どこでしょう?」
ケアマネさんと二人でトイレ中を見て回って、便座ヒーターのスイッチを探したが見つからない。
「低温ヤケドしちゃうよ、なんでスイッチがないん?!」
とイライラしていると、ピチャッ、ピチャッピチャッ、と水音が聞こえた。

キ、キターーーーーーッッ!!

「コップコップ!!」
慌てて私が検尿コップを当てる。
手がにかかって汚れるのなんか、気にしていられない。
というか、気にならないほどの喜び。
ミラクル!!待望のお小水!!
これぞ奇跡!!奇跡の尿!!

「取ったどーーー!!」

うれしくて、検尿コップを高々と掲げ、ケアマネさんと喜びあっていると、コンコン、と乾いたノック音がした。
「いかがですか」
水を差すような看護師の低い声。

いくら専用トイレだといっても、いつまでも占拠していては他の患者さんに迷惑をかけてしまう。
「すみません、たった今取れました!」
「もう出ますー!」
個室内についている小窓の検尿置きにコップを奉納し、ケアマネさんと慌てて個室を出る準備をした。

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母を便座から車椅子に移乗させるとき、母の背中に少し擦り傷ができているのをケアマネさんが発見した。
クッションがあるから大丈夫だと思っていたけれど、それでもどこかにこすれたらしい。
さっき痛そうにしていたのはこれだったのかぁ。

トイレを出るとすぐに診察室へ呼ばれた。
部屋へ入ると、初めましての挨拶もそこそこに、母を診察台へ寝かせるように言われる。
二人して連携プレーで手際よく母を寝かせる。

「あの、どちらがどなたですか?」
と先生は困惑した表情。
私とケアマネさん、歳の変わらない女が2人も入ってきたうえ、私が手慣れているせいもあって介護ヘルパーとよく間違えられる。
「私が家族で、こちらがケアマネさんです」
先生が戸惑うのも当然かもしれない。

腹部エコーをかけるとのことで、母の服をめくりあげるよう言われた。
モニターに映し出される映像を見て、先生は意外そうに、
「あれ?」
と言った。
そういえば、この病気になって以降、母がエコー検査を受けるのは初めてだ。
「な、何か??」
予想外な病気でもあるんだろうか…。
「いいなぁ」
「へ?」
「いや、思ったより全然いいですよ」

いつも無表情の神経内科の先生とは違って、泌尿器科の先生は人なつっこい笑顔を見せる人だった。
「おそらくね、膀胱が伸びきっていて、めいっぱい溜まるようになってるんでしょう。排出する力が弱っているんで、おさまりきらなくなったら出るんでしょうね。回数は少なくても量が多いなら、問題なさそうです。回数を増やす薬もありますが、薬には副作用もありますし、これなら飲まないほうがいいと思いますよ」
もちろん、異常がないのであれば、お薬なんかノーサンキューだ。

「今、マグミットっていう便が柔らかくなる薬を飲んでいて、大便がだいぶ水っぽいんんですけど、そっちに水分を取られてるってことはありますか?」
と私が質問すると、先生は尿が少なくなる仕組みを丁寧に解説してくれた。

「通常より大便に水分を使っているのも一因でしょうね。でも、尿が少ない原因はいろいろ考えられます。そもそも摂取した水分量が少ないかもしれない。暑くて汗をいっぱいかいたかもしれない。発熱があっても、身体の水分は失われます。下痢をしてもそうです。いろいろな原因が重なり合っているかもしれない。尿の量は身体の水分量と関係しますから、一概には言えないんです」

なるほど。母は飲み物を飲むのも少しずつだし、自律神経のコントロールが難しいので汗をかきやすい。
便だけではなくて、水分が少なくなる要素が多いのかもしれない。

「一応、次回も経過を見させてください」
と先生は言い、診察は終わった。

なにしろ良かった。
検尿が取れたのもうれしかったし、先生の対応も丁寧だったし、何はさておき、異常がなかったというのがこれ以上ない朗報である。
背中はちょっと擦りむいてしまったけど、泌尿器科、大変満足!

私が先生がいい人で良かったというと、ケアマネさんは、
泌尿器科の先生はどの病院でも比較的気さくな人が多いんですよ~」
と言っていた。
科によって先生の性格的傾向があるんだろうか。
「あの先生、循環器科なのに脳外科みたいな性格してる!」
とかあったりしてね。
一度、病院勤務の友達に尋ねても面白いかもしれない。