3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、趣味と母の介護と育児に追われる日々の記録。

さみしさの正体

今日も先週と同じく、幼稚園に入ったとたん、サトイモが私にしがみついて泣き出した。

引きずるようにして部屋の前まで行き、先生に渡して無理やりはがし、逃げるように置いてきた。

先週の先生からの報告によれば、数分も経つと泣き止むとのこと。

今日もきっと大丈夫。

 

それにしても、毎週これかと思うと面倒くさい。

こっちゃ、この時間を楽しみにしてるんだからさっさと離れてくれ、とウンザリする。

「そんなん言うけど、ほんまは離れたらさみしいやろ?」

と夫は言うが、たった半日ではさみしさなんて感じる暇もない。

はぁ~。

切実にもっと離れたい。

 

さみしくない私は、さみしい母から生まれた。

一人はさみしい。人といるのはわずらわしい。

上記は大槻ケンヂ著『いつか春の日のどっかの町へ』にある名文である。

心からそう思う。

けれど、私自身は幸い、一人でも比較的さみしくないし、人と交流するのも比較的楽しめる性格だ。

さみしいから人と交流する人がいるけれど、私が人と関わるのは楽しいからであって、さみしさからではない。

 

昔、友達と、

「さみしさとわずらわしさとどっちが嫌か。さみしさが嫌な人は結婚したがるだろうし、わずらわしさが嫌な人はシングルを選んじゃうのかもね」

という話をしたことがある。

だから私は結婚したいと思わなかった。

今も半分別居なのは、そのいいとこどりをさせてもらっている。

 

ある人に同じ話をしたところ、

「あなたがさみしいと思わないのはなんでだと思う?」

と聞かれたことがある。

さあ?なんでだろう?と返すと、

「子どもの頃に、お母さんからたっぷり愛情をもらったからだよ。そのときの愛情貯金があるからさみしくないの。だからお母さんに感謝しないといけないよ」

と言われた。

 

その人は私と母のことなんてよく知らないはずだけど、確かにうちの母はうっとおしいほど私のことを愛してくれた。

逆にそれが煩わしくて、離れたくてしょうがなかった。

でも、そのおかげで、大人になってもさみしくないとしたら、心から母に感謝したい。

 

その母自身は、ひどくさみしがりやだった。

私が家を出たあとの父と二人の暮らしがさみしすぎて病気になったのかもしれない。

 

コロナ禍において、母の病院は今もなお、面会お断りが続いている。

最後に会ったのは2月上旬だ。

そのときも、母の反応は少し薄かった。

去年までは私が行って声をかけると私だということがわかったような表情を見せてくれていたが、2020年に入ってからは、私がわかっているのかいないのか、もう表情からは読み取れなかった。

 

まだ意識がはっきりわかるときは、入院生活はさみしくないだろうかと心配だったけれど、ほとんど反応がない今となっては、母のさみしさを心配する気持ちもなくなってしまった。

願わくば、さみしさや、おそれや、不安や、痛みやかゆみや苦しみや、すべての嫌な感覚から、母が解放されていますように。

何もわからないなら、そうあってくれ。

 

干渉力の薄い父でよかった?

さみしがりやの母に対して、父は人と関わるのを面倒がる人である。

母の面会ができないことに関しても、

「入り口で看護師にタオルを預けられるようになってラクになった。病室まで行かんで済む」

と冷たい。

「お母さんに顔を見せてあげてよ」

と私が言うと、

「何にも物が言えへんのに、見せたってしゃーない」

と言うのだ。

言葉が言えないからこそ、顔を合わせることやアイコンタクトに価値があるのではないかと私は主張するけれど、父には何も響かない。

まあ、議論したところで、今は面会そのものができないのだけれど。

 

母の面会ができなくなって以降、父にも会っていなかったが、先週の土曜日、久々に様子を見に帰った。

家も荒れ放題ではないかと心配していたけれどヘルパーさんのおかげで変わりなく、父自身も予想ほど劣化していなかった。

コロナで利用不可になっていた運動公園がまた使えるようになったので、散歩も再開したとのことだった。

 

サトイモがプレ幼稚園に通っていると言うと、

「ほんなら入園のお祝いせなあかんな」

西松屋でお絵描きボードとひらがなパッドを買って、わざわざ送ってくれた。

クリスマスにもお誕生日にも何も買ってくれなかったくせになぜ今??と首をかしげてしまうが、父は父の理屈で生きているのでしょうがない。

どこまでもとんちんかん。

でも、初めて祖父らしいことをしてくれたのでうれしかった。

 

父は決して冷淡な人ではなく、思えば子育ては積極的に関わっていた。

よく遊んでもらった。

母が買い物をするときはいつも父と一緒だった。

自分でもよくかわいがってもらったと思う。

 

かわいがりはするけれど、干渉はしない人だった。

だから今も全く干渉してこない。

それをありがないと思わなくちゃいけない、としばしば思う。

 

母は温かく父は冷淡なように書いてしまっている気がするが、もし母が元気だったらと想像すると恐ろしい。

あれをしろこれをしろ、伝統行事はちゃんとやれ、もっと孫に会わせろ写真を送れ、あれを買ってやるこれを送ってやる作ってやる、病院には行ったのか先生にきいたのか、などなど、何をどれだけ口出しされ干渉されるやらわかったもんじゃない。

孫に会いたくてさみしくて、のたうちまわっていたに違いない。

 

母が元気ならどれだけサトイモをかわいがってくれただろう、と思うこともある。

けれど、結論。母が元気じゃなくてよかった。

干渉的な親といるのはわずらわしい。

全裸で書いた貸出簿

また木曜日。

幼稚園に着くまでは機嫌よく走っていたけれど、エレベーターに乗った瞬間嫌がり、私にしがみついて泣き出した。

泣くタイミングが週ごとに早くなってきた。

事前予測ができるようになったんだろう。

 

…遅っ!

 

先週お迎えで一緒になったある女の子のママによると、その子は前の日から泣いているそうだ。

前日から!

…早っ!

 

その子のママは、

「幼稚園行ったら楽しいよ、サトイモくんに会えるよ、って言ってるんですよ」

と園庭開放の頃からなじみがあるサトイモが唯一の顔見知りで頼りだと言ってくれた。

 

そうえいば児童館に一緒に行っているほかの女の子も、

サトイモくんがいくならいく」

と言ってくれるらしく、

「極度の人見知りなのに、サトイモくんが一緒だと遊べるんですよね~」

とその子のママが言ってくれた。

 

おや、サトイモは軽くモテキか?

人生に三度来るモテキの1回が今だとしたら、サトイモはちょっとかわいそう。

 

親子参加型クラス

今年度サトイモは、完全に預けるプレ幼稚園のほかに、親子参加型の幼稚園のクラスと、児童館で会員登録制クラスにも参加している。

プレではどんな様子かわからないけれど、一緒にプログラムに参加していると、まったく言うことをきかないサトイモに困ってしまう。

みんな積み木やオモチャで遊んでいるのに、サトイモだけ室内をぐるぐる走り回まわり、ピアノを開けようとしたり、ホワイトボードのペン置きのところにぶら下がったりする。

何をしでかすか目が離せない。

 

先週は園庭での水遊びがあった。

プールに入るのではなく、園庭に小さなビニールプールやたらいを置いて、水をまいたり砂にかけたりして遊んだ。

当然泥だらけになるので、最後に先生が温水シャワーで身体を流してくれる。

全裸になってシャワーを浴び、身体をバスタオルにくるんで抱っこしたまま部屋に戻った。

さて、オムツをはかせようとすると、イヤイヤが始まった。

大泣きで暴れ、走って逃げようとする。

 

しばらく格闘。

 

ほかの子はもう服を着替え終わり、先生は次のプログラムに移ろうとしている。

うちの子だけ、全裸のまま。

床を歩くので上靴だけ履かせてみたが、全裸に靴だけ履いているのも余計におかしいのでまた脱がせた。

先生も来てくれて、オムツを履かせるのを手伝ってくれたけれど、足をばたつかせて履かせても履かせても脱いでしまう。

何をしてもイヤイヤと暴れるので、

「じゃあ、しばらくこのままでいようか~」

と苦笑い。

 

ロマンポルシェ。に「全裸で書いたラブレター」という曲があったが、サトイモは終わりの歌まで全裸、「せんせい、さようなら」まで全裸、絵本を選んで貸出簿に書くときまで全裸。

みんなが次第に部屋を出て行く頃になってようやく落ち着き、オムツを履くことができた。

恥ずかしいったらありゃしない。

 

頭を打つとアホになる?

イヤイヤが極まると、自分の頭を床に叩きつける癖は相変わらず続いている。

こちらはもう慣れっこになって、慌てる気持ちもなくなってきた。

一昨日は運悪く引き戸の敷居に叩きつけたため、額が切れたうえ大きなたんこぶを作ってしまった。

冷やそうと保冷剤を当てたらそれがイヤだと言って暴れるし、病院に行こうなんて言うとさらに泣くから、抱っこしてなだめるしかなく、そうしていたら寝てしまった。

 

眠いなら大暴れせずに寝てくれないものか。

 

土曜日には、ホームセンターの幼児用カートから立ち上がり、頭から落っこちてたんこぶを作ったばかりである。

この調子で頭を叩きつけてたら、小学校に上がる頃にはアブドーラ・ザ・ブッチャーみたいなおでこになるんじゃないか。

 

頭への衝撃といえば、イギリスで子どものヘディング練習が禁止になったらしい。

spaia.jp

因果関係ははっきりしていないらしいが、将来、認知症パーキンソン病など脳の病気のリスクが懸念されるからだという。

 

パーキンソン病

 

スポーツと脳への衝撃といえば、ボクサーのパンチドランカーを思い出す。

あしたのジョー」のカーロス・リベラ

現実の世界では、そういえばモハメド・アリパーキンソン病だった。

パーキンソン病の原因は解明されていないが、脳への衝撃が原因のひとつなら…と思うと怖い。

もしかして、うちの母も、子どもの頃頭を強く打っていたんだろうか…。

 

夫は、よく頭をぶつけるサトイモに対して、

「アホになるぞ!」

と言うが、あながち間違いではないのかもしれない。

正確には「頭をぶつけると病気にかかるぞ、60年後に!」ということだ。

 

ますます手に負えない

頭をぶつけることが悪いことだとわかってはいるけれど、イヤイヤになるとなかなか止められず、成長するにしたがって悪さもエスカレートしていく。

 

昨日は夕食を嫌がって食べず、スイカだけを食した後遊んでいたら、サンダルを履いて家を出て行こうとした。

水遊び用に買ったクロックスのようなサンダルで、靴よりも簡単に履ける。

これまでなら玄関のカギには手が届かなかったのだけど、サンダルを履いて背伸びをしたら届き、あまつさえカギを回して開けた。

救いは自分ひとりで出ていくのではなく、私も一緒でないと気が済まないこと。

「ママー!ママー!」

と私の手を引いて、外に出ようとする。

 

「ダメダメ!」「イーイ!」「アカン!」「イーイ!」「アカンったら!」

玄関での攻防がしばらく続いた。

 

ラチがあかないので、

「じゃあ何がしたいの?」

と手を引かれるままに扉の外へ出た。

玄関のカギをかけただけで、エアコンも電気もつけっぱなしのまま、着の身着のままである。

サトイモに手を引かれるままに歩いていったら、近所の公園に着いてしまった。

 

7月になって、日が長くなった。

もうすぐ7時だというのにまだ明るい。

4、5歳くらいの女の子が一人、祖母に連れられてまだ遊んでいる。

サトイモも一緒にすべり台。

私はマスクをしていないから少し離れて様子を見ていたが、すべり台を下から登ろうとしたので、それはダメだと引きはがした。

大声で叫ぶサトイモ

おばあちゃんと呼ぶにはまだ若い女性に謝る私。

彼女は、

「いえいえ、この子も利かん気で、お互い様です」

と言ってくれた。

確かに様子を見ていると、こんな時間に公園で遊ぶこと自体、

「手こずってんな~」

という感じが伝わる。

その後折を見て、泣き叫ぶサトイモを横抱きにして家に連れて帰った。

 

夫にそんなサトイモのイヤイヤ話をすると、

「育て方が悪かったんかな?しつけを間違ったんかな?」

と言う。

 

でも、これまでの育て方の何が悪くてこんな利かん気になったのか、心当たりがない。

日曜日に遊びに来てくれた友人家族と話していて、サトイモは目を離すとすぐに洗面台の中に入るという話をすると、そこの娘さんは一度もそんなことをしたことはないと驚いていた。

 

洗面台に入る子もいれば入らない子もいる。

ということは、育て方やしつけ以前の問題なんだ。

と、自分を正当化するしかない。

バイオレンスできない人

またまた木曜日がやってきた。

プレ幼稚園はこれで3回目だけど、今回は先生に引き渡すと大泣き。

玄関先でグズグズしたのがよくなかったと反省。

本人も過去2回の経験で「ここに来るとママと離れ離れになる」ということがわかってしまったので、初回のようにはいかない。

来週さらに困難にならなければいいけど。

 

そして私は、初回ほどこの2時間半をウキウキワクワク期待することがなくなった。

家事をしてブログを書いて買い物に行ったら終わりなのだ。

9時からの2時間だと店も開いていない。

いうほど何もできん。

 

今週のお楽しみは、オンラインやついフェスと筋肉少女帯の配信イベントをゆっくり再見するくらいのものだ。

それとて、たった2時間半だと少ししか見られない。

 

サトイモのイヤイヤは相変わらずで、何を言っても何をしようにも「イヤイヤ」だ。

「そっかぁ、この世のすべてが嫌になっちゃったんだねぇ」

と抱きしめてゆらゆらしながらトントンするけれど、それで治まってくれるわけでもない。

 

閉塞してしまって、あんまり頭にくると、ふと、

「叩いたり蹴ったりできたらスッキリするのかなぁ」

と思うこともある。

 

じゃあ、私が暴力的な衝動を抑え込んでいるかというとそうでもなくて、

「できればどんなに素敵だろう、どんなにカタルシスがあるだろう」

という夢の世界が広がっているばかりである。

 

自分にはできないと悟った日

2015年の夏、父が脳梗塞で入院をした。

もちろん、母は大脳皮質基底核変性症で身体の自由がきかず、生活に全介助が必要な頃だった。ダブルケアである。

もう5年も経つとすっかり忘れてしまったけれど、ブログも書けないくらいつらい時期だった。

その父の退院の日のことである。

 

私は慣れない運転をして迎えに行き、帰りに快気祝いとして和風のカフェでランチを食べた。

一杯だけならいいよ、と言うと、父はビールを注文。

「2週間ぶりやから美味しいなぁ」

と父は上機嫌だった。

「入院はつらいなぁ。酒もタバコもあかんのやからなぁ」

何度も脱走しようとしたためナースステーションの前の病室に入れられ、ベッドにセンサーまでつけられた老人は言った。

 

「お酒はちょっとならいいけど、これを機会にタバコは絶対やめなあかんで」

医者にもそう言われていた。

父もよくわかっていたはずだった。

 

家に帰って来ると、父がなかなか車庫から離れない。

「ちょっと酔うたからここで休む」

と言って階段に腰をかけている。

「大丈夫?」

と声をかけると、

「大丈夫大丈夫」

というので、私は先に車から荷物を降ろし、玄関まで運んでいた。

すると、私が玄関に入ろうとしたところを見計らったように、よろよろとした足取りの父が車に乗り込もうとしているではないか。

 

私は慌てて引き留めに行った。

「何してんの!?」

「ちょっとだけや。ちょっとだけ行かせてくれ」

 

ピンときた。

タバコを買いに行こうとしているのだ。

 

「今乗ったら飲酒運転やで!わかってんの!?絶対あかん!!!」

「どうってことあらへん!」

 

運転席に座ろうとする父の腕を私は必死で引っ張るけれど、向こうも必死である。

ドアの前で揉み合いになった。

 

一瞬、私の足が出た。

父の腰に当たる寸前だった。

 

でも、止めた。

蹴れなかった。

 

その後、父は車を発進。

私は開いたドアにぶら下がりながらしばらく走ったが、あまりに危険なのですぐにあきらめた。

「お願いやから行かんといて!」

ご近所の手前も気にせず、道路で泣き叫ぶ私。

 

このときのみじめな気持ちは一生忘れない。

 

このとき悟ったのは、走る車にぶら下がれるスタントマンはすごい、ということと、私は親を蹴ることができない、ということだった。

 

人生の師「母をたずねて三千里

大好きなアニメ「母をたずねて三千里」の第30話「老ガウチョ カルロス」で、こんなシーンがある。

 

ある食堂でマルコがペッピーノ一座のみんなと食事をとっていると、ある荒くれ者にからまれる。

娘を守るためにペッピーノさんが護身用の銃をかまえると、荒くれ者は決闘だと騒ぎ、撃ってみろと言う。

けれど、ペッピーノさんは土壇場になって銃を捨てる。

「わしには撃てん。人間を撃つなんてわしにはできん」

するとペッピーノさんはナイフを突きつけられて殺されそうになり、落ちている銃を拾ったマルコが、

「ぼくはペッピーノさんと違う! ほんとに撃つからね!」

といって震えながら銃を構えるが、やっぱり撃つことはできない。

 

結果的にはカルロスじいさんが来て荒くれ者をやっつけてくれるので、見ているこっちの溜飲は下がるのだけど、ペッピーノさんの「腰抜け」具合にハラハラさせられる回である。

「あんなクズ野郎、撃っちゃえばいいのに!」

と思ってしまうけれど、じゃあ私はどうだろうか。

 

たぶん、ペッピーノさんと同じだ。

引き金を引くことなんて、できやしないだろう。

 

夫はバイオレンスができるか

もしうちの夫がペッピーノさんの立場だったらどうだろうか。

尋ねたら、

「俺は撃つよ」

と言う。

でも、ほんとかしら。

 

サトイモのしつけのためには叩くのもやむなし、という意見の夫。

先日、食卓でイスの上に立ち上がるサトイモを夫が注意していた。

「今度立ち上がったら、頭をコツンするよ!」

とげんこつを見せたが、サトイモは笑顔でまた立ち上がった。

「コラ!」

と夫が怒った顔を見せてコツン!

 

おやおや?

全然痛そうじゃないし!

 

サトイモは「へへへ」と喜んで、もっと叩いてほしそうに頭を突き出している。

「こら、坊主!」

ニコニコ笑顔のサトイモに、夫の顔がほころんでしまう。

 

「もっとコツンするぞ!ええんか!」

口ではそう言っても、やはり手加減をしているので、サトイモモグラたたきの様子で立ったり座ったりで遊び始めてしまった。

完全に夫の負け。

 

私は心の中で、

「夫も私と同じじゃないか」

と笑ってしまった。

夫だって、かわいい子どもに本気で手を挙げることはできないのだ。

たぶん、夫もペッピーノさんと違わない。

アベノマスクと民主主義

今日も木曜日がやってきた!

さっきサトイモを幼稚園に送ってきたところ。

今日も靴箱の前で先生に、

「先週おっきい積み木で楽しく遊んでたよね?今日もあるよ~!早くお部屋に入ってあそぼ!」

と声をかけられると、機嫌よく私から離れて中へ入ってくれた。

自由!

ビバ木曜日!

 

ただ、恐ろしいのは今日も雨だということ。

 

先週も雨で、登園するのに雨具を何も持っていないことに気づき、慌ててAmazonで長靴を注文した。

到着したばかりの新品の長靴。

サトイモは初めて長靴というものに足を入れる。

どうも歩きにくそうで、しかめっ面をしていたから、

「長靴は水たまりでもバシャバシャ入れるんだよ~」

と教えたところ、水たまりを探してなかなか家に帰らない。

帰ろうとするとイヤイヤが始まる。

仕方なく満足するまでぶらぶらしていると、気に入った水たまりが見つかった。

とことん足踏みした挙句、手でもバシャバシャやりだし、とうとう座り込んでしまった。


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顔まで泥水だらけ。

最後は車がやってきたので退かざるをえなくなり、イヤイヤと泣き叫ぶサトイモを横抱きにして連れていくはめに。

こっちがイヤイヤだよ…。

 

それが先週の今日の帰り道。

今日もそんなことにならなければいいんだけれど。

 

新しい日常が始まったらマスクが気になった

プレ幼稚園もそうだけど、子育て広場も限定的に開始し、図書館も利用できるようになったりして、徐々に日常を取り戻しつつある。

夫も会社へ出勤するようになった。

そうやって外に出るようになって気が付いたことは、街中にマスクがあふれているということ。

元町商店街を歩くと、服屋でも雑貨屋でも帽子屋でもマスクを売っている。

スーパーやホームセンターでもサージカルマスクがワゴンで山積みされている。

 

その一方、アベノマスクをつけている人に会ったことがない。

「見たことある?」

と夫に尋ねると、会社でも電車通勤でも見たことないという。

 

私が、税金の無駄遣いだ、天下の愚策だ、安倍は早くやめてくれ、と散々文句を言うと、

 

「安倍ちゃんだって頑張ってるんやから、文句言うたらあかん」

といつも夫は擁護する。

「なみ松はコバエと安倍ちゃんには厳しいんやから。反対ばっかり」

 

いやいや。

私だって最初はマスクを配ることに反対はしてなかった。

初めての事態に何ができるのか、試行錯誤するのは仕方ないと思っていた。

 

ただ、ふたを開けてみれば、「スピード感」のために業者は不透明、検品不十分のせいで不良品続発、回収のためにさらに不要な費用がかかる、という大失態。

ウンザリしてコバエのように叩きたくなるのはしょうがない。

それもこれも、思いつきと思い込みで周囲の意見も聞かずに勝手に決めて、情報を公開せずに隠ぺいして、資料も残さず、説明もせず(できず)、検証しないから反省もしないし改善もできない、という安倍政権の体質のせいだ。

 

コバエは生理的に嫌いだけど、最初は安倍ちゃんのことだって嫌いじゃなかった。

安倍ちゃんが首相になったら、拉致被害者だって帰ってくるかも、と思ってた。

自分が滑舌が悪いので、あの舌っ足らずなしゃべりだって大目にみていた。

でも、期待を裏切られるばかりか、いい加減なことばっかりされて、だんだんだんだん嫌いになってしまったんだ。

 

私がまくしたてると、夫は、ぼそりと、

「それでも、みんなで決めた総理大臣なんやから」

と言った。

 

「みんなで決めたって?」

「選挙で自民党が勝ったんやから、しゃーないやんか。多数決っていうことはそういうことやろ。民主主義なんやから」

私は目を丸くしてしまった。

 

ちょっと待ってよ!

多数決と民主主義は同じじゃないよ!

 

ガンコちゃんに教わる多数決と民主主義

小さい子どもがいると、テレビのデフォルトチャンネルはEテレだ。

ほぼ一日中Eテレがついていて、ある日見るともなく「ざわざわ森のがんこちゃん」を見ていたら、途中から引き込まれてしまった。

さんせい?はんたい? | 新・ざわざわ森のがんこちゃん | NHK for School

 

こんな話だ。

がんこちゃんのクラスで、「おたのしみ会」に何をするか決めるとき、みんながリレーをしようと言うのに対して、カタツムリのツムちゃんだけが反対をする。

多数決で決まって、

「みんなできめたんだもん、しょうがないよ」

と言われたツムちゃんは、意見を言えずじまい。

いろいろあって、ツムちゃんの気持ちを理解したがんこちゃんが、

「ツムちゃんがなんでイヤなのか聞こう」

ということになる。

ツムちゃんがリレーを反対する理由は、極度に足の遅いツムちゃんがいるチームが絶対に負けるから、ということだった。

やってみると、実際にダントツに遅い。カタツムリだから。

そこでみんなは、皿回しだとか竹馬などを混ぜた「おたのしみリレー」を考案し、かけっこだけのリレーよりもずっと楽しい「おたのしみ会」になった。

 

この話のいいところは、最後に、

「ツムちゃんの意見を聞いてよかったね」

ということになった点だ。

 

多数決で勝ったほうが少数意見の意見を聞かずに切り捨てるのが民主主義ではない。

がんこちゃんのように、多数派も少数派も納得できるように話し合って、建設的な意見を出し合って改善して、よりよいものする。

それが民主主義だ。

加えて言うなら、論破することが話し合いではない。意見がぶつかるなら、両方が受け入れられる第3の道を創造するのが民主主義だ。

 

がんこちゃんを自民党の皆さんに見せてあげたい。

 

がんこちゃんを引き合いにだし、

「これからサトイモが生きていく社会は、多数決じゃなくて本当の民主主義じゃないと困るでしょ」

と私が言うと、

「そうやな」

と夫も聞き入れてくれた。

 

あ!

そうこうしているともうすぐ11時!

お迎えにいかなきゃ。

自由な時間はあっという間。

 

本格的イヤイヤ期のプレ幼稚園

先ほど、サトイモを幼稚園に送ってきた。

家から一番近い近い幼稚園で、週1回午前中だけ実施しているプレ幼稚園に登園することになったのだ。

本来ならゴールデンウィーク明けから始まるはずだったんだけど、コロナのせいで今日からになった。

 

8時半から9時までの間に登園することになっていて、初日だから早め行動で8時半過ぎには到着するように送ったら、帰ってきてもまだ9時!!

 

まだ9時!!

 

そして自由!!!

 

何をしよう!

何ができる??

何をすべき??

 

興奮が止まらない。

 

昨日まで、

「初めてのプレ幼稚園なんです。自由時間が楽しみで」

なんて話すと、

「そうは言っても、『今何をしてるかなぁ、大丈夫かなぁ』って気が気じゃなくて落ち着かなかったりするんちゃう?」

なんて言われていたけれど、全然そんなことはない。

 

それもこれも、別れ際、幼稚園の靴箱の前でママにしがみついて泣いている子がたくさんいる中、うちのサトイモは室内のオモチャを見つけるやいなや走って中に入っていってしまって、先生に、

「大丈夫そうですね~」

と笑顔で送り出されてしまった。

おかげさまで気兼ねなく自由を満喫できる。

 

2~3歳対象のプレ幼稚園はなかなか人気で、本来なら1クラスなのに2クラス、つまり2日に分けて実施されることになった。

1クラスだけだと抽選に漏れて補欠だったんだけど、2クラスにしてもらったおかげで入園できた。

うちの幼稚園は抽選だからよかったけれど、園によっては先着順というところもあって、児童館で会ったママは朝5時から並んだという。

新型ゲーム機発売日の量販店じゃあるまいし、なんとかならんのかそれ。

少子化なのにプレ幼稚園でさえ気軽に入れない。どうなってるんだ日本。

 

息子から暴力を受けています

今日から立派に園児となったサトイモだけれど、6月に入った頃から急にイヤイヤが激しくなってきた。

「いやいやいや!!」

と言えるようになってからは、これまでの「ば~ぶ~ば~ぶ~」とは比べ物にならない暴れ方で手に負えない。

 

一度イヤイヤにはまると、こっちが折れない限り泣いて暴れたおし、自分の頭を床や壁にぶつけ始める。

初めてそれをやられたときはビックリして、

「何してんの!!やめてやめて!!!」

と押さえつけて自傷行為をやめさせようとした。

すると押さえつけられるのが嫌でますます大暴れ。

また頭を床に打ち付け、

「いたい~!いたい~!!」

とさらに泣く。

 

当たり前やろ…。

 

やめてやめて!ギャー!ゴンゴン!いたいいたい!やめてやめて!ギャー!

何度もそれを繰り返した。

 

サトイモはさらに嫌がって、抱きしめる私の顔を鷲掴み。

小さな爪が頬に食い込んで、血がにじむほど傷になった。

 

だからといって離すとまた自分の頭をぶつけだす。

私はどうすればいいのかわからなくなって、

「お願いだからやめてよ~!お願い~!」

と大声で泣いた。

サトイモもずっと泣いていた。

 

あの日、それからどうしたのかあまり覚えていない。

イヤイヤのきっかけは、「1日1本だけ」の約束のジュースをもっと飲みたがったか、ゼリーを食べたがったかで、最初は冷蔵庫前で攻防していたと思う。

その程度のことで、何時間も…。

 

それ以降なるべく、なぜイヤイヤになったか忘れるほどイヤイヤがひどくならないように気をつけている。

スイッチが入るだけならいいけど、ギアが加速しないようにしないと、初期ドラゴンボールの満月を見た孫悟空になってしまうからだ。

大猿化しないよう最大限の配慮をしていても、毎日のようにイヤイヤと言っては頭をぶつけている。

そのうち、

「あれ?痛いと自分が損じゃね?」

と気づいてくれたらいいけれど。

 

暴力で制圧できるのか

土日、そんなサトイモのイヤイヤを目撃した夫。

3人で車でおでかけしたときに、サトイモチャイルドシートから抜け出して暴れ、私が必死で押さえてもすり抜け、最終的には座席間を移動してトランクに入ってしまったところで、夫も運転席でイライラの限界。

「ちゃんと押さえとかなアカンやろ!」

と私にイライラをぶつけるけれど、

「こっちだって腕力の限界があるんやから!」

と私もふてくされるしかない。

 

家に帰って、また冷蔵庫前でイヤイヤをしていたとき、

「ええ加減にせえ!」

バシッ!!!

サトイモの頭に夫の平手が飛んだ。

 

「いたい~!」

と泣くサトイモ

よしよし、と抱きしめてなだめる私。

 

「全部こいつの言うとおりにしてるやんか。甘やかしとうからこうなるんや。口で言うだけやったらあかん!」

夫はそう言った。

 

夫のその言葉を、ずっと反芻している。

確かに最近の私は、イヤイヤがひどくならないようにできるかぎり譲歩していた。

それは「甘やかし」なのか。

でも、口で言うだけではダメということは、手を出せということだろうか?

 

「暴力で言うことをきかせるのは、教育でもしつけでもありません。それは調教ですよ。でもサトイモくんは動物ではありませんよね。言葉で伝わるはずです。理解できるまで、言葉で伝えるしかないんです」

ベビーくもんの先生はそう言っていた。

 

自分の頭を自分でぶつける子に、痛みで言うことをきかせることができるのかという「効果」の問題もある。

「痛いのはイヤだから」と言うことをきいてくれるだろうか。

 

私は今のところ「ついカッとなって」手がでることはないけれど、本当に口で説明するだけで言うことを聞いてくれる日が来るんだろうか。

チャイルドシートを抜け出したり、ガスコンロを触ったりなどの危険行為をしたとき、何度も何度も注意しているけれど、今は馬耳東風に見える。

 

正直疲れてしまうと、

「危ないことしてケガしたら、そのときわかるだろ」

とあきらめている自分がいる。

それで死んだらそういう運命の子だったのだと思おう。

 

それって、そんなふうに諦める親のほうが叩く親よりよっぽど冷たい。

どうすればいいんだまったく。

がんばろう神戸グルメ

今日公園に行ったら、すべり台の裏側の壁に私の貼り紙が貼りなおされてあった。

おそらく管理人の無愛想ジジイだろう。

でも、捨てないで「目立たない場所」に貼りなおしてくれたのは、ジジイにも情けがある印だ。

心の中で、

「誠にかたじけない」

と頭を下げた。

侍か。

でも、目こぼししてもらった相手にかける言葉は「かたじけない」以外ボキャブラリーが見つからない。

 

昨日ブログをアップしたあと、トミーズでパンを買ったことを書き忘れていたのに気が付いた。

生田神社からの帰り、阪急神戸三宮駅の高架下である。

昼食のサンドイッチと、トミーズの代名詞「あん食」と、私が好きなもちもちチーズスティックを買った。


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うーん、私の写真では全然おいしそうに見えないな…。

でもケンミンショーでも紹介されていたくらい、神戸で人気があるパンなのである。

 

トミーズは高架下の売店みたいな小さなお店で、ショーケースに入っているのを店員さんに言って取ってもらう方式だ。

これは前から変わらない。

パン屋さんによっては、パンを並べて客がトングで取る方式がはばかられるため、パンがひとつひとつビニール袋に包まれているようになった、とお姑さんが教えてくれた。

「焼きたてのパンを袋なんかに入れたら、湯気でだいなしやのにな」

と残念そうに言っていた。

コロナめ。

 

がんばろう神戸グルメ

お友達の知り合いでぱぱりんさんというブロガーの方が「1000円しかないねん!」というグルメブログを書いている。

ameblo.jp

とても楽しくて面白い人気ブログなので、会社の同僚にもファンがいて、友達の知り合いだと言うとビックリされたことがある。

ぱぱりんさんはブログの中で「♯がんばろう神戸グルメ」というハッシュタグとロゴを作成されていて、神戸の飲食店のテイクアウトを応援しようと呼びかけていた。

 

私も外食が大好きで、飲食店にはしょっちゅう通っていたのに、妊娠後は街から遠ざかってしまって、そのままコロナの引きこもり。

私だって、ちょっとくらいテイクアウトで応援したい。

夫にも呼びかけて、毎週末どこかの店でテイクアウトするようにしている。

 

劉家荘

最初にテイクアウトしたのが、南京町の中華料理店、劉家荘。

SNSで見ていると、いち早くお弁当テイクアウトを打ち出していた。

南京町の店の多くが観光客相手なのに対して、劉家荘は地元の人に愛されているお店だったから、休業という選択をしなかったのだろう。(←勝手な推測。)

ある土曜日、買い出しのついでに南京町へ寄った。

店主の劉さんは配達中で会えなかったのだけれど、スタッフの皆さんはお元気そうだった。

大変やね、と声をかけると、

「ほかの店が閉まってますからね、南京町に来たお客さんはみんなうちでつかまえる気でやってますよ!」

と頼もしい返事だったので安心した。

www.ryukasou.com

 

この日は甘酢唐揚げのお弁当(800円)をふたつと、晩御飯のおかず用に焼鶏を半羽切ってもらった。

焼鶏は誰にすすめても「おいしい」と言ってもらえる鉄板グルメで、実家に帰るときにはよく父へのお土産にしていた。

そうだ、父の日のプレゼントは焼鶏と紹興酒のセットにしよう。

きっとまだ手渡しはできないだろうから宅配だな。

 

インダスレイ

その次にテイクアウトしたお店は、元町にあるインド料理店インダスレイ。

www.indus-ray.net

 

オーナーのヴィーナさんの料理はEテレの料理番組でも取り上げられたほど。

日本のインド料理店のほとんどが実はネパール料理だったりするんだけど、インダスレイは日本には珍しい本格的な南インド料理を提供してくれる。

私はここのドーサというクレープのような料理が大好きで、この日もキーマカレーのドーサを注文した。

 

インダスレイの看板メニューに土日祝限定のビリヤニという料理がある。

一度食べてみたかったのだけど、ドーサが好きすぎて、いつもドーサばかり注文してしまい、一度もビリヤニを食べたことがなかった。

今回は夫と一緒なので、夫がチキンのビリヤニをテイクアウト。

 

ヴィーナさんも息子さんのラヴィも元気そうだったし、何よりお店にお客さんが入っているのを見て安心した。

 

家に帰って袋を開けたとたん、スパイスの香りが部屋に充満した。

「匂いをかいだだけで、旅行に来たみたいな気分や」

と夫が言った。

夫は辛い物が得意なほうで、ビリヤニがすごく辛いことを確認したうえであえて注文したのだけれど、その夫でさえ、

「本格的すぎる!現地の辛さや!」

とヒーヒー言いながら食べていた。

サトイモにはアンパンマンカレーを食べさせていたのだけれど、パパが食べているのをやたらと食べたがり、油断すると手を伸ばす。

「あかん!こんなん食べたら卒倒するぞ!」

諦めさせるのに苦労した。

ヴィーナさんは、インドでは2歳からカレーを食べさせると言っていたけど、どれくらいの辛さで与えるんだろう??

激辛なビリヤニに比べて、ドーサはちょうどいい塩梅の辛さで、

「これこれ!ヴィーナさんのドーサ!」

とうれしくなった。

 

うちはコロナ関係なく、サトイモがいるためになかなか外食できない。

去年一度だけサトイモを連れてインダスレイに行ったけど、ベビーカーの中でサトイモが暴れて大変だった。

それを考えたら、テイクアウトで食べられるというのは子育て家庭にとってはありがたいことだ。

 

劉家荘にしてもインダスレイにしてもブログに書くつもりをしていなかったので、料理の写真を全然残していなかった。

今度はちゃんと写真に撮っておこう。

 

 

買い出しで散歩していたら、猫熊矢というフレンチのお店が閉店していた。

すごくいいお店だったのに…!

いつ閉まったのかわからないけれど、食べログを見ると最後の口コミは去年の12月だった。

悲しいし、寂しい。

閉店する飲食店がこれ以上増えないように、何かできることをせねば。

スマホをなくしただけだけど。

緊急事態宣言が解除されるだろうと言われていた月曜日の午後、近所の公園に遊びに行った。

カーブのすべり台がある小さな公園で、サトイモはいつもそこで走り回って遊ぶ。

サトイモは何回かすべったあとで、

「ママ~!あし!あし!ここ!」

と私の足を持ってすべり台の段を上がらせようとした。

「えっ?ママもすべるの?」

 

最初にすべり台をすべったのは半年ほど前だっただろうか。

子どもを持つなんて想定してなかったから、まさか人生で再びすべり台をすべるとは思っていなかった。

すべり台には30年以上ブランクがある。すごく怖かった。

小さな子が平気ですべっているすべり台でも、体がきしむかと思った。

 

今はもう慣れっこになったので、多少ぎこちないものの、たいていのすべり台ならすべってみせる。

サトイモに「あし!あし!」をやられて、この日は3回、すべり台をすべった。

小さなすべり台なので、ポシェットがやたらひっかかるのが気になりながら。

 

ないないといいつつ、ほんとはあるんでしょ?

スマホが見当たらない、と気が付いたのは、17時頃だった。

公園のあとスーパーに行って、家に帰ったら手を洗っておやつ。食べ終わったらママママとまとわりつくのでチラシをビリビリ破く遊びを一緒にし、油断していたらサトイモがウンチをもらし、ズボンを洗濯したうえ、少し早いけど仕方ないからもうお風呂に入れちゃえと入浴させ、さあ、夕食の準備をするか、という段になった。

家事をするときにはいつもスマホでラジオ番組を聴く。

家の中で置きそうな場所をいくら探してもスマホがない。

 

はは、いやいや冗談でしょ。

 

もしかして、サトイモがどっか隠してるんじゃないの?

「ママのスマホ知らない?」

返事をしないのを知っていても尋ねてみる。

普段、私のスマホは決して触らせないようにしているから、もしサトイモが手に取ったなら隠すどころかいじりたおしてずっと手に持っているはず。

「ほな違うか~」

ミルクボーイの内海くんのごとくつぶやいてみたけれど、事は深刻である。

 

この日はオーケンの弾き語りライブのツイキャス配信があるのだ。

コロナ禍によってすっかりデジタル化が進み、精力的に配信活動に取り組むオーケンの初の弾き語りライブ。

スマホがなくてどうするどうする?!

不安に駆られながら、PCを出した。

もともとスマホより大きな画面で見たいからPCで見るつもりはしていたものの、やはり見慣れないノートPCが出てくるとサトイモが触りたがってばぶばぶ騒ぎ出す。

 

ばぶばぶをいなしつつ、こういうときのために買ったワイヤレスイヤホンをこっそり耳に装着して、ライブ配信を見終える。

子どもが騒ぐうえ、スマホがないという不安な気持ちの中で見るオーケンのライブは普段の半分くらいしか楽しめなかった…。

 

サトイモを寝かしつけたあと、再度ソファの下に至るまで家中を捜索し、夫に電話をかけてもらったり、GPSによる位置情報捜索サービスを使ったりしたものの、電源が入っていないようで役に立たず。

落ち着いて探せばどっかから出てくるにちがいない、とタカをくくっていた私が、ようやくヤバいと思い始める。

 

こうなると、心当たりは公園のすべり台である。

 

不安で眠れないかと思ったが、自分でも驚くほど普通に眠れた。

なんとなく、自分のスマホは出てくる気がする。根拠はないけど。

ただ、こんな夢を見た。

自分が天童よしみの物まね芸人で、天才ピアニストますみの上沼恵美子くらいそっくりだったはずなのに、出番直前になってなぜか全然似ていない。どうしようどうしよう、なんとか頑張って二重あごだけは作れた!顔は似てないけど、二重あごでいける!という夢を見た。

目覚めてから、天童よしみは二重あごだっただろうか?と首をかしげた。

 

うっかり遠出をするはめに

翌朝、スマホを探しに公園へ。

すべり台付近には見当たらない。

いつも植込みの手入れをしている管理人のおじいさんがいたので、念のため尋ねてみたら、無愛想にこう言われた。

スマホなんか、落としたらもうないでしょ。悪用されることもあるんやから、こんなとこで探してないで、はよ届けたほうがええで」

「そうですかすみません」

としおらしく言ったものの、心の中では「んなこたわかっとるわい糞爺め」と舌打ちした。

 

公園で遊びたがるサトイモを、

「交番にパトカー見に行こうか」

と無理やり引っ張って一番近い交番へ行く。

パトカーはなく、中にも誰もいない。

よく考えたら、交番に入るのは人生初である。

恐る恐る無人の交番に入る。

電話機があって、不在のときにかける警察署の電話番号が書かれていた。

 

電話に出てくれた人にスマホを落とした旨を伝えると、落とし物係につながる。

その間、サトイモ無人の交番の中を歩き回り、コマがついた回転イスを移動させ、引き出しを触ろうとしている。

「やめなさい!」「そんなとこ触らない!」

電話の合間にちょくちょく叱りつけないといけないので忙しい。

優しい落とし物係の女性によると、私のスマホらしい落とし物が、まさにこの交番に届いていたという。

拾われた場所はやはりあの公園だ。

「落とし物なんですが、実は今引継ぎの時間で、交番から本署へ届けられている真っ最中なんですよ」

一足遅かったのか…!

 

「こちらに到着後そちらへ電話しますから、あと20分くらいそこで待てますか?」

と言われているとき、サトイモは冷房の効いていない交番の暑さにいら立ってギャーギャー泣きわめいていた。

「20分あればそちらに着くと思うので、ダメもとで電話を待たずにそちらへ行っていいですか?」

と尋ねれば、

「もしあなたのスマホでなかったら無駄足になりますが、大丈夫ですか?」

とどこまでも優しい。

生田警察署落とし物係、市民の味方や~(泣)

 

歩いていたら、目の前のバス停にバスが来た。

警察署まで、大人の足ではたいしたことないけど、サトイモを連れてはずいぶんしんどいなぁと思っていたので、渡りに船と乗り込んだ。

緊急事態宣言が解除されたといっても、乗っているのは5人程度。

間隔をあけて後ろの席に座る。

潔癖症の夫に言ったら怒るだろうけど、サトイモが押したがるので降車ボタンを押させた。

お出かけ用のアルコールジェルを使ったから大丈夫だろう。

窓の外の風景を見ながら、私は、

「ちゃんと拾って届けてくれた親切な人がいるんだなぁ。どんな人だろう。お礼をしなきゃなぁ。どれくらい謝礼を包めばいいんだろう?現金だけじゃなくて菓子折りとか添えたほうがいいかなぁ」

なんてことを考えていた。

 

交番も初めてなら、生田警察署に来たのも初めてである。

思っていたより狭くて暗いとこなんだなぁ、とじめじめした気分で落とし物係へ行く。

落とし物係だけ、区役所みたいにちょっと明るい。

「交番から電話した者ですが…」

と言うと、おそらく電話に出てくれた優しいお姉さんがスマホを持って出てきてくれた。

なんと、充電までしてくれている!!

「これですこれです!私のです!」

画面を見ると、ロック画面は紛れもない特攻服姿のオーケン

「ロックを解除してくれますか?」

とお姉さん。

ロックが解除できるというのが、本人証明の一環であるようだった。

 

交番で電話をしたとき、スマホの特徴を聞かれた。

「ステッカーを貼ってあるなど何かありますか?」

カバーもしていないし、シールもステッカーもなかった。

なんの特徴もないなぁ、と思っていたが、今思えば、

「電源入れたら大槻ケンヂが出てきます!」

と言えばよかった。

あ、でもダメだ、若いお姉さんだとオーケン知らないかもなぁ…。

 

「拾ってくれた方への謝礼なんですが…」

と尋ねると、お姉さんは書類を見て、

「拾ってくれたのは小学生ですね。お礼は…、必要ないみたいです!」

と明るく言う。

不慣れだし世間がわからないので、「そうですか」と言うしかなかった。

 

受け取りの書類を書いていると、サトイモが私の足に抱きついて泣き出した。

サトイモとはいろんなところに出かけている。

場所見知りや人見知りすることがほとんどなく、区役所、図書館、お店などで私が手続きしている間でも泣くことはほとんどない。

「何?何?なんで泣いてるの?」

とびっくりしてしまった。

ただ、よく考えてみると、コロナで長い期間外出自粛していたわけで、いきなり外へ出たと思ったら重苦しい警察署というのはキツかったに違いない。

 

それでも、お姉さんがバイバイしてくれると、サトイモもすっかり泣き止んでバイバイできた。

「ありがとうございました。お世話になりました」

と頭を下げる私と、みんなにバイバイするサトイモ

「かわいい~」

落とし物係の皆さんが顔を上げて笑顔で手を振ってくれた。

 

警察署の向かいに、藤原紀香陣内智則が結婚式をしたことで有名な生田神社がある。

せっかくだから、感謝の気持ちを生田さんに伝えて行くか、とお参りをする。

コロナ前の平日、どれくらいの人出だったか知らないが、境内にはほとんど人がいなくて驚いた。

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疫病退散のお札も売っているという。

数日前だったら買ったかもしれないけれど、もうそんな気分ではない。

欲しいのは「まぬけ退散」「うっかり退散」のお札。

 

サトイモと神社の奥にある「生田の森」で遊ぶ。

真ん中にチョロチョロしたせせらぎがあって、枯れ葉が流れるのを追いかけた。

蚊が飛んできたので慌てて場所を移そうとしたが、サトイモがダダをこねていつまでも停留する。

案の定サトイモはおでこを刺されてしまった。

 

感謝の気持ちは伝わるかな?

翌日、公園のすべり台に貼り紙をした。f:id:naminonamimatsu:20200529225051j:image

落とし物係のお姉さんに、どうしてもっと拾ってくれた子のことを尋ねなかったんだろう?

拾ってくれた小学生に、お礼の言葉を伝えたいって言ったら連絡先を教えてくれたんじゃないか?

家に帰ってから、なんだかすごく後悔がつのってきた。

貼り紙なんかしちゃいけないのはわかってるけど、感謝の気持ちを伝える手段がほかに浮かばなかった。

書いたあとに、何年生の子かも知らないから、漢字が読めないかも、とフリガナをつけた。

夫に貼り紙を見せると、

「一番最後、えらい上から目線やな。スマホ落としたくせに何を言うとんや」

と笑われた。

 

貼り紙は、毎日様子を見に行って、一週間くらいしたら自分ではがそうと思っていたけれど、翌日行ったらもうなくなっていた。

「どうせ、あの管理人の無愛想ジジイにはがされたんやわ」

と私がガッカリして愚痴ると、

「違う違う、きっと拾ってくれた小学生が読んで、はがして持って行ったんや」

と夫は言った。

そうだったら、いいけど。

どうせわからないから、そう思っておく。

いいことをしたあなたに、幸せが訪れますように。

きっと素敵な大人になると思うよ。