3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

父のパンツ問題

昨日、母の病院受診からの帰りの車内にて。

娘「お父さん、洗濯機の中に入れてたパンツ、漏らしてたでしょ」
父「漏らしとったかなぁ?」
娘「お尻の方まで黄色い染みになってたけど?」
父「アリナミン飲んだからや。あれ飲むと、ションベンが黄色くなるから」
娘「色の濃さの話と違うねん。前から言うとうけど、漏らしたパンツはそのまま洗濯機に入れんとってほしいねん。何回言うたらわかるんかなぁ?」
父「さあ、覚えがないな」
娘「嘘つけ!」


娘「ていうか、お風呂入るときにパンツ履き替えてるんやろうけど、漏らしたままお風呂に入るまでずっと同じパンツ履いてたわけ?」
父「漏らした言うても、ちょびっとやからな」
娘「ちょびっとやったとしても、普通、漏らした時点で履き替えなあかんの違うの?」
父「大丈夫や。すぐ乾くもん」


娘「乾く乾かないの問題と違うで。ほんなら乾いたら汚れてても洗わなくてええ、いうこと?」
父「ええんちゃうかなぁ?」
娘「あかん!そんなんやから、どのパンツも真っ黄色なんや!」
父「それはアリナミン飲んだからや」
娘「違う!漏らして洗わへんからです!!」


娘「私、お父さんのパンツとズボン下だけ、毎回漂白剤に付け置きしてから洗ってんねんで。あんまり酷いのは、洗わないで勝手に捨ててるからね!」
父「最近な、なんかお父さんのパンツの数が少ないんやけど」
娘「ゴメンゴメン、捨てすぎたかもね。新しいの買うてあげるわ。やっぱり尿漏れ対応パンツのほうがええよね?」

父「高いやろ?」
娘「値段には代えられへんやん。実際どうなん? 普通のパンツと尿漏れパンツと、どっちがいいの?」
父「どっちもおんなじや」
娘「同じじゃないでしょ。薄いパンツやったらさぁ、漏らしたときにズボンまで染みてしまうんじゃない? ズボンまで濡れてたら、外出先で漏らしたのがバレてしまうやん?」
父「そうなんや。こんなふうにな」

と、父の股間を見ると、ズボンが濡れて染みができていた。
おいいっっ!!!
今も漏らしとったんかいぃっっ!!!!

「家に帰ったらすぐにパンツもズボンも履き替えなさい!洗濯したげるから!」
と私は言い、実際帰宅してから、面倒がる父を急かした。
あれだけ言っても、
「もう乾いたし、ええで」
と言うので、
「今すぐ着替えなさい!!」
と仁王立ちで監視する。

あいにくの雨の週末。
乾かなくても洗わざるをえない。

「ついでなんやから、靴下も洗おか」
と言うと、
「靴下はええわ」
とまた言う。
「昨日の洗濯物の中に靴下がなかったやんか。履き替えなあかんの違うの?」
「洗わへんでええ。まだ3日しか履いてないのに
「3日も履くな!!! 普通はみんな毎日履き替えるものです!!!」
「へぇぇ、毎日?!呆れてまうわ」
「こっちのセリフじゃ!!!」

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ああ、神様。
いつからうちの父はこんな不潔な人間になってしまったのでしょうか。

ときどき他人様は、
「あなたがしてしまうから、お父さんが家事をしなくなるんだよ。ほっておけば、自分でするようになるよ」
と言います。

でも、ほっておいた結果、家事はせず、不潔が増すのです。
年々、不潔が常態化して、加速していきます。

歳を取ったら、私もそうなるのでしょうか。
高齢社会になったら、日本人の半数は不潔になるのでしょうか。
怖いです。

カズオ・イシグロと文豪ストレイドッグス

英米文学の存命の作家の中で、一番好きな作家はカズオ・イシグロだったりする。
だから、ノーベル文学賞受賞は本当にうれしかった。

でも、声を大にしてファンだと言えないのは、最新作の『忘れられた巨人』をまだ読んでいないから。

あと、『充たされざる者』は、買っても手付かずに置いたままだ。
だって、文庫なのにこんなに分厚いんだもの。
(ちなみに、私のオススメは短編集『夜想曲集』。面白さでは『私を離さないで』と『日の名残り』だけど。)

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私の中では、全作品をちゃんと読み込んでこそ、好きだとかファンだとか言えるもんだ思っているのだけど、ときどき、1作品くらいしか知らないくせに「ファン」を自称する人達に出会うと感覚の違いを思い知らされる。

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ファンって一体何なんだろう。

それより何より、ニュースを見ていると、
「日本人として誇らしい」
というようなコメントが多数寄せられている反面、皆が口をそろえて、
「読んだことがないので、これから読みます」
と言うのが気になった。

こうやって流行で読む人達の何人が、イシグロ文学の良さをわかってくれるだろうか、と思ってしまう。
きっと、
「読んだけど、何が良いのか全然わからなかった」
なんていう感想がたくさん出るだろう。

それが予測されるだけに、自分の好きな作家が汚されるような気分になる。

入り口は広いほうがいい

そういえば、8月に文学博士の友人Mと会ったときに、カズオ・イシグロの話をした。
彼はハルキストで、私はカズオ・イシグロ派で、どっちがノーベル賞に近いか、という話題になった気がする。

でも、そんな話題よりも、私がそのときM博士と話したかったのは、『文豪ストレイドッグス』や『文豪とアルケミスト』のような文豪関連のコンテンツについてだった。

文豪ストレイドッグス』については、高校の国語便覧に載っている程度の、上っ面の薄い情報だけで作られている感じがして、私は全く楽しめなかった。
「なるほど、そう来たか!」と通を唸らせる遊び心を期待していたのだけど、作家のイメージが一面的で幼稚なかんじがする。
そのうえ、作家の顔写真が残ってるのに全然違う見た目で描いて、なのに同じ名前をつけるなんて、違和感がないんだろうか?!

と、嘆く私に、M博士は、
「ああいうところから文学に興味を持ってくれる学生がいるから、否定はできないよ。入り口は広いほうがいい」
と言った。
ストレイドッグスきっかけでも、文学を読む若者が増えたらそれでよし、という教育者らしい発言。

カズオ・イシグロの件にしても、同じかもしれない。
10人に1人であれ、読んで良さを知ってくれる人が出ればよい、ってことかなぁ。

父の秋の発作

秋のこの時期になると、毎年父にイライラさせられる。

まるで発作のように、

南京町中秋節に行きたい!」

と言い出すからだ。

今年はこの三連休らしい。

www.nankinmachi.or.jp

 

自分のブログを振り返ってみると、去年も全く同じことを書いていた。

naminonamimatsu.hatenablog.com

 

今年もやっぱり叔父と友人のOさんを誘ったらしいけど、やっぱり断られ、「一人でも行く」と言ってきかない。

 

JR三ノ宮駅で降りて、にしむら珈琲でコーヒーを飲んで、高架下をぼちぼち歩きながら元町まで行って、南京町の広場で獅子舞を見て、劉家荘で焼鶏を食べて、お土産に老祥記の豚まんを買うて帰るんや」

という、お決まりのフレーズを、壊れたテープのようにループする。

 

父はリハビリを頑張っているけれど、どんどん足の引きずりはひどくなるばかりである。

そんな足で三ノ宮から元町まで歩くなんて!と思うけれど、本人は、以前元気に歩いていた自分を捨てられない。

変わらずに歩けると思っているのだ。

 

「ハイハイ」と言って聞き流すしかしょうがないからそうしているけれど、聞いているだけでもイライラする。

 

一方、母は母で、最近喉の奥で痰か唾がからむらしく、食事のときにやたらむせる。

咳こむのは本当に苦しそうで可哀想なのだけれど、背中をさするか、口腔スポンジで痰を絡め取るくらいしかできない。

そうしたところで、ちっとも治まらない。

それもまたイライラさせられる。

ムセが「ときどき」なら必死に対処していたけれど、こう頻繁になってくると「またか」という思いしかない。

父の話と同じく、「ハイハイ」と言いながら母の背中をやる気なくなでる。

 

少し回復してきたものの、やっぱり「元気」な状態じゃないから、ちょっとしたことで疲れてしまう。

だめだな、HPもMPもまだ満タンじゃない。

 

ランチのついでに南京町で父にお土産を買い、金曜日、実家に帰るときに持って帰った。

「月餅買ってきてあげたんやから、中秋節に行くのはなし! わかった?」

とりあえず、父は「わかった」と返事をした。

何等分かに切って、私もちょっと食べたが、美味しい月餅だった。

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土曜日。

車に乗って買い物に行くとき、一緒に乗り込んだ父が、

「ちょっと、これ教えて」

と言う。

「これって?」

「カーナビの設定のやりかた」

「なんで?」

「浜坂まで行くから、目的地を設定したいんや」

「浜坂って、誰と行くの?」

「ひとりで。」

「あほか!」

 

浜坂というのは、兵庫県の北の端。

私の体力が落ちている今、父にそんな遠くまで徘徊されたらたまったもんじゃない。

疲れてきたらますます足が動かなくなることを、何度言い聞かせても理解できないらしい。

なんでこう父は、私を逆なですることばかり言うのだろう。

 

しかも、その土曜日、午前中雨が降っていたので、夕方になっても洗濯物がまだ乾いていなかった。

だからわざと干しっぱなしにしていたものを、普段やらない父が勝手に取り入れてしまった。

「まだ乾いてなかったでしょうが!」

「ちょっと湿っとっただけや」

怒り心頭で、再び干し直す私。

 

もう私の心の安らぎは『おそ松さん』の第3期にしかない。

絶不調からの漢方薬体験《後編》

漢方薬局の先生は実直そうな男性だった。
すでに閉店時間だったけれど、予約をしていたのでお店を開けていてもらった。
もちろんその時間、お客さんは私ひとり。

症状をいろいろ問診されるところから始まった。
そして漢方といえば定番の、舌の状態を診る。
allabout.co.jp

質問項目は簡単なものが多かったので、サクサクと終わった。

あなたは気功を信じるか!?

そのあと、両腕を前に出し、手のひらを上にして、真っ直ぐ前を見るように言われる。
バカ真面目に、真正面に飾ってある大きなアメジストの置物をじっと見ていたので、周りで先生が何をやっているのか全然見えなかったけれど、どうやら気功か何かをやっているようだ。
オーケストラの指揮みたいな動き。

そしてときどき、私の手のひらに紙片が置かれたり除かれたりする。
ああでもない、こうでもない、ってかんじで、置いたり、のけたり。
紙片には手書きで薬の名前が書いてあるだけ。

…えっ?!
まさか、この紙を置いて手をかざすのが診断?!
こんなことで、不調の原因や治療法がわかるのかよっ?!

これは…
お、オカルトだぁっ!!

そういえば、ホームページに「糸練功」っていう医療気功について書いてたっけ…。
あまり深く考えなかったけど、これがそうかぁ…。

だ、大丈夫なのかなぁ…。

にわかに不安になってくる。
だいたい、漢方薬がどれくらいのお値段がするものかも、全然考えてなかった…。

私はオカルトについて、信じもせず否定もしない中立派だ。
だから、一概に「これはインチキだっ!」とは思わない。

限りなく怪しいけれど、ここを選んだのは自分なのだし、ここまでやってきたからには先生のやり方を信じて身を任せることにした。
診断が的外れだったら、そのときは自分で判断したらよい。

やってもらっている最中、あまりに非科学的なのにびっくりしてしまって、そんなことをグルグルと考えていた。

診断結果は「不調のミルフィーユ」

そこそこ長くかかった診断の結果告げられたことは、
「内臓が冷えて固まって動かなくなっています。ただし、食道は炎症を起こして熱を持っています」
とのこと。

これを例えるなら、下は冷えて冷たい水になっているのに、上だけ温かいお湯が残っているお風呂のようなもの。
循環して対流が起こっていれば温度は均一になるのに、まったく動かないものだから分離が起きているのだそうだ。

言われてみれば、お腹を触るとみぞおちから下腹にかけてずっと冷たい。
整体の先生からも、
「固いお腹やなぁ。胃も腸もカチカチや」
と言われたのを思い出す。

指摘されると身に覚えがあるものの、内臓が冷えたり固まったりということを、普段考えてもみなかった。

振り返ると、この夏はつい冷たい飲み物をガブガブ飲んだ。
筋トレをするようになってから手足の冷えがなくなったので、冷房もよく付けたし、服装も薄着が多かった。

そんなふうに蓄積された夏の冷えが、秋になって祟って来たらしい。

「そのうえ、緊張が入ってこわばりがあります。いろんな原因が複雑な層になっていて、不調がミルフィーユのように重なり合ってます」

不調のミルフィーユ!
そんなステキな洋菓子に例えられても!?!

でも、心当たりがないわけでもなくて、ここのところ行き詰まり感があってリラックスできない日々が続いている。
そのこわばりが、冷えて固まった内臓を、より動かないものにロックしてしまっているらしい。

ストレス、ないようでいて、実はあったんだな、という話。

意外だったのは、飲む水の量

先生に1日に摂取する水分量を訊かれた。
「だいたいマグカップ7~8杯ですかねぇ」
とドヤ顔で答える私に、先生から、
「それは…、多すぎです!」
という答えが返ってきた。

「でっ、でもっ、1日1リットルから2リットル飲みましょうって言うじゃないですかぁ!」
「欧米のモデルさんがそうしてるからと言って、誰もが合うとは限らないんですよ。欧米のような乾燥した気候と、日本のような湿気の多い気候でも違います。たとえただの水でも、内臓はそれを処理するのに負担がかかっているんです」

そ、そうなのか…。
だから、飲み物を飲んでさえ胃が重くなっていたのか…。

とにかく、冷えて固まった私の胃腸は、入ってくる食事や飲み物が処理しきれなくなって負担になっているとのこと。
代謝も落ちるわけだ。


ちょうどNHKスペシャルの『人体』で腎臓についてやっていたところだけど、私の腎臓はめちゃくちゃ悲鳴を上げていただろうなぁ。

www.nhk.or.jp

もしかしたら、腎臓の悲鳴が食道と胃腸に伝わったのかも。

そんな私に処方されたのは、お薬ではなくて、お茶だった。

というわけで、まずは身体のこわばりを取るところから、始めることになった。

「今のミルフィーユ状態では、いきなり胃腸を治すお薬を飲むわけにはいきませんので、今回はお茶を出します」
と言って、お茶を調合してもらった。

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この1パックをお湯で煮出して、3日に分けて飲むらしい。
そして4日空けて、もう1パックを3日また飲むという2週間コース。

その後、お茶で一つの不調が改善されたら、次のステップ、本当の漢方薬に進むということになった。
それまでは、お茶で体質改善に努める。

調合してもらったお茶は、漢方薬局のキャラクターらしいパンダちゃんの紙袋に入れてもらって、2パックで4,800円!

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値段のことばっかり言うけど、…高っ!

保険適応じゃないからそんなものかもしれない…。
けど、う~ん、どうなんだろう?
ただひとつ納得したことは、お客さんが少なくてもこんなに広々した小ギレイなお店が構えられるわけだぜ。

そして飲んだお茶は

お湯に入れたとたん、立ち上がる匂いに、
「これ、お茶じゃあないぞ…!」
と理解した。

匂いも味も葛根湯そっくり!
煎じ薬の漢方薬そのものだ。

沸かしている湯気を吸うだけでも身体が良くなる気がする…。
と思っていると、とたんにお腹がグルグル言い出し、トイレに駆け込んだ。
…なんて信じやすい体質なのかしら、私。

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出来上がったお茶を三等分したのがこれ。

もらったお茶はもう全部飲み終わって、内臓の不調はずいぶんマシになってきた。

本当にお茶が効いたのか?
胃腸に優しい消化がいい食事を心がけているからかもしれないし、水を控えているためかもしれないし、お腹を冷やさないように気をつけているからかもしれない。

実のところはわからないけれど、漢方薬局に行ったことによって体調改善のきっかけになったことは間違いないと思う。
あとひっかかるとしたら、オカルトな気功術くらいかな。
否定はしないけどね。

絶不調からの漢方薬体験《前編》

9月中旬くらいからずっと体調不良が続いている。
母でも父でも彼氏でもなく、私自身の話。

8月の健康診断で胃カメラを飲んだのだけど、その結果、好酸球食道炎(疑い)と慢性胃炎というお知らせが返ってきた。

胃炎は軽いものだし、昔からだけど、問題は食道炎のほうだ。
年々、というか、月々?週々?日々?悪化してきている気がする。

特に、少し大きめのサプリメントを飲むとテキメンで、いつまでもいつまでも食道あたりにつっかえて、胸のあたりが痛い。
夜に飲むと、眠りにつくまで苦しみもがくことが多くなった。

仕方ないので、サプリメントを飲むのをやめた。
ミドリムシをやめたら、とたんに便秘になった。
セサミンをやめたら、とたんに元気がなくなった。

そうこうしているうちに、身体全体が重苦しくなって、水を飲んでも胃にもたれるようになった。
食べるもの飲むものすべてが内臓にのしかかる。

そのくせ、すぐにお腹が空いて、空腹になると気分が悪くてフラフラする。
そのせいで、先週の週末なんか、ほとんどを横になって過ごしてしまった。

何なんだ、この不調は?!

医者にかかるなら、何科?
内科? 胃腸科? 消化器内科?
胃腸科とか消化器内科とか、そんなのどこにあるか知らないし。
会社休んで行くほどではないし。
長い時間待たされて胃酸を抑える薬とか出されても納得できないし。

そんなことを考えた挙げ句、ふと、漢方ってのはどうだろう?と思い付いた。

漢方薬局を選ぶ

そういえば、春先もやっぱり物を飲み込んだら胸につっかえる気がしていたところ、この薬のテレビCMを見た。

stress-jidai.jp

さっそくドラッグストアで買って、しばらく飲んでいたら治まった。
このとき、「漢方っていいかも」と初めて気が付いた。

よくよく考えてみたら、日ごろ愛用している胃薬も大正漢方胃腸薬である。
漢方の味って、全然嫌いじゃない。

さて、じゃあ漢方薬を買うとしても、今回はドラッグストアとはいかない。

三ノ宮・元町近辺にはいくつか漢方薬局がある。
でも…、正直言って、どこも雰囲気が怪しい。

そういえば、三宮高架下で有名な二つ頭の奇形動物の剥製があるお店も漢方薬局じゃなかったっけ。

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剥製がなくても、不妊治療とかEDとか頻尿とか痔とか、ちょっとデリケートな治療を、看板の前面に出しているせいで、どこの漢方薬局もある程度怪しいかんじがする。

それでも、漢方薬を試してみようかな、と思ってしまったのは、ここのところ、漢方薬の良い噂をよく耳にするからだ。

一番興味をひかれたのが、西洋医学のような部分的な対処療法ではなく、身体全般を考えた病のもとの根本治療を目指すものだということ。

これまで母の病気に付き合ってきて、西洋医学の「人間を見ないで病気の部分しか見ないやり方」にウンザリしきっているのだ。
あっちの不調もこっちの不調も全部つながっているのに、「それは〇〇科を受診してください」といわれる。
痛みがあっても、「異常はありません」と言って「つらい気持ち」は置き去りにされる。

どこかで「人」を診てくれる医者はいないものか。

西洋医学に対して、中国医学の考え方は、基本的に身体全体がつながっているものとして考えるようだ。
だとしたら、私が今苦しんでいる、飲み込むところから出すところまで一連の不調を全体的にとらえてくれるかもしれない。


ネットで検索すると、最初にひっかかったのが南京町の外れにある漢方薬局だった。

www.pandade.com

もちろん、今までに店の前を通りがかったことは何度もあるけれど、店構えが小ギレイで、怪しそうに見えない。
(少なくとも動物の剥製が置いてあったり、ベタベタ貼り紙がしてあったりはしてない。)
ネットのクチコミも悪くないようだ。

電話で予約をして、会社帰りに行ってみることにした。

《長くなるので、続く。》

淡路島ニジゲンノモリ「ナイトウォーク火の鳥」と文句言いおばさん

先週の月曜日は、最後の夏休みだった。
午前中はいつもの訪問リハビリ。
だけど、まる1日の夏季休暇である。

さて、午後は何をしよう?
と思っていたら、友達から淡路島に新しくできた「ニジゲンノモリ」というアミューズメント施設へのお誘いをもらった。

nijigennomori.com

最近、人材派遣会社のパソナが淡路島の開発に力を入れているという話はきいていたけれど、このニジゲンノモリもどうやらパソナ関係らしい。
友達はパソナの派遣社員に登録していて、ニジゲンノモリでやっている「ナイトウォーク 火の鳥」の招待券がもらえるのだという。

手塚治虫の『火の鳥』が好きだって言ってたから、楽しめるんじゃない?」
と友達。
確かに、手塚作品の中でも『火の鳥』は特に好きな作品だ。

あのスペクタクル巨編をどうやってアトラクションにするのか、まったく想像できない。
公式サイトでは「世界観を題材に」って書いてあるけど、何編を題材にしてるんだろう?
アニメ映画はヤマト編と鳳凰編だったから、そのあたりかなぁ?
まさか未来編とか宇宙編とかのSF世界?
息子の手塚眞が監修をやっているのが、吉と出るか凶と出るか…?

あまり期待はできないけれど、
とにかく、タダなら行きます!
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というわけで、開始時間の18時30分を待っていると、平日の夜にもかかわらず、たくさんの参加者がやってきた。
友達と二人で列に並んで、冒険バッグという名のズダ袋をもらった。
中に入っていたのは、地図とミネラルウオーターと懐中電灯。

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懐中電灯はブラックライトになっていて、照らすと浮かび上がるものがあるらしい。

ところで、出発前に係りお姉さんから説明があって、
「皆さんの力で、火の鳥を生き返らせてください」
と言われてズッコケそうになった。

火の鳥は不死鳥じゃねーのかよ!
この時点で、「何編かしら?」なんて考えていた自分の愚かさに気づく。
火の鳥って言ってるだけで、手塚治虫のマンガとは全く別物だ。

気持ちをすっかり切り替えて、いざ出発すると夜の山道ハイキング。
その山道が幻想的にライトアップされていたり、不思議なオブジェがあったりして、雰囲気を盛り上げる。

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山とアトラクションがマッチしていて、特に音に関しては、自然の虫の声なのか人工的な効果音なのかまったくわからない。
この日は三日月のお月様が出ていたのだけれど、それがまた美しかった。
淡路島の空はお星様もよく見える。

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ところどころのポイントでアマーン族の村人(そういう話。ね?手塚治虫の『火の鳥』じゃないでしょ?)に扮した役者さんが待っていて、そこでのイベントの解説をしてくれたり、ストーリーを語ってくれたりする。
参加型イベントってことになっているので、火の鳥の涙と称するビー玉を持たされたり(うっかり落として山道を転がっていったので、拾うのに難儀した)、参加者の中から代表者が石の穴に手を突っ込んだり、いろいろする。

ただ、50人くらいが一群となって山道を歩くわけで、役者さんに近寄るにも限界があり、ところどころ話が聞き取れないことも。
それに山道を歩いて周囲を見てるだけで精一杯で、話がちっとも頭に入ってこない。

次のステージへ進むためのカギを探す、とかいきなり言われても、みんなボーっとしている。
あまりにちゃんとクエストを実行しないので、
「皆さんちゃんと話を聞いてましたかっ!?」
とアマーン族にツッコまれる始末。
あ~、ごめん、全然聞いてなかったわ。

だいたい、50人の冒険パーティは多すぎるよ。
劇場のような閉鎖空間だと観客も物語世界に入り込みやすいけど、オープンな空間だからどうしても緊張感が薄い。
参加者の中には、自重しない奴も出てくる。
みんなが小休憩をとっている場所で喫煙を始めるおじさんがいたり、アマーン族が説明している後ろで仕事の電話をしているおじさんがいたり。
個人的には、夜の山道でサングラスをして歩いているおじさんがひどく気になった。
あいつらのどこが「選ばれし者」だよ!
こんなんじゃ、とてもじゃないけど「みんなで協力して火の鳥を目覚めさせましょう!」という気分にはなれなかった。

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正直、取ってつけたような冒険なんてどうでもよくなっていた。
圧巻は、自然と融合した大規模なプロジェクションマッピング
淡路島の大自然と、最新テクノロジーがうまく合わさって、かつて見たことのないエンターテイメントができていた。
確かにこれは新しい!

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本物の樹木だって、しゃべりだしちゃう。

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なんだかんだで、よーわからんうちに、火の鳥は眠りから覚めたらしく、ザーッと翔んでった。
めでたしめでたし。

ナイトウォーク前の文句言いおばさん

「ナイトウォーク 火の鳥」を見る前の話を少し。
ニジゲンノモリからは、新しくできた周辺のレストランやカフェまで無料のシャトルバスが出ていて、せっかくだからそこで昼夜兼用の食事を取ろう、という予定になっていた。

目指したのは、9月にオープンしたばかりの、オーシャンテラス。

www.ocean-terrace-awaji.jp

めっちゃリゾート。

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3階はすでに閉まっていたので、2階のテラスへ行ったけど、オープンテラスで日差しがきつい。

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メニューは、パニーニとかシュリンプ&ライスとかサラダとかで、だいたいどれも1,500円前後。
セルフサービスなのに、その値段?
地産地消だったら原価は安いんじゃないの?
何代なの?オサレ代なの?

と、値付けに釈然としないものを感じていたら、友達がパソナのカードらしきものを取り出した。
その銀色のカードを見せると、葵の御紋の印籠のごとく、なんと半額になるという。

半額!!!!
というか、パニーニが740円って、普通だ…。
半額でやっと普通!!!!

パソナで半額になったっていうより、パソナじゃない人はボラレてるとしか思えない。
パソナでない者は人にあらずかよ?

ただし、特大のボウルでやってきた山盛のサラダには満足。
めっちゃインスタ映え。

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インスタ映えっていうより…
インスタ蠅!!!

蠅がブンブン飛び回ってて、うっとおしいったらない。
写真には映らないうっとおしさがあった。

ちなみに、食後、斜め向かいにあるミエレというカフェに移動してスムージーを飲んだけれど、ミエレの蠅の数はオーシャンテラスどころじゃなかった。

絶景とオシャレを楽しむなら、蠅みたいな小さいことにこだわるな、ってことね。
大丈夫、インスタに蠅は映らないヨ!

ナイトウォーク後の文句言いおばさん

ナイトウォークが終わって、無料の送迎バスが淡路ハイウェイオアシスに着いたのが19時45分ごろだった。

www.awajishimahighwayoasis.com

着きましたよ、と言われても、バスを降りてから建物内まではまあまあ歩いた。
田舎のインターチェンジのだだっ広い駐車場である。
例えるなら、イオンモールの第三駐車場からレジまでくらいの距離はある。
都会で家からコンビニに行くより遠い。

ナイトウォークで散々山道を歩いたあとだから、かなりきつい。
痛む足を引きずりながら、ハイウェイオアシスにたどり着く。

オアシス~!
と癒されるつもり満々だったのに、到着後すぐに「蛍の光」が流れ始め、入口でシルバー人材らしいおじいさんに、
「8時閉館です」
と冷たく告げられた。

とはいえ、あと10分あるし、お土産を選んで、帰りの高速バス内で食べるおやつやドリンクを買おう、と思っていると、店内はもう完全にやる気なし。
どんどん片付けられ、カバーが掛けられていく。
焦るほど、何を買おうか迷って決められない。
そこへ、先ほどのジジイが私にだけ、
「8時閉館ですよ!」
と言いに来る。

わかっとるわい!

北の国から』の五郎さんになって、
「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」
の調子で、
「私がまだ選んでる途中でしょうが!」
と怒鳴りたい!!

気が悪くなって、
「こんな、客を追い出すような場所では買わない! もう帰る!」
と大声で文句を言いながら出ていく。

…ジジイが間違ってるわけじゃない。
ジジイは仕事をしているだけ。

だけど、客商売だったらさぁ、
「間もなく閉店ですので、お客様、お買い物はお急ぎください」
くらいが適当な物言いなんじゃないか。

でも、田舎の老人だ。
そんな気の利いたことは言えないのだ。

私が気に入らなかったのは、
「田舎のジジイだからって、サービス業で横柄な態度が許されると思うなよ!」
ということだ。
老人を雇うと人件費が安いんだろうけど、教育ってものをしないのが嫌!
そういう社会の仕組みが透けて見えたのが嫌!
老人だって、働く限りは接客スキルを学んでほしい。

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オアシス感ゼロのハイウェイオアシスを出て、さらにかなり歩き、高速バスのバス停にたどり着くと、次の三宮行きはなんと21時40分だった。
待ち時間が1時間半!?!?
これがみうらじゅんが言うところの、時刻表ならぬ地獄表!!

「ネットで帰りのバスを調べたときは、もっと本数あったと思ったんだけど…」
と普段冷静沈着な友達も焦る。
淡路の高速バスは、いろんな会社がいろんな路線を出しているので、時刻表がめちゃくちゃ調べにくい。
「バスなんか乗らず、自家用車でお越しください」
と言われているに等しいくらい、不親切だ。

二人で意気消沈しながらバス停でしばらく待ってみたけれど、蜘蛛の巣だらけの小屋が薄気味悪い。
仕方ないので、疲れ切った足を鼓舞しながら反対側のパーキングエリアまで歩いた。
そこで時間つぶしに食べた淡路玉葱ラーメン(醤油)680円。

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疲れた身体に玉葱がしみた。

日本総合悲劇協会『業音』

9月21日はOBPにある松下IMPホール日本総合悲劇協会『業音』を見に行った。
日本総合悲劇協会Vol.6『業音』| 大人計画 OFFICIAL WEBSITE


日本総合悲劇協会、略してニッソーヒは松尾スズキが作・演出・プロデュースする悲劇がコンセプトの演劇プロジェクトだ。
『業音』は15年ぶりの再演で、初演は荻野目慶子主演だったらしい。

それが今回は平岩紙
他のキャストも大人計画のメンバーばかり。
大人計画とは違うからニッソーヒなんだと思っていた私は、なんだかちょっとこんがらがっていた。
だったら大人計画としてやればいいやん、と。

でも、舞台を見てみると、演出だとか空気がまるで違う。
音楽の使い方、ダンスの入れ方、映像の使い方、物語の展開の仕方も。
ほかのニッソーヒ作品とも違っていて、なんだか新しい一面を見た気がした。


時代は15年前。
携帯は二つ折りでパカパカし、やり取りはラインじゃなくてメール。

母親の介護をネタに演歌歌手として売り出そうとしている女が主人公。
やがて、その母親はすでに死んでいて、年金を不正受給していたことが発覚する。


年金の不正受給問題って、ちょうど初演の頃に問題になってたんだったっけ?
と調べてみたら、顕在化したのは2010年らしい。
高齢者所在不明問題 - Wikipedia

『業音』の初演が2002年だから、この戯曲ってものすごい先を行ってたんだな。
今ではけっこうよくある話だけど、当時はすごい衝撃だっただろう。


で、主人公の芸能界再起をかけるのが、母親の介護をしていることをネタにした演歌CDなのだけれど、まさに今、母親を介護している私にはムズムズするところがあった。
私も介護をネタにしてブログを書いているわけだし、同じ穴のムジナなわけだ。

つまりは、不幸自慢、苦労自慢。

なんなんでしょうね、自分の不幸を語りたがる人間の業って。
苦労している人間のほうが、苦労しないで幸せにしている人より、ちょっとだけエライだろう、みたいな。


「何かをつかんだそばから、それはショボくなっていく。それで次の何かを探す。その繰り返し。」(←例によってうろ覚え。)
と、ラスト近いところで主人公が言う。
たぶん、その「何か」とは「幸福だと勘違いしていたもの」だ。
圧倒的な不幸の前には、幸福なんてあっという間にショボくなる。

ただ、登場人物たちがなんでそんなに不幸なのかというと、どうしようもない境遇や環境のせい、ではない。
ほとんどが愚かさとかバカさのせいだったりするから、余計に救いがない。


この戯曲では、「うんこ」が重要なモチーフとして登場する。
食物連鎖の終着点である、「うんこ」。
人間の体を通ってアウトプットされるそれには、あらゆる情報が記録されて詰まっている。…というわけだ。

奇妙なシンクロなのだけれど、この日私はお腹の調子が悪くて、
「もしかしたら途中でトイレに立つかも…」
と不安になっていたくらいだった。

慢性的な食道炎と胃炎と、来月のオーケンのライブのためのダイエットで、食事をできるだけ控えていたら便秘になった。
便秘薬を飲んでも、どんなに頑張っても、ここのところずっとシカのフンしか出ない。
シカか? シカになったのか、私は?
と、さらに便秘薬を飲んだら、この日突然、不調に襲われた。

主人公の平岩紙が、トイレを探して走り回るシーンに開演前の自分を重ねつつ、幸い、私のお腹の不調は治まった。
それ以降、再び私はシカである。
シカのフンにも、世界の真理は詰まっているだろうか。

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画像が何もないから、実家の本棚の松尾スズキコーナーを写してみた。
昔はエッセイまで追いかけて買ってたけど、そういえば最近のは読めていないな。