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3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住むアラフォーOL、波野なみ松の、仕事と趣味と母の介護を両立させる日々の記録。

1杯のカフェオレ

母の飲み物には、必ずトロミをつけている。
普通の液体だと、むせてしまうからだ。
自分の唾液を飲み込むときでさえ、ときどきむせていて、嫌になってしまう。

で、トロミをつけるのに、トロミ剤を使うのだけど、どこのメーカーのがいいか、ドラッグストアに置いてあるものを値段が安い順に買ってきて、使い比べをしている。
これまで使ったのは、「トロメイク」、「とろみアップ」、「とろみファイン」、そしてトップバリューのトロミ調整食品。
メーカーによって機能に差があるな、と、思っていたら、こんな比較サイトがあった。

なんと、私がまだ使ってない「つるりんこ」が1位じゃないか。次買うときは「つるりんこ」にしてみよう。
ちなみに、母の飲み物だけじゃなく、私は中華料理などのあんにもトロミ剤を使っている。
だって水溶き片栗粉を作るのが面倒なんだもん。

トロミ剤に機能差がある、というのは、飲み物に混ぜたときに変色したり、味が変わったりするだけじゃなく、ダマになったり、トロミがつくまでに時間がかかったり、という点だ。
特に、トロミがつくまでの時間というのは、介護する側にとって重要で、お茶なんかだと1分もかからずにすぐトロミがつくのに、ミルクティーだと何分も置いておかないとトロミがつかなかったりする。

昨夜遅く、母がいつまで経っても寝ないので、飲み物でも飲ませようと、インスタントのカフェオレを用意した。
最近よく飲ませている、和光堂の栄養補助食品のカフェオレである。

カフェオレはトロミがつくまでに時間がかかるし、トロミがつくと熱いので、飲める温度まで冷まさないといけない。
作ったあと、しばらくキッチンに置いていた。

もうそろそろ飲み頃にできたかな、と、しばらく経って戻ってみると、カフェオレが半分なくなっている。

お風呂からあがってきた父が、自分のコップで何かを飲んでいたが、私の顔を見て、
「これ何や、ドロドロやな」
と言った。
父は、せっかく作っていた母のカフェオレの半分を自分のコップに移し、勝手に飲んでいたのだった。
その平然とした態度に、怒りが爆発した。

「なんで勝手に飲むんや!!」

「そこにあったから」
「お母さんのやってわかってたでしょ!」
「面倒くさかったんや」
「だからって、人のを勝手に飲んでええんか!!」

たかがカフェオレ1杯で大人げないのはわかっているんだけど、怒鳴らずにはいられなかった。
もし、
「これ飲んでもええか?」
と父が尋ねてくれたなら、
「それはトロミをつけてるから、新しいのを入れてあげるよ」
と快く父の分を用意しただろう。

なのに、なぜ、父はその一言が言えないのか。

父との確執はほとんどが、
「なぜ尋ねないのか?」
という問題に尽きる。

重ねて、母の介護について私がいろいろ工夫をしていることを父が知らないのも腹立たしい。
母がもう普通の食事や普通の飲み物が飲めないということを、いくら言っても理解してくれない。
それでも母に、なんとか美味しく食べたり飲んだりしてほしくて、私が配慮していることも、父はまるでわかっていない。

そういう根っこが広がっている、「1杯のカフェオレ」なのだ。

しかし、父は死んでも理解できないままだ。
「また怒られた」
そう拗ねて、足を引きずりながら2階に上がっていった。

今さらわかってもらおうとは思っていない。
ただ、人の飲み物を勝手に飲むな。

顔の筋肉をほぐそう。

4月の上旬は女子力アップ作戦を実行していた。

9日に神戸でオーケンライブがあったので、「いつなんどき街中でオーケンと遭遇しても大丈夫なように」と気合いが入っていたのだ。

めったに行かないエステにも行った。

エステといっても、リンパマッサージ専門店のフェイシャルコースなのだけど、小顔効果はあったと思っている。

 

そのリンパマッサージ専門店には、これまで何回か行ったことがあった。

側弯症で骨格が歪んでいる私には、整体やマッサージによる身体のメンテナンスが欠かせない。

鍼灸整骨院などの医療に近いところから、アロマを使ったリラクゼーションなどのエステっぽいサロンまで、いろんなところに行っている。

そのお店は後者のほうだけれど、美容というよりは体質改善が中心のメニューだ。

 

どこのお店でも「どこがお疲れですか?」と尋ねられるが、私の場合、どこと言えないほど全身がガタガタだ。

パソコン仕事による眼精疲労と首・肩のこり、介護による腰痛、オールスタンディングのライブによる足腰の疲れと張り、などなど。

ただ、仕事と介護は言えるけど、最後のは好きでやっているので他人様に言いづらい。

それに、コンサートホールのライブしか知らない人には、ラウドロックのオールスタンディングのつらさは伝わらない。

ライブハウスに行って、前方の押し合いへし合いを経験した女性じゃないと、あのしんどさはわからないと思う。(それに、ある程度の身長と体力がある男性だとそんなにつらくないかも。)

だからよっぽど親しくなった施術者の人にしか話さないのだけど、そこのスタッフさんは、

「わかりますよ、私、ブラフマンのファンなんで」

と言ってくれて、すごく心が開けたのだった。

 

フェイシャルコースといっても、顔だけじゃなくて、首とデコルテまでを含む。

特にに私の首こりは、「ほぐすのに施術者の息が上がるほどの固さ」とスタッフ間の申し送り事項になっているほどひどいらしい。

それは自覚している点だけれど、無自覚だったのは顔の筋肉の張りだった。

 

「歯ぎしりをするとか、歯をくいしばる癖はありませんか?」

全く心当たりがなかったので驚いた。

「この部分がものすごく固くなってますよ。ここが固くなっている方は、噛みしめ癖がある方が多いです」

と指摘されたのは、いわゆるエラの部分。

 

昔、私には気に入らないことがあると眉をひそめる癖があって、気づくと眉間に深いシワができていた。

それに気づいて以降、ストレスがかかっても眉を動かさないようにすごく気を付けていたのだけど、それをしない分、今度は無意識に歯をくいしばっていたらしい。

確かに、イライラしたときは「イーッ!!」と唸りつつ、怒りを噛み殺しているかもしれない。

どうりで、エラが張って顔が大きくなるはずだ。

その部分をほぐしてもらうと(かなり痛かった!)、顔のラインも少し小さくなったし、首回りも少しスッキリした。

そこが改善されると、首の前の部分の張りも取れるらしい。

耳の下から喉の窪みに向けて斜めに走るスジ(というかリンパ腺?)がいつも張っていて首を太く見せているのだけど、緊張がほぐれて首も細くなった気がする。

 

目の周りをほぐしてもらうときも「イテテテ」と声が出るほど痛く、顔全体の筋肉があちこち固くなっていることに驚いた。

顔こりから首こりへ移行していたり、顔こりから頭痛を起こしたりもしてたんだろうなぁ。

 

*********************** 

 

私はいくらでも外でマッサージを受けることができるけど、母はそんなわけにはいかない。

だから、朝晩、母の顔を拭いたあと保湿ジェルを塗ってあげるときに、自分がしてもらうようなフェイシャルマッサージをしてあげる。もちろん、時間があるときだけだし、見様見真似の簡単なことだけだけど。

外出しない母の肌はツルツルだけど、筋肉が固いので母の顔はカチカチだ。

 

大脳皮質基底核変性症は全身の筋肉をこわばらせてしまう病気だけれど、手足だけじゃなく顔の筋肉まで固くしてしまう。

口と舌をうまく動かせないのでおしゃべりができなくなってきたし、表情筋を動かせないので笑顔が出なくなってきた。

 

そして、介護する側にとっては、何が困るって、歯磨きのときに口を大きく開けてくれないことだ。

「はい、お口開けて~」

と声をかけるとちゃんと開けてくれる日もあれば、ちっとも動かないこともある。

最初はよくてもだんだん閉じてきて、歯ブラシを引っ張り出すのに苦労することもある。

「開けてくれ~」

「開けろ~!」

「開けんかい、こら!」

と、だんだんと掛ける言葉もガラが悪くなっていく。

 

昔親戚のおばさんたちが集まっておしゃべりしていたときに、介護の苦労話になって、

「歯があるんとないんとではだいぶ違う。総入れ歯やったらラクやけど、残っとったら大変」

と言っていたのを思い出す。

うちの母は、学生時代に「歯の女王」に選ばれかけたくらい丈夫な歯をしているので、毎日の歯磨きが大変だ。

うがいができない人間のオーラルケアは本当に面倒で、歯磨き用のウェットティッシュを使って口腔内を拭き、泡の出ない歯磨き剤を使ってブラッシングし、時には歯間ブラシや口腔ケアスポンジを使うなど、いろんな道具をフル活用している。

 

しかも、手抜きをすると歯肉炎が悪化するので、ズボラをしたことがすぐばれてしまう。

先日、うまく口を開けてくれないので歯磨き用ウエットティッシュで口の中を拭いただけで寝かせていたら、翌朝右頬が赤くなって熱を持っていた。

右頬だけなので風邪などではないことは明らかで、虫歯かと思い、施設に巡回に来ている訪問歯科さんに診てもらったら、奥歯の歯肉炎が悪化していたせいだとのことだった。

 

ケアマネさんも、母が上手に口を開けないせいで施設でも口腔ケアがうまくいっていないことを心配してくれて、訪問歯科の先生にアドバイスをもらってきてくれた。

そこで勧められたのが、オーラルバイトという口を開けさせるスポンジの棒。

口を開けさせてオーラルバイトを噛ませ、その間に歯磨きをする、というシロモノだ。

マンガでよくある、ワニの口のつっかえ棒みたいな発想だ。

oral-bite.com

 

とりあえず施設内で使ってもらって、使い勝手が良かったら家でも使います、という話になっていたのだが、しばらく経っても「良かったですよ」という声がない。

「どうでしたか?」

と尋ねると、

「歯磨きはしやすくなったんですが…」

と言葉が濁る。

「家でも使ったほうがいいですか?」

「どうでしょうか…。せっかく購入していただいたんで、継続して使用していますが…。一度噛まれると、今度は噛んだまま離されなくて、取るのに苦労するんです…」

 

考えてみたら当然のことだ。

ワニの口だって、より大きく開けたら棒が倒れて自由になるのに、閉めようとするからつっかえるんだもの。

閉めようとするものを無理やりこじ開けたら、つっかえるに決まっている。

便利にするつもりが、介護スタッフさんにより負担をかけてしまったことに申し訳なく思った。

 

結局、母の口周りの筋肉が動きやすくようにマッサージしてあげるくらいしか、今のところできることがない。

特に、噛みしめ癖で張るエラのところね。

スカヨハ『ゴースト・イン・ザ・シェル』に大満足。

毎年「なりたい顔ランキング」が発表されていて、今更の話だが2016年の女性1位は石原さとみだったらしい。
そのニュースを見たとき彼氏が、誰の顔になりたいか訊いた。
私はしばらく考えてから、
「ローラ!」
と答えると、すかさず、
「外人になっとるやないか!」
と突っ込まれた。

攻殻機動隊』がハリウッドで実写化されるらしい、しかもキャストがスカーレット・ヨハンソンらしい、と聞いたときの私は、全く同じ突っ込みを入れた。
草薙素子が外人になっとるやないか!と。
日本人じゃなくていい。せめて東洋系の女優さんであってほしかった。

漫画やアニメの実写化となると、原作ファンは厳しい評価をするものだ。
キャスティングもそうだし、ストーリーもそうだけど、自分のイメージとちょっと違うと、ファンは受け入れなくなる。
だから、今回の実写化は見るのをためらっていたけれど、私のゴーストが、「これは見とけ!」と囁くので、先週OSシネマズ神戸ハーバーランドへ見に行った。(※ネタバレ御免。)

冒頭にスカーレット・ヨハンソン「ミラ」と呼ばれたときは、
「ミラて!ジョボビッチかよ!ウルトラバイオレットかよ!」
と唇を尖らせてしまった。
そうか、やっぱり私が期待する攻殻機動隊じゃないかもしれない、と。

ところが。

www.ghostshell.jp

一筋縄ではなかった。
原作ファンがっかり現象、そんなことは十分わかって作られている。
だから、これまでの作品を踏まえ倒して、あらゆる攻殻機動隊シリーズを折り込んできた。
1995年の押井守監督の劇場オリジナル版だけでなく、『イノセンス』も『STAND ALONE COMPLEX』も『2nd GIG』もきちんと踏襲している。
オリジナル版が踏まえられるのは当然としても、それ以外もきちんと押さえているとは。

高層ビルの雑居アパートを見上げる空の隙間に飛行機が横切る構図を見たとき、あまりに押井守的なので鳥肌が立った。
芸者ロボットの顔がパッカリ開くお化け屋敷的映像や、クラブにおける銃撃戦、ジュリエット・ビノシュの女性研究者は『イノセンス』の引用だろう。
また、バトーの飼い犬として登場するバセットハウンドも、ファンとしてはニヤリとさせられた。しかも名前が押井守の愛犬と同じガブリエル。
つまり、「わかってるなぁ!」とファンに思わせることに長けているのだ。

トーリーの核となるところは『2nd GIG』をなぞっていて、クゼが少佐の元彼という設定になっていた。
クゼも少佐と同じく、なんで白人やねん、と突っ込みたくなるところだが、実は日本人だったのだけど、陰謀によって殺されかけ、全身義体化の実験材料にされていた、という背景が浮かび上がってくる。
つまり、少佐も、元は草薙素子という日本人だったのに、全身義体化され、記憶も消されていたというわけだ。

ま、それなら東洋系じゃなくても納得がいく。
もし私が全身義体化するとして、好きな身体を選びなさいと言われたら、スカーレット・ヨハンソンになるのも悪くない。
いや、むしろ積極的になってみたい!

クゼはラスト、死に際に少佐をネットの世界へ誘う。そのあたりは人形使いも重ねられているようだ。
押井守版では、少佐は最後にネットの海へ消えていくけれども、この実写版では、少佐は元彼クゼの誘いを断り、この世界にとどまる決断をする。
生身の女性であるスカーレット・ヨハンソンがやっていることで、少佐がより女性的で、感情の揺らぎを感じさせる人間に描かれていた。
少佐というと、圧倒的な強さが魅力なんだけど、実はスカヨハの少佐はちょっと弱さが見える。
『ARISE』の素子も、若い時代の話なだけに、それまでより少し弱いところがあったが、それに近い素子像なのかもしれない。

クゼは撃たれて絶命するのだが、そこへバトーが現れる。
昔の記憶を取り戻した少佐に、バトーが本当の名前を尋ねる。
「モトコ…」
と答えた少佐に対し、バトーが、
「でも、俺たちの少佐だよな」(←うろ覚え)
みたいなことを返すシーンには思わずうるうるしてしまった。

どのシリーズでも、素子とバトーの関係にはキュンキュンしてしまう。
絶妙にビミョーな二人の関係は、実写版でもそっくりそのまま。
トーの出番はそれほど多くなかったけれど、彼のタフだけど気さくで温かい雰囲気がよく出ていた。

他のキャストでは、荒巻課長がビートたけし、という点に注目が集まっていたが、容貌が似ているようでなんか違う。
何が違うんだろう、と間違い探しのように考えると、ハゲとヒゲだった。
アニメと同じ容姿にすることはできただろうけど、ハゲヅラかぶってヒゲをつけていたらコントに見えたかもしれない。

公安9課のメンバーではっきりわかるのは、トグサとサイトウくらいで、イシカワとボーマはクレジットされているけれど誰なのかわからずじまい。
パズは?と思っていたら、その代わりなのか、ラドリヤとかいう知らない女性メンバーが増えていた。なんでパズじゃダメなの?
タチコマがいなかったのも寂しいけど、それは望み過ぎか。
あと、特筆すべきキャストで言うと、素子の母親役として桃井かおりが出ていた。

誰がどうだ、何がどうなってる、と攻殻機動隊ファンはオタク的に楽しめるけれど、予備知識がない人は楽しめる作品なのだろうか。
公安9課が何なのかもさっぱりわからないだろうし、電脳化や熱光学迷彩も言わずもがなで話が進むので、さっぱり理解できないかもしれない。

そのあたりで評価は分かれるかもしれないけど、私としては、見終わったあと珍しく、
「もう一度劇場で見たい!」
と思える作品だった。
今回は字幕版だったので、次は吹き替え版にしようかしら。
吹き替えはめったに選ばないのだけど、声優さんのキャストがアニメと同じなのがうれしい。
最近はモノを増やさないように買い控えていた映画パンフも、こればっかりは買ってしまった。


そして、この際だから書いておきたいことがひとつ。
攻殻機動隊の舞台となる街は、新浜市という都市である。
実写版では日本の特定の都市ではなく、『ブレードランナー』のようなどこかの街として描かれていた。
それはそれで、絵的に美しかったから私は好きだけれど、神戸市民としてはちょっと残念。
なぜなら、2030年、攻殻機動隊の世界で首都になっている新浜県新浜市とは、神戸のことだからだ。
戦争で東京が壊滅して、六甲アイランド付近に首都が移っている、というわけ。
港を臨む海上都市の風景、西播磨にあるSpring-8との距離感など、リアリティがある設定にうならされる。
私にとって重要でも、ハリウッドにとってはどうでもいいことだから無視されたんだろう。
それは別にかまわない。

私がすごく気になっているのは、英語版のウィキペディアである。
ウィキの『GHOST IN THE SHELL』の新浜市のNoteとして、現実世界では愛媛県新居浜市のことだと注釈がついているのだ。
Ghost in the Shell - Wikipedia

おいおい誰だよ、そんなデタラメ書いた人は!!
実はこのことは何年も前に気がついていて、ときどきチェックしているけど、ずーっと修正されないまま。
誰か正しく書き直しておくれ!
そうじゃないと、間違ったまま2030年になっちゃうよ!

『T2トレインスポッティング』は選んだ未来だったのか。

先週の火曜日は神戸国際松竹へ『T2トレインスポッティング』を見に行った。

www.t2trainspotting.jp

おそ松さん 春の全国大センバツ上映祭』と2本見るつもりをしていたのだけど、終業後に課長との打ち合わせが長引いて、おそ松さんの上映時間に間に合わなくなってしまった。(打ち合わせといってもほとんど愚痴の言い合いだったけど。)

平日の夜に2本映画を見るのも疲れただろうから、結果的には『T2~』だけで正解だったかもしれない。

『T2~』の開始時間までは、一人で回転寿司屋に入って小腹を満たした。

 

20年前の私は、20年後の自分が平日の夜一人で映画を2本見ようとする女になっていると想像していただろうか?

一人で回転寿司を食べるような40代になっていると思っていただろうか?

 

思っていたような気もするし、予想だにしていなかった気もするし、何も考えていなかった気もする。

40歳を過ぎてからは、人生を振り返ることが多くなった。

20歳の倍を生きてしまったんだなぁ、という思いと、今がちょうど折り返しで、80まであと半分も生きるんだなぁ、という両方の思いからだ。

 

あれから20年も経っているのに何者にもなれていない自分に、日々呆れながら暮らしている。

フラカンの歌詞を借りると、「靴底は減っているのに見える景色は変わらない」ってとこだ。

20歳の私には焦燥感があったけれど、今はそれすら失って、なのに平然と生きている。

 

トレインスポッティング』を見たのは、大学生のときだった。テアトル梅田だったと思う。

90年代のポップカルチャーの代名詞と言われているように、当時の若者はこぞって見に行った。

こんなオシャレな映画があるだろうか、と衝撃を受けたものだ。

 

『T2~』の冒頭、再び私は衝撃を受けた。

オシャレさにではない。

ユアン・マクレガーをはじめ登場人物4人の、ひどすぎるおっさんぶりにだ。

 

「老けたなぁ、おい!!」

 

双方向コミュニケーションなら「おまえもな!」と返されるところだが、幸い彼らはスクリーンの中だ。こちらが見えなくてよかった。

 

見た目こそ、大きな変貌をとげていた4人だが、中身は全く変わっていなかった。

相変わらずのダメっぷりで、恐ろしく成長していない。

ただ、中年になった分、ダメさのダメージが大きく、深刻さが増していた。

若ければダメでも笑えるが、中年のダメには苦笑すらできない。

 

映画の出来としても、それほどの求心力はなく、封切りすぐにレイトショーなのも仕方ない気がする。

だいたい上映時間がおそ松さんの後だもの。中年4人は六つ子のニートに負けてんじゃん。

 

その中で、見に来た甲斐があったなぁ、と思ったのが、主人公レントンがレストランで自分の思いを語るシーンだった。

どんなセリフだったかというと…、あれ、えーっと…、あの…、長い語りすぎて思い出せない…。

正しい言い回しは記憶にないけれど、要約すれば、とにかくこのクソみたいな世界で自分たちは人生を選べたかという話だ。

Choose life, choose  a job, choose your future.

長い語りの中に、そんなふうなフレーズがちりばめられていた。(と思う)

 

それは前作『トレインスポッティング』のキャッチコピーに使われてたフレーズだった。

日本語のキャッチはこう。

「未来を選べ」。

このコピーは当時の若者たちの胸に刺さった。

UnderWorldの『Born Slippy』の最初の一音が響くだけで胸に新鮮な空気が送り込まれ、ラストシーンでレントンが走り出すように、自分もどこかへ飛び出していきたくなった。

www.youtube.com

 

しかし、はたして彼らが選んだ未来は、この姿だったのか。

『T2~』が21年目の回答だとしたら、いささか寂しい。

 

映画が終わってシアターを出ようとすると、後ろのほうの座席に大学生らしい4人組の男の子たちがいた。

 

「オレ、全然意味がわからんかったわ」

「前の映画見とったらわかったんかなぁ」

「え、おまえら見てなかったん?」

「おまえ見たん?」

GYAO!でタダで見れるで」

「なんで見に来る前に言うてくれへんかったん」

「あとで見てもわかるかなぁ」

 

彼らがそんな会話をしているのを聞いて、若くて愚かで貧乏、というかつての自分を見る気がした。

見える景色は変わっていないけど、私は少なくともその3点セットからは抜け出せている。

 

未来を選べ。

80歳まであと半分ある。

神戸の人は神戸牛を食べない。

4月9日日曜日は、オーケンの「いつか春の日のどっかの町へ」ツアーの神戸Bo Tambourine Cafe でのライブだった。
この会場でのライブは昨年10月に続いて2回目。
ここは私の職場の近所にあるカフェで、自分の日常のテリトリーにオーケンが来てくれることが、心の底からうれしい。
(この日の概要については、こちらの『オーケンとおでんのための元町ガイド』をご参照いただけるとありがたい。オーケンとおでんのための元町ガイド)

登場して1曲目は、筋肉少女帯の『死んでゆく牛はモー』で始まった。
筋少の中でもなかなかに不条理な曲。
二番の歌詞は、「死んでゆくサルはモキー、死んでゆくトラはガオー」というのだが、この日オーケンさんは「モキー」と「ガオー」をテレコに歌ってしまった。
本人もすぐ気付いて、「逆ですね」と可愛らしくつぶやいたのだけど、それもこれも神戸への怒りのせいだという。

裏切りの街、神戸!!

そう言われるほどに、オーケンさんを怒らせた神戸とは!?
それが、こんな話なのである。

せっかく神戸に来たのだから神戸牛でも食べようと思ったオーケンさん。
しかし、ステーキが予想以上に高い、と思っていたところへ、「ランチ1,500円」というお店を発見。
お店に入り、「1,500円のランチを」と言うと、「売り切れました」と言われてしまったそうだ。
席についてジャケットも脱ぎかけているし、今さら店を出るわけにもいかず、次に安いのは、とメニューを見ると2番目のランチは2,500円(しかも税別!!)。
千円も高い!!
そう憤慨しつつも、渋々オーダーされたそうな。

オーケンさん、よっぽど納得がいかなかったようで、この日何度も「神戸牛ランチぼったくり事件」をネタにされていた。

正直いえば、2,500円のランチは2,500円なりの品だろうから、いわゆる「ぼったくり」とは言えないと思うし、1,500円の次が2,500円というのも、そうおかしな値段設定ではないと思う。

ただ、1,500円と出しておいて看板に偽りありというのはよろしくない。

神戸の人間としては、オーケン様がせっかく神戸に来てくださったのに、その店のせいで神戸の印象が悪くなったなら許せない。
こちとら、神戸を気に入ってもらいたいために躍起になっているのに(そしてまた来てもらいたいのに)、その店は何を台無しにしてくれとんじゃあぁっっ!?!?

いったい、どこの店だろう?
と、街を歩くと、ぞろぞろと「神戸牛ランチ1,500円~」の看板が見つかるではないか。

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しかも、そのほとんどが、吉祥吉という店の系列店であることが判明した。
www.koubegyuu.com

ここ10年ほどで雨後の筍のごとく店舗数を増やしている観光客相手の店だ。
間違いなく、オーケンさんは吉祥吉系列のいずれかの店に入ったに違いない。

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そこで、ふと疑問がわいた。
コンビニの数より多いんじゃないかという吉祥吉の店舗数なのに、私は吉祥吉を利用したことがない。
周囲で、吉祥吉に行ったという話も聞かない。

いやいや、それよりもまず、神戸牛を食べるということが、ほとんどない。

神戸の人は神戸牛を食べるのか?と。

周囲の何人かにヒアリングしたところ、吉祥吉に行ったことがある人はゼロ。
そしてやはり、ずっと神戸で生まれ育った人でも、まともに神戸牛を食べたことない人までいた。

そこで見えてきたのは、

☆地元の人間は、観光客相手の店には入らない。

という当たり前の事実。
東京の人は東京タワーに行かない、京都の人は京都タワーに行かない、神戸の人はポートタワーに行かない、というのと同じ。

そして、神戸牛を食べたことがある、という人がどんなときに食べたかというと、特別な記念日、もしくは接待、というかんじだった。
それなりの値段がするものだから、やっぱり信頼のおけるとこへ、特別な日だけ行くものなのだ。

高価なものだから、覚悟を決めて食べるものなのである。
「ちょっと食べてみたいな」
といって気軽に庶民が手を出せるものじゃないのだ。

だからこそだと思うけど、行ったことがあるお店には、ビフテキのカワムラ、モーリヤ、菊水、大井肉店、和黒、といった老舗の有名店があがった。

www.bifteck.co.jp
www.mouriya.co.jp
kobe-kikusui.com
www.oi-nikuten.co.jp
神戸牛ステーキ あぶり肉工房 和黒

そもそも高いものなんだから、信頼のおけるところで、という心理なんだろう。

最後に、私が何か情報を得たいときに相談する、なじみの中華料理屋店主に話を聞いてみたら、第一声がこれだった。

「神戸牛を1,500円で食べようっていうのが間違うとるわ」

「でもでも、ちゃんと看板に神戸牛ランチ1,500円って書いてあるんだよ?」
「だいたい、ほんまもんの神戸牛やったら仕入れ値で100グラム2,000円はするのに、1,500円で出せるわけないやんか。どこの部分の肉かいうのもあるんか知らんけど、そんなん神戸ビーフちゃうわ、『神戸で食べる牛』や」

神戸で食べる牛、という言葉を聞いて、神戸の人が神戸牛を食べない理由がわかった気がした。
だって、アメリカンビーフを家で食べたって「神戸で食べる牛」になるんだもん。

そこには、
「何をもって神戸牛というのか」
という問題がある。

もちろん、きちんとしたブランドがあるけれど、「神戸牛」とは呼ばない。
神戸牛は通称だ。
登録商標は「神戸ビーフ」で、神戸ビーフ、または神戸肉と呼ぶのが正しい。
www.kobe-niku.jp

「神戸牛ってほんまは但馬牛のことやんか。ブランド化された神戸ビーフやなくても、但馬牛でええねん、十分美味しいねん」

ちなみに、そんな中華料理屋店主のおススメのお店を聞くと、三宮のホテル ザ・ビーの地下にあるプレジールだそうだ。
「でも、高いで」
と彼は言った。
神戸 プレジール|KOBE PLAISIR|JA全農兵庫の直営レストラン | JA全農兵庫の直営レストラン。極上の神戸ビーフと選りすぐりの兵庫県産食材をお楽しみ下さい。

ちなみに、私のおススメは、阪急神戸三宮の北の路地にあるnot'sというステーキハウス。
とってもリーズナブルだけどちゃんと美味しいので、ステーキが食べたいときはここを選んでいる。
www.steaknots.jp

でも、not'sは神戸牛じゃない。国産だと思うけど、どこの牛さんかは明示していない。
そんなこと結局どーでもいいんだ、美味しかったら。

どこの牛だとしても、死んでゆく牛はモー。

今の生活の限界は?

水曜日の夜、久しぶりに友達のYさんと電話した。
彼女とは同い歳で、10年来の大切な友達なのだけれど、なかなか不思議なつながりだったりする。

出会ったきっかけは、神戸ポートピアホテルで開催されたクレイジーケンバンドのディナーショーだった。
何でも一人で出かけていく私だけれど、さすがにテーブル席に一人ではまずいということで、mixi上で一緒に行ってくれる方を募集したところ、Yさんご夫婦が応えてくれたのだった。
そのとき返信をくれたのは夫さんのほうだったけど、今では奥さんのYさんとしか繋がっていないのも奇妙なものだ。

そんなふうに知り合って、Yさんご夫婦はもうクレイジーケンバンドのライブには来なくなったけど、Yさんとはずっとお友達だ。

好きなバンドもそうだけど、私はこの10年というもの、ほとんど何の変わりもなく生活している。
一方、Yさんは大病を患って入院したり、引っ越しをしたり、夫婦間の問題があったり、仕事を変わったりして、大変だったと思う。

ときどきしか会えないけど、会ったときは苦労話をゲラゲラ笑いながらおしゃべりする。
どんなにダークな話題も、おしゃべりしていると妙に可笑しくなってくるのは、お互いの波長が合うからだろう。

ここのところの、二人の共通の話題は親の介護だ。
私自身はこの10年で何も変わっていないつもりでいたけれど、そういえば、私の生活も介護のために変化していたのだった。
あまりに当たり前に、緩やかに生活を浸食していたので忘れてた。

彼女のお父さんは、脳梗塞の後遺症で要介護状態らしく、毎日ご実家まで片道2時間かけ、往復しているらしい。

彼女自身も病弱なのに、心労がたたるだろうなぁ、と心配になった。
夫さんは、心身ともに疲れている彼女を支えられる人じゃないだろうし、余計に気がかりだ。(数回しか会ってないけど、失礼ながらそんな印象。)

それで彼女を励ますために電話をしようと思ったのだったが、いざしゃべってみると、ほとんどが彼女から私へのアドバイスで、逆に私の方が励まされていた。

彼女はときどきこのブログを読んでくれているらしく、それで心配してくれていたらしい。
彼女のほうがしんどいだろうに、申し訳なく思う。
そして、ちょっと大仰に書きすぎているかなぁ、と反省。
大変だー、大変だー、って言ってる人が実は一番大変じゃなかったりするんだよ~。

うちの母の場合は、月曜日の午後から金曜日の夕方までショートステイに預けっぱなしなので、全く楽勝なのである。
土日もデイサービスを利用していて、その間に家事や用事ができる。
平日は会社勤めをしているけれど、スーダラ社員だからへっちゃらだ。

よく、老老介護とかで、「命を削るようにして介護生活を送っている」みたいな話をきくけど、私の場合は手抜きもいいとこなので、HPもMPもそれほど減らない。
何事も100%マックスまで頑張ることができない性格なのが幸いしているんだろう。(だから何事も中途半端でダメなんだけど。)

彼女がいろんな話を教えてくれた中で、最も胸に刺さったのは、人工呼吸器の話だった。
彼女はもともと病院に勤務していたから、その辺の事情に詳しく、
「緊急搬送された場合に、望まなくても人工呼吸器がつけられてしまうよ」
と教えてくれた。

万が一の話だけど、今後母の調子が悪くなった場合、当然施設の職員さんは救急車を呼ぶ。
救急のときは、神経内科で診てもらっている総合病院を搬送先に希望することはケアマネさんとも話している。

その万が一のときに、救急処置で人工呼吸器がついた場合、一度つけた人工呼吸器は外せない決まりになっているそうだ。

もちろん、回復して自発呼吸が可能になれば外せるだろうけど、うちの母の場合、病気が病気なので、元気になることはほぼ望めない。
今でさえ、身体も動かないし、声は出せるけどおしゃべりはできない。
顔の筋肉も固くなってきたので、表情を読み取ることも難しくなってきた。
美味しいものを食べることが唯一の楽しみだけれど、飲み込みがだんだんできなくなってきたら、それも消えてしまう。

最期のときは、静かに苦しむこともなく、すーっと息を引き取ってほしいと思うけれど、そんなにうまくいくものかどうか。
まだまだ先の話ではあるけれど(と思っているけれど)、母をどのように看取るのかは私の判断だ。

「一切の延命治療はしないでくださいって、紙に書いて、お母さんと波野さんの名前を書いて、判子を押して割り印したものをケアマネさんに預けておく」
というのが彼女のアドバイス

その話を聞いたときは、
「う~ん、そこまでは…」
と正直思ってしまった。
彼女の言うことは正しく、私がちゃんと準備しておいてあげるのが母のためなんだろう。
わかっているけど、考えたくない自分がいる。
できるなら、もっと先延ばしにしたい。

彼女は病院勤めの経験から、人工呼吸器をつけられた末期患者の話をしてくれた。
「どうしても人工呼吸器をつけたいっていう家族さんって、親族の意見が合わなかったり、その患者さんの年金が必要だったり、結局は自分達の都合なんよね。そんで、人工呼吸器をつけている患者さんでも、耳は聴こえるの。ベッドの横で家族が揉めてるのも聞こえるわけ。食事は流し込まれて、排泄も自分ではできなくても、耳は聴こえて、涙は流せるの」

いつもは何でも冗談で笑いとばして、二人で笑い合うのだけど、さすがにこの話には悲しみしかなかった。

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今日土曜日の午前は神経内科泌尿器科を受診。
相変わらず泌尿器科では、受付と待ち時間と診察前の3回、「検尿を取れますか?」と尋ねられた。

最近では1日2回尿が出ればよいほうで、そのうち1回は夜中に寝てる間に出てることが多い。
出ないから受診に来てるわけで、
「はい、出して」
といって出るならそもそも病院に来ていない。

診察時に先生に状況を話すと、すぐに理解してくれた。
個人の資質の問題だと思うが、神経内科の先生より泌尿器科の先生のほうが人として話しやすい。
今の母の、平日は施設にショートステイ、週末は自宅、という生活リズムを話すと先生は、
「尿のことは心配やけど、お母さんのことを考えると何もせえへんほうがいいかなぁ。週末に自宅に帰れる生活を続けられたほうがいいやろうからね」
と言ってくれた。

「ただし」
気さくな泌尿器科の先生は、はっきりと付け加えた。
「尿が出ない状態がいいわけがないので、尿感染症にかかるリスクはあります。そうなったときは38度とか39度とかの高熱が出ます。そのときが、今の生活の限界かなぁ」

できるだけ今の生活を続けたい。
けれど、一体どこが限界なのか。
私が判断するとしても、どこを基準にすればいいのか。
施設と自宅を往復するのは今もすでに限界、という見方もある。

けれど、できるだけ長く現状維持を続けたい私にとって、「高熱が出たら」という目安にものすごくスッキリした。
泌尿器科の先生、ありがとう。
考えることはいっぱいあるけれど、とにかく限界まで、今の生活をめっぱい楽しませてあげられる。

Yさんの話で気付かされたことのひとつは、身体が動かないくなっても、耳は聴こえているという話だった。

母はまだ耳が聞こえる。
おしゃべりができなくなってきても、食事の楽しみが減ってきたとても、耳が聞こえるなら音楽やお話が楽しめる。

母は歌が好きなので、以前はよく昔の曲をかけてあげていた。
3年ほど前まではしょっちゅう一緒に歌っていたものだ。
最近はだんだん歌も歌えなくなって、今はほとんど反応もしなくなってきたので、たまにしか音楽をかけなくなっていた。
テレビ番組も、以前は一緒に楽しめそうなものを選んでいたけど、最近は私の都合で自分の見たいものばかりかけてしまっていた。
すべて私のエゴ。

お母さん、筋少聞かせたり深夜アニメ見せたりしててごめんね。
今日からはお母さんの好みに合わせるよ。

三宮にシアター・エートーができた。

4月1日土曜日、三宮に新しくできた劇場、シアター・エートーに、『松尾貴史Presents A☆toプレこけら落とし記念落語会』へ行ってきた。

神戸の劇場といえば、こくさいホールや神戸文化センターがあるけれど、どちらもオペラや歌舞伎向きの大きいハコ。
それより小さめの劇場なら、新神戸オリエンタル劇場か、神戸アートビレッジセンターが思い浮かぶけれど、どちらも新神戸、新開地と、街を離れている。
町の真ん中にちょうどいいかんじの小さい劇場がないっていうのは寂しいなぁとは以前から思っていた。

シアター・エートーに行ってみると、思いのほかJR三ノ宮駅から近い。
東側のエリアなので、賑やかな場所ではないけれど、この近さならこれからも気軽に遊びに来れそう。

この日の出演者と演目は、
桂りょうば「子ほめ」
桂吉坊井戸の茶碗
松尾貴史「一文笛」
だったのだけど、その前に、松尾貴史さんとゲストの吉村智樹さんのトークがあった。

話の主な内容は、お二人の神戸の思い出と、大阪芸大の話。
シアター・エートーの名前の由来は大阪芸大のA棟という場所で、大阪芸大出身者が中心になって設立された劇場であるらしい。

松尾さんの同学年が、劇団☆新感線いのうえひでのり南河内万歳一座内藤裕敬、そして庵野秀明だという。
大阪芸大出身者が関西の小劇場を牽引してきたのは知っていたし、漫画家島本和彦の『アオイホノオ』で描かれたように、庵野秀明とその周辺が新しいアニメの歴史を作っていったのも知っていたけど、その二つの世界が同じ時期に並走していたとは思わなかった。
なんなの大阪芸大?!すごすぎる。

神戸にまつわる話としては、吉村さんが話題にされた「思いつき」というレジェンド級の喫茶店の話が面白かった。
思いつきの詳細については、こちらのブログが詳しいので、行ってみたときの楽しみに、今は何も書かないでおく。

仲入りのとき、隣に座っていた方が、
「さっきの喫茶店メモしとこう。えーっと、喫茶‘思い出’やったかな」
と連れの人に語りかけながらメモをしていたら、前の座席の人がクルッと後ろを向いて、
「思い出と違いますよ、思いつきです。春日野道です」
と言う。
知らない人にそこまででしゃばって言うなら詳しいんだろうと思っていたけれど、あとでネットで調べてみたら思いつきの場所は兵庫じゃないか。
隣の人は「春日野道」とメモしていたのに、どうなったことやら。

それくらい、観客は皆、その吉村さんの話に「自分も行ってみたい!」と思わせられたのだった。
絶大な宣伝効果。

もう一昨年になるけれど、ロフトプラスワンウエストで、吉村さんの珍スポットを紹介するイベントを見に行ったことがある。
そのときも、紹介される味があるお店のスライドにお腹を抱えて笑ったものだ。
なので、演劇や落語はもちろんだけど、ロフトプラスワンみたいなサブカルトークショーなども、このシアター・エートーで企画してもらえたら面白いのになぁ。
大槻ケンヂののほほん学校をやってくれないかしら。)

松尾貴史さんの落語のまくらは出身地である神戸の話で、
「おしゃれな町と言われますが、怖いおっちゃんいっぱいおるで」
という、地元の人ならではの感覚で会場を喜ばせた。

私はもともと播州人で神戸の人じゃないからこそ、神戸っ子たちの地元愛がめちゃくちゃ強いのをひしひしと感じる。
松尾さんの語りもそうだし、それを聴くお客さんにも、地元愛が溢れていた。
道徳の教科書問題に軽くふれて、
「神戸はパンの町やのに、和菓子に変えられたら逆に郷土愛が育たへんのちゃうか」
と言うのはほんとにその通り!
けれどその程度で地元愛を失う神戸っ子じゃないのも確か。

それにしても、どうして松尾さんは落語家じゃないのにあんなに落語がうまいんだろう??

最後に、出演者と支配人で日本酒の鏡割り。

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退出するときには、記念の升でお酒もいただいた。
めでたいめでたい。

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子どもをほめずとも、灘の酒が飲めました。