3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住むアラフォーOL、波野なみ松の、仕事と趣味と母の介護を両立させる日々の記録。

芸能人じゃなくても歯が命

歯に対するの意識の高さは生活の豊かさと比例している、という話を耳にしたことがある。

歯と経済のことを考えるとき、上海で見た物乞いのおばあさんの潰れたトウモロコシみたいな黄色い歯並びを思い出す。
生活に余裕がないと口腔ケアまで手が回らなかったり、大切さを知る機会がなかったりするんだろう。

母は小学生時代に「歯の女王様」に選ばれかけたほど歯が丈夫で、今もほとんどの歯が残っている。
自分で歯磨きができなくなってからは家でも施設でも他人に口腔ケアをしてもらっているおかげで、自分でしていたとき以上に念入りだ。

今の介護施設には、巡回で来てくれる訪問歯科があって、先月も母のアゴが歯肉炎で腫れたときすぐに診てもらった。
去年の夏は、歯の根にバイ菌が入り、アゴの骨が溶けるほどの炎症を起こし、何度も赤十字病院に通うはめになったので、早めの対処が肝心だと私も学んだ。
おかげさまで、先月は何回かのクリーニングで腫れはすぐに治まった。

老人の口腔内の炎症を甘く見ていたら、虫歯からアゴが腫れて呼吸困難になり死んでしまうことだってあるらしい。
ほんとに歯はあなどれない。


妊婦歯科検診を受けた

神戸市で妊婦健診の補助券をもらったとき、妊婦歯科健診の案内も一緒に渡された。
補助券の中には歯科健診の無料券もついている。
タダなら行かなきゃ損である。

妊婦さんは赤ちゃんにカルシウムを取られるせいで歯がボロボロになる、と聞いたことがある。
それだけじゃなく、唾液の分泌が減るらしくて歯周病にもなりやすいらしい。

私は歯並びが悪いせいで、ちゃんと歯磨きをしていてもすぐに着色汚れがたまる。
それで定期的に歯科に歯のクリーニングに行っていたのだけど、普段通っている審美歯科モドキの歯科は妊婦健診に対応していなかった。

仕方ないので、会社の近くにある歯科に行くことにした。
自宅の一部が歯科になっているタイプの、昔からやっている先生だ。
会社の人で、そこへ行ったことがある人に評判を聞いてみると、
「いつ行ってもガラガラ。その代わりすぐ診てもらえる」
という。

確かに、予約の電話をいれたら、
「うちは予約をとってないので、どうぞいつでもお好きなときに来て下さい」
と言われた。
そんなに流行ってない歯医者なんて大丈夫かなぁ、と思ってしまう。

行ってみると、確かに問診票を書いたらすぐに案内してもらえた。
「今何か歯や歯茎のことで気になることはありますか?」
と尋ねられ、ときどき硬い物を噛むと左の奥歯が痛むこと、別の歯科で原因はセラミックの詰め物の磨耗でどうしようもないと言われ、知覚過敏の薬を塗ってもらったけれど、時間が経つとまた痛むことがあることを訴えた。

すると、先生は薄い紙を噛んでガリガリするように指示し、噛み合わせを見た。

「左の奥歯の噛み合わせが良くないから磨耗するんやね。もういっぺん横に動かしてみて。動きにくいでしょ。ひっかかる歯があるからやね。これはちょっと調整するだけでマシになるよ」
と言う。

「今調整してもらうことは可能ですか?」
と尋ねると、
「大丈夫ですよ。ほんの少し削るけど、かまへん? 削るって言うても、紙1枚程度やから心配せんでええからね」
と、すぐにやってくれた。

ちょっとのことだけど、左の奥歯がうまく動くようになった気がする。
「これでスムーズになったでしょ。これまで噛み合わせが悪いせいで、力がかかってたと思う。肩こりもマシになるんちゃうかな」

奥歯の痛みだけじゃなく、肩こりまで?!

これまで、美容室のようなオシャレ歯科では何も解決できなかったことが、普通の歯科でこんなに簡単に解決されてしまうとは!

そのうえ、ついでだからと着色汚れも取ってくれた。
無料なのは健診だけなので、治療分は代金を取られるかと思いきや、全部無料にしてくれるというサービスっぷり。
妊婦歯科健診、万歳!

普段からここに来ておけばよかった、と後悔するものの、診察時間が18時で終わりなので、会社帰りには来れないんだよな。
結局、夜遅くまで開いているサロンみたいな歯科のほうが会社員のニーズに合うわけだ。


我が家で唯一の悪歯さん

ある日、掃除機をかけているとカリカリという小石を吸い込むような音がした。
何かと思って拾うと、歯であった。

父に尋ねると、最後の1本が抜けたらしい。
抜けた歯を床に落としっぱなしにするなよ、と思うけれど、乳歯じゃないので屋根に投げたり床下に置いたりする必要もないし、かといってゴミ箱へ捨てるのもなんとなく気が引けた。
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父はすっかり総入れ歯である。
入れ歯を外すと人相が変わり、まるで別人である。

夜中に見ると、どこのじいさんが紛れ込んで来たのかとギョッとする。

父によると、歯を入れ忘れてモーニングを食べに出掛け、注文が来てパンにかじりついてようやく、入れ歯をしていないことに気付き、何も食べられないままコーヒーだけを飲んで店を出たことがあるらしい。
なんとまあ、もったいない。

入れ歯はやだね。

そんな様子を見ていると、やっぱり歯は大切にしなきゃ、としみじみ思う。

爆発!電子レンジ族

3日の午後に実家をあとにして、5日金曜日の夜に戻った。
空けたのはたった1日半である。
なのに、戻ってきてギャーと叫ぶことが3つあった。

 

ひとつ目は、キッチンテーブルの椅子の上と床下に、カップスープの黄色い粉がこぼれていたこと。
一目瞭然、父がスープを入れようとしてこぼし、粉を周囲にぶちまけ、そのまま片付けなかったのだ。

 

ふたつ目は、お皿を出そうと食器棚を見ると、汚れたままのお皿が入っていたこと。
これまでも、父はよく鍋を洗わずに棚にしまう癖があった。
ただし、ギトギトの油に汚れたフライパンとかではなく、インスタントラーメンを茹でたあとの片手鍋などで、父本人は「洗わなくてもキレイ」と思っているらしく、注意しても態度を改めない。
しかし、汚れたお皿は初めてである。
お醤油がまだ入っているような小皿が食器棚に戻されているなんて、これまでになかったことだ。

 

みっつ目は、キッチンからリビングの床にかけて、緑色の液体がこぼれたまま跡になってこびりついていた。
しずくがこぼれた、というレベルではない。
しかも、拭きもしないで液体がこぼれた上を歩いているから、被害は甚大である。

 


父を問いただす

これらの事件について当然父に尋ねたけれど、
「覚えがないなぁ」
とシラを切る。
父の性格からして、嘘をついたりごまかしたりしていないのはわかっているけれど、父以外に犯人はいないのである。

どうせ、お酒を飲んで酔っぱらって、分別のつかないことをした挙げ句、覚えていないだけだ。


そして私は、もぉ〜、もぉ〜、と牛のごとく唸り声をあげながら後始末をするしかない。

床掃除をしていると、父が、
「思い出した!」
と言ってきた。
みっつ目の犯罪には心当たりがあると言う。


事の顛末

コンビニで買ってきた紙パックの青汁を飲もうと冷蔵庫から出したが、冷たいのは嫌なので電子レンジで温めたのだそうだ。
青汁といっても、伊藤園の野菜ジュースみたいなやつだ。(下記参照)

 

チンして取り出し、キッチンからリビングへ。
1分間も温めたのに、あまり温かくない。
中身も少ない。
見ると、底に穴が開いていて床にこぼれていた。

 

電子レンジからキッチンを横断し、リビングのソファまで、穴の開いた青汁を持って、足を引きずりながら歩いたわけで、そりゃ床一面が青汁だらけになるわけだよ。

トホホ…。


何でも電子レンジで温めちゃダメ!!

そもそも、青汁をホットで飲もうとするか?
いやそれ以前に、紙パックを電子レンジにかけるなんてありえない。

 

これまでも、父の危険な電子レンジの使い方が気にはなっていた。

 

レトルトカレーを電子レンジに入れているのを見たときはビックリして、
「やめて!!爆発する!!」
と止めたのだけど、
「ちゃんと見とうから大丈夫や」
と言う。
温めている様子を見ていて、袋が膨らんできたら取り出したらいい、というのだ。
確かに、そのやり方でちゃんとカレーをつくっていたけれど、危なっかしくてしょうがない。

 

コンビニで買ってくる餃子やたこ焼きなどの冷凍食品についても、端のほうに点線で「ここまで切り目を入れる」と指示してあるにもかかわらず、そのまま温めてしまう。

 

父はパッケージの説明なんて読みはしないのだ。
「500wで何分間」というのも「袋から出して」というのも無視。

老眼だから読めない、というのが言い訳だけど、眼鏡かけりゃいいだけだ。
結局、面倒くさいから、なんでも自己流で温める。
切れ目なんて入れなくても、袋が勝手に破れてくれるらしい。
…いやそれ、爆発してるんやって…。

 

電子レンジは便利だけれど、いつかエライことにならないか。
いくら言っても聞く耳を持たないということ自体が、棺桶に足を突っ込んでいる。

波野家のファミリーヒストリー

4日が仕事始めなので、3日には実家から神戸へ戻る予定をしていた。

お正月だし、彼氏のお母さんにご挨拶をさせてもらいたい、と彼氏に伝えると、だったら車で迎えに来てくれると言う。

一升瓶を手土産にして、彼氏がうちの父に年始の挨拶に来てくれた。

 

父は、自分はどこへも年始の挨拶に行かないくせに、

「正月やのに誰も来やへん」

とこぼしている寂しい老人なので、彼氏が訪ねて来てくれたことをとても喜んだ。

 

慌てて用意した中華惣菜で食卓を囲みながら、父は上機嫌でしゃべっていた。

主には、これまで行った海外旅行のこと、ドイツに旅行に行きたいこと、それから、第二次世界大戦のドキュメンタリー番組が好きで見ていたら夜更かししてしまうことなど。

「脚が治ったらドイツに行こうと思ってずっと調べよんや。ドイツには7つ街道があってな。まず、ロマンチック街道、それからメルヘン街道、あと、古城街道。それと…、…とにかく街道があるんや」

3つしか出ぇへんのかい!

と普段だったらツッコむところだけれど、彼氏の前だから控えた。

 

私にとっては、旅行の話と第二次世界大戦の話は、聞き飽きるほど毎度同じ話なのだけれど、この日初めて私が知らない情報が出てきた。

それが、父の両親、私の祖父母の話だった。 

 

波野家はもともと福岡にあって、祖父は海軍大尉の次男として生まれた。

父親の海軍大尉は厳格な人で、厳しく育てられたらしい。

それがなぜ、姫路にいた祖母と出会ったのかはわからないけれど、二人は出会って恋に落ちる。

その後、祖父は仕事で満州へ。

 

すると、祖母は祖父を追いかけて単身で満州へ渡った。

見つかったら連れ戻されるので、家出同然の満州行きだったという。

 

押しかけ女房の祖母との結婚を、海軍大尉の曽祖父は許してくれなかったらしい。

そうこうしているうち祖母に子供ができたのだけれど、

「その子が男の子だったら結婚を許してやる」

という条件が出たのだそうだ。

 

ところが、残念ながら生まれてきたのは女の子。父の姉である。

かわいそうに、伯母さんはしばらく籍に入れてもらえないままだったらしい。

その後、二番目の子供としてうちの父が生まれた。

海軍の曾祖父からもようやく認めてもらい、二人は晴れて入籍できたのだそうだ。

 

うちの仏壇には、その憎たらしい海軍のおじいさんの写真がずっと飾られている。

 
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なぜ父が突然そんな話をしはじめたのか。

結婚せずに先に子供ができてしまった私たちに対して、こういう例もあるのだ、順番なんて気にすることはない、という父なりの配慮だったのかもしれない。

 

けれど、私はそれに気が付かなかったので、

「昔はそういうもんやったんや」

としたり顔で言う父に、

「違うでしょ。昔だってそれはかなりのレアケースじゃない?」

と言い返して台無しにしてしまった。

 

私の記憶に残る祖母は、胃がんの手術後、寝たきりで療養していた姿だ。

病気で少しわがままになり、介護をするうちの母に少しつらく当たることもあった。

あの痩せ細った老婆と、満州まで恋人を追いかけて行く娘の姿はなかなか重ならない。

けれど、私が知らなかっただけで、あの細くてしわしわの身体の奥にはそういう情熱的な魂が潜んでいたのだろう。

そう思うと、少し感動する。

 

NHKの『ファミリーヒストリー』という番組をときどき見ているけれど、一般の、無名の人が波乱万丈の人生を生きていることに驚かされる。

その先にいる有名人は、自分のルーツどころか自分の祖父母や親のこともよく知らない。

でも、そんなものだ。

 

波野家は私で終わるとずっと思っていた。

それが思いがけず血を継いでくれる子供を授かったことで、ご先祖様たちに面目が立つような気がする。

食欲の元旦

毎年、元旦だけはデイサービスもお休みして、母は1日家で過ごす。

昨日の元旦で喜ばしかったのは、とにかく母がムセることなくパクパク食事を摂ってくれたことだ。

 

ここのところは、喉や頬をマッサージしながら、

「はいゴクンして!がんばれ!」

と声をかけないと食べられないことが多いのだけど、昨日はそんなことをしなくても食べられた。

食事中にムセて咳こむこともなかった。

母も元旦だということがわかっていたのだろうか。

 

最近の母のメニューはペースト状の介護食である。

少しでもつぶつぶがあるとむせてしまうので、なめらかなペースト状じゃないと飲み込めない。

豆腐くらいはミキサーをかけて用意するけれど、それ以外はもっぱらドラッグストアで買ってきたレトルトの介護食を使っている。

あとはパックのポタージュスープか、粉末を溶かすタイプのスープ。

 

先月下旬に介護食をたくさん買い込んだつもりだったけど、週末から母がよく食べてくれるので、ストックがどんどん減っていった。

食べてくれるのはうれしいけれど、元旦早々ドラッグストアに買い出しに行くのもわびしいし、どうしようかなぁ、と思っていたところ、父がおせち料理のテリーヌを、

「これやったら柔らかいから、お母さんも食べられるんちゃうか」

と言った。

 

母が病気になってからは、毎年おせち料理は宅配のお重を頼んでいる。

父に言われてから、改めておせち料理を眺めてみると、母でも食べられそうなものを発見。

栗きんとん、芋きんとん、テリーヌ、伊達巻、黒豆。


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調子が悪いときならとても無理だけれど、今日のこの絶好調な飲み込み状態ならいけるかもしれない。

母は噛む力だけはしっかりしているので、お箸で上手に黒豆を奥歯に乗せてあげると食べられる。

飲み込む力が弱っているときなら黒豆の皮でさえ喉を詰まらせるけれど、この日は本当に調子が良くて、黒豆を5粒も食べられた。

 

テリーヌも小さく切って奥歯に乗せるとちゃんと噛んで飲み込めている。

「お口を開けて」

と言わなくても、母は口の中がなくなると自分から口を開けてくれた。

食欲全開!

つられて私までついつい食べ過ぎてしまう。 

妊婦になってからは「太るからやめておこう」というストッパーがなくなってしまった。

 

身体が動かない、おしゃべりもできない母にとっては、もう食べることくらいしか楽しみがない。

だから、一部でもいいからおせち料理が食べられたのは本当に喜ばしかった。

 

どうも、母は自宅に帰ってくると調子が良くなる。

逆に、施設にいると元気がなくなって、食事が進まなかったり便秘になったりする。

自宅で元気になってくれるのは家族としてはうれしいけれど、施設のスタッフさんだってみんな良くしてくれているのに困ってしまう。

 

特に今年は、私の産前産後にかけて母を長期間預ける予定にしている。

つもりとしては、4月上旬から6月末まで。

こんな調子で、ずっと自宅に帰らないままやっていけるだろうか。

その3か月弱で急激に弱ってしまわないだろうか。

 

施設のスタッフさんが優しくしてくれるといっても限界がある。

物が言えない母は痛みを訴えることもできない。

こうしてほしい、ああしてほしいという希望が言えない。

誰かが気づいてあげない限りは、ほったらかされてしまう。

 施設だったら、調子がよさそうだからって臨機応変にメニューを変えることはできない。

足先が冷えているからって、湯たんぽを入れてあげることもない。

脚がむくんでいるからって、ふくらはぎをさすってあげることもない。

唇が乾燥しているからって、リップクリームを塗ってあげることもない。

 

3か月弱という長期間を考えると悲しくなる。

かわいそうだけど、母は孫を望んでいたのだし、我慢してもらうしかない。

2017年最後の失敗から新年へ

明けましておめでとうございます。

人生が急変してしまった2017年が終わり、2018年は覚悟を決めて新しい人生を歩んでいくつもりです。


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昨日の大晦日は、最後の最後にやらかしてしまった。

ベッドから車イスに移動させるときに、うっかり車イスのロックをし忘れてしまい、母を乗せようとしたら、

ツツツツツー

と車イスが後ろに下がってしまったのだ。

母はそのままゆっくりと尻餅をつくはめに。

 

私が抱えていたのでゆっくり下りたし、下は畳なので母にケガはなかった。

けれど、ここからが大変。

畳に寝転がってしまった母をイスやベッドに戻さないといけない。

 

これまでも2回、母がベッドから落ちたことがあり、1人で戻したことがあるけれど相当な格闘だった。

さすがに今は1人で母をベッドに持ち上げることはできないと思い、父に手伝ってもらうことしにした。

 

最初は私が母の上半身を、父が脚を持って持ち上げようとしていたのだけど、なかなか上がらない。

「お父さんが代わったる」

と言うので交代したけれど、抱え方が危なっかしい。

「あかん!腕だけ持ったら脱臼してしまう!」

 

これまででも、施設のスタッフが拘縮した母の腕を無理に上げたことで、肩に内出血ができたことがあった。

念のため、整形外科で骨に異常がないかレントゲンを撮りにいったほどである。

それ以来、施設も私も母の腕をデリケートに扱っている。

けれど、これまで母に無関心で介助もしたことがない父は、

「しっかり持っとうから大丈夫や!」

と聞く耳を持ってくれない。

 

とりあえずやってみたけれど、父が上半身を持っても持ち上がらない。

私もお腹が邪魔でなかなか力が入らない。

 

「ちょっと待って。骨盤ベルトを外すから」

と、まるでドラゴンボールでピッコロが重しを外すが如く、先日から着けている妊婦用の骨盤ベルト「トコちゃんベルト2」を外す。

 

体勢を変えて、私がベッドの上から母を後ろに羽交い締めにして引っ張り上げた。

そのまま上に乗られるとお腹が潰れてしまうので少し身体をねじらせると、今度は母がずり落ちそうになる。

 

「早く!脚をベッドに上げて!」

と必死で父に呼び掛ける。

「よしっ!」

といって父が持ち上げたのは、私の脚。

「ちがうだろぉっっ!!!」

豊田議員のごとく怒鳴ってしまった。

「お母さんの脚はそっち!!!」

「脚がようさんあるからわからへんがな」

 

てんやわんやで、一段落。

母は無事だったものの、私は太腿の付け根を痛めてしまい、しばらく脚を引きずって歩くはめになった。

 

最近どうもぼんやりしていて、いろんなことをうっかりしてしまう。

まだ大事には至ってないけれど、なんだか怖い。

 

しばらく休憩したあと、年越しそばの準備に取りかかった。

キッチンにいる私に、父はさっきまでの出来事をすっかり忘れたように、

「明日のお雑煮、お父さんはお餅ふたぁつな!」

と元気に言いにきた。

やれやれ。

 

てんやわんやの2017年の締めくくりらしい大失敗の大晦日だった。

2018年は一転、希望の年になりますように。

心細い大晦日

「こうべ子育て応援メール」というメールマガジンを毎日楽しみにしている。

出産予定日を登録すると、妊娠何週と何日目かを教えてくれて、そのときの赤ちゃんの様子と母体が気をつけるべきことをメールで教えてくれるのだ。

 

それを読んでいると、妊婦というのは本当にいろんな身体の変化があるのだということに気づかされる。

これまで、友達が妊娠していても何も気遣ってあげられなかったことを悔やむばかりだ。

 

その中で、

「お腹が張るようなら無理をせず休みましょう」

というのがあった。

確かに、実家で母を抱えたり家事をしたりして身体を動かしているとすぐにお腹が張って苦しくなる。

無理をし続けると切迫流産とか切迫早産になるらしいので、デイサービスに母を送り出したあとは、座ったり横になったりして休んでいるのだけど、もともとが怠惰な性格なので、「ちょっと休憩」がちょっとで終わらない。

動きたくなくなり、何もしないまま時間ばかりが過ぎる。

 

やらないといけないことは山積みなのに、そうこうしているうちにもう大晦日になってしまった。

大掃除どころか普通の掃除すらできていない。

代わりにやってくれる人なんて誰もいないので、私が「無理せず休む」とそれで終わりだ。

 

しかも、今年は年賀状すら書かなかった。

会社では今年、「社員間での年賀状のやりとり廃止」という意味不明の通達が出たので、それを幸いに誰にも年賀状を出さないことにした。

年賀状のやり取りをしている友達もいるけれど、今の近況を書くのも憚られ、ついついおっくうになる。

まだ結婚もしてないのにいきなり「今年は出産します」というのもおかしいし、かといって、素知らぬそぶりで「今年もよろしく」というのも隠し事をしているようで気が引ける。

結局、年賀状が来たら、それに対する返事だけ書くだけに決めたら気楽になった。

 
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昨日は父と二人で、近くのスーパーへ迎春準備の買い出しに行った。

普段はたいして混まない店なのだけど、昨日は年末とお客様感謝デーが重なって、駐車場に車が大行列。周囲が渋滞するほどの大混雑だった。

「30日は一番混むなぁ」

と父が言う。

「5%オフやからねぇ」

「こんな混雑久しぶりやな。満州から引き揚げてきたとき以来やな」

「そんなに久しぶりか?!」

父の記憶には人生の中間がない。

 

店内も混み合っているし、品薄になっているものもあって、ゆっくり買い物ができない。

レジも大行列で並んでいると、父が、

「待つんやったらコーヒー飲んで来てもええか?」

と言うのでカチンときた。

「何考えてんの! こんなに混雑しているのにやめなさい!」

混雑の中、一人で荷物を抱えてはぐれた父を探しに行く身にもなってほしい。

父としては、スーパーに一緒に来たのは自分が欲しいものを買うためであって、私を手伝ってやろうという気持ちはサラサラない。

それは最初からわかっているけど情けなかった。

 

子育て応援メールによれば、

「重いものは誰かに持ってもらいましょう」

ということだけれど、うちにはそんな「誰か」なんていない。

父はカートを押して歩くのは得意だけれど(ていうかカートのおかげでスタスタ歩ける)、荷物を持って歩くのは危険なので、車から家までは私が運んだ。

やはり、ちょっと重いものを持って歩くだけでお腹が張る。

 

母が病気になってからは、毎年私が迎春準備をして家族でお正月を迎えている。

これまでもたいしたことは何もできなかったけれど、身体が思うように動かない今年は格別にサボってばかりだ。

ちょっとしたことで息が切れて、動作が普段の倍くらいスローモーになってしまった。

キッチンに長く立っているとすぐに足がつるし。

足がつって転がって痛みに耐えている私を、父は知らん顔で通りすぎる。

 

全く身体が動けず、声掛けに反応すら乏しくなってきた母。

マイペースで世間ずれした父。

身重で機敏に動けない自分の身体。

こんなに心細いなんて。

頼れる人といえば彼氏しかいなくて、これまでは「自分一人でも頑張る」つもりでいたけれど、心の底ではどれだけ彼氏にすがっているのかに気づかされる。

 

これまでは、「北斗の拳のマミヤさんみたいに強くなろう」とか「攻殻機動隊草薙素子みたいに気丈に生きよう」とか、お手本に思える女性像というのを拠り所にしていたけれど、妊娠中でも逆境に負けず頑張って生きる女性像がなかなか見つからない。

思い浮かぶのは『鎌田行進曲』で松坂慶子が演じた小夏か、『獄門島』で草笛光子が演じた毒婦お小夜くらいだ。

お小夜は強烈だったけれど、あれくらい自分勝手じゃないとお腹の子供は守れないかもしれない。

 

とにかく2017年ももう終わり。

今日と明日で何が違うものか。

ただ、お腹ばかりは日に日に膨らんでいる。

赤ん坊の性別

企業にとってみれば、ライフイベントは絶好の金儲けポイントだ。

特に、妊娠出産を控えた人なんて、いくらでもお金を落としてくれるいいカモになる。

カモ争奪戦のために、そのエサとしてプレゼントキャンペーンがそこかしこで行われている。

私たちカモたちはエサだとわかっていながらも、

「タダならもらっとけ!」

とつい貧乏根性を出して応募をしてしまう。

複数企業がいろんなプレゼントを持ち寄っているサイトがあって、片っ端からもらえるものを応募してしまった。

ハッピープレママ:プレママ用品、赤ちゃん用品、試供品のプレゼントサイト

赤ちゃんのスタイは全員プレゼントで、先日届いた。


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…これ、男の子だったらどうすんだ??

黄色とかの無難な色にしないかなぁ、普通?

性別を色分けするのはナンセンス、という考え方もあるけれど、それは自意識が目覚めたあとで十分。

赤ん坊のうちは親が着させる服の色くらいしか、他人様が性別を見分ける手段がない。

プレゼントすりゃいいってもんじゃないよなぁ、と、配慮の足りないその企業の好感度が下がった。

逆効果ですよ、保険見直し本舗さん!

本業の保険についても気が利かない提案をするんじゃないかと思ってしまう。

 

男の子がいいか、女の子がいいか

はなから子供を持つなんて考えてもみなかったので、私自身は子供の性別になんのこだわりもない。

ただ、友達たちを見ていると、女の子のほうがお利口さんで手がかからない子が多く、そんなふうに育ってくれたらありがたいとは思うけれど、自分の子がそんなお利口さんであるとも限らない。

どうせだったら自分に似た女の子より、彼氏に似た男の子のほうがいい。

それに、実は彼氏にはすでに娘さんが一人いる。

だったら、一姫二太郎で男の子のほうがバランスがいい。

彼氏もそう思っているだろうと思って聞いてみると、

「女の子のほうがかわいいよ」

と言う。

やっぱり父親にとっては娘のほうがかわいいらしい。

子育て経験者は語る、だ。

娘さんが成人した今でも父娘で旅行に行くほど仲が良いのだけど、男の子だったらそうはいかないだろう。

 

アルカリ性という化学

ただ、彼氏には申し訳ないけれど、どうもこの子は男の子のような気がしていた。

ひとつには、「お腹が前に出ていたら男の子」という俗説。

妊婦だから当然かもしれないけど、お腹が前に膨らんでいるのだ。

 

それともうひとつには、知人が言った一言。 彼女のおうちでは、うちの実家と同じアルカリイオン水素水の整水器を使っていたので、

「うちも両親の健康のために飲ませてるんですよ」

と話したら、

「どうも男の子を授かったのは、この水を飲んでたせいじゃないかと思うんだよねぇ…」

とポロリとつぶやいた。

そのときは、

「またまたぁ~」

と、どういう意味なのか真意を理解しないまま笑い飛ばしていたのだけど、アルカリイオン水素水と妊娠の関係性がずっと引っかかっていた。

彼女は化学をお仕事にされている聡明な人なので、何かそう思う根拠があるに違いない。

そう思って男女の産み分けについて検索すると、女性の身体がアルカリ性に傾くと男の子に、酸性だと女の子になるらしい。

食べ物や飲み物の摂取で分かれるとは言えないけれど、pHによって決まることは確かなようだ。

 

案の定、男の子だった。

先週健診に行ったら、男の子だったことがわかった。

「やっぱり!」

と私が言うと、先生が、

「どうしてですか?直感ですか?」

と尋ねる。

前回は超無愛想な老先生だったが、今回の先生は近藤公園似の優しげな人だった。

「いやぁ、お腹が前に出ているので…」

と答えると、

「よく言われますけど、個人差があるので実は関係ないんですよ」

と言う。

まさか、アルカリイオン水素水のことなんて聞けない。

 

ていうか、本当にアルカリイオン水素水を飲んで男の子が生まれるなら、皇室とか歌舞伎の梨園とか、とっくに導入してるんじゃ?

 

『たけしの万物創世記』を思い出した。

昔、『たけしの万物創世記』というテレビ番組があって、オーケンがときどきゲストに出るので欠かさず見ていた。(ネットで情報が得られる今と違って、昔は出演情報がわからなかったからね。)

オーケンゲストの回でヒトの生命誕生についてやっていたのを覚えていて、その中でどうやって男女の性別が分かれるか、pHの秘密もやっていたような…。

実家のVHSテープに録画したものがあるかもしれない。

と思いつつもまず検索してみると、VHSをほじくり出さなくてもYouTubeに上がっていた。

何でもネットで見られる時代でビックリする。

 

久しぶりに番組を見てみて、改めて赤ちゃんが宿るのが奇跡的な出来事だと思い知らされた。

この子は、壮絶な戦いを勝ち抜いて生き残ったわけだ。

 

男の子上等。

でも、願わくば彼氏に似て背が高くて運動能力が高い男の子になりますように。

私に似てチビで鈍くさくてオタクな男の子になったら目も当てられないや。