3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住むアラフォーOL、波野なみ松の、仕事と趣味と母の介護を両立させる日々の記録。

妊娠がわかったその日は人間椅子のライブだった。

妊娠検査薬で陽性反応が出た夜の話。

そんなわけで明日産婦人科を受診してきます、と私が彼氏にLINEでメッセージを送ると、すぐに電話がかかってきた。

 

「会社早く終わらせて帰るから、明日の夜、会える?」

「どうして? 木曜日でもないのに?」

 

10年付き合ってきた私たちのルールは、いつの間にか月曜日と木曜日がデートの日と暗黙の了解ができていた。

 

「どうしてって…、なみ松は妊娠してるかもしれへんのでしょ?」

「そうだけど、まだ確定ってわけじゃないし木曜日でいいよ~。だって、私…」

「何?」

「明日の夜はチキンジョージ人間椅子のライブだもの」

「え~ッ!? 行くの?」

「そりゃ行くでしょ。チケット取ってるんだし」

「身体は大丈夫なん?」

「そんな今さら。昨日まで普通に暮らしてたんだから」

 

そんなわけで、11月8日の水曜日は、午前中に産婦人科に行って妊娠が発覚し、区役所に母子手帳をもらいにいき、午後は普通に会社に出て、夜は人間椅子のライブに行ったのだった。

 

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今回はニューアルバム『異次元からの咆哮』のツアー。

けれど私としては、ギタリストの和嶋慎治の自伝『屈折くん』を先日読み終えたばかりなので、アルバム以上に『屈折くん』の思い入れが強いライブとなった。

 

胎教に人間椅子

 

「昨日までと変わらないよ」

と言いつつ、お腹に別の生命がいるかと思うと何かと自分の身体に気を配っている自分がいた。

オールスタンディングのライブなので、お腹を守るように混雑を避けて、あまり飛び跳ねないようにする。

何もなければ、前のほうへ行って握手でもしてもらおうと腕を伸ばすのだけれど自粛してしまう。

…当然か。

 

人間椅子はヘヴィロック、プログレッシブロックに日本土着の化け物や地獄といったおどろおどろしい世界観を綴った歌詞が魅力のロックバンドだ。

そういえば、胎教でハードロックを聴いていた赤ちゃんは暴れん坊になるという俗説を聞いたことがある。

情緒不安定になるとかね。

 

けれど、いつも私は大音量の人間椅子の演奏に包まれていると、暴力的な気持ちになるどころかアルファ波が出てフワフワと心地よい気持ちになる。

母体がそうなのだから、胎児にだって悪い影響があるとは思えない。

 

そういえば今回のアルバムに入っている曲で『悪魔祈祷書』という曲があるけれども、夢野久作の同名小説からインスパイアされたものに違いない。

夢野久作からの連想でふと、『ドグラマグラ』の冒頭、

 

胎児よ

胎児よ

なぜ踊る

母親の心がわかっておそろしいのか

 

というフレーズを思い出した。

こんな母親のお腹に宿る赤ちゃんだもの。

きっとこの子は悪魔的に強い子になるぞ、と確信する。 

 

『屈折くん』の影響

 『屈折くん』はほぼ一気読みしたくらい面白く読んだ。

人間椅子のファンでなくても、一人の男のサクセスストーリーとして面白く読める本なんじゃないかと思う。

紆余曲折を経たワジーが苦労の末、「せめて、美しく生きよう」と決意した瞬間に心に光が差してくるシーンなどは、とても哲学的で感動する。

 

屈折くん

屈折くん


私がワジーに共感するところは、試練や苦労に対する考え方だった。

イカ天で人気が出てきた頃にラジオ番組で一緒になった漫画家の大友克洋に、

「なんだお前、これからデビューするんだって? 全然苦労してないだろ」

と言われる。

そしてワジーは自分でも「苦労が足りない」と思う。

 

苦労って必要なものなの?

 

と客観的には思うけれど、私自身も子供の頃からずっと、

「一人っ子で甘やかされて、何の苦労もなくぬくぬく育ってきたくせに」

と周囲から言われ続けてきたトラウマがある。

 

それのどこがどのように悪なのかわからない。

けれど、人は「苦労をしていない」と言ってバカにする。

人間が一段低く見られる。

 

人からそういわれると、

「何の苦労をしていない」

というのが後ろめたい。

いまだにそうだ。

 

特にこれまでは、

「子育ての苦労をしていない」

というのが心のどこかで後ろめたかった。

「苦労してなくてすみません」

とどこかで肩身が狭かった。

 

とはいえ、両親の介護に加えて、このうえ子供まで、と思うと不可能に近い。

そんなことできるんだろうか。

けれど、この試練を引き受けることができれば「後ろめたさ」を返済できるだろうという気もする。

 

私にも、

「苦労? したした!」

と堂々と言える日が来るだろうか。

 

ワジーは子供の頃のエピソードとして、姉と一緒に遊んだトランプ占いの話を紹介している。

ハート(愛情)、ダイヤ(財産)、スペード(試練)、クラブ(才能)を自分の人生にとって重要な順番を決めて並べるというのだが、ワジーはいつも「試練」を一番上にしていたそうだ。

 

苦労してないのが後ろめたいとか言いながらも、私は昔も今も「試練」を最後にしちゃうな。

 

そんな私の「試練」が、これから来ようとしている。

どれほどのものなのか、想像もつかないけれど。

母子手帳をもらいにいった。

「全くの想定外だったなんてウソで、実は妊娠に気が付いていたんじゃないの?」
とのちに友達に言われるくらい、驚くほど私は平然としていた。

産婦人科を出たあとは一旦部屋に戻ってマイナンバー通知を持って、区役所へ出掛けた。
なんとか午後には出勤できる。

たんたんと、やるべきことをやる。
それだけ。

区役所の窓口へ行くと、私と同年代くらいの女性が応対してくれた。
区役所なんか来るのは何年ぶりだろう。

役所というと、黒澤明監督の映画『生きる』のように、役人たちがお役所仕事を退屈にこなしている、という固定観念があるけれど、応対してくれた窓口の女性はとてもフレンドリーだった。

記入例に沿って書類を埋めると、記載内容ごとに彼女から質問を受けた。

主に、彼女が心配してくれたのは、産後に頼る人がいるのか、ということだった。
なんてったって、冒頭の設問が「未婚」である。
誰だって、あなた大丈夫ですか、と思うだろう。

「彼氏はバツイチで、現在お母さんと成人した娘さんと暮らしてるんですが、お母さんとは何度かお会いしてよくしていただいてますし、いざとなったら頼りになる存在だと思ってます」
と言うと、
「それは心強いですね〜! 娘さんももう成人されてるなら、赤ちゃんをかわいがってくれるでしょうしね〜」
とにこやかに言う。

彼氏の家族をアテにしてるなんて、彼氏が聞いたらひっくり返るだろう。
まだ何も相談していないのに。
それどころか、彼氏にはまだ「妊娠検査薬で陽性が出た」としか伝えていないのに。

「もし籍を入れなかったら子供の戸籍はどうなるんですか?」
「お母さんの籍に入りますよ」
「もし、子供を彼氏の籍に入れるなら、婚姻届を出さないといけないってことですね。早めのほうがいいんですか?」
「出生届と同時に出される方もいらっしゃいますけど、順番は婚姻届を先に出しておいたほうが手続きはスムーズですよ」
「なるほど〜」

こんなワケアリ話は日常茶飯事なんだろう。
彼女はごく普通に手続きの説明をしてくれる。
いまどき未婚の妊婦なんて、特殊なことでも何でもないんだな。

「何かご不安なことはありますか?」
「いやぁ、実は私、週末は実家に帰って母の介護をしてまして、それをどうすればいいかな、ってことですね。出産前後は実家にいるつもりなんですけど、母と赤ちゃんと二人分のおむつがえしなきゃいけないんですよ〜」

まさか新生児を今住んでいるワンルームの部屋で育てるわけにはいかない。
そうなると、おのずと実家で育てることになる。

「お父様は? お元気なんですか?」
「元気といえば元気ですけど、何もできないんで。それより、めっちゃタバコ吸う人なんで、それが心配です」
「きっと、お孫さんができると変わってくれますよぅ」
「そうですかねぇ?」

そんな世間話をしつつ、神戸市ではこういう子育て支援制度がありますよ、という説明をざっとしてもらった。

かんじんの、診察費用が補助されるチケット、正確には「妊婦健康診査受診券」の冊子ももらった。
これをもらわなきゃ、明日血液検査に行けない。
ていうか、今日ここに来た意味がない。

渡されるときに、
「全部で12万円分の補助になります」
と言われたときは耳を疑った。

うわ〜、絶対なくせない!!

バーコード管理されているらしく、チケットにバーコードシールを貼っていく仕組みだ。
「おそらく、これ一冊全部使っても足りないくらいだと思います。最初に、全部のチケットにお名前とご住所を全部書いておかれたらいいと思いますよ」
「名前とか、ゴム印でもかまいませんかねぇ?」
「ん〜、おそらく自筆じゃないと病院が受け付けてくれないと思います。同じこと何回も書くの、面倒ですけどね〜」

もちろん、母子手帳ももらった。
「お名前などの欄はすぐ記入しておいてくださいね。記録もどんどん書きこんでいってください。でも、今後入籍されてお名前が変わるようでしたら、鉛筆書きされたらいいですよ」

今年デザインがリニューアルされたファミリアの母子手帳だ。
そういやニュースで見たっけ。
全く関係ない出来事だと思っていたのに、自分がもらうことになろうとは。

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ちなみに、この母子手帳、つい昨日のニュースでまた新らしくなったそうな。
追補版、私はいらないけどね。ファミリアに思い入れないし、子供へのメッセージとか面倒くさいし。

慌ててランチを食べて職場に着いたら、13時10分前だった。
「体調が悪くて病院に行ってから出社します」
と言って休んだ手前、
「大丈夫なんか?」
と部長や課長から尋ねられる。

「あ、大丈夫です、すみませんでした」
としか言えない私が怪しい。
普段の行動から、寝坊と思われちゃうんじゃないか?

できるなら1日休みたかったけれど、午後から自分が司会する会議があるから休めなかった。
資料だってまだこれからコピーだ。

あとから思えば休まなくて正解だった。
その会議のせいで慌ただしくて、妊娠についてウダウダ考える暇がなかったから。

できてしまったものは仕方ない。
あとはたんたんと、なすべきことをするだけ。

産婦人科を受診した。

そこは神戸ではそこそこ有名な産婦人科で、友達がそこで赤ちゃんを産んでいた。
彼女が切迫早産しかけて入院していたときにお見舞いに行ったのだ。

産婦人科病院というところにそのとき初めて入ったのだけど、普通の病院とは全く異なる雰囲気に驚いた。
病院というのはたいてい死の匂いや老いの悲しみに満ちているのに、その産婦人科病院は生の喜びに包まれている気がした。

初めての受診でよくわからないので、受付の人に聞きながらタッチパネルで初診の申込みを済ませ、問診票を書き込んだ。

受診理由は「妊娠かどうか」というところに○をつける。
配偶者の氏名を書く欄が書き込めないので空欄にしておくと、書類をチェックする職員さんから、
「未婚でも、おわかりになって書けるようならお書きください」
と言われる。
おわかりなので、とりあえず欄は埋めた。

受診前に血圧と体重を測る。
例年の健康診断では毎年上が100を切る低血圧なのに、130もあって驚く。
体重も過去最高に増えている。

診察室に呼ばれて、先生の問診。
「最終月経が書かれてませんね」
と聞かれたので、
「実は、最終月経がはっきりしないのです」
という話をする。

7月下旬にあったのがまともな生理の最後。
でも、9月に少量の生理のようなものが短期間あったので、おかしいなと思いつつ、これまではそれが生理だと思い込んでいた。

妊娠を疑い初めてからネットで検索すると、着床出血というのもがあるらしくて、もしかしてこれだったのかも…、と思わなくもない。

「とにかく見てみましょう」
ということで、診察台へ。

先生が私の下腹部を触って、
「ずいぶん子宮が大きくなってますねぇ」
と言うので、
「便秘で詰まってるものだと思ってたんですけど…」
と返すと笑われた。

「エコーをとりますね」
あっという間にモニターに画像が映し出される。
「もうだいぶ大きいですよ。これが頭です。ここ、心臓が動いてるのがわかりますか?」

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えーっ?!
えええええーーーっ?!?!

あまりにビックリして、大笑いしてしまった。
笑うしかなかった。
大便だと思っていたものが、人間だったんだもの!!

ロックバンド「特撮」の『ケテルビー』という曲の、
「猫かと思ってよく見りゃパン しかも1斤、1斤」
という歌詞を思い出す。


診察室に戻ってイスに座ると、先生がまず、
「おめでとうございます」
と言うので、条件反射的に、
「ありがとうございます」
と答えるしかなかった。

「頭の大きさから測定すると、予定日は5月1日ですね。こちらエコー画像です。これでは5月3日になってますけど、誤差範囲でしょう。」

何を言われても絶句してしまう。

「9月にあった出血はなんだったかはわかりませんが、最終月経は7月ので間違いないですね」
「あのぅ、高齢なんですけど、危険性はないんですか?」
「自然妊娠ですよね? なら、ここまで大きくなってるわけですし、問題ないでしょう。ただ、ダウン症などの障害が不安であれば、出生前診断を受けることはできますよ」
出生前診断を受けて障害があることがわかったら、何かできることはあるんですか?」
「赤ちゃんをあきらめる方もおられますし、生まれる前から治療や対応方法を準備される方もおられます」
「産むか産まないか、二者択一しかないんですね…」
「デリケートな問題ですので、ご家族とよく話し合って決められたらいいかと思いますよ」

初老にさしかかっている男性の先生だったけれど、とても優しく穏やかに話してくれたので、まるで自分がまともなプレママのような気がした。

「2、3日中に血液検査に来てください」
と先生は私に言いながら、
「血液検査はチケット使えるよね」
と、これは私に言ったのか、看護師に言ったのか、独り言なのかわからない小さい声でつぶやいた。

だいたい私には「チケット」の意味がわからない。

診察室を出ると、看護師さんから母子手帳の申請について説明を受けた。

「なるべく早く区役所で母子手帳をもらってくださいね。母子手帳と一緒に、診察費用を補助してくれるチケットがもらえますから。血液検査のときにそれを使えばいいですよ」

なるほど、そういうものがあるのか。


まるでRPGのごとく、あそこへ行ってあれをしろ、ここへ行ってあれをもらえ、とクエストが出てくる。

母子手帳の申請には、面倒くさいことにマイナンバーの証明が必要らしく、一旦部屋に取りに戻ってからの出発だ。
せっかく午前年休を取ってるのだから、なるべく多くのクエストをこなしたい。

次は区役所だ。《続く》

ドラマでは「誰か気づくだろ」とか言ってたじゃないか。

夏の終わりごろからずっと体調不良が続いていた。

食べないと胃酸が出て気持ち悪くなる、かといって食べると胸焼けする、膨満感でお腹が張る、便秘が続く、便秘薬を使うと下痢をする、サプリメントを飲むとのどにつっかえて食道が荒れる、などなど。

 

それで漢方薬局に行ってみたりしたのだけれど、症状は良くなったり別のところへ移ったり。

すっきり好調には至らない。

 

そんな中、先週土曜日にスカパー!の無料放送で「夏の魔物2016」を録画した。

去年のロックフェスのダイジェストで、それにはオーケンROLLYとユニットで出演していたのである。

母を寝かせたあと、歯を磨きながら一人でゆっくりと録画を見ていた。

natsunomamono.com

 

歯磨きをしていると、ちょっとだけ吐き気がしたけれど、気にとめなかった。

出番は短い。

終わったらすぐ吐き出そう。

 

最近ときどき、歯磨きをしながら吐き気がすることがある。

歯磨きで「オエー」ってやってるなんてオッサンかよ。

 

そう思いながら、歯ブラシをくわえつつダメジャンプをしていると、こみ上げてくるものに耐えられなくなって、慌てて洗面所に駆け込んだ。

 

オーケンが歌ってるところを私が一時停止するなんて、ふつうならあり得ない。

 

口をゆすぎながら、ふと不安が横切った。

 

最近毎週楽しみに見ているクドカンのドラマ『監獄のお姫様』の小泉今日子が爆笑ヨーグルト姫に言ったセリフが脳裏によぎった。

「もしかして、あなた…」

www.tbs.co.jp

 

いやいやいやいやいやいや、そんなバカな。

 

40代になると、女性の妊娠確率は格段に落ちる。

自然妊娠ともなると、ほんの数パーセントだ。

 

www.funinnonayami.com

 

だいたい、うちの母親はずっと子供が欲しくて欲しくて、不妊治療を続けて9年目にしてようやく私を授かった。

健康で若い女性ならいざ知らず、42歳の私がそんな簡単に妊娠なんてするわけがないじゃないか。 

 

漢方薬局の見立て

翌日、漢方薬局に行き、胃のむかつきは治まったけれど便秘は相変わらずだというと、

「胆汁の働きは治まったみたいですが、また症状が変わって、これはね、首の歪みからきていますね」

と言われた。

確かに首も歪んでるのは確かで、ずっと左へ回らないのだけれど。

 

男性の薬剤師さんなので、あまり詳しくは言いたくなかったけれど、

「生理不順で、長い間来ないんですけど…」

と不安をもらすと、

「首のあたりで流れがストップされて、身体のいろんな不調につながってるんでしょうね。そこの滞っているところがうまく流れだすと、改善されるんじゃないでしょうかね」

という。

確かに、首の歪みが骨盤の歪みにつながり、それで内臓も悪くなる、ということはこれまでいろんな整体の先生たちからも指摘されてきたことだ。

そういうこともあるのかもしれない。 

 

ジムのトレーナーさんの見立て

 

ジムに行くと、トレーニングを始める前にまず、

「体調はいかがですか?」

とトレーナーさんが尋ねてくれる。

 

普段なら、今日は腰痛がありますとか、肩こりがひどいですとか、胃が痛くって、などと言って、トレーニングを加減してもらうのだけど、この日は、

「この前からずっと便秘でお腹が張って調子悪い、って言ってたじゃないですか、私。実は…、ずいぶん生理が来てなくて…、もしかして…、とか、思ったりして…。いやまさか。便がたまってるんだと思うんですけどねぇ」

と照れ笑いする私に、トレーナーさんは笑いもせずに、

「いや、あると思いますよ」

とはっきりと言った。

 

「胃腸の調子が悪いのはストレスかな、とか言われてましたけど、聞くところそれほどストレスの多い職場でもなさそうだし、劇的に何かがあったわけでもないし、体調崩すほどのストレスとは思えないです。一時的なものにしては不調が長すぎるし。ありえると思いますよ。病院行ってちゃんと検査受けたほうがいいですよ」

 

これまで1年半以上トレーニングに付き合ってもらったトレーナーさんで、しかも同じ女性としてそう言われると、なんだかどんどんそんな気がしてきた。

「いやぁ、でも歳が歳だし、ホルモンバランスが崩れてるだけですよ」

茶化して言ってみたものの、だんだん笑えなくなってくる。

 

正直、本当にお腹が苦しい。

太ったわけじゃないのに、ウエスト周りばかりがきつくなる。

 

「じゃあドラッグストアで検査薬を買って、帰ったらすぐ試してみます」

「すぐしてくださいよ!今すぐでもええくらいやわ!」

そう言われて、妊娠検査薬を使ってみたのだった。

 

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そんなバカな。

うそだ、うそだぁぁぁぁぁ!! 

 

親しい友人からのメッセージ

 

これは何かの間違いだと一人で頭を抱えていたとき、ちょうど友達からLINEメッセージが届いたので、

「実は今…」

とメッセージを返した。

 

「誰も『あなたまさか…』って言ってくれなかったし!」

と打つと、

「そりゃ、分別あるオトナの女性だから、『うっかり妊娠したんじゃない?』なんて誰も言えないんじゃね?」

と返ってきた。

 

「それにしても信じられない。今でもまだ便秘じゃないかと思ってるんだけど」

という私に、

 

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と彼女はわざわざ画像で返してくれた。

 

「わかった、とりあえず、明日病院行って確認してくる! そしたら信じる…」

 

翌日、会社を休んで産婦人科を受診した。≪つづく≫

窒息未遂から吸引器を考えてみたものの…

先々週の土曜日の朝のこと。

秋になって母の調子も良くなり、調子よく朝ご飯を食べていた。

 

最近の母の食事は主にミキサー食で、とろりと滑らかなものばかりを食べている。

噛む力はあるけれど、飲み込む力が弱っているので、油断するとすぐむせてしまうからだ。

最近の朝ご飯は、カップケーキやロールケーキ、マドレーヌや蒸しパンなどを牛乳に浸したものを主食にしている。

 

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この日、ロールケーキがスムーズに食べられたので、スイートポテトを追加で出した。

普通のサツマイモと違って、スイートポテトなら一度つぶして裏ごししているから、大丈夫だろうと踏んだのだ。

少し噛まないといけないが、小さいかけらにしてお箸で奥歯の噛みやすい位置に置けば、なんとか食べられる。

 

「ちゃんとモグモグするんやで」

と声をかけながら食べさせていたけれど、お口に入れたらあっという間になくなる。

入れる、なくなる。入れる、なくなる。

「大丈夫? ちゃんと噛みよう?」

と訝しく思っていると、母が突然苦しみ出した。

 

「ぐ~ぅ~~」

と歯を食いしばって目をむくので、

「どうしたん!? どうしたん!?」

と慌ててしまう。

背中をバンバン叩いて吐かせようとするけれど一向に治まらず、ずっと苦しみ続けている。

 

もしかしてスイートポテトがのどに詰まって窒息してしまうんじゃ…。

 

こういう場合、「口の中に指を突っ込んで吐かせる」というのを何かで見た気がするけど、母は歯を閉じてしまって、開けてといっても言うことは聞いてくれない。

開けてくれたとしても、指を噛まれてしまうだろう。

 

「どうしよう、お父さん! お母さんが死んでしまうかもしれん!」

珍しく早起きしていた父を、大きな声で呼んだ。

「どないしたんや」

のそのそと父が顔をのぞかせる。

「のどに詰まってしまったかもしれへん。どうしよう、救急車呼んだほうがええんやろか」

 

そう言っている間もずっと、私は母の背中を叩きながら吐かせようとするけれど、母は「う゛~、う゛~」と唸っているばかりである。

 

「ほんで、どないするんや」

「どうしよう、どうしよう」

「どないするんや」

 

父など呼んでもどうしようもなかった、と思いつつ、

「冷静に、冷静に」

と新しいクドカンのドラマの小泉今日子みたいにつぶやいて、まずは吐かせることに集中することにした。

 

父には、

「お母さんの背中を軽く叩き続けて。口から出るものはティッシュで拭きとって」

とお願いし、私は受け皿と口腔スポンジを取ってきた。

 

幸いなことに、母の右側の歯は上下で同じ個所が抜けている。

そこの隙間から、口腔スポンジを突っ込む。

スポンジでごっそり取れたのは、唾のような痰のような鼻水のような、とにかくスライム状のネバネバだった。

 

それが取れたことで少しマシになったようだけれど、それでもまだ母は苦しそうにしている。

体勢を変えたほうがよいと思い、父にも協力してもらいながら移動させることにした。

まずはソファから車イスに移し、ベッドまで運び、ベッドに横向きに寝かせた。

横向きの姿勢で、なおかつ口腔スポンジで喉にからみついたものを取る。

やはりネバネバである。

 

ある程度ネバネバが取れると、母の苦しみは治まった。

 

医者ではないのでわからないけれど、スイートポテトが詰まったのではなく、原因はこのネバネバがのどにからみついたのかと思われた。

 

一件落着。

ではあるけれど、実は、ネバネバがのどのからみついたのは初めてではない。

ときどき、のどがゴロゴロするときがあって、そういうときはたいていネバネバがのどにからみついているようだ。

 

ただ、「死んでしまうかも!?」とパニックになるほど苦しんだのは今回が初めてだった。

 

ケアマネさんに尋ねると、ふだん施設でも同様に口腔スポンジでネバネバを取り除いてくれているらしい。

あんまりひどいときは看護師さんが吸引をしたことがある、ということだった。

 

 

吸引器を考えてみようかな

 

 

訪問リハビリの療法士さんにその話をしたら、

「だったら、吸引器を使うことを考えてもいいかもしれませんね」

と言う。

 

吸引器がどういうものかさっぱりわからないまま、とりあえず内科の受診のときに先生に尋ねてみた。

 

「吸引? え?え?え?」

内科の先生は全然要領を得ない。

横に立っていた看護師さんがどこかに電話をして、

「まずはケアマネさんに相談して、吸引器の申請書を出してもらってください」

と言われた。

 

それでケアマネさんに尋ねてみたけれど、ケアマネさんもあまり詳しくないらしく、町に尋ねてみるという。

 

それでまた療法士さんに聞いてみたけれど、吸引器の導入に至る過程はよくわからないということだった。

 

おやおや、誰も詳しい人がいない。

 

そのあと結局、それぞれの回答を持ち寄ってきたのが前の月曜日のこと。

それでわかったのが以下のこと。

 

  • 吸引器自体は5万円程度するもので、町に申請することで補助があること。(世帯の収入によって異なるけれど、うちはおそらく1割負担)
  • 申請するのは主治医の診断書が必要だけれど、内科ではなくて大脳皮質基底核変性症を診てもらっている神経内科からの指示がよいのではないかということ。
  • 主治医から、訪問看護で吸引器の指導をしてもらうように指示を出してもらうこと。
  • というのも、吸引器を使うための訓練を受けないといけなくて、上手に使えるようになるまで4日くらいの指導は必要だという。私の事情を考慮して、毎週土曜日に訪問看護で吸引器の使い方指導をしてもらうのがベストだということ。

 

そんなわけで、ケアマネさんは申請書類一式を用意してくれたけれど、とりあえず来月の神経内科の受診日に先生と相談することになった。

 

にしても、吸引器というのがそんな大変なものだとは思わなかった。

 

何でもない日は母はいたってスムーズに飲み込んでいる。

先週も今週も、全然のどがゴロゴロいうことがない。

そうなると急いで急がないところがあるし、吸引器導入はちょっと腰がひけている。

クラッシュ?!電動リフト

送迎の介護スタッフさんから電話があったのは、先月の半ばだったか。

「スロープを置く台の位置に、電動リフトをぶつけてしまったんです」

リフトは誰も乗っていなかったのでケガ人はなし。
側面が凹んでいる状態だが、動作に問題はないと言う。

「誰もケガがなかったのが不幸中の幸いでしたねぇ」

とは言ったものの、私は正直、「とうとうやっちゃたか」と思った。
台とリフトの位置関係について、介護スタッフさんたちの置き方が危なっかしいことは気がついていたからだ。

リフトと台とスロープの位置関係については、下記のブログのとおり。

台はビニールテープで印をつけているところに置いてください、というのが私の指示だけれど、何人かのスタッフさんが入れ替わりでやってくる中、なかなか覚えてもらえない&引き継ぎが上手くいかない。

私がいるときは、
「台は線より向こうに置いてくださいね」
と言えるのだけど、金曜日の夜は私の帰宅が間に合わないので、スタッフさん任せになってしまう。

リフトの見た目が凹んでいるだけなら別にかまわないと思い、放っていたけれど、数日後、ケアマネさんから連絡があった。

「上の者に報告しましたら、安全上のことですし、設置業者さんにお願いして点検してもらえということです。そのうえで修理が必要ならこちらで検討させていただきます」

そうしてくれるなら、そのほうが安心だし、妥当な対応かと思う。

点検は私がいない平日に来るということだったので、父に託した。
父はぶつけた介護スタッフさん本人とケアマネさんとから何度も謝罪を受けたらしくて、その話をするとウンザリ気味だった。

「ちょっと凹んだくらいで、何をそんなにごちゃごちゃ言う必要があるんや。どないもないやろ! かまへんやないか! ほっといてくれ!」

こちらは被害者側なのになぜキレる?!
修理してくれるって言ってるんだから、ありがたく思っておけばいいのに、わけがわからない。

先週の土曜日、再度修理について福祉用具の業者さんに確認したが、まだ業者さんからは見積もりが上がってこないらしかった。
点検に来てからもうずいぶん経つ。
安全性に問題がないなら修理してもしなくてもよいのだが、点検結果がどうなのか、その返事もない。
あんまり仕事が遅いのは気が悪い。
クマリフトめ、なめんなよ。

再発防止のためには

いくら、介護スタッフさんに注意したところで、このままだとまた台を置く位置を間違えてしまうだろう。

再発を防止するにはどうしたらいい?
どこかに貼り紙でもする?

何かいい解決策はないものかと考えていたら、ぶつけた介護スタッフさんと話す機会があった。

「ビニールテープではわかりにくいですかねぇ?」
と尋ねると、
「金曜日の夜は18時ごろのお送りなんですけど、もうだいぶ暗くなってるんです。懐中電灯で照らしながら確認するんですけど、印が見えにくくて…」

なるほど、そういうことだったのか。
黒いビニールテープだから、余計に見えなかったんだな。

さっそく、ダイソーで自転車などに貼る反射テープと蓄光テープを買ってきて、貼ってみた。

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これなら、ビニールテープより改善された気がする。

介護スタッフさん任せにしていると、言ってもらわないとわからないことがけっこうある。
何事も、話をしないとわからないものだ。

私は遠慮せずにどんどん意見を言ってほしいけれど、言われてもどうしようもないことだったら、ムッとなることもあるかもしれない。
そのあたりの兼ね合いは、なかなか難しい。

新しいエアマット

今日の訪問リハビリはにぎやかだった。
いつもの療法士さんに、ケアマネさんと福祉用具業者さんが加わって、わいわい言いながらの朝となった。
母も目をパチクリさせながら、その賑やかさをうれしそうにしていた。

用件は3つ。
まず1番目は、エアマットを新しいものに替えてもらうこと。
2番目は、電動リフトが凹んだこと。
3番目は、痰の吸引器を検討していること。

最新のエアマット

療法士さんとは夏くらいから、
「どうもエアマットが沈みすぎるみたい…」
という話をしていた。

母の体重は40キロそこそこだが、45キロ設定にしていてもずいぶん身体が沈む。
移乗するときや着替えのときに座位をとるのも、お尻が沈みすぎて不安定だ。

リハビリ中は「リハビリモード」を使い、リハビリしやすいよう硬くなるようにしているのだけど、それも効きが悪い気がする。

「同じ体重でも、身体が小さいから余計に沈むのかもしれませんね」
と言われて、50キロ設定にしてみたけれど、それでもまだなお身体が沈む。

あんまりマットが軟らかすぎると腰が痛くなる。
今はもう母は言葉をしゃべれないから、痛みを訴えることはできないけれど、身体を起こしたときはいつも「う〜」と唸り声をあげるので、おそらく腰が痛むのだろう。

「最近のエアマットは性能もよくなってますから、保険の限度額の範囲内で新しいのに替えてもらったらどうです?」

療法士さんにそう言われてケアマネさんに相談したら、あっという間に新しいものに交換してもらうことになった。

そして今日持ってきてもらった新しいエアマットがこれ。

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mixiで書いていた日記を調べると、床擦れができてエアマットのレンタルを開始したのが2015年5月だった。
古いエアマットにお世話になった期間はたった2年半だけれど、比べてみると隔世の感がある。

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福祉用具の業者さんから、療法士さんケアマネさん私の3人で説明を聞いた。
見た目もめっちゃスマートになったが、機能もずいぶん進化している。

電源が切れても、中の空気は2週間は抜けないようになったこと。(つまり停電してもしばらく大丈夫ってこと。)

機械で操作したあとの反応速度が速くなったこと。古い機種はボタンを押してから中の空気が変わるまでに時間がかかったけど、新しいのは短時間。
特にリハビリモードなんか、ボタンを押してもしばらくしないと硬くならなかったけれど、新しいのなら早く対応してくれる。

そして何より、音が静かになった。
これは隣に寝ている私が一番うれしい。
古い冷蔵庫みたいなブーンという機械音がずっと鳴っている横で寝ていたから、ちょっとでも音が静かになってくれるとすごく助かる。


福祉用具も日進月歩で、使う側としては本当にありがたい。

ケアマネさんからも福祉用具業者さんからも、
「前のより点数があがるので、月に100円多くかかりますが…」
と言われたけれど、たった100円で寝心地が良くなるなら安いものだ。

母は今日からショートステイなので、新しいエアマットで寝るのは金曜日から。
金曜日の夜がちょっと楽しみ。

《そして、電動リフトの話に続く。》