3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

神戸の人は神戸牛を食べない。

4月9日日曜日は、オーケンの「いつか春の日のどっかの町へ」ツアーの神戸Bo Tambourine Cafe でのライブだった。
この会場でのライブは昨年10月に続いて2回目。
ここは私の職場の近所にあるカフェで、自分の日常のテリトリーにオーケンが来てくれることが、心の底からうれしい。
(この日の概要については、こちらの『オーケンとおでんのための元町ガイド』をご参照いただけるとありがたい。オーケンとおでんのための元町ガイド)

登場して1曲目は、筋肉少女帯の『死んでゆく牛はモー』で始まった。
筋少の中でもなかなかに不条理な曲。
二番の歌詞は、「死んでゆくサルはモキー、死んでゆくトラはガオー」というのだが、この日オーケンさんは「モキー」と「ガオー」をテレコに歌ってしまった。
本人もすぐ気付いて、「逆ですね」と可愛らしくつぶやいたのだけど、それもこれも神戸への怒りのせいだという。

裏切りの街、神戸!!

そう言われるほどに、オーケンさんを怒らせた神戸とは!?
それが、こんな話なのである。

せっかく神戸に来たのだから神戸牛でも食べようと思ったオーケンさん。
しかし、ステーキが予想以上に高い、と思っていたところへ、「ランチ1,500円」というお店を発見。
お店に入り、「1,500円のランチを」と言うと、「売り切れました」と言われてしまったそうだ。
席についてジャケットも脱ぎかけているし、今さら店を出るわけにもいかず、次に安いのは、とメニューを見ると2番目のランチは2,500円(しかも税別!!)。
千円も高い!!
そう憤慨しつつも、渋々オーダーされたそうな。

オーケンさん、よっぽど納得がいかなかったようで、この日何度も「神戸牛ランチぼったくり事件」をネタにされていた。

正直いえば、2,500円のランチは2,500円なりの品だろうから、いわゆる「ぼったくり」とは言えないと思うし、1,500円の次が2,500円というのも、そうおかしな値段設定ではないと思う。

ただ、1,500円と出しておいて看板に偽りありというのはよろしくない。

神戸の人間としては、オーケン様がせっかく神戸に来てくださったのに、その店のせいで神戸の印象が悪くなったなら許せない。
こちとら、神戸を気に入ってもらいたいために躍起になっているのに(そしてまた来てもらいたいのに)、その店は何を台無しにしてくれとんじゃあぁっっ!?!?

いったい、どこの店だろう?
と、街を歩くと、ぞろぞろと「神戸牛ランチ1,500円~」の看板が見つかるではないか。

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しかも、そのほとんどが、吉祥吉という店の系列店であることが判明した。
www.koubegyuu.com

ここ10年ほどで雨後の筍のごとく店舗数を増やしている観光客相手の店だ。
間違いなく、オーケンさんは吉祥吉系列のいずれかの店に入ったに違いない。

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そこで、ふと疑問がわいた。
コンビニの数より多いんじゃないかという吉祥吉の店舗数なのに、私は吉祥吉を利用したことがない。
周囲で、吉祥吉に行ったという話も聞かない。

いやいや、それよりもまず、神戸牛を食べるということが、ほとんどない。

神戸の人は神戸牛を食べるのか?と。

周囲の何人かにヒアリングしたところ、吉祥吉に行ったことがある人はゼロ。
そしてやはり、ずっと神戸で生まれ育った人でも、まともに神戸牛を食べたことない人までいた。

そこで見えてきたのは、

☆地元の人間は、観光客相手の店には入らない。

という当たり前の事実。
東京の人は東京タワーに行かない、京都の人は京都タワーに行かない、神戸の人はポートタワーに行かない、というのと同じ。

そして、神戸牛を食べたことがある、という人がどんなときに食べたかというと、特別な記念日、もしくは接待、というかんじだった。
それなりの値段がするものだから、やっぱり信頼のおけるとこへ、特別な日だけ行くものなのだ。

高価なものだから、覚悟を決めて食べるものなのである。
「ちょっと食べてみたいな」
といって気軽に庶民が手を出せるものじゃないのだ。

だからこそだと思うけど、行ったことがあるお店には、ビフテキのカワムラ、モーリヤ、菊水、大井肉店、和黒、といった老舗の有名店があがった。

www.bifteck.co.jp
www.mouriya.co.jp
kobe-kikusui.com
www.oi-nikuten.co.jp
神戸牛ステーキ あぶり肉工房 和黒

そもそも高いものなんだから、信頼のおけるところで、という心理なんだろう。

最後に、私が何か情報を得たいときに相談する、なじみの中華料理屋店主に話を聞いてみたら、第一声がこれだった。

「神戸牛を1,500円で食べようっていうのが間違うとるわ」

「でもでも、ちゃんと看板に神戸牛ランチ1,500円って書いてあるんだよ?」
「だいたい、ほんまもんの神戸牛やったら仕入れ値で100グラム2,000円はするのに、1,500円で出せるわけないやんか。どこの部分の肉かいうのもあるんか知らんけど、そんなん神戸ビーフちゃうわ、『神戸で食べる牛』や」

神戸で食べる牛、という言葉を聞いて、神戸の人が神戸牛を食べない理由がわかった気がした。
だって、アメリカンビーフを家で食べたって「神戸で食べる牛」になるんだもん。

そこには、
「何をもって神戸牛というのか」
という問題がある。

もちろん、きちんとしたブランドがあるけれど、「神戸牛」とは呼ばない。
神戸牛は通称だ。
登録商標は「神戸ビーフ」で、神戸ビーフ、または神戸肉と呼ぶのが正しい。
www.kobe-niku.jp

「神戸牛ってほんまは但馬牛のことやんか。ブランド化された神戸ビーフやなくても、但馬牛でええねん、十分美味しいねん」

ちなみに、そんな中華料理屋店主のおススメのお店を聞くと、三宮のホテル ザ・ビーの地下にあるプレジールだそうだ。
「でも、高いで」
と彼は言った。
神戸 プレジール|KOBE PLAISIR|JA全農兵庫の直営レストラン | JA全農兵庫の直営レストラン。極上の神戸ビーフと選りすぐりの兵庫県産食材をお楽しみ下さい。

ちなみに、私のおススメは、阪急神戸三宮の北の路地にあるnot'sというステーキハウス。
とってもリーズナブルだけどちゃんと美味しいので、ステーキが食べたいときはここを選んでいる。
www.steaknots.jp

でも、not'sは神戸牛じゃない。国産だと思うけど、どこの牛さんかは明示していない。
そんなこと結局どーでもいいんだ、美味しかったら。

どこの牛だとしても、死んでゆく牛はモー。