3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

1杯のカフェオレ

母の飲み物には、必ずトロミをつけている。
普通の液体だと、むせてしまうからだ。
自分の唾液を飲み込むときでさえ、ときどきむせていて、嫌になってしまう。

で、トロミをつけるのに、トロミ剤を使うのだけど、どこのメーカーのがいいか、ドラッグストアに置いてあるものを値段が安い順に買ってきて、使い比べをしている。
これまで使ったのは、「トロメイク」、「とろみアップ」、「とろみファイン」、そしてトップバリューのトロミ調整食品。
メーカーによって機能に差があるな、と、思っていたら、こんな比較サイトがあった。

なんと、私がまだ使ってない「つるりんこ」が1位じゃないか。次買うときは「つるりんこ」にしてみよう。
ちなみに、母の飲み物だけじゃなく、私は中華料理などのあんにもトロミ剤を使っている。
だって水溶き片栗粉を作るのが面倒なんだもん。

トロミ剤に機能差がある、というのは、飲み物に混ぜたときに変色したり、味が変わったりするだけじゃなく、ダマになったり、トロミがつくまでに時間がかかったり、という点だ。
特に、トロミがつくまでの時間というのは、介護する側にとって重要で、お茶なんかだと1分もかからずにすぐトロミがつくのに、ミルクティーだと何分も置いておかないとトロミがつかなかったりする。

昨夜遅く、母がいつまで経っても寝ないので、飲み物でも飲ませようと、インスタントのカフェオレを用意した。
最近よく飲ませている、和光堂の栄養補助食品のカフェオレである。

カフェオレはトロミがつくまでに時間がかかるし、トロミがつくと熱いので、飲める温度まで冷まさないといけない。
作ったあと、しばらくキッチンに置いていた。

もうそろそろ飲み頃にできたかな、と、しばらく経って戻ってみると、カフェオレが半分なくなっている。

お風呂からあがってきた父が、自分のコップで何かを飲んでいたが、私の顔を見て、
「これ何や、ドロドロやな」
と言った。
父は、せっかく作っていた母のカフェオレの半分を自分のコップに移し、勝手に飲んでいたのだった。
その平然とした態度に、怒りが爆発した。

「なんで勝手に飲むんや!!」

「そこにあったから」
「お母さんのやってわかってたでしょ!」
「面倒くさかったんや」
「だからって、人のを勝手に飲んでええんか!!」

たかがカフェオレ1杯で大人げないのはわかっているんだけど、怒鳴らずにはいられなかった。
もし、
「これ飲んでもええか?」
と父が尋ねてくれたなら、
「それはトロミをつけてるから、新しいのを入れてあげるよ」
と快く父の分を用意しただろう。

なのに、なぜ、父はその一言が言えないのか。

父との確執はほとんどが、
「なぜ尋ねないのか?」
という問題に尽きる。

重ねて、母の介護について私がいろいろ工夫をしていることを父が知らないのも腹立たしい。
母がもう普通の食事や普通の飲み物が飲めないということを、いくら言っても理解してくれない。
それでも母に、なんとか美味しく食べたり飲んだりしてほしくて、私が配慮していることも、父はまるでわかっていない。

そういう根っこが広がっている、「1杯のカフェオレ」なのだ。

しかし、父は死んでも理解できないままだ。
「また怒られた」
そう拗ねて、足を引きずりながら2階に上がっていった。

今さらわかってもらおうとは思っていない。
ただ、人の飲み物を勝手に飲むな。