嚥下チェックと『働きマン』
この週末は母が元気だった。
母が元気でいると、こちらも元気が出る。
何より、食べられるようになった。
自宅での食事を、ミキサーにかけて柔らかくしたものに変えたので、母も食べやすくなっただろう。
市販の介護食も、ぼちぼち導入。
最近は美味しいレトルト介護食も増えているので、今後研究していくつもり。
一時はスプーンで飲ませないといけなかった飲み物も、コップからストローで飲めるようになった。
声も出るようになったし、反応もよくなった。
こんなふうに回復したのも、施設で嚥下訓練をしたり、口腔ケアをしたり、配慮してもらっているおかげだと思う。
先週金曜日には施設で、訪問歯科の診察を受けさせてもらった。
私が付き添わなくても、施設で受診させてくれるので本当に助かる。
この日はただの診察ではなくて、鼻からカメラを通しての検索だった。
喉の奥の食べ物の流れをチェックしてもらったのだ。
これには、事前の承諾書が必要で、私がそれにサインした。
そういや鼻からカメラを通すのって、先日私が夏風邪をひいていたときに、耳鼻咽喉科でやってもらったのと同じやつだ。
診察の様子は、ケアマネさんがスマホで動画を撮ってくださり、LINEで送ってくれた。
動画の冒頭は、先生の説明から始まる。
模型を使った喉の構造と、誤嚥はどのようにして起きるのかを丁寧に解説してくれていた。
そして、鼻から牛乳、いや違った、鼻からカメラを入れる。
母の喉の奥を映し出す、テレビ画面。
「最後に食べたのは何時ですか? 食後だいぶ経つのに、ここ、食べ物がまだひっかかって残ってます。これが残ったまま眠ってしまったりしたら、間違って気管に入ってしまう恐れがあります」
そう言って先生は、カメラを鼻から抜き、口腔ケアのスポンジに持ち替えた。
スポンジを喉に突っ込まれ、ゴホンゴホン、と咳をする母。
「いい咳がでましたね。ほら、取れた」
カメラに写っていた大きな食べかすが、スポンジにくっついて出てきた。
「これが喉に入ったままというのは、しんどいと思いますよ」
そのあと、食紅で色を着けたゼリーを母に飲み込ませる。
ゼリーが喉に入っていく様子を、テレビ画面が映し出す。
「誤嚥なく、ちゃんと飲めてますね」
結果としては、誤嚥はしていないけど、飲み込めずにひっかかっている残留物が問題だという診断。
食事の最後にゼリーを食べさせると、全部一緒に流し込めるだろう、と先生。
そこで、施設では毎食後、お茶のゼリーを食べさせてくれることになった。
自宅でも、ウィダーインゼリーみたいなパウチのゼリーを毎食後食べさせることにする。
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今回、ケアマネさんが動画を撮って送ってくれたから、こんなふうに嚥下の様子を知ることができた。
付き添うことができなかったからこそ、こういう配慮は大変ありがたい。
なかなか、施設側でここまでしてくれることはないと思う。
母のケアマネさんは、本当に仕事熱心だ。
彼女のことを考えるとき、私は『働きマン』のあるエピソードを思い出す。
『働きマン』は、アニメ化もドラマ化もされた安野モヨコの名作マンガ。
編集者をやっている主人公を中心に、仕事をするいろんな人々の群像劇になっていて、働く女性のリアルな気持ちがうまく描かれている。
http://annomoyoco.com/comics/hataraki-man/
私がよく思い出すエピソードというのは、主人公の松方が通っているリラクゼーションサロンの、施術師の女性の話だ。
仕事にプライドを持ち、お客様のために一生懸命こだわってやっている彼女だが、本当にここで働いていてよいのか、と疑問を持ち始めると、気持ちが空回りする。
ある日、お客さんのコリをほぐすために施術時間をオーバーしてしまう。
普通だったら、サービスで長くやってもらえるならうれしいものだが、時間を急いでいたその客に激怒されてしまう。
彼女は最終的に、もっと自分の力が発揮できそうな他のサロンへ転職してしまった…。
そうなんだよなぁ…。
真剣に仕事をして、相手のためにと一生懸命やればやるほど、報われない気持ちになることってあることなんだよなぁ。
『働きマン』は、私も一応働く女の一人として、共感できる話が満載なのだ。
名前も忘れてしまったそのサブキャラの小さなエピソードが、ケアマネさんの仕事ぶりで、ときどき頭をよぎる。
なぜなんだろう?
はっきりとはわからない。
今回動画を撮ってくれたのは、彼女個人のスマホだった。
LINEもそう。
施設の仕事用携帯はガラケーだから、動画を撮って送るには、個人のものを使うしかない。
しかし、個人のスマホを仕事で使うのは、おそらく認められてはいないはずだ。
利用者の家族とLINEで友だち登録をするのさえ、よくないのかもしれない。
一生懸命が仇になることがときどきある。
よかれと思ってしたことに、しっぺ返しを受けることもある。
それが心配だ。
彼女の頑張りが、ちゃんと報われれますように、と私は願うしかない。
私の感謝の言葉じゃ報い足りないのはわかってるけど、「ありがとう」と伝えるのがせいいっぱい。