気をつけて、しかし恐れずに
11月19日以来、連日兵庫県の新型コロナ感染者が百人を超え、昨日も最多数を記録している。
いよいよここまで来てしまった感じがする。
ただ、うちの夫はよく、
「知り合いか、知り合いの知り合いに感染者出た? 俺の周りはまだ一人もおらへんけど」
と言う。
確かに、私の周りにはまだ一人もいない。
先日美容室に行って、美容師さんたちに同じ質問をしてみたけれど、
「まだ知り合いやお客さんには出てないっすねー」
という返答だった。
かつて、「関西人は、必ず知り合いの知り合いに『探偵ナイトスクープ』に出演した人がいる」という都市伝説があった。
私の知り合いの友達も依頼者で出たことがあるし、職場に探偵が尋ねてきてちらっと画面に出た友達もいた。
夫の会社の人も出演したことがある。
美容師に尋ねてもやっぱり友達の友達が依頼者になっていた。
それが私の現在の実感である。
「コロナがナイトスクープより身近に迫ってきた」とは思えないせいで、ウイルス自体も目に見えないけれど、感染も目に見えず、まるでネット上の仮想敵みたいに思える。
我慢できなかった三連休
本来なら我慢の三連休なのに、結局は連日出かけてしまっていた。
そのうち1日はしまじろうのクリスマスコンサート「しまじろうとふゆのおうじょさま」だった。
こんな状況下でもあるし、今年は神戸じゃなく明石市立市民会館での開催なので、チケットを取るときにすごく迷ったけれど、「3歳未満ひざ上無料」につられてしまった。
何より、一番の決め手はサトイモの反応だった。
「去年、しまじろうのコンサートに行ったの覚えてる?」
「おぼえ、テる~」
「今年も行きたい?」
「いき、たいョ」
とたどたどしく言った。
そして、去年「赤いものを持ってきてね」と言われて持って行った消防車を取ってきて私に見せてくれた。
「消防車持って行ったの覚えてるの!?」
「おぼえ、テる~!」
子どもの記憶なんてどーせすぐ消えちゃうんだろ、とタカをくくっていた私は、ちゃんと覚えていてくれたことに感激してしまった。
夫は、
「コンサートなんか、ようさん人が来るのに大丈夫なんか?」
と言いながら、夫も車で会場まで送ってくれた。
正直、去年よりも物足りなさがあるコンサートだった。
何が違うんだろう、と考えてみると、コロナのせいでできない演出が多々あることに気づかされた。
オーケンがライブでコール&レスポンスができないことでものすごく戸惑っているのと同じく、しまじろうのコンサートも観客をあおることができないのだった。
筋肉少女帯と同じく、子ども向けコンサートも参加型である。
「みんなで大きな声でしまじろうを呼んでみよう!」
なんていう呼びかけは当然御法度なのである。
クイズを出して、
「会場のみんな、答えを教えて!」
という問いかけもできない。
代わりに、入り口で渡された星型の厚紙を使って、
「みんな、キラキラスターを振って!」
という呼びかけがあり、星をヒラヒラ振ってしまじろうたちに元気を送った。
去年は目の前までガオガオさんが来てくれて興奮したけれど、今年は出演者が通路まで出てきてくれることもない。
ダンサーなど出演者の数も最小限にとどめているみたいで、華やかさに欠ける。
間隔をあけているので席はゆったりしているけれど、会場の熱気も換気で出て行ってしまった。
大人としては、
「制作サイドは目一杯頑張っているだろうけど、いろいろ残念だなぁ」
という感想を持たざるをえなかった。
それでも、帰りの車の中で、
「コンサート楽しかった?」
と尋ねると、サトイモが、
「たのしカた!」
と答えてくれたのがせめてもの救いである。
旅人の名言
オーケンがnoteで「のほラジ」という有料5分ラジオを配信していて、その中で語っていたのが、沢木耕太郎の「気をつけて、でも恐れずに」という言葉だった。
ネットで検索すると、正確には「気をつけて、しかし恐れずに」で、下記にインタビューが載っていた。
気をつけて、しかし恐れずに。
コロナや旅行にかかわらず、人生のすべてに通じる名言だと思う。
サトイモは好奇心でどんどん行動してしまう子どもなので、私はいつもヒヤヒヤしっぱなしだ。
コンサートでも、前に出て行きそうになるのを止めるので必死だった。
コンサートで出ていくのは当然止めるべきだとしても、日常生活のいろいろを、親としてどこまでやらせるべきなのか、どこまで止めるべきなのか悩む。
先日は私がピーラーでジャガイモの皮をむいていると、自分もやりたがってダダをこねるので、やらせてみた。
ピーラーは包丁より危なくはないけれど、間違えば指の皮をすりむいてしまう。
「ああっ!危ない!しっかり持ちなさい!」
と怒鳴りながらも、見守りながら2個のジャガイモをむいた。
恐がってばかりじゃ前に進めない。
でも、まずは気をつけて。