最近の出来事ダイジェスト
父の買い物
実家に帰ると、ダイニングテーブルに「高麗人参」の箱が置いてあった。
高そうなサプリメントだ。
父に尋ねると、電話がかかってきて注文したのだという。
これまでも父は、キューサイのヒアルロン酸、味の素のグリナ、サントリーのノコギリヤシ、日本薬師堂のグルコンEXなどなど、テレビでCMをしているサプリをよく買っていた。
しかし、たいていは自分から電話を「かけて」注文している。
電話が向こうから「かかってきて」、見たことも聞いたこともない会社の商品を買ってるのが非常に気にかかる。
実は3、4年前にも同様のことがあった。
そのときもやはり高麗人参で、電話勧誘で父が注文していたのを、たまたま私が家にいた週末に配達だったおかげで、代引きだったのを受取拒否することができた。
今は月イチでしか帰れないから、そんなところまで目が行き届かない。
通販ならまだマシだけれど、詐欺にひっかからないか、非常に心配である。
母の点滴
母を見舞いに行くと、手の甲に点滴の針が刺されてあった。
見ると針が折れ曲がっていて手が腫れている。
慌てて看護師さんを呼びに行った。
一昨日から熱が出ているので、抗生物質の点滴をしているという。
朝と夕と点滴するので、針は刺しっぱなしで固定しているらしい。
「痛そうに見えるけど、プラスチックの軟らかい針だから大丈夫ですよ。何度も刺すのも痛いから抜かないでおきます」
という。
納得できないでいると、しばらくしてから、
「朝の点滴のときは腫れてなかったそうなので…」
と針を抜いてくれた。
やはり家族がみていないと、こんな調子である。
病院に任せっきりにはできない。
その前日には父も見舞いに来ているのに、点滴をしていることさえ気が付かなかったという。
まったく目が節穴にもほどがある。
父が見舞いに来るときはたいてい母は寝ているらしい。
私が行くとたいてい起きている。
本当はどうなのだろう。
いつも帰り間際に、
「お母さん、ゆっくり寝てて。次に私がお見舞いに来るまで寝てていいんだよ」
と声をかける。
発熱のしんどさや点滴の痛みが、眠っている間に過ぎていてくれたらいいのだけれど。
夫婦の傷
夫がかつての同僚と久しぶりの再会を果たしたそうだ。
十年近く前に転職して会社をやめていった人で、偶然仕事を通じて再会し、飲みに行ったのだという。
彼が会社を辞めるまでは、長らく一緒に仕事をし、苦楽を共に経験し、とても懇意にしていた人らしかった。
夫が、
「あいつが『会社をやめてからいろいろありました』って言うから、『俺もいろいろあったで』って。あいつの性格も知っとうから、ほんまにいろいろな苦労があったんやろうなぁって想像したら涙が出そうになったわ」
と言う。
夫は普段そんなに情にもろい人ではないので、そんなふうに言うなんて、と珍しがっていたら、
「なみ松には想像できへんやろ。のほほんと暮らしてきて、たいして何の苦労もなかったやろうから」
と言われてカチンと来た。
何の苦労もなかったって…。
その日はそれ以後夫と口をきくのも嫌になった。
悪いけど、こんなふうに言われたことを女は一生忘れない。
たぶん、夫はもう忘れているだろう。
妊娠中に夫から言われた「おろさないの?」という言葉も、「そのお腹には百年の恋も冷めた」という言葉も忘れない。
夫は冗談のつもりで言ったのかもしれないが、女心は傷つきやすいのだ。
夫婦というもろい陶器のうつわは、こういう小さな傷が積み重なって、いつかひび割れ、水が漏れ、ガチャンと割れるのだろう。
入籍することになったとき、義母が夫に、
「どうせおまえはまた離婚するで」
と言ったらしいことを思い出す。
サトイモのハイハイレース
サトイモがハイハイレースに出場した。
普段は家の中を縦横無尽に高速ハイハイしているので、いつもどおりの実力が出せれば一等間違いなし!と自信満々で臨んだレースであった。
ところが、レースが始まっても動く気配がなく、私の呼びかけにもオモチャの音にも全く応じない。
それどころか、動いたと思ったら逆方向に進み始め、係員に3度も連れ戻される始末。
3人がとっくにゴールしたあとになって、ようやくまともに進みだし、猛ダッシュしたものの、結果は5人中4位。
夫は、
「情けない奴や。完全に場に飲まれとった。逆走したのはあの場から逃げ出したかったからや」
というけれど、私は単に反対側に置いていた私の靴が気になっただけだと思いたい。
やればできる子なはず。
二週間後にも別の主催者が企画するハイハイレースにエントリーしている。
今回の反省点を踏まえて、次は好成績を残したい。
平成で卒乳
平成の終わりをきっかけに、卒乳、つまり母乳をあげるのをやめることにした。
サトイモは離乳食を三食しっかり食べてくれる優秀な子なので、ずいぶん前から栄養は食事から摂れている。
日々の生活リズムもできているので、夜中にミルクを飲むこともなくなった。
それでも母乳を飲んでいたのは、睡眠導入剤として寝る前におっぱいを咥えさせていたせいだ。
つまり、入眠さえできればおっぱいはいらないわけで、私がどう決断するかというだけの問題だった。
きっかけは何でもかまわなかったので、時代の区切りとともに卒乳することにした。
これで令和の世にはカフェインを気にせずコーヒーや紅茶をガブ飲みできる。
夫のビールを「ひとクチちょうーだい」と味見することだってできる。
風邪をひいたら風邪薬が飲めるし、サプリメントだって「授乳中の方は~」という注意書きを気にせず飲める。
いろんな意味で平成に感謝。そして令和に乾杯。