頭を下げるのも親の仕事
ゆっくりできるはずの木曜日だけど、今日は幼稚園のミニ運動会の参観があって、いつもより早くお迎えにいかなければならない。
サトイモが一人で遊んでくれるようになって以前より家事がはかどるようにはなったけれど、自分の時間が持てるようになるにはまだ遠い秋。
前回も書いたけど、サトイモの「おうちいや」病が続いていて、先週はひどかった。
幼稚園の帰り、マンションの前に着いたとたん、
「おうちいや!」
と逆走しはじめた。
台風が近づく前の、雨降りの木曜日。
サトイモはレインコートに長靴で、前もよく見ないで走り出す。
こちらは傘をさしながら、片手でサトイモを捕まえようと奔走する。
迷走の挙句にたどりついたのは、とあるご近所のおうち。
そこは、神戸市ファミリー・サポート・センターで紹介してもらった老夫妻のお宅だった。
ファミリーサポート(略してファミサポ)は、「子育ての応援をしてほしい人」と「子育ての応援をしたい人」をマッチングしてくれるサービスで、地域の有償ボランティア活動を推進している。(有償であることがポイント!)
来年私の育休が明けるので、何かあったときに預けられる先を増やしておこうと、ご近所で子どもを預けられる方を紹介してもらった。
これまで2度お宅にお邪魔した。
1度は私も一緒に、2度目はサトイモを預けて。
奥様は今も幼稚園や保育園で預かり保育のボランティアにも行かれている保育のベテランだった。
これまでファミサポで何人もの子どもを預かっている実績のあるおうちなので、おもちゃもたくさん置いてある。
預けたときは1時間だったけれど、サトイモは泣きもせず、奥様と一緒におりこうさんに遊んでいたそうだ。
そのときの、楽しく遊べるおうちいう記憶に残っていたせいか、サトイモはそのお宅で遊ぶといって玄関前でごね始めた。
雨の中、二人ともずぶぬれである。
玄関先で騒ぐ声を聞きつけ、昼食中にもかかわらず、奥様が出てきてくれた。
「じゃあ、ちょっと遊んでいく? 自分でレインコートが脱げたら上がってもいいよ」
そう言われて、ちゃっかりコートを脱いで上がり込むサトイモ。
すみませんすみません、と言いながら、甘えてお邪魔した。
おもちゃがある場所をわかっていて、勝手に出して遊ぶサトイモ。
「お食事中でお邪魔だし、ちょっと遊んだら帰ろうね」
と声をかけても、
「いやいや」
と腰を上げる気配がない。
すると旦那さんが、
「本人が納得するまで無駄やで。かまへんから、ほって帰ったら? お母ちゃんがおったらなんぼでも遊びよるで」
と提案してくださった。
「ほんまやわ。帰り帰り。寂しくなって帰るって言いだしたら電話したげるから」
と奥様も賛同してくださって、私はサトイモを預けて家に帰った。
それから20分ほど経って、奥様から電話がかかってきた。
「泣き出したので、今おじいちゃんがお宅に送っていってます」
そう言われている最中に、窓の外から、
「マ”~マ”~!」
という泣き声が道を渡ってくるのが聞こえた。
雨の中、旦那さんに手を引かれて帰ってきたサトイモは、私の姿を見るやいなや泣き止んで、ごきげんで旦那さんに、
「タ~ッチ!」
とハイタッチしてバイバイした。
本当にファミサポのご夫婦にはご迷惑をかけてしまった。
その後、元町商店街の亀井堂で栗まんじゅうを買って、お詫びに持って行った。
親はお詫びばかり。
児童館でもまた…
それで少しはサトイモも懲りただろう、と思っていたが翌日の児童館でも再び「おうちいや」病が出た。
その日はたまたま「おしゃべりほっとタイム」という子育ての悩み相談ができる日で、心理士と助産師の方が来られていた。
同じイヤイヤ期のママ友たちとお茶を飲みながらお話をして、私もサトイモの「おうちいや」病について相談したりした。
その帰り、まさに児童館が終了して玄関を出たところで、サトイモが公園に行くといってダダをこねだした。
時は台風接近で本降りの雨、風も強くなってきたところだった。
ちょうど相談員の方たちも玄関を出られたところで、
「さっき相談したのが、まさにこれなんです…」
と現場を見てもらった。
15分ほど、大人3人が雨の中を立ち往生。
その後、児童館の先生まで加わって、大人4人が帰ろうと説得。
最終的には児童館の先生が抱っこして連れ出してくれた。
平謝りの私。
「いいんですよ!子育てっていうのは、いろんな人に迷惑をかけて当たり前!」
そういってくれる先生たち。
神経が毎日すり減る。
それと同じくらいの速度で、神経が太く成長する。